ドラえもん「のび太のムー大陸伝説」   作:ノンちょろた

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◆第四章 『探索』

 みんながムー大陸のことについて、あれこれと話をしている中、ゆっくりとタイムマシンが止まった。開いた出口の先がどうやら一万二千年前の世界のようだ。

 

「一番乗りー!」

「あ、のび太くん!」

 

 言うが早いか、のび太はタイムマシンの出口にさっそうと飛び込んだ。

 

「ん?」

 

 出口から飛び出たのび太は、足元に地面がないことに気がついた。タイムマシンの出口の先は、あろうことか海のど真ん中で、周りは一面大海原が広がっていた。

 

「あわわわ……!」

『あははは!』

 

 慌てて戻るのび太をみんなが大笑いで迎えた。

 

「ったくドジだなぁ、のび太は。いきなり謎の大陸が足元にあるわけないだろ?」

「ほんとだよ。少し考えればわかりそうなもんだ」

「ちぇーっ」

 

 少しふくれるのび太。

 

「でも、海に落ちなくて良かったわ」

「やっぱりしずかちゃんは優しいなぁ……」

「それではこれを……」

 

 いつものようにポケットに手を入れゴソゴソと動かし、何かの道具を探すドラえもん。しばらくするとどうやら目当ての物が見つかったようで、自信ありげにその目を輝かせた。

 

「ただの帆船!」

 

 海に投げ込まれた帆船はみるみる大きくなり、その甲板にドラえもんが真っ先に乗り移る。安全を確認すると、ドラえもんはみんなに呼びかけ迎え入れた。

 

「おおー! けっこういい船だな!」

「帆船なんておしゃれね」

「船ならクルーザーに乗ったことがあるぼくが船長かな」

「そうだね。じゃあ船長はスネオくんに頼もうかな」

 

 タイムマシンの出入り口にブイを浮かべ終わったドラえもんは、自慢家に胸を張るスネオに振り返りながら頼んだ。

 

「任せてよ!」

 

 ドラえもんの言葉に気を良くしたスネオは、自分の胸を叩いてそう返事をした。

 

「おれは何をすればいいんだ?」

「ぼくは? ぼくは?」

 

 ジャイアンとのび太が間髪入れずにドラえもんに詰め寄るように質問を投げかけてきた。

 

「まぁまぁ、細かい役割分担は後にして、とりあえずこの大海原を見ながらお昼ご飯にしようよ」

『さんせーい!』

「そうと決まれば……グルメテーブル掛け!」

 

 ドラえもんによって甲板の床に広げられたグルメテーブル掛けの周りを囲むように、のび太たちも次々に腰を下ろした。

 

「さ、みんな。好きなものを頼んで」

「ぼくカレーライス!」

「ぼくは上うな重!」

「おれはカツ丼が食いてぇ!」

「あたしはナポリタン!」

「じゃあ、ぼくはどら焼き……と」

 

 みんなが食べたいものを言い終えると、目の前に美味しそうな食べ物が次々と現れた。食べ物からあがる湯気と、風に乗って漂う美味しそうな匂いが、全員の食欲を大いにそそった。

 

「では!」

『いただきまーす!』

 

 塩の香りがする大海原での食事という、とても贅沢な環境が手伝ってか、みんなすごい勢いと早さで食べ終えた。

 和む雰囲気の中、のび太たちを乗せた帆船は、ムー大陸があったとされる方向へ舵を切り、タイムマシンの出入り口のあるブイからどんどん離れていった。

 

 ◇

 

 ドラえもんたちが出てきたタイムマシンの出入り口から少し離れたところに乗り物の姿が一つあった。その乗り物は船のように水に浮き、やや大きめで白く丸みを帯びた形をしていた。

 翼のように見える場所の上にある手すりの傍には一人の男が立っていた。その男はドラえもんたちを見送るかのように、徐々に離れていく帆船をジッと見続けていた。帆船も小さくなり、その目視も難しくなった頃、もう一人の男が乗り物の中から現れ、見送っている男の近くに寄っていった。

 

「上官殿。タイムマリンの計器チェック完了致しました」

「ご苦労」

「……」

「なんだ?」

 

 何か言いたげな素振りを見せる部下に対して上官は切り返して質問した。

 

「あの帆船を追跡しなくてもよろしいのですか?」

 

 上官と呼ばれるその男は、部下の方を振り向くこともせず、手すりに乗せた肘に体重を預け遠くの帆船を見ながら答えた。

 

「あぁ。我々はその時が来たら動けば良い。それまでは待機だ」

「ハッ!」

 

 指示を受けた部下は敬礼の後、持ち場に戻るべくタイムマリンの中に戻っていった。

 

「さて……彼らにとって忘れられない大きな経験となるのかな……。あのような子供たちが歴史を大きく変える存在だとは……」

 

 上官は船の中に戻る間際、もう一度ドラえもんたちの帆船の方に顔を向けた。

 

(彼らの旅の無事を祈ろう……)

 

 そう心で呟いた上官は船の中にその身を運んだ。扉が閉じられてから程なくしてタイムマリンも静かにその姿を消した。

 

 ◇

 

 昼ご飯を食べ終わったのび太たちは、ドラえもんによって決められた各役割を果たすよう行動していた。と言っても目的がムー大陸の発見のため、操舵を握るスネオ以外は皆、双眼鏡を使って周囲を見回して報告するという単純なものだ。

 ジャイアンはマストに登り高台から遠方全周を。のび太、ドラえもんはそれぞれ左右を。しずかは後方を見回していた。

 存在が不明なものを探し続けるというのはかなりの苦痛を伴うもので、三時間程度でみんなに少しづつ飽きが出始めてきた。太陽も沈みはじめ日が暮れてきたため、全員甲板に集まり報告会を行った。

 

「本当にあるのかな……」

 

 船首に居ながらも何の変化も感じ取れなかったスネオが思わずボヤいた。

 

「きっとあるよ」

 

 最初の勢いがどこかへ消えてしまったかのように覇気を感じられないトーンでのび太は答えた。

 

「見渡す限りずーっと海でつまらないんだよなぁ。 クジラとか恐竜でもいればなぁ」

「ジャイアン! 恐竜なんて出たら大変だよ! これはただの帆船で、防御対策とか何もされてないんだから!」

 

 慌ててドラえもんが制止した。

 

「存在しないことを証明するのって……具体的にどうすればいいのかしら」

 

 困った顔をしながら、しずかさらに続けた。

 

「存在したそれらしい形跡でも見つかれば、存在したのかもしれない、で終わる話なんだけど……存在しないことを証明するのって、とても難しいことなのね」

「一週間探して何もなかった。だから存在しない……だと、何もしてないのとあまり変わらないね……」

 

 初日からみんなの意気消沈ぶりを見かねたドラえもんは、一つの提案を行うためにポケットに手を入れた。

 

「マルバツうらない!」

「なんだいそれは?」

「この道具はどんな質問でもマルかバツで答えてくれるんだ。今回の場合、ムー大陸が存在するかを聞けばいい」

 

 みんな息を飲んだ。

 

「じゃあ、聞いてみようか」

 

 ドラえもんが質問しようとした時、全員がドラえもんを止めた。

 

「待って! ドラちゃん!」

「そんなのダメだよ!」

「やめろ!」

「そうだ! そうだ!」

 

 ドラえもんは意外な反応に驚いて振り向いた。のび太たちも全員、自分たちのとった行動に驚いて互いに向かい合っていた。

 

「どうしたの?」

 

 ドラえもんの問いかけに対して誰も答える様子もなく、少しの間沈黙が続いた。

 

「存在するとわかれば、やる気も出ると思ったんだけど……」

「そうかもしれねぇ」

 

 ジャイアンが答えた。

 

「じゃあ、どうして?」

 

 全員が顔を見合わせてうなずき、発言をジャイアンに委ねた。

 

「あるとわかってる宝探しは、もうその時点で宝探しじゃねえ! ってこった」

 

 みんな、真剣なジャイアンの発言にうなずいた。

 

「言い出したわたしが弱気なこと言って……ごめんなさい」

「しずかちゃんが謝ることなんてないよ。軽く考えていたぼくらが悪いんだ」

「すぐに結果が出ないからって飽きてるんじゃ、世紀の大発見なんてできっこないもんね!」

「おう! やるしかねえな!」

「偉い!!」

 

 ドラえもんが大きな声でそう言うと、のび太たちは虚を疲れたのか全員が一瞬身を動かすほど驚いた。

 

「そこまで考えているのはとてもすごいことだよ! 実のある苦労というものは、これからきっとみんなの大きな力になると思う!」

「……ドラえもんに褒められるってのもなんだけど……悪い気はしねえな」

「ふふふ、たけしさんたら」

「じゃあぼくは、きみたちが大陸探しに集中できるような状態を作ることに専念しよう」

「と言うと?」

「ただ探すだけじゃ辛いのは当たり前なんだ。だから楽しみながら探すとしよう」

「どうやって?」

「それは明日のお楽しみ。今日はもう暗いから、夕飯を食べて早めに休もう」

 

 そう言いながらドラえもんは、船を停泊させるためにいかりを沈めに行った。船のいかりを沈めながらドラえもんは、みんなの「答えを聞かない」という姿勢を喜んでいた。

 実はドラえもんは出かける前にマルバツうらないを行い一人その答えを知っていた。答えを教えることもできたし、みんながそれを望むのならばそうしようとも思っていた。それだけ「あるかどうかわからない」ものを探すというのは強い心が必要だからだ。みんなの真剣な気持ちを確認でき、ぼくもサポートを頑張らなくっちゃ、と改めて思うドラえもんだった。

 

「おまたせ。さぁ、ご飯にしようか」

『さんせーい!』

「お腹ペコペコだよ」

 

 みんなはドラえもんの言うとおりに夕ご飯を食べ、早めに寝ることにした。

 

「日が昇るのも早いから、明日は早朝から行動しよう!」

「おう!」

「わかった!」

「じゃあ、おやすみ~」

 

 そして二日目の朝が来た。昨日に続き快晴の今日もまた、日中は暑くなりそうな予感がした。探索の前にドラえもんから集まって欲しいと要請を受けていたのび太たちは、朝食を手早く済ませドラえもんの下に集合した。

 

「みんな集まっまたね? それじゃ……家の感じ変換器!」

「それって家じゃなくても大丈夫なの?」

「住居として扱われるものなら何でも大丈夫。楽しい家のプレートを入れて……と」

 

 ガタンゴトゴト……。

 何か変化が起きたように帆船が大きく揺れた。

 

「これで?」

「うん。楽しみながら探せると思うよ。じゃあみんな! 今日の探索も頑張ろ~!」

 

 ドラえもんの掛け声でみんなはムー大陸の探索を開始した。望遠鏡で物探しゲーム、楽しいトイレ遊び、操舵の操作調整遊びなど、色々な遊びが「家の感じ変換器」によって提供された。遊びながらも大陸の発見はできるし、何よりそんなに突然接近してきたりする対象でもないため、比較的ゆとりを持って探すことができる点は恵まれていた。

 各自の遊びに飽きが来たら、みんな役割を交換し、別の遊びをしながら大陸の探索を続けた。しかし、結局大陸は見つからないまま、二日目が終わろうとしていた。

 

「結局、今日も見つからなかったかぁ。残念」

「でもドラちゃんのおかげで楽しく探すことができたわ。ありがとう、ドラちゃん」

「いやぁ」

 

 頬を赤らめ頭を撫でながら照れるドラえもん。

 

「しかしよ、ムー大陸って確かすっごく大きいんだよな?」

「うん、日本よりも大きいとされてるね」

「そうだね」

 

 ジャイアンの言葉を聞き、ドラえもんがポケットから一枚の地図を出して広げた。

 

「これがこの時代の世界地図。で、これがムー大陸……と予想されるものだね」

「大きいなぁ!」

「それでドラえもん。俺たちは今、どこら辺に居るんだよ?」

「えーっと、タイムマシンの場所がここで……進んだ方向、距離を計算すると今いるのは……ここだね」

 

 ドラえもんが地図にしるしをつけた。

 

「え!?」

 

 みんなは驚いた様子だ。それはしるしをつけたドラえもんも例外ではなかった。その二つの場所を結ぶと、ムー大陸の海岸線と重なるからだ。

 

「どういうこと?」

「何かの間違いじゃないの?」

「だって何にも見えないぜ?」

「……そ、そうなんだよね……」

 

 ドラえもんも少し困った顔になった。ドラえもんは、最初から海岸線に沿って移動すれば比較的見つけやすいんじゃないかと考えていたのだが、どうにもアテが外れた格好となった。

 

「この大きさなら、見落としなんてないだろうしなぁ……」

 

 のび太の言うことももっともだ。

 

「じゃあ、何で何にも見えないんだよ?」

 

 誰かに向かってというわけではないが、ジャイアンは少しいらつきながら問いかけた。その問いに全員が口を閉じ、うーん……と唸って答えた。

 

「でもさ、そんな簡単に発見できるなら謎になんてならないんじゃない?」

「スネオさんの言うとおりだわ。きっとその謎があるから発見できないのよ」

「どんな謎なんだろう?」

「消えることができるとか?」

「そんなことができる大陸なんて発見できっこないよ~」

「例えだよ、例え」

 

 落胆したのび太を心配するかのように、スネオは自分の意見を自ら打ち消した。

 

「でも、さすがに謎の大陸と言うだけあって簡単には行かないね」

 

 真剣な顔つきで何かを考えているドラえもんを夕日が横からさしていた。

 

「明日は少し探し方を変えてみよう。空や海の中も調べた方が良さそうだ」

「うん」

「そうね」

「だな」

「そうするしかないか」

 

 できることは何でもやってみよう。みんなそう考え、ドラえもんの意見に同意した。

 

「じゃあ、明日また頑張るということで、今日も夕ご飯を食べて早く寝よう!」

「明日に備えなくちゃね」

「意地でも見つけたくなってきたな!」

「ほんと、ほんと」

「よーし! 絶対に僕が見つけてやる!」

「お!? 大きく出たなのび太。なら競争といくか?」

「望むところだ!」

「その意気だよ、のび太くん! みんな!」

 

 探索方法を変えることで明日への期待を膨らませたドラえもんたち一行は、早々と夕食を済ませ眠りについた。一面満天の星に埋め尽くされた夜空は、明日の天気も快晴であることを語っていた。

 こうして二日目は終わった。

 

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