あいも変わらず疲れを知らぬセミの大合唱が聞こえてくる。今日も暑い日になりそうだ。
「そろそろみんな来るころかな……しかし暑いね。夏だから当たり前だけど……」
うちわで仰ぎながらドラえもんはのび太の方に視線を流す。そこには勉強机にうなだれているのび太の姿があった。
「……さすがに昨日はすごかったようだね」
他人事のようにドラえもんは言った。昨日、スネオの家から戻った早々、ママのカミナリが落ちたのだ。わすれろ草の効果は、そんなに長く続かないためである。
それでも、今日の午前中からみんなで集まって自由研究の課題をする件に関しては、勉強という一環で許してくれた。ただ、その許しを得るために、のび太は夏休みの宿題である算数のドリルを朝までに十ページ進めておく必要があったのだ。
「頭がどうにかなりそうだ……」
「のび太くんだって、やればできるじゃないか。まぁ、ほとんど間違ってるけど……」
返事をしないのび太を見て、ドラえもんは一息ついてから言った。
「しかし、ムー大陸の存在を確かめるなんて面白いじゃない。ぼくもあの大陸についてはよく知らないんだ」
「へ〜……そうなんだ〜……」
関心のないのび太の返事にドラえもんもさすがに、ダメだこりゃ、という表情になった。
「のびちゃーん! みんないらっしゃったわよ!」
「しずかちゃんたちだ! はーい!」
ママからの言葉を聞いた途端、のび太は椅子から飛び降り、みんなを迎えに急いで階段を降りていった。その様を見てドラえもんは口を開けてやや呆れたように言った。
「なんだ。元気じゃない。さて……」
◇
「いらっしゃい。さぁ、あがって、あがって」
「おじゃましまーす」
みんなが玄関を上がっているその時「ピンポーン!」という音が聞こえた。
「あら、また誰か来たのかしら?」
廊下を過ぎ二階にあがる子供たちを見送ったママが、その音に反応して再び玄関の方に向かった。
「……へんねぇ、誰もいないわ?」
ママはそう言って不思議がりながら居間に戻っていった。
◇
「やあやあ、みんないらっしゃい」
「今日はよろしくね、ドラちゃん」
「大船に乗ったつもりでお任せください」
「ドラえもんにそう言われると、なんか少し不安なんだけど……」
「ひみつ道具の故障とかな。ほんと頼むぜ? ドラえもん」
「む? なんだとー! 失礼な!」
『あはははは』
「まったくもう。時間旅行の時はいつもトラブルに巻き込まれるから、今回はしっかりと準備してあるんだ。だから安心して自由研究に取り組むといいよ」
自信ありげなドラえもんの発言に、みんなは少し安心した。
「大体一週間位の滞在を考えてるけど、こっちに戻ってくる時間は、今から二時間後に設定しておくので親に心配をかけることもないからね」
「そこはいつもの時間旅行と一緒ね」
「そういうこと」
「じゃあ、みんな順番に机の引き出しに」
「オッケー!!」
しずか、スネオ、ジャイアンと、次々に机の引き出しに靴を持って飛び込み、全員がタイムマシンに乗り込んだ。
「ては、時間を一万二千年前にセットして……と」
「そんじゃいっちょ、ムー大陸とやらを見つけてやっか!」
「そうだね! ジャイアン!」
「素敵な大陸だといいわね」
「ぼくが絶対最初に見つけてやる!」
「よーし! 出発ー!」
『おー!』
意気込む五人をその背に乗せて、タイムマシンは一万二千年前へと向かっていった。