IS 〜夢のような旅路〜   作:フレイア

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 そーいうの年頃の子って言われるときついんだぞ


#14 デリケートな話題をサラッと言うな

 成田家の住居に隣接されている工房にて、<天照>は南井と本音の手によって最終調整に入っていた。

 ちなみにこの工房に隣接されている成田家に住んでいるのは源一郎とその息子夫婦、孫夫婦と秋は別のところに住んでいると本音から聞かされた。

 

「補助パワーユニット、及び出力ジェネレーター、全てオールグリーン」

「データリンク問題ナシ。武装パッケージ正常に作動」

「カメラアイは、問題なく稼働しています」

 

 光が灯ったモノアイが左右に動く。その様子を見届けていた叶が感慨深く言う。

 

「やりましたね、南井先生」

「……はい!」

 

 午後22時49分、これにて全ての調整過程が終了した。ついに<天照>はそのベールを脱ぐことができる。周囲から惜しみない拍手が巻き起こり、南井は肩の力を抜いてその場にあった椅子にへたりと座り込んだ。

 

「わ〜いやった〜〜」

 

 本音ははしゃぎながらお祝いの粗品である瓶ジュースの栓を開けコップに注ぐ。車の運転をしなくてはならない西園寺と南井以外の大人達も手にビールの缶を持つ。

 場の雰囲気も高まってきたところで南井が<天照>の前に立った。

 

「皆さんの多大なる尽力のおかげで、ここまで辿り着く事が出来たこと、本当に感謝しています。今日この日までありがとうございました!!」

「乾杯!!」

 

 誰かが叫んだ乾杯の音頭と共に皆一斉にビールにジュースと用意されていたものに口をつける。2口、3口と喉を鳴らしながら「ぷはー!」と息をつく。

 

「一仕事終えた後の酒は美味だな!」

 

 源一郎の息子である源治(70歳)はもうすでに2缶目に手を伸ばし始めている。

 ここまで成田家のイカれt…濃い面々に圧倒され続けてきた龍驤と藤川は会場の隅に行き控えめに酒を、運転手の西園寺は本音が開けたりんごジュースを嗜んでいた。

 そこへつまみ片手に南井が歩み寄ってくる。

 

「藤川さん達も楽しんでますか?」

「いやぁウチらはその、部外者やしなぁ」

「どうしても遠慮してしまうというかね」

 

 どうにも肩身の窮屈さを感じてしまう龍驤と藤川は萎縮する。

 

「しかし立派な機体やなぁ」

 

 龍驤は<天照>に目を向け、南井もまた感慨深げに完成された機体を見やる。

 

「ええ…」

 

 IS学園在籍時から数年、僅か10年に満たない歴史の中に埋もれていた極秘プロジェクトをたった数人で達成出来た事実は、何者にも変えがたい達成感を彼女に与えていた。

 しばらく遅い夜の宴を楽しみ、西園寺が時計に目をやるとすでに0時を回っていた。

 

「藤川さん龍驤さん、そろそろ…」

「ん?ああもうこんな時間か」

「結局緑葉はこっち来んかったなぁ」

 

 場の空気と酒の影響でだいぶできあがっていた2人もまた日付けが変わったことに気付く。

 

「南井先生ぇ、そろそろ我々も戻らなくてはいけなくなりましたよぉ」

 

 談笑の真っ最中である南井も頃合いと思っていたのか、瓶を抱き枕にして寝ている本音を起こして冷水を一杯あおる。

 

「すみません、もうこんな夜更けに…。では今日は本当にありがとうございました」

「いえ此方こそ、また来てください」

 

 成田家の皆に礼を言って南井達は玄関を閉める。道に出たところで寝起きで思考が定まっていない本音が大あくびをして言う。

 

「せんせ〜きよひーがいませーん」

「緑葉もおらんな。ウチら帰るのに気付いとらへんのか」

「布仏さん、相川さんに連絡取れる?」

「ウチもちょっちLINE入れとかんと。まぁ置いていっても帰れると思うが」

 

 本音と龍驤はそれぞれ相川と緑葉に『そろそろ帰るよ』とメッセージを送る。秋の夜はこれまた冷えるものだ。家の前で待っているのも身体に毒なので南井達は車の中でゆっくりと待つことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐおーーー、がおーーー」

 

 机に突っ伏し大層なイビキをかいて寝入っている源一郎に毛布をかけた緑葉は特に何をするでもなく、お猪口を片手に携帯の画面を上へ下へとスクロールさせる。

 ふと柱にかけてある振り子時計を見る。時針と分針が丁度11のところを指していた。

 

 緑葉は携帯を仕舞い、お猪口に焼酎を注ぎ足す。

源一郎の話はとても面白く、その度に酒を飲むスピードは速くなっていった。互いに酒豪である2人も意地を張り合い、焼酎やビールなどあるだけの酒をあおった結果源一郎がダウンした形で話は終わった。

 

 その後の緑葉は源一郎を起こすわけでもなくかと言って<天照>完成の祝賀パーティーに顔を出すわけでもなく、ただ1人でちびちびと焼酎を味わっていた。

 

「…………」

 

 ふと緑葉は立ち上がり、爆睡する源一郎を後に部屋を出る。自分でもなんでこんなことをしているのか分からない、酒の影響もあるのだろうか思考がボンヤリとしている。

 

(久々に飲みすぎたかな…)

 

 緑葉は飲み会の席でも滅多に酔うことはないのだが、今日に限っては少し酔いが回ってきてしまった。

 気分をリセットするためにどこに行くでもなく成田家の中を徘徊する。幸い皆<天照>の方に行っているためか家の中には自分と源一郎しか居ない(と思っている)ため、誰にも声を掛けられることは無かった。

 

「…ん?」

 

 ふと声が聞こえ、緑葉は足を止める。

 その声は丁度緑葉が足を止めた横の部屋から聞こえてきており、そちらの方向へ耳を澄ます。

 

「……!……!」

 

 …まず最初に聞こえたのはベッドのスプリングのバネが軋む音。そして次に聞こえてきたのはあどけない少女の嬌声、若い男女の荒い息遣い。

 この3点を1つずつ丁寧に線で繋いでいき、同時に緑葉の長い人生で培われた経験と記憶のデータバンクからこれらが意味するモノを探し出す。

 

 そして答えを導き出した緑葉は何とも言えない表情を浮かべながらたった一言、ドアを隔てた先にいるであろう男女へ向けポツリと呟いた。

 

「……………………若いっていいね」

 

 なんだか居たたまれなくなった緑葉は足音1つ立てる事なくそそくさとその場から去っていく。

 

 いや、まぁ、ね。うん、まぁ〜十中八九アレは相川さんと秋くんなんでしょう。むしろそれ以外誰がいるって言うんだ。

 先程のあの様子を見るともうすでにそーいうアレでだいぶもうアレしちゃっているんでしょう。自分だって大人だもん。察せるもんそれくらい。

 でもね、こっちだって色んな意味で事故とはいえその一部始終を聞いてしまった私はどうすればいいんですか。絶対この後相川さんの顔マトモに見れないよ、言えないよこんなん他人に、ましてやのほほんさんや南井先生には。

 

 南井先生はただ単に話でもするんだろうなーくらいにしか思っていないのだろう。夜更け、家には身内の方ほぼいない、部屋で2人切り、何もないはずが無い。華の10代青春真っ盛りの思春期。先生アナタその辺の対策しっかりしないとダメよ。

 

 緑葉は再び部屋へと戻り記憶を消し去るように酒をあおっていく。やがて意識が遠のくように彼女も畳に寝っ転がり爆睡、携帯の通知音で目を覚ました時にはすでに日付けが変わっていた。

 

「うん、アレは夢ではないね()」

 

 お酒をたらふく飲めば記憶が消し飛ぶ、というのはよく聞く話だが、自分の場合酒に滅法強いというのが災いしたのだろう。まぁバッチリ覚えていました。源一郎の話も、相川のアレも。

 え、アレってなんだって?アレはアレだよ察しなさい。

 

 緑葉がチャットアプリを開くとそこには『帰るで、車の中で待っとるわ』と龍驤からのメッセージが添付されていた。酔い覚ましの水を飲んで身支度を整える。外套を羽織り外に出るとたちまち冷たい夜風が身体を襲う。

 

「随分と遅かったやないか何してたん?」

「ん〜?話して酒飲んで寝てた」

 

 車の元に行き、ドアを開けて中に入ると暖房が効いた車内の雰囲気に緑葉にまた眠気が襲いかかる。

 「マイペースか」と車内にいた緑葉以外の全員に呆れ笑いをされたが、それよりも眠気の方が優っていた緑葉は彼らを他所に窓を見ると、すでに南井と本音も車の中であと1人を待っていた。

 そこへようやく相川が到着し、車へ乗り込んだ。相川本人こそいつもの様子を装ってはいたけど、緑葉さんは見た、ちょっと腰労わるようにしてた。

 

 車が発進してから時間にして2分も経たないうちに緑葉は再び深い眠りへと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「——その後学園内でも調整を続けられた<天照>は今日行われた学年別トーナメントで初陣を飾ったわけです」

 

 ほとんど話の主導権を握っていた緑葉は簡潔に話を締めると沈黙が流れる。何故沈黙が続いているのか分からない程緑葉も察しが悪い方ではないし、むしろ彼女はこの状況を作り上げたある意味元凶でもある。

 

「…」

「…」

「…」

「…」

「…」

「…」

「…」

「あの……その…、えっと…」

 

 理由は言わずもがな相川にあろう。緑葉の説明越しにとんでもない秘密を暴露した相川の顔は紅潮しきっている。

 

 聞き手の反応は実に様々だ。一夏や箒、シャルロットあたりの面々、あの日すぐ近くにいた南井もまた何とも言えない表情を浮かべている。

 セシリアや簪、一部の生徒や真耶は相川と同じように顔を紅潮させ、こういった話題に敏感で楽しみを感じている鈴や一部の生徒、千冬はニヤニヤと相川の様子を伺う。

 緑葉や本音、いつの間にか紛れ込んでいた楯無はすっごいにこやかな笑みを浮かべ、そういった知識が皆無に等しいラウラはただ1人素の表情を保っていた。

 そんな中でこの沈黙を破ったのは、いつもの凛々しい表情に戻った千冬であった。

 

「相川」

「はい……」

 

 恐らく<天照>関連で叱責を食らうと思っていたのだろう、相川は声を小さくさせながら千冬へ向き直る。ただその返事の中には「話を変えられるチャンスがある」という淡い希望と含まれているように感じた。

 

 そんな希望を知ってか知らずか、千冬は固い表情を崩し、これまで見たことがないレベルで清々しい笑顔を相川に向けこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「避妊は怠るんじゃないぞ」

「〜〜〜〜〜〜〜ッッッッッ!!!!」

 

 まさかの助言とも言える千冬からのありがたい(?)台詞に相川の恥ずかしさはついに爆発する。

 その脇でついに鈴がこれまで堪えていたモノを解放するかのように吹き出し、鈴の大笑いに釣られるように食堂中に黄色い歓声がドッと沸き起こった。

 

「「「「「織斑先生公認カップルきたあああああああああああああああ」」」」」

「キタよ!ついにきちゃったよ!」

「まさか清香ちゃんが一番乗りかぁ〜」

「意外なカップリングキタコレ!!」

「私も彼氏欲しい〜!でもここじゃ出逢いがな〜い!」

「どっちが攻めかな?どっちが受けかな?」

「意外と相川さんが攻めだったりして!」

「いつもは活発な相川さんが受け身ってシチュも同性ながらそそられるわね…!」

「一体いつから付き合い始めたの!?情報斑、何やってるの!?」

「1年1組情報斑一生の不覚…。戦いの中で戦いを忘れた…ッ!」

 

 やっぱりこうなると思ってた。

 各々まるで自分のことのようにはしゃいでいる。そりゃあこの99.9%女子校の中じゃ自ずと彼氏持ちってのは注目させるわけで、しかもこんな形で知れ渡って更にあの千冬が実質的に公認したのだ。

 なんか向こうの扉を開きそうな子もいれば曰く情報斑と呼ばれた子が悔し涙を浮かべている。つか情報斑なんているのか。そして食堂のおばちゃんはちゃっかりと赤飯を炊き始めるんじゃあありません。

 

 しかし同時にそこまでにしといた方がいいのでは、とも思う。

 相川の方を見てみると恥ずかしさのあまり顔を上げられずにいる。半分彼女の自滅だが緑葉自身の所存とはいえさすがにやりすぎたと後悔する。もしもこれのせいで不登校に陥ったなんて事態になったら洒落にならない。

 

「あの、私が今更言ってもどうにもならないしもう遅いとは思うけど、さすがにデリカシーが無かったかもしれない。うまく言えないけど…、その…ごめんなさい」

 

 相川の肩に手を置き緑葉は一語一語言葉を紡ぎながら謝罪の言葉を振り絞る。相川の身体は震えており、その微かな震えが緑葉の手に伝わってくる。

 お祭り騒ぎだった周囲も静かになり、2人の様子を伺う。

 

「いえ…緑葉さんが謝ることありません。いつかはバレるって思ってたし…、ただ…」

「ただ?」

 

 相川はしゃがみこんでいた態勢からフラフラと立ち上がって首を横に振る。耳まで真っ赤に染め上がった顔を上げた時、うっすらと涙が見えた。

 

「ただ…、こんな大勢の前でバラしちゃったのは想定外で……///」

 

 身体をプルプルと震わせながら発された言葉を聞いた緑葉はどこか安堵するように息をついた。

 

「そ、そっか。まぁそりゃそうだよね。今日はもう休んだ方がいいね。龍驤、あとのほほんさん、相川さんを頼める?」

「せやな、ほないこか」

「きよひーいこ〜」

「う、うん…」

 

 緑葉の要望を受けて龍驤と本音は相川の左右に立って彼女を自室へと連れて行く。のほほんさんが更に傷口を抉るようなことしそうで恐い。大丈夫だとは思うけど。

 

「うーんもっと話聞きたかったけどなぁ」

「あの状態じゃさすがにねー。仕方ないけどまた今度かぁ」

「今は万全を喫してインタビューを組まなきゃね!」

 

 食堂が閉まる時刻が迫ってきているのもあってか生徒達はその場から解散していく。少しずつ生徒の姿が食堂の外へ出ていく中、いつの間にか残った緑葉と藤川、一夏達はハァと溜め息をついた。

 




再編集して見たら2話分削れてしまっている()
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