ただの村人だった俺が失われた記憶を取り戻したら最強になった件   作:たけぽん

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33. 決勝

「レディースエンドジェントルメン!長かった第33回プラリア武道大会も、残すところ後一戦!ラストの、決勝戦だあああ!」

 

今までで一番大きな歓声が会場全体に響き渡る。

 

「それでは、選手入場です!」

 

その声と同時に、俺たちの足元から煙が放射される。わざわざ入口まで移動させられたのはこれがやりたかったからかよ……。

取りあえず、そのまま武舞台へと歩き出す。

 

「楽しみですね、ライアさん」

 

隣を歩くジャーロンが話しかけてくる。そういえば、こいつが喋ってるのを聞いたのは組み合わせ抽選の時だけだったか。

 

「そうだな。……あと、敬語はやめてくれ。今の俺たちは選手っていう対等な立場だ。気を使う必要なんて微塵もない」

「……ふふ、君は面白いね。ますます試合が楽しみになってきたよ。ライア」

 

思ったより柔らかい雰囲気の奴だな。あまり喋らなかったのはこいつも緊張していたのかもしれない。

 

武舞台に上がった俺たちは、互いに固い握手を交わし、定位置につく。

 

「それでは選手の紹介だ!まずは、この人!一回戦を大会史上最速で突破し、準決勝ではリッカ選手と素晴らしい激闘を繰り広げた、若き剣士、ライア選手!」

「ライア~!頑張れよ~!」

 

その声でようやくライオネルの座っている席が把握できた。隣には爺さん、リッカ、ヴァイオレットが座っており、俺に対し声援を送ってくる。俺は右手を大きく上げ、それに返事する。

 

「そして、対するは!ここまでの全試合をその圧倒的な剣技で勝ち上がり、まだまだ実力を隠しているこの男!こちらも若き剣士!ジャーロン・プロメチウム選手だああ!」

「ジャーロン!ジャーロン!ジャーロン!」

 

湧きおこるジャーロンコール。やはりみんな彼の本気がみたいのだろう。

 

「それでは、これより決勝戦を行います!両選手、準備はいいですか?」

「はい」

「いつでも」

「それでは決勝戦、試合開始イイイイイイ!」

 

司会の言葉と同時に俺たちは剣を抜き、武舞台を大きく蹴る。ジャーロンの剣は俺の剣より二周りくらい小さいが、その分小回りが利きそうだ。

なら、重要なのはファーストコンタクトでのマウントの取り合いだ。

 

「はああああああ!」

 

出し惜しみしている余裕は無い。俺は魔法石を全開で起動させ、剣に大量の水を纏わせる。その勢いはまるで竜が唸っているかのような音を響かせる。

対するジャーロンの剣からも、魔法石を起動させる輝きが灯る。

 

「おおっと!これは、本大会初の、ジャーロン選手の魔法攻撃だああああああ!」

 

そして俺たちの剣はぶつかり合う。その瞬間、俺の全身にものすごい衝撃が走る。

 

「ぐ、ぐああああああああ!」

 

弾き飛ばされながらもジャーロンの剣を見ると、その刀身にはパチパチと音とたててながら稲妻が宿っていた。

 

「雷属性か……」

 

どうやら実力差以前に魔法同士の相性が最悪らしい。このまま水属性で攻撃をしても、俺がダメージを喰らうだけだ。

 

「今の一撃はすごかったよ。属性による相性が無ければ僕のほうが吹き飛ばされていた」

「あんまり過大評価するなよ。たとえ属性相性がイーブンでも力で押し負けてたさ」

「……消極的だね君は」

「謙虚で思慮深いと言ってほしいもんだね……はあっ!」

 

煽り合いはそこで終わり、俺は全身の魔力を一点に集中する。さっきのリッカとの戦いで大分でかいのを打ってしまったが、それでもまだ魔力は枯渇していない。剣による攻撃が不可能な以上、打てる手はこれだけだ。

 

「なるほど、さっきの試合で見せた青い炎だね……。でも、それを打たせるわけにはいかない!」

 

大丈夫、この距離ならあいつがこちらへ届く前に魔力がたまる。

 

「な、なんだあれ!?」

 

観客の一人が叫ぶと、その波紋は全体へと広がっていく。その原因は、ジャーロンの剣にあった。彼が何かしらの操作をすると、剣が変形しだす。その刀身は銃身へと姿を変え、柄の部分は引き金へと変化した。

 

「なん……だと……」

「はああああああ!」

 

叫びと共に、銃口から雷を纏った銃弾が発射される。その一撃は俺の腹部に命中し、同時に体中に電流が走る。

 

 

「ぐああああああああああああああああ!」

 

大きくダメージを負った俺は武舞台に膝をつく。

 

「なんだよ……その武器……」

「これは、王都で開発された新型の武器さ。僕がこの大会に出たのはそのテスターを依頼されたから」

「お前……王都から来たのか」

「うん。僕は『王都魔術修練学院』、通称『王魔学院』の生徒なんだ」

 

王魔学院。その名前は村にいた時に母さんからよく聞いた。王都の中で一番大きな学校で、そこの卒業生のほとんどが騎士団や憲兵団に入るほどの実力を持っていると。

母さんはそこに俺を入れようとしていたらしいが、その時の俺が入ったらまず確実に退学してただろうな。

 

「なるほどな……お前の強さの理由が少しだけわかったよ……ほんと勘弁してほしいぜ」

 

減らず口を叩きながら、俺はなんとか立ち上がる。

 

「まだ、戦うのかい?」

「もちろん。こっちにも事情があるんだ」

「でも、このまま続けても君は……」

 

わかってる。ジャーロンは新型の武器によって近距離戦も遠距離戦もできる。さらにその威力は絶大。対する俺は、属性相性により剣での攻撃は意味を成さず、遠距離から攻撃しようにもやつは魔力が貯まるのを待ってはくれない。

 

やはり、リッカとの一戦がジャーロンに多大な情報アドバンテージを与えてしまっているらしい。俺がこれまでに見せた技はどれも通用しないと考えたほうがいいだろう。

だが、それ以外の戦い方があるかと言われれば首を横に振るしかない。

だから、ただジャーロンの姿を凝視する。

 

「そうか……まだやるんだね。わかったよ。その代わり、僕は手加減しないよ!」

 

ふたたび武器を変形させ、剣に変えたジャーロンがこちらへ向かってくる。

俺もふらつく体をなんとか支え、剣を構える。こうなったら、魔法なしの剣術で勝つしない!

 

「はあああああああ!」

「うおおおおおおお!」

 

再びぶつかり合う二本の剣。言葉通りジャーロンは一切手加減せず、雷魔法を付与してくる。

 

「ぐううっ……!」

 

その一撃を全身の体重を込めて受け止める。だが、やはり魔法なしではまともな防御にもならず、俺は後方へ吹き飛ばされる。

 

「ライア!」

 

客席からリッカの声が響く。だが、もうそれに返事をする力も残っていない。

流石に……負けたか……。

 

「何……何やってんのよ!ライアアアアアアアア!」

「リッカ……?」

「約束したでしょ!決勝戦、勝つって!戦士なら、簡単に自分の言葉取り消してんじゃないわよ!勝つ手段が無いなら、自慢の脳みそ使って考えなさい!」

 

リッカの叫びに、会場が静まり返る。

 

「ライア、僕の勝ち――!」

「そうだな……約束を破ったりしたら……後で何されるか分かったもんじゃないしな……」

「す、凄いね……。まだ立ち上がるのか君は」

「当然だろ?お前から喰らう攻撃よりもリッカの制裁の方が何万倍も怖いんだよ……」

 

もう金一封なんてどうでもいい、ただ、彼女との約束を果たす。それだけだ。

 

「立ち上がるライア選手!しかし対するジャーロン選手はほぼ無傷!はたしてここから逆転する手はあるのでしょうか!」

 

ねえよそんなもん……。心の中で悪態をつきながらも、頭を働かせ思考を続ける。

さっき確認した通り、俺の今までの攻撃はどれも通用しない。そうなると、ジャーロンが知らない技を打つしかない。それに該当するのは二つ。一つはマテリアルバースト。だが、当時と違い、あの技は青い炎の完全下位互換となってしまっている。使う意味は薄いし、そもそも魔法石が無い。

もう一つは、炎属性を付与した剣技。だが、俺の手元に炎属性の魔法石は無い。

 

駄目なのか……ここで、負けるのか……?

 

――解放せよ……

 

何だ?頭の中に声が響いてくる。

 

―――解放するのだ……力を……

 

力なんて今の俺にはもう……

 

――越えられぬ理あるのなら……その上を行くのだ……。

 

越えられぬ壁の……上……そうか!

 

「ななな、なんだこれはあああああ!」

「ライア……!」

「ま、まさか君は……武器に……」

 

誰かが喋っている……でも、それは俺には聞こえない。ただ……目の前の勝負に勝つんだ…!

 

そんな俺の意志を表すかのように、緑星の剣には、青い炎が宿り、高熱を発している。

 

「武器に……スピリチュアルマジックを……?」

「ななななんと!この現象の正体は、武器に宿ったスピリチュアルマジックだあああああ!」

 

 

「うそだろ!?スピリチュアルマジックって武器には宿せないって本に書いてたよなあ!?」

「あ、ああ。通常武器に宿せるのはマテリアルマジックだけの……はず……だけど……」

「いや、でもあのライアってやつの剣に宿ってるのはどう見てもスピリチュアルマジックだろ!」

 

周囲から驚きの声が上がっているようだ。だが、今の俺にはそれさえも聞こえない。

ただ、地面を蹴るだけ。それだけでいい。

 

「はああああああああ!」

「ぐっ!」

「おおっととお!形勢逆転!形勢逆転です!青い炎を纏ったライア選手の剣に、ジャーロン選手は防御がやっとだあ!」

 

今自分が何をしているのか、どこにいるのか、それさえもがだんだんとわからなくなってゆく。それでも、剣を振るという動作と、その必要性だけは強く頭に残っている。

剣を振った時の風の音、剣がぶつかり合う時の金属音。すべてが心地よい。

ただ、剣を振るだけでいい。それが、勝利への法則なのだから。

 

「うおおおおおおおおおお!」

 

そして、剣は、目的を成し遂げた。

 

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