転生者は何を為すか   作:猫パン

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あけおめです。

新年明けて初めての投稿ですねぇ

グダってますけど


第11話

 

 

 

 

 

「改めて、お願いします鷲崎さん」

 

「ああ、よろしく頼むよ」

 

夜。

夕食を終えたシャルルと八雲は部屋へと戻ってきて、改まって自己紹介をしていた。

というのも八雲は昼休み丸々居なかった訳で、シャルルとの交流はしていないのだ。

朝の授業の時以来の会話となるため、シャルル自身も緊張していたようだ。

 

「そういえば鷲崎さんって、織斑君の特訓を引き受けているんでしたっけ」

 

「ああ、アイツの要望でな。ああ、あと敬語は要らんぞ。話し辛いだろうしな」

 

「ありがとう。良ければ僕も参加して良いかな?専用機もあるから少し位は役に立てると思うんだ」

 

そう言ったシャルルに少し考え出す八雲。

特訓の相手をしているとはいえ、色々とバタバタしていた事もあり本格的な特訓を開始するのが今回からだからだ。

 

「ああ、頼む。俺だけでは手が回りきらないだろうからな」

 

「うん、任せて!」

 

シャルルのいい返事を聞いた八雲は満足気に頷き、日課となっているランニングの為準備をして部屋の外へと出る。

 

「では少し出てくる。1時間程度で戻ってくるがな」

 

「うん、いってらっしゃい」

 

バタンッ

 

見送った八雲の背中が閉まった扉で見えなくなると、先程までにあった笑顔がシャルルの顔から消える。

 

もしその場に第三者が居ればその顔を見て感じた事だろう、その罪悪感に塗れた顔に。

 

「あんなに優しそうな人を……僕は裏切らなきゃいけないのか」

 

ふと冷たい何かが手に落ちた感覚を感じてそこに視線を向けると、そこには一滴の雫が手の平にあった。

 

「あれ……おかしいな、なんで涙が」

 

誰に見られている訳でもないのに急いで目元を擦るのだが、溢れ出るそれは止まることがない。

 

涙が出る度に自分の役割を思い出し、更に涙が出てくる。

 

八雲が戻るその直前まで、声を押し殺した泣き声が部屋に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら八雲君、奇遇ね」

 

八雲がグラウンドに出ると楯無が待っていた。

だが前のように運動するような格好ではなく普通に制服だったため、一緒に走りに来た訳ではない事が見える。

 

「楯無。どうした、また走りに来たのか?その格好だと醜態を晒す事になると思うが」

 

「もう八雲君とは走らないわよ、私の身が持たないわ」

 

体力不足の文字が出現した扇子を広げ、楯無は渋い顔をする。

学園最強を自負していた自分が簡単に体力面で負けたのだ、男女の差と言えばそれまでの話。それでも彼女のプライドに触ったのは確かだった、故に彼女は人知れず鍛え始めたとかなんとか。

 

「所で八雲君、彼女の事はどうするつもり?」

 

彼女とは、勿論シャルル・デュノアの事である。

楯無にしてみれば正体を知っているにもかかわらず未だにアクションを起こさない八雲の事が心配なのである。

 

「まだ何も起こしていないだろう、俺からは何も起こせない。それに俺から何かしたら、それはそれで色々と問題だろう?」

 

「まあそうだけど…」

 

八雲の言う通りシャルルはまだ何もしていない、それなのに八雲から仕掛けたら問題になる。スパイであれば問題無いが、スパイじゃなかった場合が問題になるのだ。

 

「とりあえずは彼女が何かアクションを起こしたらだな、俺が動くのは」

 

「そんな受け身の姿勢で大丈夫?相手がスパイっていうなら寝首を掻かれる事もあるのよ?」

 

「余程な事でなければ、大事には至らんだろうさ」

 

例え不意打ちで刺されようと撃たれようと、一撃で心臓や脳を消し飛ばされない限りナノマシンにより修復される。

ちょっとやそっとの負傷では八雲に影響を与える事など出来ないのだ。

だが修復されると言ってもナノマシンは有限である故に常に負傷を与え続ければナノマシン切れを起こし八雲の体に傷を与える事はできる。

痛覚が無い為痛みで怯むことが無い八雲を相手にそれが出来るかは別問題であるが。

 

 

「所で生徒会入りは考えてくれた?今なら副会長よ」

 

「…そうだな、俺が生徒会に入ることによって生じるメリットとデメリット。それを詳しく聞いてからだな、前回聞きそびれた事だし」

 

「そうねぇ。メリットは生徒会の情報網が使える事、有事の際に八雲君の独断で戦闘行為を開始出来る権利かしらね。デメリットは仕事量の増加とやっかみかしら。自分は男より上位だと思っている人間がこの学園には多いから、そんな中八雲君が副会長になったらたぶん凄いと思うわ」

 

女尊男卑のこの時代、男を下に見る女が多い中どう見ても上に居る男を見れば、女からしたら面白くはないだろう。

 

だがその程度デメリットとはならない。

八雲にとってやっかみ程度、歯牙にも掛けない事だろう。

自分が何を言われようと気にしないのだから。

 

「やっかみ程度問題にならないな、その条件なら」

 

「なら引き受けてくれるかしら」

 

「ああ、受けよう。俺にとっても情報は重要だ」

 

やったーと小躍りする勢いで両手を上げようとして思い留まった楯無が、顔を赤らめながらも佇まいを正す。

 

「じゃあ明日…は私が用事あるから、明後日の放課後生徒会室に来て頂戴、色々と手続きがあるから」

 

「ああ、分かった」

 

じゃあねと言い残し去っていった楯無を見送り、ふと時計を見る。

思いの外時間が経っていたらしく、来たときからおよそ30分近く経っていた。

 

「……短縮メニューで行くか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま、シャルル」

 

1時間という想定を10分過ぎた頃、八雲は自室であるがノックをして入ってくる。

 

「あ、おかえりなさい」

 

帰ってきた八雲を見て笑顔を浮かべるシャルル。

だが八雲の目には、その笑顔に隠れた涙の跡がはっきりと見えた。

 

「………」

 

「どうしたの?」

 

「…いや、何でもない」

 

顔を、特に目元を見ていた八雲の視線に気付いたシャルルが声をかける。

だが涙跡を見ていた等と言える訳も無く、涙の理由等問える訳がない。

そもそも出会ったばかりなのだから。

 

「あー、シャワーだがどうする?今のように俺は夕食後1時間程居ない訳で、先に入ってくれた方が良いとは思うが」

 

「んーそうだね、鷲崎さんがいいのなら先に使わせてもらおうかな」

 

少し悩んだシャルルだが、1時間という時間を考えて先に入る事にした。

八雲が居ないその間に入ったほうが時間的にも無駄がないのだ。

 

「あ、そうだ。鷲崎さんさえ良ければ、明日学校案内して欲しいな。まだ入ったばかりだから、僕まだ何も知らないし」

 

「ああ、そういえばそうだったな。良いぞ、俺で良ければ案内しよう」

 

ありがとうと笑みを浮かべたシャルルの顔に、ふと八雲は死別させてしまった妹を幻視した。

 

「ーーーーッ!?」

 

その顔から目を離せず、湧き立つのは恐怖。

遺して死んだ八雲の事を恨んでいるのではないか、憎んでいるのではないか。

そんな感情が心の内から湧いてくる。

確認する術等存在しない故に、八雲のその感情は自己完結する他無い。

だが八雲にとって、そんな事無いと断じれる程軽いモノではないのだ。

 

「どうしたの?鷲崎さん」

 

「ッ!ーーいや、何でもない。少し考え事をしていただけだ」

 

覗き込んできたシャルルの顔にハッと意識を引き戻され、八雲は冷静を取り繕いそう言った。

内心で渦巻く負の感情を無理やり抑えつけ、何でも無いかのように。

だが考え事等という言い訳に騙されるシャルルではなく、優しげな笑みを浮かべて口を開いた。

 

「鷲崎さんも疲れているんだよ、今日は早く休んだ方が良いよ」

 

「そう、だな。そうさせてもらおう」

 

その1時間後には、部屋の電気は消え静寂に包まれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『どうして私を置いて死んだの、お兄ちゃんーーー』

 

その声にハッと意識が覚醒する。

だが体が石の用に固まり、動かす事ができない。

聞こえる筈の無いその声に幻聴だと必死に自分に言い聞かせるが、前世の妹の声を聞き間違う筈が無い。

 

『違うんだ美遊!俺だって、死にたくて死んだ訳では!!』

 

『うん……お兄ちゃんが自殺するわけ無いのは十分分かってる。でも、約束したよね?私を置いて死なないって』

 

その言葉が、八雲に重圧となってのしかかる。

まさに彼女の想いが重さを持って八雲を襲っていた。

 

『お父さんもお母さんも死んだ女子中学生の私が、お兄ちゃん無しで1人で生きて行けるとでも思っていたの?』

 

両親を喪った兄妹に頼る親戚は居なかった為、成人して働いていた【 】が妹を同じ部屋に住まわせる事で衣食住を確保していた。

兄が居なければ未だに1人では生きていけない彼女にとって、どうしようもできない事となったのだ。

 

その状態での【 】の死である。

大好きな兄。

彼が居なければ生活出来ない自分。

自分を遺して逝った兄に対しての想い。

 

 

『分かってる。お兄ちゃんだって死にたくなかったのは…でもーーー』

 

一度言葉を切った彼女から、さらなる重圧が発せられて【 】にのしかかる。

 

『私はーーーーーー』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーハッ!?」

 

バサッと飛び起きた八雲の目に飛び込んできたのは見慣れたIS学園寮の自室。

隣のベットではシャルルが寝ている事から、今の出来事が夢だと分かる。

 

だがそれが夢だとしても、どうにも幻だとは思えなかった。

 

「ーーー眠れる気分ではなくなったな」

 

もう過ぎた前世(過去)の出来事、今の八雲には全く関係ない筈の事柄だ。

だがそれでも、そう簡単に割り切れる訳がない。簡単にその記憶を捨てられる訳がないのだ。

 

目が冴え、ざわつく心を落ち着かせるために、八雲は体を動かす事にした。

大したことはない何時もの日課を違う時間にするだけ、走っている時だけは前世も今も嫌なことを忘れられるから。

 

 

寝ているシャルルを起こさぬよう静かに部屋を出て、八雲は無心でグラウンドを走った。

 

 

 

だがその日、八雲の心が晴れることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日

 

結局眠れず朝を迎えた八雲だったが、一切顔に出ない影響で誰にも悟られる事なく授業を乗り切る事ができた。

 

そして放課後になり、シャルルとの約束である学校案内をすることになった。

 

 

「ここが普段授業で使う第3アリーナだ、教室からちょっと遠いのが難点だな。2,3年は第1と第2を使っているから普段かち合う事はないだろう。もしかち合うのなら隣の第4,5アリーナだな、あそこは全学年が個人練習や模擬戦等で使うから完全に予約制の上で使用区画が決まっている。この第3にあるようにアリーナ内の地面付近にホログラムで線が書かれているだろう?あれが第4,5では遮断シールドで区切られているんだ」

 

「ふーん、そうなんだ。あ、これはどういう機能があるの?」

 

まず八雲がシャルルを連れてきたのは授業でよく使う第3アリーナだ。

一度2組との合同授業で来ては居るのだがその時は八雲が先導していた為にシャルル1人で来たとしてはたして使い方が分かるかどうかという、シャルル自身の希望によるものだった。

 

「それは訓練用端末だ。全アリーナ共通で存在するそれは、主にアリーナ内の環境を変えるのに使う。例えば重力、仮想的にだが空間にかかる圧力を高める事で擬似的に高重力環境を再現出来る。例えば酸素濃度、区画内の酸素濃度を増減させる事で様々な環境を作り出せる。例えば気圧差、空間にかかる圧力を重力同様高める事で10気圧まで高める事ができる、これは重力と同時に行われるな。こんな感じに様々な環境を再現できるが、普段使われる事はないな」

 

「えっと、どうして?」

 

「ここまで本格的な訓練となると軍事訓練と遜色無い訳だが、一体誰がやる?思春期真っ只中の女子が自分の体を苛め抜く戦闘訓練を率先してやるとは思わんな」

 

言い方は悪いがその通りであろう。

一体どこに、青春をかなぐり捨てて戦闘訓練に明け暮れる10代女子が居るというのだ。

 

「それもそうだね」

 

流石にこれにはシャルルも同意した。

訓練の辛さは、彼も知っているから。

 

因みにだがこの環境端末のたった2人の使用者が千冬と八雲である。

前述した青春をかなぐり捨てた10代女子というのが10年前の千冬であり、現在もブリュンヒルデたる強さを誇る故に鍛錬に余念が無いのだ。

八雲は操る機体故に様々な環境に適応しなければいけないためやらざる負えないといった感じである。

 

 

「次はどこが見たい?」

 

「んーそうだね、部活棟が良いなぁ。僕、気になってる部活があるんだ」

 

そう言って2人でアリーナを出るが、こころなしかシャルロットの気分が上がっているような気がした。

 

程なくして部活棟の真ん中に位置するであろう部室に辿り着き、ドアに掲げられた部活名の入ったプレートを見て更にテンションが上がるシャルル。

 

「ここだよ鷲崎さん!料理部!」

 

そのテンションの上がり具合を見れば料理が好きだと言うことが分かる。

 

「失礼しまーす!!!」

 

感情の昂りからか声高らかに入室したシャルル。

 

「あ、デュノア君と鷲崎さん。こんにちは」

 

中に居たのは何かを作っていた七瀬ほのか。

ちょくちょく八雲と喋っている3人娘の1人だ。

そんなほのかは作業している手を止め、入口に居る2人へと駆け寄ってくる。

 

「こんにちは七瀬。七瀬が料理部だったとは」

 

「あー、今意外って思ったぁ!絶対思ったぁ!」

 

言葉から察したほのかが八雲に対して捲し立てるが、隣に居るシャルルのポカンとした表情で一気に佇まいを直した。

 

「ごめんねデュノア君、鷲崎さんのせいで」

 

「…おい七瀬」

 

小声で言った言葉は消え去り、代わりにほのかのシャルルを歓迎するような声量が際立ってくる。

 

「ようこそ料理部へ!料理したこと無い人から料理好きまで!ここは誰でも受け入れるよ!」

 

その生き生きとした表情はシャルルを圧倒し、八雲ですら圧倒される。

自分の好きなことに一直線に邁進するその姿、中々真似できる事ではないのだから。

 

「とりあえず、即決しなくてもいいから今から私が作るのを見ててね。さあ鷲崎さん、手伝って!」

 

「俺は部員では無いんだが?」

 

「細かい事はいいの!それに自己紹介の時に言ってたじゃん、和菓子作りが趣味だって。お菓子を作れる人に料理が出来ない人は居ないんだよ!」

 

謎理論を展開し八雲に手伝いを強要するほのかに八雲は反論するが、現在部室にはほのかを入れて自分達3人のみ。

1年であるほのかや八雲達と違い、2、3年はまだ授業中なので居ないのだ。

 

「しょうがない、エプロンはどこだ?」

 

「ありがとう!エプロンなら3番棚の中にあるよー。あ、ピンク着る?」

 

「冗談。黒の無地に決まっているだろう」

 

ほのかの戯言を笑って流し、棚から黒のエプロンを引っ張り出す。

 

「さてデュノア君、料理は好きかな?」

 

「あ、はい。料理は昔から大好きで…」

 

「それなら結構!!!料理好きは大歓迎だよ!!」

 

バサッと両の手を広げたほのかに少し気押されるシャルル。

だがそれも料理にかける情熱は確かに伝わり、シャルルもその情熱に感化されるようにテンションが上がってくる。

 

「じゃあせっかく日本に居るんだし日本らしい肉じゃがを作ろう!!」

 

「肉じゃが!!」

 

料理名を聞きシャルルのテンションも上がる。

 

肉じゃがとは古き良き日本の言い伝えでは、肉じゃがが美味しく作れる女性は良い嫁になると言われている。

それは全ての女性の夢、それはシャルロット・デュノア(男装前の彼女)にとっても変わらない。

 

「肉じゃがか、いい料理だ。簡単で、故に奥が深い。………美遊が、よく作ってくれたな」

 

「ん?鷲崎さん、どうかした?」

 

シャルルと盛り上がっていた隣で上の空だった八雲を気遣ったほのかが声をかける。

だがそれに反応を返すより先に、八雲の体が崩れ落ちた。

 

「「ッ鷲崎さん!?」」

 

咄嗟に崩れ落ちた八雲の体を2人が支え、そしてその変調へと気づき驚愕した。

 

「ッ!、凄い熱!」

 

八雲の体は服の上から分かるほどに熱を持っていた。

人の体とはここまで熱を発する事が出来るのかと思うほどに高温で、それを発しながらも平然していた八雲が突如崩れ落ちる程に異常で、その異変に誰も気が付かない程に。

 

「……悪い。感覚が鈍いと、自分の体の変調にすら気が付かないとは」

 

常人なら意識を保つ事すら困難な筈の高熱を出しながら、それでも八雲ははっきりと意識を保っている。

だがそれでも尚、八雲は立った。

立ち上がれてしまった。

体内に宿るナノマシンが、八雲の体がどれだけ異常を訴えていても無理矢理にその体を正常へと戻そうとする。

それが尋常ならざる高熱を帯びる理由でもある。

 

「鷲崎さん、無理しちゃ駄目だよ」

 

「ああ、分かっている。すまないシャルル、学校案内の途中だって言うのにな」

 

「大丈夫。僕に突き合わせて無理をさせちゃったら申し訳ないし、今日は帰って休もう?」

 

シャルルの提案はご尤もであり、無理をして倒れたら元も子もない。

故に八雲は早々に帰る事にした。

 

「七瀬もすまない、手伝うと言っておきながらこのザマとは」

 

「良いから、鷲崎さんは早く休む!謝るのはその後!」

 

ほのかは八雲の背中を押すようにして出口へと誘導する。

それに遅れないようシャルルも出口へと向かう。

 

「ありがとう七瀬、また明日」

 

「すいません七瀬さん」

 

「明日も熱あって、それでも出てきたら殴るからねー!!デュノア君にも迷惑かけちゃ駄目だよー!!」

 

そんなほのかの言葉を背に、自室へと戻る2人。

先に歩く八雲を見て、シャルルは疑問が浮かぶ。

 

 

(どうして?どうして貴方はそんなに優しいの?僕の為に、ただの学校案内なのに……体調不良を押してまで付き合ってくれるなんて)

 

前を歩く八雲の背中がどうしようもなく眩しく見えた。

 

 

(そんなに優しい人を………僕は裏切らなきゃいけないの?)

 

そしてその優しさを裏切らなきゃいけない自分が、どうしようもなく嫌になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『魂の結合が不安定……否、そんな筈は無い。我が調整は完璧であった。であるならば何故……』

 

何もない無の空間に漂う【ベス】が八雲の映像を見ながらそう呟く。

それは盗撮に当たる筈だが、そんなのは関係ないと言わんばかりに【ベス】はそれを見続ける。

 

『ん………そうか。そなた、未だに妹に縛られているのか。人とは難儀なものなのだな、忘れれば苦しむ必要も無いのだが』

 

そう言う【ベス】にとって人とはやはり未知であり、それ故に見続けるのだろう。

 

『契約に従いそなたの魂は再調整を施そう、だが妹の事はそなた自身が折り合いをつける事だ。そなたの周りには魅力的な人間が多数居る、そなたを未だに縛る妹の幻影。それを断ち切ってくれる者も、案外近くに居るやもしれんな』

 

そう言って視線を向けた先に居たのはシャルロット・デュノア(シャルル・デュノア)

例え男装し姿形を偽っていようとも、【ベス】に通用する訳がない。

魂を偽れる訳がないのだから

 

『励め、提供者よ。そなたの生涯その全てが、我が娯楽故に。故に協力するのだ、我を楽しませよ』

 

 

 

 

 

 

 




とりあえず独自解釈増々で
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