死に憑かれた少女の鬼滅譚   作:清内

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失った日

 

私は何もできなかった。

 

ただ怯え身を震わせる事しかできなかった。

 

 

寂しい

 

痛い

 

辛い

 

苦しい

 

 

 

 

ああ、もうあの日には戻れない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今年で13歳となった私は深夜、遠くで聞こえた物音で目が覚めた。

 

なにか、大きな物が倒れたような…。

…それになんだか静かだ。季節は秋なのに虫の音(ね)一つしない。…気味が悪い

 

眠い目を擦りながら廊下へ出ると咳き込んだ。

 

「ゲホッゲホッ‼︎、煙⁉︎」

 

廊下は煙が充満しており一気に意識が覚醒する。

 

苦しい、もしかして火事⁉︎

皆まだ気づいていないのだろうか、知らせないと‼︎

 

 

少しでも煙を吸わないよう口を袖で塞ぎ、まず父と母の元へ走る。

何処から火が出ているかわからないが2人が寝ている部屋の方は比較的煙の量が少なかった。

 

 

「父様‼︎母様‼︎火が出て…、へ?」

 

部屋の中を見た瞬間全てが停止した。

 

 

乱れた布団、部屋中に飛び散る赤い液体、首と体が離れている父、圧倒的に足りない母らしき体の一部

 

 

なんだ、これは、現実…?

 

父様?母様?…黒い手がいない。生物の側には必ずいるはずなのに

 

 

 

 

 

 

 

もう、死んでいるから?

 

 

 

 

 

「ゔ、ぅっ‼︎」

 

理解した瞬間言葉に表せない感情が押し寄せ膝から崩れ落ちる。

 

 

 

ああ‼︎どうして‼︎

どうしてこんな酷い(むごい)事に‼︎

 

ボロボロと大粒の涙が溢れ落ちる。

呼吸がうまくできない。思考が回らずなんで、どうしてという単語が頭の中で繰り返される。

 

 

 

 

顔を上げると父の虚ろな瞳と目が合った

 

ギリッ

 

 

 

"何が"こんな事をしたんだ‼︎

 

 

そして次にはグラグラと腹の底から怒りが湧き上がり爪が畳に食い込む。

 

獣はこの辺りには出ない、ましてや人がこんなぐちゃぐちゃな殺、しかた出来るはずない

 

 

 

 

 

 

 

 

だったら、決まっている…

 

 

鬼だ

 

 

鬼の仕業だ‼︎

 

 

 

でも家には鬼が苦手とする藤の香が焚かれているのになんで…‼︎

 

 

 

「おお?まだ人間がいたのか」

 

ぞわり

 

 

 

いる

 

後ろに鬼が

 

「あー、なんだガキかぁ」

 

ガリ、グチュ

 

周りにいる黒い手が今までにないほど激しく動き集まってくる。

 

なんの、音…?

見るな。頭ではわかっているが体は意思に反して振り返った。

 

 

「もうちょっとしたら肉付きも良くて美味いのによぉ。ざぁんねん」

 

グチャ

 

 

 

 

姉が、いた。

 

 

男の鬼に足首を掴まれ引きずられる姉の腹わたは繋がっているのが不思議に思えるくらいなくなっていた。

 

「まあ、でも女だったら上手いから食うけどねぇ」

 

真っ赤な手がゆっくりと迫る。

自分の命の危機であるはずなのに恐怖を感じない。あまりに精神に負荷がかかりすぎて感情が押さえ込まれたのだろう。

 

 

 

死ぬ

 

私はここで

 

 

 

 

 

 

 

「、ぇ…て」

 

「‼︎」

 

「にげ、て、ぇ‼︎」

「〜っ‼︎」

 

ダッ‼︎

 

「あはっ鬼ごっこ?いいよ、付き合ってあげるぅ」

 

 

ケタケタと馬鹿にした笑い声が背後から響く。

 

 

 

姉は虫の息ではあるが生きていた。腹わたを食われ自分はもう助からないだろうに血を吐き叫んだ…私を助けるために。

それが私に力を与えてくれたのだ。

 

 

「はぁ、はぁ」

 

どうする⁉︎

鬼は遊んでいるのかまだ追ってこないがいずれ捕まる‼︎

生き残るにはどうしたらいい‼︎

 

 

「ぜぇ、はっ、ゲホッ‼︎」

 

煙が濃い。火が広がったんだ

 

 

煙…?

 

 

 

 

 

…鬼は全てにおいて人間の上をいく。感覚だって鋭い。

でもこの煙の中なら少しは時間が稼げるかもしれない…‼︎

 

煙で視界が悪くなってもここは住み慣れた家。どうって事ない

 

ただ火元の方へ向かう事になる。煙に巻かれて死ぬかもしれない…

 

 

「鬼ごっこはーじめっ‼︎」

 

「っ‼︎」

 

やるしかない、一か八か‼︎

 

 

 

 

 




いきなり3年たっていきなり家族が死んでいきなり鬼が出てきてほんと急展開な話になりました。
自分は火事についての詳しい知識はありません。これ無理だろ、と思われるところもあるかもしれませんがご了承ください。



藤の香が焚かれていたのに何故鬼は入り込めたのか?

火事の理由は?

凪はどう生き残るのか

次回で鬼との話は終わります。しかしその後も問題は山積み。頑張れ主人公負けるな主人公‼︎
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