IS 〜夢のような旅路〜   作:フレイア

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#20 俺達の力をリア充に見せる時が来たな

「僕こういうの初めてやるんだけど上手く出来るかなぁ」

「大丈夫だって、こういうのは段々慣れてくるから」

「うーん、そうかなぁ」

 

 レゾナンスで久しぶりのデートを楽しんでいる私と秋くんはレゾナンス内にあるゲームセンターに立ち寄っていた。

 クレーンゲームやシューティングゲームなど様々なゲームがあったがその中で私が目をつけたのは音楽ゲーム、通称『音ゲー』と呼ばれるジャンルのゲームだ。

 

 昔から音ゲー自体は太鼓の達人とかリズム天国とか色々あったけど、最近はスマホでできる音ゲーが普及してきたから特に流行っている印象がある。

 私はよくスマホやゲーセンに行く時には必ず音ゲーで遊んでいるけど秋くんは今日が初プレイだ。確かに以前ゲーセンにきた時もやんわり断ってたし、あんまりやるイメージないもんね。

 

「じゃあ、私がお手本見せよっか」

「え、いいの?」

「うん!ハイこれ持ってて!」

 

 そう言って脱いだ上着を秋くんに渡し、私はどれでやろうか吟味する。初心者である秋くんのためにも、なるべくやりやすいのにしないといけない。となるとアレかなぁ。

 私は一台の筐体の前に立つと、財布からお金を取り出す。今からやろうとする音ゲーは比較的初心者でもやりやすいと言われる筐体だから、秋くんでも大丈夫だろう。

 お金を投入して難易度を設定、今回は1番簡単なベーシック。楽曲を選択。これも初心者にはやりやすいと思う曲をチョイス。隣から秋くんが顔を出してまじまじと私とゲーム画面に視線を交互に移してる。これはいいとこ見せないと!

 

 選曲をしたらゲームスタート。

 目まぐるしく流れてくるノーツをタップしたり弾いたり、長いノーツは終点までスライダーをタッチし続けたりと難易度は低いけど大忙しだ。隣の秋くんなんて、あんぐりと口を開けちゃってる。

 ゲームを終えた私は大きく息をつき額に流れる汗を拭う。音ゲーは運動になるしダイエットにもなるって言うけどマジだよ。機種によっては数キロ痩せられるとかよく聞くし。

 

「さ、秋くんの出番だよっ!」

 

 呆気をとられていた秋くんが「えっ」と声を上げる。

 

「で…出来るかなぁ」

「私がアドバイスしてあげるから心配いらないって」

 

 秋くんを筐体の前に立たせた私は、ガチガチに緊張する彼の気を紛らわせようとそっと顔を耳元まで近づけ、こう囁いた。

 

「その…頑張ってくれたらいっぱいサービスしちゃおうかな、なんて」

「ひゃっ、ひゃい!」

 

 これは逆効果だったかもしれない。だって今の秋くんすんごい顔真っ赤に染めてもっとガチガチになっちゃってる。でもなんだろう、そんな彼の様子が私の欲を逆撫でするというか…。って、あ、その曲は……

 

 結果を言うと秋くんのスコアはボロボロでゲームクリアには遠く及ばなかった。だってかなり難易度の高い曲選んじゃってたし、緊張からかタッチするところをタッチできてなかったり、長押しするところを長押しできてなかったりとまさに散々だった。

 

「初めてのうちはこんなもんだって。私だってそーだったもん」

「あはは…」

 

 私は椅子に座って落ち込む秋くんの肩を優しく叩きながら身体を密着させる。人目もあってか少し恥ずかしかったけど、彼も元気になってくれたようでこれはこれで結果オーライだったかな?

 

「ありがとう。ちょっと元気になれたよ」

「ふふふ、どういたしまして。じゃあ、次あれやろっ!」

 

 私は立ち上がって、秋くんの手を引っ張りながらクレーンゲームのブースへと向かった。

 

 

 

 

「これは…、なかなか…ッ!難しいですわね…!」

「セシリア頑張って!」

「どんどんハイスコアが樹立されてるで」

「スコアが…エグいことに…あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」

 

 時同じくして、相川と秋のほんのすぐ近くで緑葉やセシリア達もまた音ゲー(それも身体全体を動かす激しいやつ)を楽しんでいたのはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそ…どこいった!?」

「こっちにはいねぇぞ!」

「チクショウ!一体どこ行きやがった!」

 

 レゾナンス内で相川と秋の捜索に躍起になっていた数馬は息も絶え絶えになりながらベンチに腰掛ける。飲み物を持ちながら同じベンチに座った弾から飲み物を得ることはできたが2人の情報は得られなかった。

 最初こそ協力はすれど静観の構えを見せていた弾だったが、いつしか数馬の気迫に気圧され、何よりこの映画さながらの展開にいつの間にかだいぶ楽しんでいた。

 

 五反田弾。江戸っ子気質を持ち合わせ、いざとなった時に頼れる兄貴分となる彼もまた数馬と同じく『残念なイケメン』と呼ばれるのであった。

 

「おい、つーか鈴は?」

「なんかこれ以上アンタ達といるとこっちまで怪しまれる、つってどっか消えた」

「くっ…!だがまだ策はある!来い弾!俺達の力をリア充に見せてやろうぜ!」

「おう!」

「あれ、弾と数馬じゃねーか」

「「!?」」

 

 聞き覚えのある声に思わず弾と数馬はそちらへ振り返る。するとそこには紙袋を持った一夏が立っていた。

 まさか今日ここに一夏が居るとは思ってなかった弾が訊ねる。

 

「一夏、オメェなんでここに?」

「え?普通に買い物だけど」

 

 見ればわかるだろ、と一夏は紙袋を持った手を見せてくる。

 

「で、弾と数馬は何してんだ?見たところだいぶ急いでたみたいだけど」

「一夏、今日お前1人か?」

「質問には質問で答えてほしい。…まぁ1人だけど」

 

 それを聞いた数馬はニヤリと悪い笑みを浮かべて、ゆっくりと一夏に近づくと両手で肩をギッチリと掴む。

 

「丁度いい!俺達の計画に協力しろ!」

「すげぇ!嫌な予感しかしねぇ!」

 

 数馬に従うと基本ロクなことにならない。いつも良いオチを迎えられたことがないのは一夏の経験が実証していた。

 

「一体何に協力しろって言うんだよ!」

「これは俺達のターニングポイントになりうる事案なんだ!解って協力しろっていうかして下さい!」

「分かった!分かったから放せ!」

 

 興奮状態のままよく分からない言葉を口走る数馬の拘束を解いた一夏はくしゃくしゃにされた髪を手で整える。

 

「で、何に協力すればいいんだよ」

 

 ジト目になりながらそう聞いてくる一夏を前に数馬は弾と心の中でハイタッチをする。ちなみに弾は心の中で数馬とハイタッチはしなかった。

 だが一夏の協力は思わぬ僥倖だ。もっともこの話題に対し鈍感キング、朴念仁の称号を欲しいままにする一夏が果たしてどう影響をもたらすのか未知数であるが。

 一夏が鈴を始めとしたヒロインズの気持ちを察してやれないのは、彼の朴念仁の性格もあるが何より彼女らのアプローチが遠回しすぎるのもある。

 一夏には遠回しな言い方ではダメだ。中学時代から彼を知っている数馬は、あえてどストレートに内容を言った。

 

「ふっふっふ、それはな——」

 

 

 

 

 

 

 

 

「む」

「あ……」

 

 珍しい組み合わせだ。レゾナンス内にあるTSU◯AYAのDVDコーナーでばったり鉢合わせたのはなんとラウラと簪だった。

 生粋のアニメオタクである簪は新作アニメのDVDが発売されるとまずここに足を運ぶ。簪曰く、ここの品揃えはガチ、無かったら諦めるほどのレベルだからだ。

 今日もそんな例に漏れず新作アニメのDVDが出荷されてるか確かめにこの店にやってきたわけだが、彼女からしてラウラがここにいることはかなり予想外。というかラウラを知っている人たちからすれば彼女がここにいること自体が眉唾物である。

 

「な…なんでラウラさんはここに……?」

「うむ、実はドイツにいる部下に頼まれてこれを探しにきたのだが」

 

 そう言ってラウラは携帯に表示された画像を簪に見せる。そこには今話題の恋愛モノアニメのタイトルが。

 

「私はこういったものについて造詣がないからよく分からん」

 

 要は遠いドイツにいる部下(クラリッサ)からお使いを頼まれたラウラだったのだが、乙女ゲーやギャルゲーなど日本のオタクカルチャーを愛好する重度の二次オタであるクラリッサと違い、そういった知識が皆無なラウラには電話越しでクラリッサがそのアニメについて熱く語ってきても何がなんだかサッパリだった。

 

「そういえば、簪はアニメについて詳しいと嫁に聞いたことがあるな。そうだお前に聞けばいいんだ」

「えっ…」

 

 握り拳を掌にポンと置いてそうだそうだと頷くラウラと対照的に石のように固まる簪。

 

 確かに簪はアニメには詳しいがジャンルが違う。簪は戦隊モノで、クラリッサは恋愛モノだ。簪自身クラリッサの方のジャンルも齧った程度なら何となく分かるが、180度嗜好が違うものについてなど分かるはずがない。

 お使いを頼まれたラウラはラウラで期待や羨望を含んだ瞳で簪に向けている。

 

「……分かった。正直…詳しい方じゃないけどなんとかしてみる…」

「おお、助かる」

 

 簪はそのアニメのDVDがあると思われる場所へラウラを案内した。

 

 

 

 

「俺いやなんだけど」

「諦めろ、もう俺達は坂道を転がり始めてる」

「それ絶対ロクな結末にならないな?もう帰っていいか?」

 

 数馬から計画を聞かされた一夏の第一声はこれだった。数馬を先頭にしてその後に弾、一夏と続く。

 

「別にさ、ここは間違えないで欲しいんだけど俺は数馬と弾と3人でこういう連みがイヤってだけで言ってるんじゃないんだ。俺相川さんと同じクラスなんだよ、もしバレたら俺明日からどんな顔して相川さんと会えばいいわけ?」

 

 バレたら相当気まずい雰囲気になること確定だし、しかもさっき弾から見つけ次第問い詰めてやるとか聞いていた一夏は尚更嫌がっていた。

 

「なぁ一夏よ」

「なんだよ」

「その相川さんってどんな女の子なんだ?」

「今それ聞くのか」

 

 内心数馬に呆れつつも、嗚呼こいつはこういうやつだったなと改めて思い知らされる。

 でも話さないと数馬はうるさい。一夏は簡潔に自分が見て思った印象を数馬と弾に語っていると、数馬が叫んだ。

 

「見つけた!今日こそ問い詰めてやる!」

 

 そう叫びながら数馬は一目散に走っていく。よーく見るとだいぶ離れた位置に、ギリギリ目視で見えるか見えないかという場所に相川と秋の姿が発見できた。

 よく見つけられたなと変に驚きながら弾と一夏は数馬の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーむ……」

 

 かれこれ数分はこの状態である。手に取った服を凝視している顔は眉間をシワを寄せて難しい表情を浮かべる。

 

「参ったな…」

 

 服をハンガー掛けに戻した箒はハァ、と溜め息をつく。彼女もまたレゾナンスへショッピングに訪れており、主な目的は一夏に見せるための洋服選びだ。

 それだけならいいのだが、彼女には少し問題がある。曰く、丁度いい服があっても胸に合うサイズが無いのだ。

 

(出直すか…)

 

そう思い店から去ろうとした箒に話しかける人物がいた。

 

「あれ、箒じゃない」

「鈴か。お前も服選びにきたのか?」

「え?いやーまぁちょっとぷらぷらとね」

 

 箒に話しかけた人物、鈴は飄々とした調子で先程箒が吟味していた服を手に取る。

 

「ふーん、なかなかじゃない。買わないの?」

 

 鈴は箒が選んでいた服を評価したが、それが箒からしたら意外だったのか随分と驚いていた。それに不満があるのか鈴がボヤく。

 

「あのね。確かにあたしと箒や他のみんなは恋敵かもしれないけど、それ以上に友達だって思ってるから。そりゃオシャレだって共有したいわよ」

「そ、そうだな。少し無作法だったな。すまない」

「まぁいいわよ。で、これ買わないの?買わないならあたしが買っちゃうけど」

 

 あっけらかんと許す鈴は改めて服をレジにもっていこうとする。サイズも丁度よさげでこれも何かの縁だ。

 だが背後から箒の妙にもごもごとした小声が鈴の歩を止める。

 

「いや、私だってそれは欲しいんだ、欲しいんだが……」

「何?もしかして財布忘れたパターン?アンタもたまにはドジすr」

「その……胸が…」

 

 瞬間、鈴の脳裏には、地面に亀裂が入るような、ピシッという音が鳴ったッ!

 箒の胸と自分が持っている服を交互に見やるその目は、全く笑っていなかったッ!

 

「……ん?あっ!」

「へぇ〜あー、なーるーほーどー。なぁ〜る〜ほぉ〜どぉ〜〜」

 

 箒が失言に気付いた時にはもう遅い。背後にどす黒い負のオーラを醸し出す鈴はスローモーションのような動作で手に持っていた服を戻した。

 

「……屋上に行こっか。久しぶりに…キレちゃったわ」

「待て待て待て待て待て待て悪かった!今のは完全に私が悪かった!!」

 

 胸が小さいことに対してコンプレックスを抱いている鈴の前で胸の話をするのはタブーに等しい。それを失念していた箒に責任があるため全身全霊をもって鈴へと謝る。ちなみに屋上は駐車場である。

 

 その時、ふと何気なく箒は通路側の方へ一瞬目を向けた。この店は通路側の壁がガラス張りなため、外の通行人が見えるようになっている。その群衆の中を走り抜けていく1人の男を視認した箒は思わず目を見開いて呟く。

 

「一夏?」

「え?」

「いや、今確かに一夏がそこに」

「マジ!?」

 

 一夏の名を聞いた鈴の背後から一瞬にして黒いオーラが消え去り、彼女はいつもの調子に戻る。鈴と箒は慌てて店の外に出るがそこに一夏の姿はない。

 

「どっち行った!?」

「確か向こうの方に……いた!」

 

 箒が指差す方角に鈴も目をやると、確かにそこに一夏の姿が。ただし鈴は一夏の隣にいる2人の男を見て眉をひそめる。

 

「……ってあれ、数馬と弾?なんで一夏がアイツらと一緒にいるのよ」

「どうする?我々も後を追うか?」

「そうね。でも、なるべくあの3人には気づかれないでいくわよ」

「あ、あぁ」

 

 鈴の言い方に若干の違和感こそ感じたものの大して気にはならず、箒は鈴と共に一夏を追っていった。

 

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