ただの村人だった俺が失われた記憶を取り戻したら最強になった件   作:たけぽん

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32. ライアVSリッカ

それからも武道大会は進み、2回戦3回戦と俺とリッカは勝ち進んで行った。俺が懸念したジャーロンレベルの実力を持つ選手はどの試合を見ても現れず、結局特に何も起こらないまま予選トーナメントは終わり、ついにベスト4が出そろう事になった。

 

「さあ皆さん!こちらにいる4人の選手たちが、長く険しい戦いをくぐりぬけた猛者たちであります!大きな拍手を!」

 

審判の言葉に大きな拍手が巻き起こる。ベスト4に入ったのは俺とリッカ、そしてジャーロン、そしてガタイのいいおっさんだった。

 

「それではこれから準決勝を始める訳ですが、ここで4人の選手たちには組み合わせ抽選を行ってもらいます!」

 

武舞台に小さな箱を持ったスタッフが上がってくる。箱の上になっている面には穴が開いており、どうやらここからくじを引いて対戦相手を決定するらしい。

 

「それでは、ライア選手から順番に引いてください!また、くじの中身は全員が引き終わった後に一斉に開くので閉じたままでお願いいたします!」

 

俺はゆっくりと箱に手を入れ、適当にがさごそと箱の中をかき回した後、適当な一枚をとる。次にジャーロン、リッカ、おっさんの順にくじを引いて行く。

 

「それでは、くじを開いてください!」

 

確実に金一封を手に入れるためにも、ここでリッカとは当たらないのがベストだろう。

そんな願いを込めて二つに折られたくじを開く。

 

「ライア選手から順に番号をどうぞ!」

「えーっと……3です」

「1ですね」

「私は4」

「に…2だ……終わった……」

 

なんという運の悪さ、まさかリッカと当たってしまうなんて。これだとどっちが勝っても、俺たちとしての優勝の確率は半分になってしまう。

がっくりとしながらリッカの方に視線をむけると、何故か彼女は口角を上げている。

 

「よろしく、ライア」

「いや、よろしくってお前なあ……」

「言っとくけど、手抜きは無しよ?お互い本気でやりましょ」

 

効率的に考えるならどちらかが棄権して、決勝に体力を残した方が絶対にいいのだが、リッカはやる気満々だ。こいつ、金一封の事忘れてるだろ絶対……。

だが、俺も勝負事で手を抜くのは性に合わない。

 

「わかった。全力で戦おう」

「それではまず準決勝第一試合を――」

「す、すみません。おいら……棄権します」

 

ジャーロンと対戦が決まったおっさんが突如棄権を申し出る。会場は騒然とするが、まあジャーロンの圧倒的な実力を見たら大抵は棄権したくなるだろう。

 

「え、えーと……」

 

司会はジャーロンの方を見る。棄権を認めるか否かは対戦相手の彼に委ねられたらしい。

 

「僕は構いませんよ」

「じゃ、ジャーロン選手が棄権を許可したため準決勝第一試合はジャーロン選手の不戦勝となります!」

 

観客たちが困惑する中、ジャーロンは武舞台を降りて行く。後に残された俺とリッカは、一度視線を合わせ、すぐに互いに距離を開ける。

 

「それでは、準決勝第二試合!ライア選手対リッカ選手の試合を始めたいと思います!」

 

 

 

***

 

 

 

大歓声が響く会場の中心、武舞台にて俺とリッカの試合が始まろうとしている。俺は緑星の剣にセットされている水の魔法石を軽く叩いてみる。すると乾いた音が跳ね返ってくる。

多分、この戦いで限界が来ることは無いはずだ。

リッカはというと、弓を構え、矢を打つイメージトレーニングをしているようだ。

 

 

「両選手、準備はよろしいですか?」

「はい」

「いつでも」

「それでは、試合、スタート!」

 

え、3カウントしないの?

俺がそんなツッコミを心のなかでいれている隙をリッカが見逃すはずもなく、すぐに風の魔法を帯びた弓矢が2本飛んでくる。

 

「おわっ!」

 

なんとか体を動かし、かなり無駄の大きいアクションでそれを回避する。

体制を立て直した時にはリッカは次の矢を用意しており、またすぐに飛んでくる。今度はしっかりとした動きで回避するが、俺の武器が剣である以上このまま延々と遠距離戦をされるのは分が悪い。

だが、リッカの矢はひっきりなしに飛んでくるし、背中の籠の中の矢はまだまだ沢山ある。流石に全部無くなるまで回避し続けるのは不可能だ。

 

「どうしたのライア、このままじゃあっという間に終わっちゃうわよ!」

「くそ……!」

 

業を煮やした俺は剣を構え、そのまま武舞台をジグザグに走り出す。

 

「っ……。流石に、対策くらいしてくるわよね……」

 

動き回る俺に対し、リッカは照準を定められずにいる。これまでの彼女との関わりの中で、彼女の強さは十分に理解しているつもりだ。風属性魔法の使い方はこの大会で右に出る者はいないだろう。

だが、逆に彼女には決定的な弱点がある。それは、細かいコントロールや魔法石の魔力量の管理のずさんさだ。半年前のレイモンドとの戦いでシェパードにも指摘されていた事だが、こいつはかなりの脳筋なのだ。

 

「くっ……」

 

戸惑うリッカに対し、俺は徐々に距離を詰めて行く。もう少し、もう少し近づければ剣での攻撃が可能だ。

 

「これなら……どうよ!」

 

俺の接近に、リッカは矢を放つ。だがそれは俺の足元の武舞台の床に刺さるだけだった。

 

「……!しまっ……!」

 

俺が自分の計算ミスに気付いた時には既に遅かった。刺さった矢に付与されていたであろう風が一気に暴発し、俺の体を思いきり吹きあげる。

そのまま後方に吹き飛ばされた俺は武舞台に背中を強打する。

 

「かはっ……!」

「おーっとリッカ選手これは上手い!ミスと思わせた矢は実は時限爆弾の様な役割を果たしていた!ライア選手立ち上がれるか~!」

「ライア!ライア!ライア!」

 

 

司会の煽りに観客達からコールが起こる。こういう一体感ってどういう原理で生まれるんだろうな。

俺は苦笑いしながら、なんとか体を起こす。

 

「ライア選手立ちあがった!しかしこのままではリッカ選手に近づくことはほぼ不可能だー!」

 

その通り、このままだとあいつに一撃も与えられないまま試合終了になってしまう。

一応、次の策はあるんだが、ここでそれをするとジャーロンに情報アドバンテージを与えてしまうことになる。

 

「さあ、どうすんのライア!」

 

その声にハッとする。そうだ、俺はリッカと約束したじゃないか。お互い本気で戦うって。それをもう勝った気になって次のジャーロンとのことを考えるなんて彼女に失礼だ。

やるんだ、全力で。

 

「はああああああああ……!」

「おっと、ライア選手、一歩も動かない!このままではいい的になってしまうぞ?いったいその狙いとは何なんだー!」

 

司会の言葉も、観客の歓声も耳に入れず、俺は魔力を集中する。狙いはスピリチュアルマジックによる広範囲攻撃。武舞台ごと吹っ飛ばしてしまうかもしれないが、近接攻撃ができない以上これしか手は無い。

 

「させない!」

 

だが、俺の狙いはばればれの様でリッカがふたたび矢を放ってくる。

その矢は俺の頬をかすめ、客席の壁に突き刺さる。

 

「お見通しってわけかよ……」

「当たり前でしょ」

 

リッカが次の矢を放つまでのわずかな時間で俺は対策を練る。このままこの場で魔力を集中するのは不可能。一応移動しながらでも少しずつためることはできるがそれまで彼女の攻撃を無視するわけにもいかない。

ならば、どうする?

その時、俺の問いに答えるかのように緑星の剣が光を反射し輝く。

 

「これで、終わりよ!」

 

――――これだ!方法はこれしかない!

 

俺は目を見開き、放たれた矢の動きを全力で予測し……剣を振り上げる。

 

「なっ!」

 

リッカの驚きと同時に、乾いた音が辺りに響く。それは、俺の剣によって切り落とされた矢から生じる音だった。

 

「らららら、ライア選手が弓矢を切り落としたあああああ!」

 

ふたたび観客が湧く。中にはまたもや俺の名前を叫ぶ者までいるようだ。

 

 

「くっ、まだ勝負は終わってないわ!」

 

弓による攻撃を諦め、ブーツの魔法石の出力を全開にしリッカが突っ込んでくる。流石に状況判断が早いな……。

 

「はあっ!」

 

俺の目の前までやってきたリッカの蹴りを剣でいなしながら俺は魔力をため続ける。

それを阻止するためにリッカは間髪いれずに蹴りを入れてくる。このままだとジリ貧だ、何かリッカを遠ざける手は……。

 

「これで、どうよ!」

 

――ここだ!

 

リッカが回し蹴りを放った瞬間、俺は魔法を宿らせた剣を思い切り床にたたきつける。その反動によって俺の体は空中へと浮き上がった。

そう、リッカを遠ざける必要は無い。俺自身が離れればいいのだ。

 

「はああああああああ!」

 

そして俺はため込んだ魔力を全力で放つ。地上からそれを見上げるリッカは、笑っていた。

 

***

 

 

「しょ、勝者、ライア選手!準決勝突破です!」

 

何度目か分からない観客の大歓声の中、俺は武舞台に倒れるリッカに手を差し伸べる。

 

「いい勝負だったな」

「そうね、負けたけど。納得できる負け方だったわ」

 

俺の手を掴むリッカはどこか満足そうだった。

 

「でも、今度は負けないから」

「次回があるかは分からないけどな」

「確かにね」

 

そんなやりとりの中、俺たちは自然に拳をぶつけ合う。

 

「決勝、勝ちなさいよ」

「もちろんそのつもりだ……なんてカッコつけられる余裕は無いな」

「あのジャーロンって奴の底がしれない訳だしね」

「まあ、やるだけやってみるさ」

「そうは言いつつ、あんた結構ワクワクしてんじゃないの?」

 

リッカは俺の背中を軽くたたいて武舞台を降りる。

 

「それでは、10分の休憩の後に決勝戦を行います!」

 

 

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