IS 〜夢のような旅路〜   作:フレイア

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#22 Bring On a War

 

 追われる身となった私と秋くんは人混みの中を掻い潜りながら走っていた。

 これが愛の逃避行かぁ、なんて呑気なことを考えている暇もない。捕まったら何言わされるか分かったものじゃない。

 

「秋くん大丈夫?」

「な、なんとか」

 

 体力には自信のある私だが秋くんはそうはいかない。秋くんに合わせるようにしながら適度な休憩と摂る。勿論物陰に隠れて周囲の様子を伺うことも忘れない。

 

「うん、今のところは追ってこられてはないかな」

「…………」

「秋くん?」

 

 ふと秋くんの方を見ると、彼は俯いて黙ってしまっていた。私が秋くんの名前を呼ぶとポツリと呟いた。

 

「なんか、ごめんね。折角のデートなのにこんな…」

 

 秋くんはこの状況を作ってしまったことに対して責任を感じているのか、苦笑しながら私に謝ってきた。

 私はそんな秋くんに寄り添って、彼の手の甲にそっと手を乗せる。

 

「大丈夫。私は、大丈夫」

「相川さん…」

「だから、あんまり自分が悪い、とか気負わないでね。秋くんとこうなるのは私が望んだことなんだし」

 

 自分が秋くんとこうなりたくて、恋人同士という仲になったのだ。それ関係でいざこざに巻き込まれて秋くんが悪いとか、そんなことない。まぁ、いざとなったら2人一緒にたっぷりこってり絞られる覚悟はあるし。

 

「ありがとう。でもこれだけはごめんって言わせて。本当なら男の僕が相川さんのことリードしなくちゃならないのに」

「だから謝らなくていいって。秋くんには争いとか似合わないもん。ほら、早く行こ」

 

 私は若干不機嫌気味に頰を膨らませる。これは私なりの精一杯の抗議の意。

 苦笑いを浮かべる秋くんの手を引っ張って移動開始。走り出してからどこに移動するのか考える。

 もうレゾナンス内には居られないから外に出ようという意見で合致した私達は1階へ降りるためのエスカレーターを探す。

 

「あった!」

 

 1階に降りるエスカレーターを見つけた私達は安堵の表情を浮かべ、ステップに足を置き手すりを掴んで一休み。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 

 さすがに走り通しで疲労困憊になった私と秋くんは息も絶え絶えになって力なく手すりに背中を預ける。

 追っ手の姿も見えないし、後は歩いて外に出ようなんてことを考えていると、エスカレーターの終点部分に1人の青年が張り付いているのが見え、思わず私はギョッとした。

 

「見つけたぞ秋ぃ!!」

 

 なんと数馬君が先回りして私達を待ち構えていた。これは予想できなかった私は嫌な予感がして後ろを振り返る。

 

「挟み討ち!?」

 

 嫌な予感は見事的中。私が振り返った先には織斑君ともう1人の青年の姿が。

 挟み討ちの状態となった私はなんとか打開策を見つけようと辺りを見回す。1階へ飛び降りるなんてのも考えたがまだエスカレーターは半分も降りてないから高さもあるし危ないから却下。着地に失敗したら色んな意味で全て終わる。

 

 ここまでか、と半分諦めかけた時、ふと隣のエスカレーターに目を移す。こちらのエスカレーターは2階から1階に降りるが、もう片側のエスカレーターは1階から2階へ上がるやつだ。

 

「秋くん。私が合図したら、私の行動通りのことをして」

「え?う、うん分かった」

 

 小声で伝えると秋くんもこくりと頷く。

 あとはタイミングだけだ。一応言うがこれは間違いなく危ないし、絶対にマネしちゃダメなやつ。だけど、ある意味これがもっとも安全かもしれない。

 

「どうだ!これでもう逃げ切れまい!一夏、弾!追い込み漁かけるぞ!」

 

 数馬君の命令に応じて2人はエスカレーターの手すりに手をつける。

 

(こい、こい、早く)

 

 私はタイミングを見計らうために、その時を今か今かと待ちながら隣のエスカレーターを見やる。幸い人はいない、なら、後は彼らだけだ。

 そして待ちわびた時が訪れた。織斑君らがエスカレーターのステップに完全に足を置き、こちらへ駆け寄ろうとしたところで、私は合図を出した。

 

 

 

 

 数馬が回り込みをかけ、相川と秋が乗っているエスカレーターの終点部に取り付き、一夏と弾が2階から追い込む。

 

 この少し前、2人を追っていた際に一夏がこんなことを口にした。

 

「ただ追いかけるより、どこかで待ち伏せた方がいいんじゃねえか?」

 

 弾と数馬は賛成したが、同時にこれは賭けでもあった。国内随一の規模を誇るショッピングモールであるレゾナンス、当然エスカレーターやエレベーター、階段などの移動手段は充実しているし出入り口の数も多い。

 そんな場所でどこか1箇所、多くて3箇所で待ち伏せを行なうというのだから、相当な賭けだというのはすぐに察しがついた。だが広いショッピングモールの中を走り回っていた弾と数馬にはまさに一縷の望みでもあった。

 

 しかし待ち伏せるにしても場所が大事になってくる。どこがいいか考えていると、腕を組んでいた数馬が弾と一夏に向けて言う。

 

「ダメだなぁお前ら、俺達の立場からどうするか考えちゃあダメなんだぜ。こういう時は相手の立場から考えないと」

「?」

 

 首をかしげる弾に数馬は言葉を紡げる。

 

「秋の立場になってみな。追いかけられてるこの状況でお前はどこにいく?」

「んーそうだな…。俺なら外に出るが…」

「そう考えるだけで、だいぶ待ち伏せる場所も絞られるだろ?」

 

 妙に変な気合を見せる数馬が待ち伏せを行う場所に決めた場所こそ、相川と秋が1階へ降りるために使うエスカレーターだった。

 運は我々の方に向いている。そう確信した数馬が叫び、弾と一夏はエスカレーターのステップに足を置く。

 その時、こちらの様子を伺っていた相川が叫んだ。

 

「今!」

 

 相川と秋は、次の瞬間予想だにしない行動に出た。なんと2人は膝を曲げ一気にジャンプ。手すりに着地するとそのままの勢いで隣のエスカレーターへと乗り移った。

 

「げえっ!?」

 

 これには数馬も目を見開いて驚愕するしかない。見事なまでに一夏達の虚を突いた相川と秋は反対側のエスカレーターを駆け上がっていく。

 

「何やってる!数馬、追え!」

「わかってる!」

 

 弾に促されながら数馬もまたエスカレーターを駆け上がる。そして弾と一夏はそんな一連の流れを見届けたのち、がっくりと手すりに項垂れた。

 

 

 

 

 見事なまでに作戦が上手くいき、なんとか窮地から脱した私と秋くんは気が付いたら3階にいた。

 

「これからどうしよ…」

 

 秋くんは不安からかそんな言葉を零す。

 フードコート内を人混みに気をつけながら走っていると後方から私達を追う人物が。

 

「追いついてきた!」

「こっち!」

 

 秋くんを伴いながら私は走り続ける。

 やがてフードコート内にあるテラスへ出る、周りの人達はバタバタと駆け込んできた私達に目線を移しているが、それを気にしている暇はない。

 

 しかし万事休す。周りを見渡したが下階に降りるための手段がない。非常階段こそあるが施錠されていて使えない。あんまり慌てていたからか道を誤った。

 

「追いついたぞ!秋!」

 

 そうなると数馬君が私達に追いついてくるのは時間の問題。息を切らしながら追い詰めてきた数馬君は私達に向けてビシッと人差し指を立てる。

 

 ここまでか…。

 半分諦めながら息を吐くと、どこかから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「おやめなさい!」

 

 私と秋くん、そして数馬君もまた声の主の方へと振り向く。クリーム色の金髪をした碧眼の子。その人物は私にとってあまりに見覚えがありすぎる人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「セシリアさん!?」

「ごきげんよう、相川さん」

 

 驚きを露わにしている相川がセシリアの名を叫ぶと、セシリアは柔和な笑みを返す。

 相川と秋が追われているのを目撃したセシリア達はこっそりと後を追った。そして辿り着いたらこんな状況になっていたわけだ。

 

「僕もいるよ」

「私もいるよー」

「ウチもおるでー」

 

 ふふんと得意げに仁王立ちするセシリアの背中からそれぞれ右側からシャルロット、左側から緑葉、そして龍驤が股から顔を出していた。

 「なんですの貴女達…」と呆れたもののすぐにセシリアはキッと数馬を見据える。

 

「貴方、以前一夏さんのお誕生日会の時に出会った方ですわよね?相川さんに一体何の用が?」

「うぐっ!」

 

 痛いところを突かれた数馬が怯む。改めて自分がやってることの恥ずかしさを実感したのだろう、反論が出せずにいた。

 

「人の恋路を邪魔する人は馬に蹴られて地獄に落ちるよ」

「ガハッ!」

 

 追い討ちをかけるようシャルロットから発せられた手厳しい台詞に数馬は精神的にかなりのダメージを受ける。

 

 するとまたドタバタとこちらに駆け寄ってくる足音が耳に届く。それも1つや2つではなくもっと複数のものだ。

 セシリア達がそちらへ目を向けると、数か所ある扉が一斉に開いた。

 

「数馬、生きてるか!?」

「死んでくれたら死んでくれたでいいんだけどなぁ」

「やあっと追いついたわよバカ数馬達ィ!」

「いい加減何がなんなのか教えてくれ!」

「凰、篠ノ之、貴様らの隠密行動はだな…」

「つ…疲れた……。ラウラ…速すぎ…」

「あの、さっきから騒がs」

「食事中は静かに…………、ってあらまぁ」

 

 扉からは弾、一夏、鈴、箒、ラウラ、簪が全く同じタイミングで踏み込んでくる。さらにテラス席に座っていた弾の妹である蘭と何故か同席していた楯無もやってきた。となれば皆のリアクションは想像通り。

 

「って蘭!?」←弾

「お兄!?」←蘭

「簪ちゃん!?」←楯無

「お姉ちゃん…?」←簪

「鈴!?」←シャルロット

「シャルロット!?」←鈴

「セシリア!?」←一夏

「一夏さん!?」←セシリア

「ラウラ!?」←箒

「なんだこれは(困惑)」←ラウラ

「店長ッッ!!」←緑葉

「お客様!!」←店長

「アンタらは乗らんでええ!」←龍驤

「わけわからん!!!!」←数馬

「「………………」」←相川・秋

 

 と、それぞれ十人十色の反応を見せる。若干2人ほど余計なのが紛れ込んだが。

 渦中の中にいる相川と秋はただただその様子をポカンと眺め、数馬は意味がわからないと叫ぶ。

 

「待って、待って、何この状況。なんでこんなところで主要キャラ揃うん?どういう状況これ」

 

 緑葉が困惑の表情を浮かべながら周りを見回す。それは他の皆も同じである。

 

「蘭お前今日用事があるって言ってたが…」

「学園祭の時にお世話になった楯無さんにお礼がしたくて。……それよりお兄、一夏さんと一緒に何やってるの?」

「えっ!?いやこれはそのだな……」

 

 一方に目を向ければ妹である蘭に兄である弾が問い詰められ、

 

「お姉ちゃん…、何でここに…」

「いやぁ〜、未来の後輩ちゃんにお礼がしたいって言われて、ね?」

 

 また一方に目を向ければ、こちらは更識姉妹。ただ心なしか姉である楯無が妙にたじろいでる。

 

「鈴、それに箒も、お前らもレゾナンスにいたのか」

「それはどうでもいいわよ。それよりなんで一夏が弾や数馬と一緒にあの2人追いかけてるわけ!?」

「追いかけ…?そうか、貴様というやつは……」

「待て!俺だってやりたくてやってるわけじゃないぞ!どちらかというと被害者だ!」

 

 またまた一方に目を向ければ一夏が鈴と箒に問い詰められている。鈴は勢いのまま食ってかかり、箒の背中にはイチカ絶対許すまじとかそういうオーラが漂っている。

 

「まさか皆さんと鉢合わせることになるとは思いませんでしたわ……」

「ラウラはなんでここに?」

「うむ、凰と篠ノ之に隠密行動とは何かというのを仕込むために少しな。それよりシャルロット達はショッピングか?」

「買い物や。途中でウチらとおうてな、そっから一緒に行動してたんや」

 

 またまたまた一方に目を向ければ、セシリアとシャルロットにラウラが近寄り話しかけている。

 修羅場度でいえば一夏&幼馴染み>五反田兄妹>更識姉妹>セシリア・緑葉達とラウラ。こんな感じであろうか。

 

 だが、緑葉はあることに気付き相川の方を見る。相川の横に立っている少年が例の彼しかである秋だろう。緑葉自身、前に1度会ったことがあるから覚えている。

 そんな彼は突然の出来事に困惑しているが、問題は相川だった。

 

(やばいめっちゃ機嫌悪くしてるじゃん…)

 

 明らかに相川は機嫌を悪くしていた。いつ怒りが爆発してもおかしくないほどに。

 




吉本新喜劇ネタが混じってるけど、どこか見つけられたかな?
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