天使少女の演習記録   作:奇稲田姫

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とりあえず2人目。


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2戦目 VS ベルトーレ・アプリコット

初戦(VS ルビート)を制した翌日。

私は再びこの練習用擬似空間に足を踏み入れていた。

 

ただ、意図的にでは無く強制的に。

 

理由は簡単。

最近仕事をサボり気味で引きこもり出した私に向けて、現熾天使の一角を担う親友から直々にお仕事命令が下ったためだ。

 

流石にサボり気味なのは悪いと思っているが、如何せんこの時期(夏)は暑いのだ。

それは天界だろうと地上だろうと変わらないうえに、どちらかと言うと白が基調の建物が周りに数多く存在しているため地上や魔界に比べると太陽光の反射が凄まじく上からも下からもジリジリと熱波が襲ってくるのだ。ただでさえ年中反射によって眩しいんだから勘弁して欲しい。

そんな思いがつい最近爆発しまして、室内は天国という事を改めて知ってしまった私は前述のように仕事をさぼるようになったわけだ。

 

そんな事で頭の中でグルグル埋めていると、擬似空間に歪みが生じはじめ、本日もまた1人この意味のわからない腕試し大会の参加者が訪れようとしていた。

歪みは次第に大きくなっていき、不意に紫を帯び始めた。その直後、1人の悪魔の少女がその手に持った巨大な武器(エモノ)で空間を切り裂きながら現れた。

 

「げっ……。」

 

その姿を見るや否や、ほんとに今すぐにでもこの場から立ち去りたい衝動に駆られた。

 

「ん?おぉ~、これが空間転移か~♪ベルさん初めてだよ♪こんな経験できるなんて~♪おぉ神よ~、まだベルさんのことを見放してはいないのだね?」

 

陽気な声とともにわざとらしく神に祈るその姿。

 

気持ち薄めの紫の髪を両側でツーサイドアップにまとめ、黒基調のワンピースに紫の宝石が埋め込まれた容姿をしている少女だ。

しかし、そんな彼女の最大の特徴はその右手に携えた巨大な鎌だろう。

兵種はデスサイズ。

肉体だけでなく精神までも刈り取るともされる武器だ。

 

と言うか、なんで悪魔が神に祈りを捧げてるわけ?

届かないわよそんなの!

 

「おお~じ~ざす~♪…………ん?あれ?君は…………あぁ~♪はいはいはい♪()()()の天使クンじゃないか~♪あらあらこんなに大きくなられて~♪おばあちゃん嬉しい、本当に嬉しいよ~♪」

 

「…………。」

 

「あぁ、この世を去る前に成長した孫の姿を見れて、あたしゃ幸せ者…………ウェッフ……ウェッフ……」

 

これまたわざとらしく腰を折って鎌を杖がわりに咳き込む仕草を見せる。

 

「…………そんなことはいいから、なんであんたがここにいるの?……ベリト。」

 

「おやおや、合ってるけど合ってな~い。私はベリトであってベリトでな~い♪もしかしたら、炎を扱う業火の処刑人、ハウレスかもしれないし~♪はたまた、戦争大好き戦闘マニアのハルファスかもしれないよ~♪そもそも、この場所にすら()()()()()()()のかも~♪あははは♪」

 

喋りながらころころと表情やポーズを変えながら今日の相手はひたすら喋る。

 

「そうっ!まさしくっ!私は…………?私は?あれ?あれれ?私はいったい誰?うわあああああ♪わ~た~し~は~だ~れ~だ~♪」

 

彼女は、軽くニタつきながら両手で頭を抱えて叫びながら背中を沿って見せた。

 

「はぁ、だから嫌なの、あんたは。前座が長い。」

 

「ノンノン、それは芸を嗜むものに対しては禁句だよ禁句♪主天使クンだって言って欲しくないことの一つや二つあるでしょ~♪例えば~…………ベッドの下のエr────」

 

「わあぁぁぁあ!!!!!!////ストップストップ!!」

 

あ、危ない!

長年かけて下界から回収した私秘蔵のお宝を全部暴露される所だった……。

 

……やっぱりこの悪魔といると調子が狂う。

 

「はぁ、はぁ、で?そろそろ本題に入りたいんだけど?」

 

「ん?本題?……あぁ、そうそう、ベルさんの出生の秘密だよね~♪あれはそうだなぁ、どこから話せばいいものか~♪」

 

「違うわよ!あんたがどうしてこの空間にいるのかってこと!そろそろいい加減にしないと今ここでその首と胴体を切り離すよ!バカピエロ!!」

 

そう迫ると当の本人、バカピエロことベルトーレ・アプリコットはあははと苦笑いを浮かべた。

 

「あはは、ごめんごめん。だから、そんなに怒らないでおくれよ~♪そんな時はベルさん渾身の小話を────」

 

「(チャキ)」

 

「────しない方が良さそうだね。」

 

「やっとわかってくれた?」

 

「いやぁ、いつも通り実にからかいがいのある君でいてくれてベルさんは嬉しいよ。」

 

「────そろそろ斬っていいかな?」

 

「斬られるのはごめんだよ~♪なんせこの世の中にはベルさんのことを待っている心の優しいお客様が待っているのだからっ♪あぁ、もしも、もしもベルさんの首と胴が喧嘩なんてしてしまったら、もしも演技が出来なくなってしまったらっ!ベルさんの演技を楽しみにしてくれた観客のみんなが悲しんでしまう!ベルさん、なんで演技できなくなってしまったんだっ!ベルさん、どうして舞台に顔を出してくれないんだっ!涙で濡れた瞳を腕で拭う観衆の姿が目に浮かんでくるよ~。あぁごめんよベルさんのことを楽しみに見に来てくれた観客の諸君!ベルさんは、ベルさんの首と胴は喧嘩をしてしまってそれぞれ違う道を歩んで行ってしまったんだ!おぉ神よ!首と胴の喧嘩を止めることの出来なかったこの哀れな悪魔を許しておくれ~♪」

 

さながら教会の修道女の如く胸の前で手を組んでヨヨヨと泣き真似をするベルトーレ。

 

…………。

 

これだから嫌なのだ。

 

問と答えの論点が微妙にずらされるこの感じ。

どんな手を持って掴みかかったところでその隙間をスルリとそれこそ流水を掴むかの如くすり抜けられて行くこの感じ。

焦れったいしもどかしいし…………はっきり言ってイライラする。

 

今だって、私は「なぜベルトーレがこの空間にいるのか?」と聞いた。

まぁ、ここにいる時点で答えは一つしかないはずなのだが、いつの間にか「首と胴が離れてしまったらどうなるか」という話になってしまっている。

 

今だって色々なポーズや仕草に切り替えながらも口の動きは一向に止まる気配すら見せてないし。

 

あぁ、イライラする。

 

よし、斬ろう。

 

こいつが調子に乗ってペラペラ喋っているスキに…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………コイツに勝つにはその方法しかない!

 

 

 

 

 

 

 

 

そう決心し、一気に彼女の背後を取り、右手に持った逆手のショートブレードを右から思い切り振り抜いた。

 

その一撃は陽気に話すベルトーレの右脇腹にクリーンヒット………………するはずも無く、何故だか知らないがベルトーレの身体をすり抜けた。

 

「うっそ!?」

 

思いもよらぬアクシデントに一瞬だけバランスを崩した。

 

「おやおや、君は意外と記憶力は悪いほうなのかな?ベルさんが最初のほうに言った言葉をもう忘れてしまったのかい?これだから天使ってみんな頭が固いって言われるんだよ。」

 

「うるさい。私をそんなのと一緒にしないでくれる?」

 

「怖い怖い♪そんな怒ってばかりいるとシワが増えるよ♪」

 

「大きなお世話よ!」

 

「よっと。本体の回収完了〜。さて、大きなお世話が嫌なら小さなお世話でもしてあげましょ〜かね♪」

 

再びショートブレードを構え直して肉薄する。

今度はベルトーレも右手の鎌を左腰のあたりで構え、迎撃してきた。

 

二人の距離が0になる。

そして、右手のブレードを振りぬこうと力を込めたその刹那、左目の視界の端から振るわれる鎌の先端がほんの一瞬だけ────────揺らいだ。

 

「っ!?」

 

もはや反射神経。

やばいと思った瞬間無意識に頭を屈める事で「右から」襲ってきた鎌の刃が寸でのところで頭上を通過した。

 

「へぇ、アレを避けるんだ~♪お主……あの時から腕を上げたのぅ♪あはは♪」

 

「当たり前でしょ!」

 

「そういえば、今日はあの能力…………「同調者(シンクロゲイザー)」だっけ?は使わないのかい?」

 

「前回それで痛い目を見てるから!今度は私が痛い目を見せてあげる番!」

 

「それはそれは。道理で今でも気を緩めることなくベルさんのこと観察してるわけだ♪いやぁ、有名人は辛いな~♪あはは♪」

 

「言ってなさい!」

 

…………バレてる。

やはりコイツ相手に「隠し事」とか「嘘」と言った分野で勝負を挑むのは無理があったか。

しかし、そうでもしないとこいつの能力をコピー出来ない。

それが出来ないとなると既に私の勝機どころか引き分けにすら持っていくことは出来なくなるに等しい。

 

何故なら、素の状態での戦闘能力だけで勝負をすれば結果は目に見えてるのだ。

純粋な戦闘スキルですら私はこの悪魔には遠く及ばない。

 

勝つためには、いや、最悪引き分けに持ち込むためには彼女の能力を完全に同調出来ることが絶対条件なのだ。

 

それに、同じ相手に2度負けるなんていくら引きこもりの私とはいえ、プライドが許さない。

 

以前にも1度彼女とは相対した時がある。

あの時はまだ彼女が今熾天使の地位に着いている親友と一緒に世界各地を旅して回っていた頃だ。

 

天使が悪魔なんかと一緒にいるのはおかしい!洗脳されてるに違いない!だったら、私が目を覚まさせてやる!

 

なんて意気込んで今は親友のサポートを行っていた現智天使の少女の静止も聞き入れず飛び出していき、見事に返り討ちにあったと言う話だ。

自分の能力に依存するあまり、いとも簡単に能力の弱点を突かれ、成すすべもなく敗北した。

いや、恐らく能力の弱点じゃない。

私自身の弱点に付け込まれたのだ。

 

「同調者(シンクロゲイザー)」。

戦う相手の仕草や思考、霊力回路や魔力回路、戦闘スタイルと言ったものを瞬時に解析し自身の霊力を使って完全に再現できるものだ。故に相手が強ければ強いほどコピーした時にもとの力よりも何倍にも膨れ上がるが、逆に相手が弱ければ弱いほどそれに伴って私の力も基準値よりも大幅に下回る。それでも私は天使の中でも中級第1位に属する天使だ。相手の心理や行動を読む術は心得てる。この弱点が分かろうが、どんなに自分のことを弱く見えるように振舞おうが、全て私にはお見通し。

 

だが、こいつは違う。

 

内側が全く読めないのだ。

 

どの情報が真実で、どの情報が偽りなのか全く分からない。

 

それが彼女、ベルトーレ・アプリコット最大の強みであることはその敗北のあとから知ったことは他言無用、ここだけの秘密にしてもらいたいほど。

 

そう、だから実力の底が分からないからその時の彼女の実力を真と決めつけて同調したのが敗北の原因だった。

 

「いいじゃないか〜仲良く行こうよ。ユーちゃんの頼み事だからちゃんとやるけど。」

 

「頼み事?」

 

「そうそう。主天使クンを鍛えてあげてってさ。」

 

「どういう意味?」

 

「さぁ?天使の事情は悪魔のベルさんには理解出来ませんからね〜。ま、もう1度君と戦いたくなったから、というのも少なからずあるんだけどね〜♪それに、偶にはいいでしょ♪ストレス発散も兼ねて♪」

 

「ふん!その余裕の顔もいつまで持つかしらね!」

 

再び互いの距離が無くなり、右手のブレードを振るう。

ベルトーレも今度は私から見て右から鎌を振るってきた。

が、私はその仕草には目も向けず、一気に急ブレーキをかけてその勢いを殺さぬまま真上に跳躍した。

 

その足元を私から見て右から振るわれた鎌が通り過ぎていく。

しかし、前にいるベルトーレからではなく、いつの間にか背後をとっていたベルトーレの本体が放った一撃だった。

 

「うん、なんでもかんでも能力に依存しなくなったみたいだね?前回に比べるとだいぶやりづらいかな~♪はは♪」

 

「そりゃどうもっ!」

 

私は空中で瞬時に体勢を立て直し、ベルトーレに向かってレーザーを4本撃ち込む。

 

それを軽くフットワークで避けながら、ベルトーレも空中に飛んできた。

 

それから、突進してくるベルトーレと2、3度斬りあっては距離を取り、また斬りあっては距離を取りを繰り返しながら互いの位置が目まぐるしく入れ替わっていく。

 

「偶にはこういう緊張感のある勝負も楽しいもんだ♪じゃあ、天使クン♪よ~くおじさんのやることを見ておくんだよ~♪」

 

「なにがおじさんよ!」

 

「まぁまぁ♪いくよ♪」

 

そう言うとベルトーレは一気に急降下して地面に着地すると瞬時に鎌の先端を器用に使って自分の周りに円を描く。

 

「君には初のお披露目だね♪幻々遊夢・擬似太陽!!」

 

そう詠唱し終わったベルトーレの足元から一瞬にして紫の光が立ち上り、ベルトーレの頭上に脈動する紫色の球体が出現した。

 

直径にして……………………軽く5m位?

 

「ばっかじゃないの!!!?」

 

「馬鹿とはなんだい馬鹿とは。いいじゃないか、()()()を見せてあげたんだから♪」

 

「奥の手?」

 

「そう、奥の手♪じゃあ、頑張って避けて~♪よっこい……せ~っと!!」

 

そう意味深な笑みを浮かべなから答え、紫の球体を持ち上げるように掲げていた左手をまるで野球ボールを投げるかのように振りかぶって…………投げた。

 

「こ、こんなのどうやって避けろって!?なんか嫌な予感がするけど…………やるしかない!「同調(シンクロ)」!!!幻々遊夢・擬似太陽!!!」

 

「(ニヤリ)」

 

私は考える余地もなくベルトーレと同調し、ベルトーレが投げた紫の太陽と全く同じものをぶつけて相殺した。

 

「いやはやすごいすごい♪いやぁ、すごいな~♪ベルさんのアレまでも真似しちゃうなんて♪(パチパチ)」

 

「奥の手を出し切ったのならこれでイーブンよ。これで私の負けは無くなった。」

 

「あっ!そうか、しまった~。まさか鎌使いのベルさんが鎌をかけられた?そんな馬鹿な~」

 

「降参するなら受け付けるわよ?」

 

「そうだねぇ~。じゃあ、次の一撃で決まらなかったら降参しようかな~♪」

 

「ふん、既にあんたの手の内は全て解析済みなのよ!何をしようがすべて相殺してやるわ!」

 

「そう?じゃあ、やってみようか♪」

 

そう不気味に笑むとベルトーレが先ほどと同じ仕草をする。鎌の先端で地面に自分を中心にして円を描き、詠唱する。

 

当然同じタイミングでシンクロした私も詠唱する。

 

ベル「幻々遊夢────」

ドミノ「幻々遊夢────」

 

そして、二人同時に左手を頭上に掲げ、足元の円から紫色のエネルギーがその左手の先に収束していく。

紫の球体は次第に大きく成長を遂げ、お互いに直径が5mほどに達しようとしていた。

それが同時にドクンと脈打つ。

 

もう1度ベルトーレと視線があったその刹那。

 

ベルトーレが口を不気味に歪ませた。

 

 

 

 

ベル「──擬似『()()』!!」

ドミノ「──擬似『()()』!!」

 

 

 

 

一瞬。

本当に一瞬の出来事。

 

この時までは私の頭上にもベルトーレの頭上にも全く同じ紫の球体が浮かんでいた…………はずだった。

 

問題はその後。

 

ベルトーレはこれの事を「奥の手」と言っていた。

だからそれ以外の技はない…………はずだった。

 

またか…………。

 

また、同じ失敗を繰り返した…………。

 

興奮状態になった私は彼女の言ったことをそのまま鵜呑みにしてしまった。

そこが今回の敗因。

 

ベルトーレの頭上の球体が一気に弾け、そこから流星を模したような無数の火炎弾が降り注いでくる。

 

頭上に球体を顕現させたままの私に避けることなど出来るはずもなく、ノーガードのまま殆どの弾が直撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その爆煙が晴れた頃には、自慢のデスサイズを軽やかに踊らせながらスカートの端を軽く掴んで優雅にお辞儀をする悪魔の目の前で私はダメージによって動けなくなった体の再生に専念するしか出来ることがなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドミノ VS ベルトーレ

 

 

 

勝者 ベルトーレ・アプリコット

 

 

 

 




2人目です←


ついでに簡単な紹介を←


名前:ベルトーレ・アプリコット(真名)
性別:女
能力:大嘘つき
種族:悪魔
武器:デスサイズ
設定:過去に1度ドミノに圧勝している悪魔で、悪魔名はソロモン七十二柱序列28番に位置するベリト。幻、幻影といった現実とは異なる、いわば『嘘をつく』能力に長けている。過去のとあるきっかけによって人間から悪魔へと昇華した際、生きている限り嘘をつき続けなければならないという運命になってしまった元羊飼いの少女。そのため、基本的に表情や口調など表に出ている部分の大半は嘘。

このキャラの設定はまだまだあるけどとりあえずこの辺で切っておく←

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