ただの村人だった俺が失われた記憶を取り戻したら最強になった件   作:たけぽん

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12. 奇妙な襲撃

「おき……よ」

 

誰かが俺を呼んでいる、そして俺の肩をゆすっている。おかしい、俺はさっきまでオリバーシルキタスの講義を聞いていたはず……。

 

「起きなさいよって言ってるでしょうが!」

「ぐへっ!」

 

腹にものすごい衝撃が走る。腹部の痛みと共にさっきまで見ていたものが夢だということに気が付いた。……こんな起こし方をする奴を俺は一人しか知らない。

 

「んん……おはようシャル」

「……」

「シャル、お兄ちゃんにおはようのキスを……」

「いい加減にしろ!」

「ごほうっ!」

 

二度目の腹部への衝撃で俺の意識は完全に覚醒した。目を開けると、リッカが俺の傍に座っていた。……そしてかなり不機嫌な表情をしている。

 

「なんだよリッカ、飯なら後で……」

「それどころじゃないわよバカ!いいから窓の外を見てみなさいよ!」

「窓の外……?」

 

俺は寝ぼけたまま窓を開ける。

 

「え?」

 

俺が見た光景はこの街のものとは思えなかった。昨日、俺が感嘆の声を漏らした馬車や人で溢れかえった通りにはネズミ一匹すらおらず、本屋や鍛冶やはどこも閉まっている。

 

「どういうことだ……?」

 

俺の疑問に答えたのはリッカではなく街に響き渡る一人の声だった。

 

「繰り返します!我々は王都騎士団第3部隊です!現在この街にモンスターの群れが迫っている可能性があります!住民の皆さんは我々から指示が出るまで絶対に外には出ないでください!」

 

王都騎士団?モンスターの群れだと? 寝ぼけた頭を叩き起こし状況の理解に徹する。

 

「リッカ、騎士団って普段は王都を巡回してるんだよな?」

 

取りあえず疑問に思ったことをリッカに聞いてみる。

 

「そうよ」

「で、騎士団がこの街に来たのはいつだ?」

「3時間くらい前ね。ちょうどこの宿にも待機するようにって騎士が来たわ」

 

おかしい。シルド街から王都まではかなり距離があったはず。リッカの様な風属性の魔法で移動しても半日はかかるはずだ。それなのにモンスター襲撃前に騎士団が間に合うなんて事があるのか?いや、さっきの勧告はモンスターが迫っている『可能性』があると言っていた。つまり騎士団は確証があってきた訳ではない。そうなるとますます分からないのが、モンスターがこちらへ向かっているという情報の出所だ。

 

 

――ここで黙っていても結論はでない……か。

 

そうと決まれば迅速な行動だ。俺は早々に寝巻を脱ぎ、ハンガーに掛けてある服に手をかける。

 

「ちょ、ちょっとあんた何してんの!?」

 

リッカが俺を制止する。

 

「このモンスターの襲撃は何かおかしい……お前も早く着替えろ」

「は、はあ?あんた騎士団の話を聞いてなかったの?待機命令が――」

「その騎士団の話がおかしいんだよ。話は道中でするからさっさと着換えろ」

 

話しながら俺は着替えを済ませコートに腕を通す。

 

「わ、分かったわよ!着替えるから!出て行きなさいよ!」

「40秒で来いよ!」

「無茶言わないでよ!」

 

リッカの言葉を聞き終える前に俺は部屋を飛び出し階段を駆け降りる。

そこで俺は自分の腰に魔法剣が無いことを思い出す。そういえば昨日ラスティの店で修理に出したんだった。ポケットから領収書を出し、受け渡し時間を確認すると、『12時以降にお越しください』と書いてあった。踊り場の時計を見ると10時半を指していた。流石にまだ修理は終わっていないだろう。となるとほぼ丸腰で行かないといけないのか……。少し不安だが、いざとなればマテリアルバーストもある。取りあえず今重要なのは状況の確認だ。

 

一階で待つこと5分、ようやくリッカが降りてきた。

 

「遅いぞ、40秒って言っただろ」

「うっさいわね!男の着替えとは違うのよ!」

 

冗談を交わしながらも、リッカとともに俺は宿を出る。おそらくは街の正門に騎士団はいるはずだ。

 

 

「なるほどね、アンタの言う通り様子がおかしいわ」

 

走りながらリッカに俺の考えを伝える。

 

「ああ、だが王都騎士団が俺の考えに至らないはずがない。だからこそモンスター襲撃の情報の出所が知りたいんだ」

「分かったわ。それじゃあ急ぎましょ」

 

そう言ってリッカは俺の方に手を伸ばす。……またアレか。正直、何度やっても慣れないのだが、四の五の言ってる場合でもない。

俺がリッカの手を掴んだ瞬間、リッカのブーツにはめ込まれた魔法石が魔力を開放する。次の瞬間には、俺たちは街の正門へと一直線に突っ込んで行った。

 

 

***

 

「急げ!早く陣系を固めるんだ―――ってぐはあああ!」

「団長オオオオオ!」

 

猛スピードで突っ込んだ俺たちは正門到着と同時に何かにぶつかってしまったようだ。

 

「おいリッカ!だから少しは調整しろって言ってるだろ!」

「アンタが急げって言ったんでしょが!」

「急ぎすぎたせいで何かふっ飛ばしたぞ今!」

「知らないわよそんなの!」

 

リッカと口論していると、いつの間にか周りにはこちらに槍を向ける騎士たちが集まっていた。

 

「何者だ貴様ら!いきなり団長に攻撃を仕掛けるとは!」

 

騎士の一人が問いかけてくる。

 

「えーっと、俺たちは……」

「敵対勢力と見做して排除する!」

「っておい!」

 

話をする間も何もあったもんじゃない。俺たちは騎士の攻撃を回避しようとしたが、その必要は無く終わった。

 

「待て!グリーン!」

「だ、団長!ご無事でしたか!」

 

グリーンと呼ばれた騎士と他の騎士たちが団長と呼ばれた男の方へと駆け寄って行く。

うん、多分先にそっちの安否を確認するべきだったよな。

 

「何故、俺が後ろから吹き飛ばされただけで重傷を負わねばならんのだ!このアホが!」

「も、申し訳ありませんでした!」

「良いからさっさと指定の場所で待機していろ!」

「は、はいいい!」

 

団長の言葉に騎士たちは慌てて門から出て行く。

 

「それで、君たちは?」

 

団長が険しい顔でこちらへとやってくる。

 

「俺たちはつい先日この街にやって来た旅の者です。実は聞きたいことがあって……」

「……うむ、見た限り怪しい者ではないようだが、民間人には待機を命じているはずだ。早く避難しろ」

「いや、だから聞きたいことが……」

「早くしろ!もうあと5分もしないうちにモンスターが来るぞ!」

「俺たちはただ聞きたいことg……」

「私は持ち場に戻らせてもら……うがっ!」

 

……リッカが団長の頭を殴った。兜の上からだった為、軽傷で済んだだろうが、まさか殴るとはな……。いや、まぁ俺もいい加減、殴ってやろうとは思ってましたけど。はい。

 

「な、なにをするんだ娘!」

「それはこっちのセリフよ! 人の話ぐらい最後まで聞きなさいよ全く!」

 

リッカの威圧に団長も少し気圧されている。まぁリッカに怒られてる時の気持ちは分かるが……今回はあんたが悪いよ団長さん。それにしても騎士団長ってのはもっと高潔なイメージだったが……。

 

「ぐ、ぐうう……」

 

団長はと言うと呻きながらもようやく話を聞く気になったらしい。なかなかにタフだな。

 

「えーっと……」

「ええい!聞きたいこととは何だ!こちらは忙しいんだ!手短に頼むぞ!」

 

聞こえてるじゃねーか、という文句を言っている暇もないので俺は用件を伝えようと口を開く。だが、俺の言葉が声になる前に大きな地響きが鳴り響いた。

 

「くっ!ついに来たか!おい君たち!質問は後で受け付ける、とにかく避難するんだ!いいな!」

 

団長はそう言い残し門の外へと走り去って行った。結局何も聞けなかったがそれよりもさっきの地響き、恐らくはモンスターの大群のものだろうが、俺はその音を聞いたことがある。あのバカみたいにうるさい足音はおそらく―――。

 

――まずい!騎士団のもとに入った情報が仮に『モンスターの襲撃』だけだったとしたら……。

 

急いで正門を出た俺が見た光景は、大量のウインドコングの姿だった。

 

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