ただの村人だった俺が失われた記憶を取り戻したら最強になった件   作:たけぽん

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13. 消耗戦

「な、なんでここにウインドコングが……?」

 

隣でそう呟くリッカの疑問は最もだ。ウインドコングはこの周辺に生息するモンスターじゃない。それは昨日オルドも言っていた。そもそもこのあたりに生息するモンスターは大体が小型で、魔法を使ってくるようなものはいない。いたとしてもそれは“雷属性”を使うモンスターだ。だが、やってきたウインドコングは“風属性”。仮に騎士団が『モンスターの襲撃』という情報を得てやってきたのなら装備に使われている魔法石は大半が“土属性”のはずだ。それは、そのほうがやってくると予測されていたモンスターには有利に戦えるからだ。

しかし、この状況では……。

 

「ぐああああああ!」

 

交戦する騎士たちが次々に吹き飛ばされていく。中にはなんとかウインドコングの攻撃に対応している者もいるが、やはりほとんどの装備が属性相性で通じていない。このままだと、騎士団は壊滅する。そう思い、急いで加勢しようとした俺の腕はリッカによって引き戻された。

 

「ちょっと待ちなさいよ!アンタ今魔法剣が無いのよ?」

「だが、俺のマテリアルバーストの属性は炎だ。あれを使えばきっと……」

「あんな大群倒せるわけないでしょ!」

 

その言葉に俺はハッとする。確かに、ウインドコングの群れは少なく見積もっても100匹はいる。それを一度に吹き飛ばすほどの力は俺には無い。

 

「だからって、このままにはしてられないだろ!」

「それは……そうだけど……」

 

心なしか俺の腕を掴むリッカの手が震えているように感じる。よく見るとその表情は青ざめている。

 

「お、おい。リッカ?どうしたんだよ」

「アンタ……このままだとあの騎士団たちはどうなると思う?」

 

恐る恐る、といった感じでリッカは聞いてくる。俺は再び戦場に目を向ける。今少し目を離しただけで騎士団の半分は地に倒れ伏している。おそらく死んではいないだろうが、このままでは……。

 

「全滅……だろうな……」

「……っ!」

 

俺の言葉にリッカの表情はさらに強張る。

 

「わたしの前で……二度と……させてたまるか……」

 

――リッカ?

 

「一体、どうしたんだリッ――」

 

その言葉を聞く前にリッカはブーツの魔力を全開にして戦場へと突っ込んで行った。

 

「お、おい!」

 

リッカは突っ込みながら弓矢を構え魔法石の魔力を放出しそれを放った。それは一頭のウインドコングの頭に直撃した。その瞬間辺りに爆風が巻き起こる。辺りの騎士たちはその光景に唖然とする。

 

「な、なんだ?今の攻撃は……風属性か!?」

「あのお嬢ちゃんがやったのか!?いったい何者だ?」

 

騎士たちはリッカの姿を見て歓喜する。当のリッカは爆風の前で膝をついている。どうやらブーツの魔法の反動で足が痛んでいるらしい。

 

「何者でもいいさ!おかげで一匹――」

 

だが、その声は途中で途切れる。それはおさまって行く爆風の向こうから大きな唸り声が聞こえたからだ。

 

「……うそ」

 

爆風が完全に収まり、その向こうの景色がはっきりと見える。そう、全くダメージを受けていないウインドコングの姿が。そしてその右腕にはアウラムの森で見た時よりも強力な魔力が宿っていた。

 

「リッカ!避けろ!」

 

俺の叫びも空しく、その右腕は振り下ろされる。

 

「きゃああああああああああああああ!」

 

吹き飛ばされたリッカの体はものすごい勢いで街の外壁へと吹き飛んでいく。けたたましい音と共に外壁が崩れさる。

 

「リッカ!」

 

急いで壊れた外壁まで走り、倒れているリッカの体を抱き起こす。

 

「おい、リッカ!大丈夫か!」

「……う……うう」

 

うめき声を上げるリッカは既に瀕死の重体だ。

 

――このままだと、リッカもこの街も助からない

 

「おい!この中に炎属性の攻撃ができる奴はいないのか!」

 

俺の言葉に騎士たちは力なく首を振る。

ということは、現状やつらに対して有効な手を持っているのは――。

俺はコートから魔法石をとりだす。そのうちの一つは昨日使ってしまったため半分になっている。もう一つのまだ使っていない方の魔法石に目を向ける。一つ丸ごと使えばいけるか……?いや、無理だ。レイモンドのアジトを吹き飛ばした時も同じ量だったが、結果は廃工場をひとつ吹き飛ばした程度。あれから修業もしてあの時よりは強力だろうがそれでも100匹以上のウインドコング全てを吹き飛ばせる気はしない。

 

――でも、可能性があるのに試さないで死ぬくらいなら……!

 

意を決した俺はリッカの体を地面に寝かせ、手に持っていた魔法石を『全て』口に入れた。体が持つかは分からない、もしかしたら死ぬかもしれない。でも、ここが勇気の見せどころだ。

 

「おい!戦っている騎士たちは今すぐ退避しろ!死んでも責任はとらないからな!」

 

騎士たちは俺の方を訝しげに見たが、俺の体から出ている膨大な魔力を見てすぐに退避してくれた。

 

――覚悟しやがれ、ゴリラども……。

 

心の中で悪態をつきながらも、俺は魔力を口に集中し、圧縮する。ものすごい量の魔力がたまっていき、途中で体が爆発するんじゃないかと思ったが、どうにか完全に圧縮できた。

 

「マテリアルバーストオオオオオオオオオ!」

 

俺の口から莫大な量の炎が吐きだされる。それは大地を焼きつくすほどの火力をもち、空を割るかのような轟音を立ててウインドコングの群れへと向かっていく。危機を察知したウインドコング達は即座に防御の体勢をとる。だが、その炎はあっという間にウインドコング達を焼き払う。辺りには炎の音に混ざってウインドコング達の断末魔も響き渡った。

そして、炎は熱風へと形を変えた。

 

 

―――これで倒したはずだ。

 

 

誰もがそう思っただろう。しかし次の瞬間、

 

 

「な、なんだと!?」

 

それは先ほどの団長の大きな声だった。周りの騎士たちもざわつく。俺はほぼ力を使い切った状態で地面に伏しており、残りの力を振り絞り顔を上げ、前を見る。

 

 

 

「……!」

 

俺の視界に映ったのは、消し炭になって消えて行くウインドコングの死骸と――。

 

それとは別の、紫色の体毛をしたゴリラのモンスターだった。

 

 

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