因みに未だにシャルロットの問題をどうするか迷ってる
第9話
6月頭の日曜。
八雲は生徒会室へと招かれていた。
今までは生徒会長の楯無と同室だった為色々な情報共有等自室で出来たのだが、今月来る転校生の為に楯無が移ってからは生徒会室で情報共有をしていた。
「早速だけど八雲君、君に関係する2つの悪い話があるんだけど…どっちから聞く?」
「呼び出しておいてそれはどうなんだ?まあいい、1つ目からだ」
そう言った八雲に楯無は机の上に広げてあった書類を手に取り、八雲へと手渡した。
「事実か?これは」
「ええ、フランス政府から送られてきたプロフィールよ。同時に八雲君の同室となる相手」
そこに書かれているシャルル・デュノアなる名前はまだいい、その下に書かれている性別が男となっているのだ。
「男性操縦者が見つかったのであれば、もっと騒ぎになる筈だ。それに一夏が見つかった後に全国で行われた適性検査で俺のように見つかる筈だ」
「そう、そこなのよねぇ。」
そう言って楯無は八雲の手にある書類を睨む。
「これが懸念1つ目、ほぼ確定だろうけど女の子よ。で、2つ目なんだけど……」
そこで珍しく楯無が言い淀んだ。
割とズバズバ言ってくる普段の楯無とは違った為に、八雲も首を傾げる。
そして意を決するように、1枚の紙を八雲に手渡した。
そこには裏面までびっしりと書かれている八雲の誹謗中傷、特に多かったのは八雲の持つ機体についてだった。
「代表候補生のセシリアちゃんと一夏君を下したのは機体が凄いから。あの機体が無ければ誰でも勝てる。千冬様の弟ならともかく、男が専用機を持っているなんて許せない。いやぁ、流石のお姉さんも凄い量過ぎて何も言えないわ」
「……」
「あの…八雲君?……ごめんね?」
この結果には流石に八雲も言葉が出なかった。
「これね、ほとんど八雲君と関係無いクラスや学年から来てるのよ。しかも投書されたの最近なの」
「流石に機体が無ければ弱いと思われているとは、思わなかったぞ」
これでも強い方だと自負している八雲にとって、機体が無ければ誰でも勝てる等と言われるとは流石に予想外であった。
「そうねぇ。入試の結果を知っている身からすれば、正直貴方とは戦いたくないわ」
ごく一部の教員と生徒会長、そして学園長のみが立ち会った一夏と八雲の入試。
その中でも八雲は、試験官として出てきた千冬相手に負けたとはいえSEを4割削ったのだ。
訓練機同士とはいえ、ブリュンヒルデを相手に4割も削れる人間は居ないだろう。
かく言う楯無も、千冬相手に4割なぞ削れる訳がないのだから。
「それでね、もう直ぐ行われるトーナメントなんだけど……八雲君は訓練機で出て欲しいなぁって………」
「噂の払拭……だけでは無さそうだな」
「訓練機で出て貰えれば噂も払拭出来るし、何より実力を示せるからね」
楯無が言うように専用機持ちが専用機を使わず訓練機でトーナメントを勝ち進めば、その実力は確かなものだと示すことが出来る。
「訓練機で出場するのは分かったが、手続きは……」
「それはこっちでやっておくわ。何か要望はあるかしら?」
「ならラファールで頼む、接近の打鉄よりは万能型の方が良い。だがブレードは積んでくれ」
打鉄は刀を主体とした接近型の機体で、ラファールはカスタム次第で武器庫とも呼べるオールラウンダーが特徴の機体だ。ラファールの方が打鉄よりも装備数が段違いであり、系20位あるのだ。
「あら?自分の会社のは使わないの?」
トーラスもIS 学園に機体を卸しており、機体名を荒波と言う。
ラファールや打鉄と比べると速度が抜きん出ているが、遠近両方とも対応出来る万能型だ。
「俺の機体の事で言われているのに、俺の会社の機体使ったら同じことだろうが」
「それもそうね。来週中には八雲君の元に行くように手配しておくわ」
トンっ
手に持った書類をテーブルで整えた音が響き、話を変えるように雰囲気を切り替える。
「そう言えば他の役員はどうした、生徒会を1人で運営している訳ではあるまい」
「ええ、あと
普通は生徒会といえば会長、副会長、会計、書記、庶務と5人で構成されるのが一般的だ。
それを3人となれば仕事が溜まる一方だろう、だが会長席に溜まっている書類の少なさを見れば、3人で回せているのだろう。
「3人か、少ないな。庶務と副会長は居ないのか」
「そうねぇ、いまいちピンとくる人が居なくて居ないままになってたわ。…あ、八雲君副会長にならない?待遇は約束するわよ?」
「ふむ……まあ、考えておこう。では俺はこれで」
おねがいね〜
楯無の気の抜けた声を背にしながら、八雲は生徒会室を後にした。
「ん?この感じ……」
生徒会室から出た八雲は、廊下の窓から見える学園への入口に目を向けた。
本島との唯一の接続口であるモノレール駅がある広場があり、この学園へと入れる空を除いた唯一の道である。
そこに見えるは日曜の喧騒、外出する生徒達の列。
普段と変わらない休日の風景、訝る事などありはしない情景。
「鼠が入ったか……いやぁ違う」
空を見る八雲は、見えないその何かを睨んでいた。
「うさぎ……か」
「……やっぱりやっくんなら気付くよね」
部屋の至る所に機械の部品が散らばり、ケーブルがさながら樹海のように広がっている。
その真ん中に立っている青いワンピースの上からエプロンドレスを着た女性が、IS学園の写っている画面を見ながらそう言った。
「ごめんねやっくん。もう、私は追い掛けられないの………イカロスみたいに、私の翼はもう無いの」
かつて撮った写真を見ながら涙を流す女性。
トーラス社をバックに社員と共に撮った、思い出の写真だ。
「皆、ごめんね。せっかく応援してくれたのに、私にはもう……夢を追い掛けられない」
部屋の隅に無造作に置かれている残骸に目を向け、更に涙が溢れてくる。
それはどう見てもISであり、もう2度と起動出来ないのが見て分かる位ボロボロだった。
装甲が融解して配線も露出し、中心部に格納されている筈のコアすらも配線でぶら下がっている。そしてそのコアすらも、原型が無いほどに壊れていた。
ふと、顔を上げた彼女の顔からは既に、涙は枯れていた。
「ごめんねやっくん、もう……止まれないんだ」
その顔には、狂気の笑みが張り付いていた。
その日の夜。
自室にて1人電話を掛けるセシリアの姿があり、その顔は真剣そのものであり友達に掛ける電話では無い事が伺える。
「こちらセシリア・オルコット、月例連絡を」
『承認。送れ』
「まずは先月に起きたクラス対抗の代表決めの模擬戦についてですが…」
その結果について渋るように、苦虫を噛み潰したような顔を浮かべるセシリア。
『その結果については聞いている、慢心があったとはいえ実に無様な結果だったとな。翻弄されダメージを与える事が出来ずに完勝を許したと』
「ッ!申し訳…ありません…」
既にその結果が上層部の知るところとなっている。
セシリア的には知られたくない事実だったが学園には他にもイギリス代表候補生は居るし3年には国家代表も居る。知られるのは時間の問題だった訳で、それが早まっただけだ。
『無様は無様だったが悪い結果では無いと俺は思っている、あまり気に病む必要は無い。お前が戦った鷲崎八雲は相当腕が立つ。代表候補生程度歯牙にも掛けんだろう、あの男の実技入試の相手を知れば自ずとその評価になるしな』
「それは……ですが、八雲さんに勝てずとも良い勝負位には持ち込みたかったですわ……所で入試の結果というのは?」
『ああそうか、一部の者にしか公開されていないのだったな。この情報は他言するなよ?実技入試の際鷲崎八雲の試験相手が織斑千冬だった。両者共に訓練機で戦い、結果的に鷲崎八雲は
もたらされた情報を聞き絶句した。
自分も確かに強く技量もあると自負しているセシリアだが、それでも千冬に勝てる程自分が強い等とは思ってはいない。
故に4割削った八雲の実力が想像すら出来ないのだ。
『まあだからお前が思っている程お前への評価は落ちてはいない、それにお前……誰にもなし得なかった事をしたという自覚はあるか?』
「誰にもなし得なかった事?」
『やはり自覚なしか………まあいい。お前と鷲崎八雲との模擬戦の最後、一矢報いようとしたお前とブルー・ティアーズとの同調率が瞬間的にだが86%を超え、更にお前が気絶したあともその意志を汲み取った機体が鷲崎八雲へと突撃を敢行している。分かるか?今居る国家代表ですら83〜86%が最高値だと言うのにお前は国家代表すらも抜き去る勢いで同調率を上げた、しかも操縦者の意思を機体が引き継ぎ、操縦者が気絶してもなお動こうとするなど前代未聞だ。故にお前への評価は右肩上がりなんだよ』
もはや言葉が出なかった。
代表候補生として負けたら評価が失墜すると思っていたセシリアにとってべた褒めとも言えるその評価、しかもそれ以外にも誰もなし得なかった新たな事を気絶していた自分がしているとは思いもしなかった。
『まあお前の評価なんて俺にはどうでもいいんだよ、知りたい事が今出来たからな』
「知りたい事とは?模擬戦の事以外に報告するような事は何もありませんでしたが…」
そのセシリアの言葉に電話口の男ははぁっとため息をついた。
『鷲崎八雲だよ。男嫌いのお前が名前で呼んでたんだ、そう言う事で良いんだろ?あの男のどこが良いんだ?』
「……なっ!!何を仰っていますの!?べ、別に八雲さんとは何にもありませんわ!?」
何を言っているのか数秒考えてボフンと顔が真っ赤に染まり、大慌てで弁明するセシリア。
だがそれは何もないとは思えない態度であった。
『八雲さんねぇ……大の男嫌いのお前が指摘されてそこまで慌ててしかも名前で呼んでいるんだ、何もないなんてことはないだろう?惚れたか?』
「ななななにを言っているんですの!?私が八雲さんにほ、惚れただなんて世迷い言を…世迷い言……」
次第に声から覇気が消え、無言になる。
沈黙は是也とはよく言ったもので、黙っている事自体が言っているようなものである。
『まあ何でも良いか、告るなら早めにしておけよ。青春は短いからな、頑張れ10代』
「余計なお世話ですわ!!」
勢いに任せて電話を切って携帯を振り上げる。
がそのまま投げ捨てるわけにもいかず携帯を握る手を下ろした。
「私だって分かってますわ……私が八雲さんを好きな事ぐらい……」
携帯を握りしめる右手をふと見ると雫が落ちてきた。
そしてその雫は次第に増えていき、目の前が潤んで見えなくなっていた。
「どうして涙が…泣くつもりじゃ…」
「やっぱりハズキ社製のが良いなぁ」
「えーそうかなぁ、ハズキのってデザインだけって感じがして私は嫌だなぁ」
「そのデザインが良いのよ!」
「私は性能的にもトーラスかなぁ、デザインも自分で選べるし」
「あれ選んじゃう?性能的には凄く良いけど、今からだと凄く時間掛からない?確かフルオーダーメイドって聞いたけど」
月曜の朝。
クラスの女子がカタログ片手にあれやこれやと意見交換をしている。
「織斑君のISスーツってどこのやつなの?見たことない型だけど」
「えーっと、確か特注品らしい。男のスーツなんて無いからどっかのラボが作ったらしい、元はイングリッドのストレートアームモデルって聞いてる」
男性操縦者用のスーツなんて元々有る訳がない為、あれやこれやと色々な企業が作ろうと名乗りを挙げたのだ。
そして一夏に選ばれたのがイングリッド社であった。
因みにだがトーラスのISスーツは一般的なスーツに比べると特に性能も良く、なおかつデザインを注文者があれこれと意見を言って自分好みのデザインを作れるのだ。
故に注文者の依頼を受けてから製作する関係上フルオーダーメイドになり、総じて頼んでから届くまでの時間が一般的なスーツを注文するよりも倍近く時間が掛かるのだ。
「おはよう」
「あ、鷲崎さん。おはよう!」
「おはよう鷲崎さん!あ、鷲崎さんのISスーツってどこの会社のなんですか?」
「俺のは
「あ、それ持ってる!!」
1人の女子生徒が鞄の中から封を開けていないISスーツを取り出し、全員の視線が集まる。
この時期に注文する者が大半だが、気が早い者もおり早々に購入していたりするのだ。
入学後直ぐに注文していれば競争に巻き込まれずに買えるので、だいたいこの時期に届く。
「良いなぁ、私も早く頼めば良かった」
「高かったんだぁこのモデル、でもこのモデルが欲しかったから買っちゃった。カタログスペック凄いんだよこれ」
ISスーツというものは機体展開時に着用する特殊フィットスーツの事で、肌から発する微弱な電位差異を検知してISの各部位にダイレクトに送る機能を持つ。
耐久性にも優れており9mm弾程度なら確実に受け止める事が出来るが、受け止めた衝撃は殺せない欠点を持つ。
「諸君、おはよう」
「お、おはようございます!!」
真耶の事をあだ名で呼んだり雑談したりと、ざわざわしていた教室は一瞬で静かになった。
流石千冬、指揮はバッチリである。
「今日からは本格的な訓練を開始する。訓練機を使っての模擬戦が主になるので、各人気を引き締めるように。各人のISスーツが届くまでは学校指定の支給スーツを使うが、忘れたものは指定の水着で訓練を受けてもらう。だがそれも忘れたものは……まあ言わなくてもどうなるか分かるな?」
全員が絶対忘れないと心に刻んだ。
体調を崩したとかではない限りスーツを忘れたとしても授業には参加する他無い、故に下着で参加することになるだろう。
そうなれば余程粋狂な性癖でない限りはずかしさで訓練どころではないだろう。
ましてや男2人に見られるのだから。
「では山田先生、ホームルームを頼む」
「はいっ!」
後ろで書類を纏めていた真耶へとバトンタッチした千冬が下がり、真耶が前へと立つ。
「えっとですね、今日は転校生を紹介します。しかも2人です!!」
「「えぇえぇええ〜」」
いきなりの転校生紹介にクラス中がざわめく。
今日まで1度だって女子の情報網に引っかからなかったからだ。
それも2人、それは驚くだろう。
「失礼します」
「……………」
だが入って来た2人の転校生を見てその喧騒もピタッと止む。
それはそうだろう、うち1人が男だったからだ。
「フランスから来ました、シャルル・デュノアです。この国では不慣れな事も多いかと思いますが、皆さん宜しくお願いします」
転校生のシャルルがにこやかに微笑み、気品溢れる一礼をした。
「お、男…?」
未だ信じられない誰かがそう呟いた。
確かに情報等何も出ていない中の男性操縦者の出現である、信じられないのも当然である。
「はい。こちらに僕と同じ境遇の方が居ると聞いて、本国より転入をーー」
礼儀正しい立ち振る舞いに、中性的に整った顔立ち。髪は濃い金髪を首の後ろで束ねており、三編みになっているのがポイント高い。
体は華奢に見える位スマートで、スラット伸びた脚が全体の印象を貴公子に見せる。
「きゃぁあぁぁああ!!! 」
状況把握が追い付いたのか、感極まった黄色い声が瞬く間にクラス中を埋め尽くしていく。
「男子!3人目の男子よ!!」
「しかもうちのクラス!なんて幸運!!!!」
「守ってあげたくなる系の美形男子よ!!」
「お母さん、産んでくれてありがとう!!」
改めて認識した現状を声に出して喜ぶ彼女達。
それを多少冷めた目で見る八雲。
楯無に忠告を受けている為シャルルを注視しているのだが、八雲の目にはどう見ても女にしか見えないのだ。
「あー、騒ぐな。他のクラスもHR中だ」
「皆さんお静かに、まだ自己紹介の途中です」
その言葉に期待の視線がもう片方に向き、ざわめく教室も静かになる。
輝く銀髪を腰近くまで長くおろし、綺麗ではあるが整えている風ではなく伸ばしっぱなしの印象を受ける。
そして異彩を放っているのが、左目の眼帯である。医療用ではない黒い眼帯であり、もう片方の赤目には感情が宿っていなかった。
否、絶対零度に近かった。
後ろ手に組んでいる、その佇まいに感じる雰囲気は軍人。
シャルルと比べて明らかに小さい身長だが、全身から放つその鋭い気配によって多大なる威圧感を醸し出していた。
「…………」
だが当の本人は未だに口を開かず、腕を組んだ状態で冷えた目で教室内を眺めている。
だが直ぐに興味を無くしたのか、その視線も今や千冬にだけ向けられていた。
「………はぁ。挨拶しろ、ラウラ・ボーデヴィッヒ」
「はい、教官」
いきなり佇まいを直し素直に返事をする件の少女に一同があ然とし、敬礼を向けられた千冬は面倒臭そうに言い放った。
「私はもう既に教官ではない、教師だ。そしてここではお前も一般生徒だ、私のことは織斑先生と呼ぶように」
「ハッ!了解しました」
そう答えるラウラだが、まだまだ硬すぎる返事に千冬は溜息を隠せなかった。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
「……………」
いつかのデジャブ。
沈黙は次なる言葉を待つ合図であるのだが、ラウラは口を開かない。
「えっと……あの、以上ですか?」
「以上だ」
雰囲気に呑まれながらも出来る限りの笑顔でラウラへと問うが、無情なる即答が返ってきた。
そんなラウラがある一点を見て表情を変えた。
「っ!貴様がっ!!」
ズカズカと歩み寄ってくるラウラは、その速度そのままに最前列。
一夏の頬へと平手打ちをブチかました。
「…………え?」
バシンっと、心地良い程響いた。
ラウラの背丈は座っている一夏に向けて平手打ちをするのに丁度いい程低い為、かなり力が入っていた。
かなり痛みを伴うであろうそれは、一夏の頬を赤く染めていた。
「私は認めない。貴様があの人の弟等と、認められるものか」
そう言い放った言葉には、強い憎しみの感情が見て取れる。
だがどう見ても、この構図は面倒事の予兆でしかなく。
「いきなり何しやがる!!」
「ふん……」
まるで興味を無くしたかのように一夏の前から空いている席へと座り、腕を組んで目を瞑ったラウラ。
その一連の動作に誰も着いていける者は居なかった。
「あー………ゴホン。ではHRを終了する。各人、直ぐに着替えて第2グラウンドに集合。今日は2組と合同で模擬戦闘を行う。解散!!」
気不味い雰囲気を払拭しようと千冬が強引に話の流れを変えたため何とかなったが、今後もギクシャクすることは必至だろう。
「おい鷲崎。お前の同室相手だ、面倒見てやれ」
「お、お願いします。鷲崎さん」
「鷲崎八雲だ、宜しく」
事前説明は多少受けている模様で、八雲が自分より年上だと理解していたようだ。
しかも無表情で真っ黒い制服を着ているのだ、第一印象はかなり怖いだろう。
「では着いてくると良い、俺達男子はアリーナ更衣室で着替えを行う。実習の度に移動となるので覚えておくと良い」
「あ、はい!」
「待ってくれよ八雲、俺も行くぞ」
小走りで荷物を纏めた一夏も合流し、八雲の先導で3人はアリーナへと向かっていく。
「いやぁ、それにしても男子が入ってきてくれて良かったぜ」
「そうなの?」
「ああ。女子だけの空間で八雲と2人きりだぜ、身が詰まる思いだよ」
一夏はシャルルに対して、自らの思いの丈を打ち明ける。
異性だらけの空間に放り込まれて早2ヶ月、一夏も限界を感じていたのだろう。
八雲も一夏と同じ男だが年上であり、敬語を使わなくて良いと言われたとしても同年代と同じ距離感では居られない。
その点シャルルは同年代であるため、気軽に接する事が出来た。
「ああっ!!転校生発見!!!」
「しかも織斑君と一緒よ!!!」
HRが終わり、早速各学年クラスから情報先取の為にどっと押し寄せてくる。
「居たっ!!こっちよ!」
「者共、出会え出会えい!!!」
いつからこの学園は武家屋敷となったのか、号令に従いぞろぞろと出て来る。
その数は最早、廊下を埋め尽くす列となっていた。
「織斑君の黒髪も良いけど、金髪も良いわね」
「しかも瞳はエメラルドよ、綺麗だわ」
ワイワイと一夏とシャルルを見て騒ぎ出す面々。
だが八雲にも一定の人気はある模様だった。
「鷲崎さんの薄銀髪も良い、金髪と並ぶとすっごく映えるわ!!」
八雲の髪は黒髪混じりの薄い銀髪であり、光の加減次第では銀髪だけに見えるのだ。
そうなるとシャルルの金髪と並べば、金銀と組合せ的にバッチリである。
「え、なに?何で皆騒いでるの?」
1人だけ状況が読み込めないシャルルが、周囲をキョロキョロと見回す。
「そりゃあ男子が俺達3人しか居ないからだろ」
「………?」
意味が分からないといった顔をするシャルル。
その顔を見て、八雲は訝しさを増すのであった。
「いや、普通に珍しいだろ?ISを操縦出来る男って、今の所俺達しか居ない訳だし」
「あつ!ーーーああ、うん。そうだね」
ようやく気付いたとばかりにシャルルは相槌を打つ。
「すまんな。話題の転校生と話をしたいのは分かるんだが、次は織斑先生の授業でな。退いてもらえると助かる」
「あ、すいません鷲崎さん。どうぞ!」
バッと、八雲が話し掛けると波を分けるように道ができる。
顔に表情が出ない為、何人かの女子は少し恐怖心を煽られて顔を青くしていた。
「ありがとう」
「い、いえ。こちらこそありがとうございました」
お礼を言った生徒はそそくさと立ち去り、それに続くように行列を作っていた生徒達も去っていく。
その中に八雲を睨む視線がいくつかあった。
なんでだろうなぁ
初期案と今と、キャラ設定が違うんだよなぁ。
ヒロインシャルロットのみだったはずなのに気がついたらセシリアがヒロイン枠に入りかけてるし。
なんでだろうなぁ