IS 〜夢のような旅路〜   作:フレイア

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沢山評価ありがとうございます(唐突)。やる気にも繋がっていくので評価はめちゃくちゃありがたいです(正直)

では12話をどうぞ!



#11 それ手で防げるものじゃないでしょ

「こな…くそぉ…!」

 

 確かに手応えはあった。搭乗者のことを思って峰打ちの形になってしまったが、それでも機能を停止させるには充分だった。

 だが、だがだ、まさか『前のめりになりながら左腕のシールドで零落白夜の攻撃を受け止める』など誰が予想しただろうか。

 

「マジかよ…」

 

 さすがに零落白夜の剣筋を左腕一本で受け止めたから<天照>に余裕は更々見えなかったが、それでも一夏は目の前の事実に愕然としていた。

 何がいけなかった?峰打ちにしたこと?それで手を抜いてしまったことか?もう少し思い切り斬りつければよかったのか?もしかしたらフルパワーでは無かったかもしれない。

 

 しかし<天照>はそんな一夏に同情してはくれない。

 一夏から強引に雪片弐型を奪い取った<天照>は無用とばかりに地面に投棄。

 

「ありがたーく使わせてもらうよ」

「アイツっ!」

 

 さらにそれを拾い上げた般若女は刃こぼれを起こしたヒートホークを収容し、代わりに雪片弐型を振るいながら箒へと襲いかかる。

 

「しっかりしなさい!バカ一夏!」

 

 呆然と立ち尽くす一夏に対し鈴は激昂。その一声で正気に戻った一夏は補助動力を最大限に引き出して<天照>や般若女から距離を置く。

 

「スマン、なんとか大丈夫だ」

「ホントでしょうね」

「あぁ、本当だ」

 

 とは言ったものの、虎の子の零落白夜を使用してしまい、エネルギーも僅か。万事休すである。

 

「ボクの機体のエネルギー、少しだけだけど使って」

「ありがたい、でも……」

 

 シャルロットの厚意に感謝している一夏の表情は暗い。エネルギーを受け取ったところで武器がなければ動く的でしかない。雪片は般若女に奪われ、シャルロットから渡されたアサルトライフルも戦闘の最中に落としてしまった。

 一夏は己の不甲斐なさを感じながら空いた両手に目を落とす。そして唇を噛みしめ、手を目一杯握りしめた時だ。

 

「いや…、ある」

「えっ?」

 

 自分でも気付かないうちに口から一言ポツリと呟いた一夏にシャルロットは怪訝な表情を向ける。

 

「シャル、エネルギーはどれくらいまで回復した?」

「えっと、まだ4割しか供給できてない」

「4割……充分だ」

「えっ!?ちょ、ちょっと!」

 

 そう言い切り、一夏は<白式>と<ラファール>を繋いでいたプラグを切り離す。

 動揺を隠せないシャルロットに心の中で詫びを入れながらも、一夏は不敵な笑みを浮かべていた。

 

「やっぱり男はコレじゃないとな」

 

 

 

 

「いたたた…」

 

 地面に叩きつけられた鈴は頭についた土埃をはたき落とす。

 

 正直、勝てると思っていた。決して自分が代表候補生にしても専用機持ちからくる慢心からではない。

 この場にはセシリア、ラウラ、シャルロット、箒、そして鈴に一夏と最新鋭機を駆る仲間が6人も揃っているのだ。

 

 対して相手は新型2機と<打鉄>2機の計4人。さすがに新型2機のスペックまでは分からないとはいえ人数差から見ても練度から見てもこちらが圧倒的に優位な立場なのだ。むしろこれで勝てないのは面子が立たない。

 

「こ…この…ッ」

 

 だが予想に反して鈴達は大苦戦を強いられていた。

 

 単純にして最大の誤算は『彼らが想像以上に強い』点だった。

 <天照>や<打鉄>の連携プレーもさながら、特筆すべき点は敵ながら天晴れと認めざるを得ない般若女だ。

 般若女はセシリア、箒、ラウラの3人をたった1人で相手どっている。しかも彼女達全員に少なからずダメージを食らわせながら、般若女本人は無傷ではないものの決定的なダメージと呼べる損傷は皆無に等しい。

 

 そこへ<天照>も参戦し、腕部に内蔵されたバルガン砲を連射し牽制。般若女が一夏から奪い取った雪片弐型を使いセシリアに襲いかかる。

 オマケに零落白夜を使用した一夏はエネルギーを切らし、<白式>へエネルギー供給を行うシャルロットと共に一時戦線離脱中。そして鈴はこのザマだった。

 このままでは腹の虫が収まらない。しかし自分にもISにもダメージが蓄積されてきたのか思うように身体が動かない。

 

「あのクソ緑…」

 

 ISバトルにおいて、シールド無効化攻撃という戦法がある。

 通常ISは絶対防御などのおかげで生命が危うくなる攻撃は基本全てガードされる。しかし生命に別状がない攻撃に関していえば絶対防御は発動せず、IS本体へのダメージはないが搭乗者本人にダメージを与えられる攻撃が存在する。

 

 そのためパンチやキックなどの命に関わるほどの攻撃でない方がある意味厄介なのが鈴自身の経験談。

 肉体的にキツいのは勿論なのだが、それ以上に『殴られ、蹴られている』という面で精神的に参ってしまう。実際これを食らってISパイロットから退いたという事例は何件も聞かされた。

 そのシールド無効化攻撃を般若女は知っていたのだろう、鈴へ対し嫌味なくらいにしつこくねちっこくパンチやキックを食らわせてきたのだ。殴られたり蹴られたりして戦意を喪失するほど繊細ではないと自覚している。

 しかし彼女も女の子、身体中の至るところに痛みが走り、その度に苦痛が顔に出る。

 

「このままでは終われないっての!」

 

 なんとしても一矢報いる。般若女の攻撃は鈴の闘争心にたちまち火をつけた。

 

 

 

 

 箒の剣撃を交わしながら般若女はバズーカ2丁を構え砲撃&両翼内に装備されているミサイルを一斉発射、空に幾多もの花火を作る。

 

「ジーナ1は左舷から牽制!リーヴァ2は援護を頼む」

「「了解!」」

 

 <打鉄>の搭乗者に指示を飛ばしながら般若女はバズーカの残弾を確認。見ると右手に持った方は既に弾切れ、もう片方も残り2発のみとなった。

 

「あと2発、やれるか?」

 

 ビットの射撃をすり抜け、般若女はラウラに肉薄。脇を猛スピードで通り越して一気に上昇する。

 

「このっ!」

 

 <シュヴァルツェア・レーゲン>のレールカノンが火を噴き、般若女の横を掠める。

 

 マシンガンもない、バズーカの残弾は2、替えのマガジンも全て使い果たしている。雪片弐型もいつの間にか手元から消えている。これが尽きれば、後は刃こぼれしたヒートホークでやり合うだけ。

 

 アリーナの遮断シールドが展開されているギリギリの位置で機体に制動をかけ停止。般若女はセンサーを使い状況を確認。

 自分を追いに迫ってくるセシリアと箒の姿を捉え、フッと息をつく。

 

「うん、無理だね」

 

 刹那、般若女は笑みを作り真っ逆さまに急降下を開始。驚いた箒が動きを止める。

 般若女は箒とセシリアに手が届く位置まで接近する。箒の驚愕する表情とは対照的に般若女は笑みを絶やさない。

 

「キャアッ!」

「セシリア!ぐうっ!」

 

 セシリアを衝撃が襲う。直後には箒にも同様の衝撃が襲いかかる。箒はセンサーで般若女を追う。般若女は弾切れになったバズーカを投棄。ヒートホーク片手に次なる獲物へターゲットを定めていた。

 

「敵ながら天晴れだな」

 

 見るも鮮やかなヒットアンドアウェイ。いっそ清々しさすら感じる箒がそう呟くと「そんなこと言っている場合じゃありませんわ」とセシリアからツッコミを入れられる。

 セシリアは先程の攻撃で操縦系統にトラブルが発生したのか、フラフラと地上に降りていく。

 うまく機体を動かせないセシリアをカバーするため箒がセシリアに近づいた時、地上では変化が起きていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり男はコレじゃないとな」

 

 武者震いを抑えながら、一夏はラウラと対峙する<天照>に向かって叫んだ。

 

「おい<天照>!お前の相手は俺だろ!?」

 

 <天照>はモノアイを一夏の元へ向ける。零落白夜を使いエネルギー切れを起こしていた一夏を戦力外と切り捨てていたのか、一夏の復活に若干の戸惑いを見せている。

 一夏は右拳を突き出し、不敵な笑みを絶やさない。

 

「雪片弐型がないのにどうやって戦うつもりなの?」

「剣が無くても、俺にはある意味それ以上に頼もしいコイツがあるんだぜ」

「何…?」

 

 右手で手招きし<天照>を挑発する。

 もし<天照>が挑発に乗らなかったらその時はその時だ、しかし念には念をとばかりに一夏は更に発破をかける。

 

「どうした、素手の俺が恐いのか?」

「…………!」

 

 予想以上に<天照>の搭乗者は挑発に乗ってきている。もう一押しだ。

 

「こいよ<天照>。銃なんか捨てて、かかってこい!」(さあ、どう出る)

 

 一夏は拳に力を込め、臨戦態勢を作る。

 

「<天照>何をやってるの!?そんなやつほっとけ!」

 

 <天照>の異変に勘付いた般若女が叫ぶ。やがて<天照>は沸々と込み上げる怒りからか、あるいは可笑しさからか身体を震わせ始めた。

 

「売られた喧嘩は買え、でしょ?だったらッ!!」

「そうこねーとな!」

「バッッッッッカやろぉぉぉぉぉお!!」

「なにしてんのさーー!!」

「あかんてぇぇぇぇえ!!」

 

 固定武装以外の装備を全てパージした<天照>は瞬時加速を駆使して一夏へ急接近をかける。観客席からは大歓声が上がり般若女と<打鉄>の搭乗者は頭を抱えているが知るものか。

 

 ファイティングポーズをとり万全の態勢で待ち構えていた一夏は素早く払われる<天照>の手刀を交わす。続く回し蹴りも回避、そこに間髪入れず繰り出された右ノックを両手で乱暴に受け止める。

 <天照>の搭乗者の焦りがじわじわと伝わってくる。

 

「くっ…やっぱり強い…!」

「どうした、格闘戦は苦手か?」

「なにを!」

『このバカ!何やってるの!』

 

 そこへセシリアを倒し地面に着地した般若女の声が割り込む。

 <天照>は一瞬そちらへ意識を向けてしまったのか、単眼で般若女の姿を追う。手に込められていた力が弱まったのを、一夏はハッキリ感じた。

 

「余所見は危ないぜ」

「え?ガッ………!!??」

 

 時すでに遅し。一夏の右ストレートが<天照>の左頬に直撃する。追い討ちをかけるように左フックが腹部へ、これから一夏がどのように自分を倒すのか察した<天照>は血の気が引く気配を感じた。

 その予想は、遠からず当たっていると分かったのは、すぐ後のことであった。

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァァァア!!!!」

 

 あぁ、やっぱりこうなった。般若女が顔を手で覆い首を横に振っている仕草が見えた気がした。

 

 <白式>の全エネルギーを総動員しているであろうオラオララッシュは<天照>の身体にまんべんなく繰り出される。その威力の凄まじさは言うまでもない。そのうちの一撃がバイザーに命中する。

 

「トドメだ!」

 

 最後に振り上げた右ストレートが<天照>の身体にめり込み、一気に吹っ飛ばす。地面に叩きつけられた<天照>は転がり続け、数メートル転がったところで止まる。

 その直後に<白式>からエネルギー切れを伝える電子音が鳴り響く。これで一夏は完全に戦闘は出来なくなった。

 

(どうだ、やったか?)

 

 観客席からは大歓声が起こるがそれどころじゃない。<天照>がまだ身体を動かしていることに気付いた一夏は気を張り詰める。

 

やはりやったかはフラグだったか?

 

 しかしそれは杞憂に終わった。一夏の方を見やるように顔を向けた<天照>の搭乗者はそのまま意識を失い倒れ込んだ。最後の力を振り絞っての行動だったのかそのままピクリとも動かない。

 

「…やりすぎたか?」

 

 大事には至っていないと思うが、それでも容態が気になった一夏は地面の上でのびている<天照>の操縦者へと近寄る。ふと見ると装着していたバイザーが外れかけていることに気付く。

 

「う…」

「おい、大丈夫か?って…………」

 

 医務室に運んでしまおうと身体を持ち上げる。するとバイザーが外れ地面に転がる。そして一夏の目はまだ幼さが残る同年代の少女の顔をハッキリと捉えた。

 

「お…お前…」

 

 一夏が狼狽していると、箒が「どうした?」と声をかける。

 

「あ、いや……」

「どけ!」

 

 箒の方へと顔を向けた一夏を<天照>を吹っ飛ばし般若女が割り込む。般若女は操縦者を軽々と持ち上げ煙幕を張る。

 

「リーヴァ2、ジーナ1は私の援護を!撤退だ!どのみちデータは充分に取れた!」

 

 般若女は矢継ぎ早に2機の<打鉄>に命令を下す。般若女の元へ集結した2機は彼女を中心に輪形陣を組む。

 

「このまま逃がさないっての!!」

 

 鈴が立ち上がり、撤退中の般若女達へ龍咆を向ける。しかし放たれた衝撃砲は命中しなかった。

 

「この!」

「待って!深追いはダメ!」

 

 鈴は追撃を行おうとするがシャルロットが止める。<打鉄>は蹴破った扉から離脱していく。最後まで見届けた般若女もバーニアの加速をかけ離脱していった。

 




イラストが描ければ<天照>の絵を描いてみたいんですが、なにぶん作者の画力がなくて……()

感想、評価など首を長くしてお待ちしてます
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