あれからひと段落してはしゃぎ疲れ眠ってしまった鳴、練。2人を別の部屋へ母と運び終えた私は1人廊下を歩いていた。
そこでふと前方に目をやるとあの"手"が開いた襖の隙間からチラチラはみ出していた。
数が多いし質も違う…とても重くて禍々しい。
…端に寄って通り過ぎてしまおう。
壁側へ寄って恐る恐る歩みを進めていく。それとともに兄様と杏寿郎さんの話し声が聞こえてきた。
中を覗くと2人は縁側に座っており鬼、の単語が出ている事から鬼狩りの話をしているのだろう。お互いとても真剣な表情だ。
命の危険を伴う鬼滅隊の人は一般の人より黒い手の数も質も違う。
ましてや兄様は鬼滅隊の中で最上位の"柱"。杏寿郎さんも階級をどんどん上げ、より強い鬼との戦闘は避けられない。
正直兄様と杏寿郎さんの姿をみた時以前よりも増えた手にゾッとした。
どうにもできないとわかっていても願わずにはいられない。
お願いだからそっちへ連れてかないで、と。
「凪?」
「‼︎兄…様」
名前を呼ばれてハッとする。思考に耽ってじっとみていたのがいけなかった。
「何かあったか?」
「…なんでもないよ。あ、そういえばお茶菓子があったから持ってくるね。八つ時で丁度いいから」
「…ああ。ありがとう」
兄様を直視する事ができずそそくさと小走りで来た道を戻る。
咄嗟にごまかしたけど変に思われていないだろうか。
煉獄 杏寿郎side
「よかったのか晋。」
「ああ、あの表情を見るに恐らく俺達の周りにいる"手"をみてたんだろうな。」
凪と初めて出会った時一般では感じることのない、しかし俺にとっては馴染みのある気配がして戸惑った。
後で晋に手の事を教えてもらい納得した。
あれは死の気配だ。
しかしそこでふと疑問に思う。
手は生物全ての周りにいるそうだが何も感じることはない。ならなぜ凪からは感じられるのか。
憶測だが凪はみえる分引き寄せやすくなっているのではないか。みえない人間でもわかるくらいに集まり凝縮され付き纏う。まさに憑かれていると言ったらいい。
本人は生まれつきで生活の中の一部とは言っていたが時折手をみて怯える姿にただ大丈夫だと声をかけることしかできない自分が歯痒い。
晋はもっとそれを感じている。
お盆に2人分の菓子とお茶乗せ戻ってきた凪を無理矢理膝の上へ座らせる。慌てる姿に笑みをこぼし、何か言おうとする口に菓子を一つ放り込んだ。
せめて無邪気に笑えるよう守ろう。
菓子の美味さに顔を綻ばせる凪を見てそう誓った。
それは夜鈴家が滅ぶ3年前のある日の日常だった。
藤の家紋の家以外にも拠点、休憩場所ってあるんではないだろうか、と勝手に妄想しました。
煉獄さんとの話は終わりです。その後煉獄さんは鎹鴉から任務の知らせを受け夜鈴家をあとにしました。
次回から別のキャラ達が主人公と関わっていきます。
主人公にとっては辛い話になりますけどね‼︎