さて今回は少し話の趣旨を変えて、ある2人の男女にスポットを当てたいと思います。彼らがいつ、どのようにして出逢ったのか。ご覧ください」
#15 ハルノナゴリ(前編)
よくドラマなどで見かける運命の出逢いなんてのは、所詮フィクションのそれだと思ってきた。運命の相手が現れるとか、恋のキューピッドが私の背中を押してくれるとか。そんなことがあるはずもなく、中学生になり、高校生と呼ばれる年頃になった。
この春、私は進学し晴れて高校生デビューを果たした。ただし普通の高校ではない。というかアレは高校と呼んでいいのだろうか?
IS学園、世界中の未来ある若い才能がISの将来を背負って日々勉学に励む場所。なんでそんなところに私がいるんだろう、場違いでは?とたまに思うことだってある。
私はたまたま行われていた適性検査でたまたま高水準の数値を出し、たまたま試験で良い結果が出せて入れた、自分で言うのもアレだが所謂運が味方したラッキーガールだ。
そんな元からの素質やら実力やらでなくほとんど幸運で進学した私の成績など察しの通りだろう。成績は中の下、座学なんてギリギリついていけるかいけないかの境目だ。
元来私はスポーツ少女だったこともあり身体を動かす方が好きだ。だから机に座っての勉強は何というか性に合わない。勿論言い訳でしかないしそんなの担任の織斑先生の前じゃ通用しないけど。
座学の授業はなんとか持ち前のスポ根で食らいついていたが、ある時から調子が狂ってしまった。
最初のうちは実機を用いた訓練を行う。そこで私も<打鉄>を動かした。だけど最初はやはり思い通りにはいかないものだ。それだけならいいのだが、ある時自分がいる1組の担任である織斑先生から声をかけられた。
「まだISに触れて間もないお前達は皆動きが固い。お前の場合は特にそれが著しい」
それを言われた時はガビーンとショックを受けたものだ。だって、遠回しに「素質に難あり」とかそんな感じに言われてるようなもんじゃん。
「あまり肩の力を入れすぎるな」
「は、はい…」
そこからは大変だった。何とかしなくては、と焦ったからか何もかも空回り。織斑先生に指摘された動きの固さはもっと酷くなり、スランプの状態に陥っていた。
見かねた副担任の山田先生からは優しい笑顔で「焦る必要はないから、ゆっくり慣れていきましょう!」と言われたが、丁度同じタイミングで、ある意味私よりISに関して素人だった唯一の男性操縦者である一夏君が専用機を受領されてどんどん頭角を表していたことがより一層私を焦らせる一因だったのかもと今になって思う。
周りに置いていかれたくないという焦りが空回りを生む。そんな焦りで犯した失敗を取り返そうとしてまた失敗、という悪循環にハマりかけた時、私の身に変化が起きた。
事情は省くが、南井先生がかつて学園内で開発されていたという未完成のISを完成させるために止まった針を動かし始めた時に偶然私がそれを発見。南井先生に口止めされた時に私も手伝いたいと言ったのはよく覚えているし、その時に南井先生が変な笑顔を浮かべていたのも覚えている。
かくして二人三脚でIS開発が再開されて幾ばくか経ったある日。
「<天照>開発でお世話になっている人へ粗品を届けに行くのですが、良かったらついてきますか?」
その問いに私は二つ返事で了承して車へ乗り込んだ。
南井先生は成田工房というISの部品を取り扱う小さな会社が協力して<天照>の開発をしてきている。
南井先生が私のことを成田工房の人達に紹介してくれる。何が面白いのか、髭を生やした男が大口開けて豪快に笑う。そんな髭おじいちゃんが成田工房の創始者である源一郎氏知った時はびっくりしたのを覚えてる。
そしてそこで、私は彼と出逢った。
「同い年だから話も合うじゃろ」と源一郎さんがリビングから1人の青年を伴いながらやってきた。
一夏君と比べても遜色ない好青年。一夏君は爽やかというか飄々としてるけど、こっちは柔和な物腰で、どこか優しさを感じる。
言ってしまえば至って普通の男の子。だけどおかしい。
どこがどうおかしいのかなんてよく分からない、でもどこか心がポカポカと暖かい。
「な…成田秋です。よろしくお願いします」
成田秋と名乗った青年は同年代の異性を目の前にして、気恥ずかしさを感じているのかその挨拶はどこかぎこちない。
その仕草が愛おしい。あぁ、上手く言えないけど、こういうことなのか。これが—
「あ、あいか…相川清香です」
私は言葉を振り絞って自己紹介を行なったけど、その後何を言ったのかはよく覚えていない。
それが私と秋くんの出逢い。
私が初めて一目惚れを、初めて恋をした日。
私と秋くんは学校が違うから、会えるとしたら休日しかない。だから2人きりで会える日は貴重で、出来る限り日曜の予定は空けていた。
最初のうちは南井先生に連れられて<天照>の開発を手伝うタイミングで、作業をしながら2人で何気ない会話を楽しんだ。そのうち私は1人で成田家まで足を運んで秋くんと出会うという日々が続いた。もっともその時の彼から見たら私はあくまで『友達』だったんだろうけど。
そんなある日、私が秋くんのところへ訪ねると思わぬことを知らされた。なんでも家族みんな旅行やら出張やらの用事で外出中で、家には秋くん1人しかいないと言われた。
そのまま家に入った私の心臓は張り裂けそうなくらいドキドキしていた。
好きな男の子と誰もいない家で2人きり。私だって年頃の女の子だ、そういうのに関する知識だってあるし興味だってある。そのうちそういうシチュエーションがくるんじゃないかなんて、期待というか願望を胸に秘めていたが本当にそんなシチュエーションがきてしまった。
好きな男の子とそういうことはシたいし、恥ずかしい話だけど正直ここまでかなり欲求不満です。でもあんまりこっちから積極的になって万が一相手に引かれたら嫌だ。かといって秋くんの方から手を出してくる気配はない。
もどかしさを感じながら私は彼の部屋に入り、ベッドの上に座る。ここまできても彼は手を出してくる気配すらない。
「じゃあ、飲み物取ってくるから、相川さんはゆっくりくつろいでてね」
秋くんが飲み物とお菓子を取りに部屋を出ると、私1人だけが部屋に取り残される。
「ふぅ」
と私はベッドに背中を預けるように横になった。くつろいでいるように見えるかもしれないが心の中はドキドキが止まらなくてたまらない。
焦らず、気長に待とう。告白だってまだなんだし、まだそういうことをする段階じゃないのは自分自身分かっている。だけど…
「………………」
彼女はベッドの上で身体を包ませ、毛布に顔を押し当てる。愛おしい彼の香り、彼の温もりが私の中の劣情を煽る。
「秋くんの匂い……。秋くんの…………」
私は下半身に手を伸ばして自分を慰める。
こんなはしたない私を見たら秋くんはどう思うだろう、軽蔑してしまうだろうか。いけないことだと分かっていても、自分じゃどうすることもできない。
段々と達しそうになってきた時、私はある1つの箱が気になった。その箱はまるで隠すように置かれている。ベッドの上を這いながら私はその箱を手に取った。
「ふええええ!?こ…コレって……」
私はその箱の正体を見た時、思わず思考がショートするのを感じた。隠すように置かれていた理由についても大体察しがついた。
だってそれは、あ…アレ、だったから。要するにその、避妊具だ。
それを見た時の私はもうパニクってた。顔なんて鏡を見なくても耳まで紅潮しきってたのが分かるほどに。傍目から分かりやすいほど慌てまくりながらも全神経をもってして心の沈静化を図る。
そして私は、1つの考えに辿り着いた。
「し…秋くんもシたいってことだよね?わ、私と……」
だって、わざわざ避妊具がある理由なんてそれしかないし、それ以外考えられない。
そんな考えが頭の中を支配して、めちゃくちゃ恥ずかしくなった私は顔をより一層布団に押し当てる。
「お待たせ〜。ごめんね、ペットボトルのお茶しかな………………」
「あ……」
ペットボトルのお茶とお菓子を持ってきた秋くんはその場で立ち尽くしていた。
「…え、あ、その、ここここ、これは……」
そして私が置かれている状況を把握。頰を紅く染めながら慌てて秋くんへ取り繕う。
何しろ私は現在進行形で彼のベッドの上で下着を下ろして自慰に浸っていたため色々と丸見えだし吐息は荒い。私の手には避妊具が入ってる箱。どうあがいても絶望しないです本当にありがとうございました。
お母さん、私はある意味で死にます()先立つ不孝をお赦し下さい()
「あ、えっと、その……」
「失望…した?」
「え?」
「私がこんなにエッチな子だって分かって失望した?それとも軽蔑?」
「そ、そんな…ぼ、僕は……」
自虐するように眼に一筋の涙を浮かべながら私がまくし立てると秋くんはオロオロと目を右往左往させる。
なんで泣いているのか自分でもよく分からない。でも、何故か涙が出てきてしまう。恐いんだ、嫌われるのが、彼が私の前から居なくなってしまうのが。
「ご、ごめんね。イヤな思いさせちゃったよね。わ、私もう帰るから」
「ま、待って!」
いそいそと身だしなみを整えていると秋くんが私の手を握る。彼の手の暖かさに私の心臓がまたトクンと跳ねる。ただ勢いあまって私と秋くんはそのままベッドに倒れこみ、丁度秋くんが私に覆いかぶさる形に。
「あ…あの…」
「好きだよ」
「えっ…?す、好きって……」
「だ、だからその…。ずっ、ずっと好きでした!つ…つつつ付き合ってくだひゃい!」
ずっと、心の中で望んでいた言葉。
秋くんは最後の最後で噛んでしまったからか頰を赤らめている。それがまた私の劣情を煽る。
秋くんは純情な男の子だ。多分、私のことが好きというのは紛れもない本心。彼なりに迷いや葛藤もあったはずだし、ずっと告白のタイミングを伺っていたのだろう。
本当ならもう少しロマンチックなプロポーズをしようと意気込んでいたはずだ、こんな形で告白してしまうはずじゃなかったのか、彼は何をするでもなく私の様子を伺っている。
「ふふっ」
「相川さん?」
今まで散々悩んでいたのが急にバカバカしくなって、私の口からつい笑みが溢れる。
「まさかこのタイミングで告白されるとは思わなかったなぁ」
「それは、その……」
「良いんだよ、謝らなくて。ふふ、なんだか私も吹っ切れちゃった」
「相川さ……」
私は彼の頰に右手を添え、顔を近づける。そして秋くんの唇に自らの唇を重ねた。
「んぅ……」
唇と唇が官能的に重なる。柔らかな感触が作る快感が全身を刺激し、まだ寸止めで達していなかった私の身体はビクンと跳ねるのが止めらない。
時間にしてほんの数秒だったけど、かつてない満足感に浸りながら私と秋くんは水音をたてながら唇を離し、お互いに見つめ合う。
「私も……」
いきなりのキスに口を開けて惚けている秋くんを前に、私はずっと心の奥底にしまっていた言葉を吐き出す。
「私も、貴方のことが好きです。初めて会った時から、ずっと好きだった」
「相川…さん…」
「えへへ…言っちゃったぁ。両想いだったんだね、私達」
「そういうことになるね。なんかやっぱり意識すると恥ずかしいね」
「何言ってるの、これからもっと恥ずかしいコト、する…んでしょ?」
「あっ…………」
もっと恥ずかしいコト。それの意味するコトが分かった秋くんはボッと顔を真っ赤にさせる。かくいう発言主の私もこれまで以上に身体が熱くなるのを感じている。
彼の理性も、私の理性も、もうほとんど切れかけている。後はもう時間の問題だ。
「私はもう、準備できてるから…。キミの好きっていう『キモチ』、私に頂戴?」
その瞬間私の理性は崩壊。
そこからはもう語るまでもないと思う。私が両手を広げると、同じく理性が吹っ切れた秋くんがベッドに横たわる私へ覆い被さる。
普段の温厚な秋くんとのギャップ差に私は愛おしさを感じ、惹かれながら彼の背中に手を回すと、熱く激しいひと時が幕を開けた—
R18版も同時投稿したので是非