IS 〜夢のような旅路〜   作:フレイア

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#30 屋上で食うメシは旨い

 

 

「ではこれより、チームを二班に分ける」

 

 説明を終えたのち、千冬は専用機持ちを見据える。

 

「学園側にはオルコット、凰、篠ノ之、簪の4人だ。第二波も考えられる、気を抜くなよ。私もそちらへ向かう」

「わかりましたわ」

 

 セシリアが自信に満ちた返事をし、他のメンバーも力強く頷く。

 

「緑葉の方には織斑、デュノア、ボーデヴィッヒ、楯無に行ってもらう。そちらには山田先生が同行する。なお、市街地戦の可能性が高いため街への被害は最小限に留めろ。特にデュノアとボーデヴィッヒは飛び道具は使うなよ」

「おう!」

「分かりました!」

「了解です!教官!」

 

 一夏、シャルロットはそれぞれ気合の入った返事をする。ラウラは直立不動の敬礼を見せ楯無もまた不敵な笑みを浮かべる。

 どのチームでも一国の軍隊を相手取ることが出来る戦力を誇っている。それがISであり、代表候補生ならびに国家代表だ。

 

「よし。ではこれより作戦を開始する!」

 

 千冬の号令と共に皆一斉にそれぞれの愛機を展開させる。

 昨日の激戦からまだそこまで時間は経っていない。100%のコンディションを出せるとは言いがたいが今回は戦闘が目的ではない。

 

「篠ノ之、頼む」

「分かりました」

 

 箒は千冬を抱き抱えて浮上。生身である千冬の身体へ負荷をかけないようゆっくりと飛び立つ。それに続く形でセシリア、鈴、簪も空高くへと飛び立つ。

 

「私達もいきますよ!」

「はい!!」

 

 <ラファール・リヴァイヴ・スペシャル>を身に纏った真耶が砂埃を巻き上げながら飛び立ち、後の面々も真耶に続いた。

 

「む?」

 

 1番最後に飛翔したラウラが不意に機体を止める。彼女は後ろへ振り向き、さっきまで自分達がいた公園をジッと眺める。

 

(今、誰かに……)

 

 実を言うと、ラウラは公園で作戦会議をしている間にもしきりに辺りを見回していた。というのも、誰かに見られている気配を感じていたのだ。

 しかし目を配ってもその姿は見えず、感じた気配も曖昧なものだったため特に意見する内容ではないと判断していた。

 

「ラウラー、先行っちまうぞー」

 

 公園の方を見つめるラウラに一夏が声をかける。彼をはじめ、他の皆はラウラが感じた気配には気が付いてはいなかった。

 

「あ、あぁ」

 

 妙な引っかかりを感じながら、ラウラはぎこちない返答をし、一夏とシャルロットの後に続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいもしもし緑葉です」

『緑葉さんですか?加賀です』

「加賀さん?どうしたの?」

 

 一夏達の行動を監視するために京都へ向かった加賀からの電話。緑葉はお昼ご飯用に買っておいたハンバーガーを頬張りながら応答する。

 

「珍しいね加賀さんからくるなんて、そういえばもう新幹線乗ったの?乗ってないならお土産頼みたいんだけど」

『そっちへ<白式>が向かっているわ』

「ほお?」

 

 緑葉の表情が険しくなる。

 詳しく話を聞くと、緑葉の制止と<ユングフラウ>の迎撃に一夏、シャルロット、ラウラ、楯無、真耶が差し向けられたという。また学園の援護にはセシリア、鈴、箒、簪、そして千冬が向かったと聞かされる。

 

『そしてもう1つ。横須賀に駐屯している米軍のIS部隊が貴女達の元へスクランブル発進したって』

「うーん…」

 

 苦笑いを浮かべ食べきったハンバーガーの包み紙を袋へ仕舞う。

 専用機持ちが5人、さらには米軍ときた。

 緑葉とアシェリーを相手取るにはいささか戦力が過剰な気もしなくもない。それほどにまで評価、いや、危険視されている証なのだろうか。

 

『どうします?私も出撃しますか?』

「いや、その必要はないよ。皆の目を引いているのは私だから、加賀さんはそのまま待機でお願い」

『分かりました。では、以降の段取りも』

「うん。頼むね」

 

 加賀との通話が切れ、緑葉は空を見上げる。

 

「さて、どうなるかな。これ以上<ユングフラウ>にも構っていられなくなった」

 

 展開したモニターにはいつ、どこで手に入れたのか、現在緑葉と交戦状態に入っている敵IS<ユングフラウ>のデータが表示される。

モニターを眺めながら緑葉は苦笑する。

 

「少なくとも、私が米軍に狙われる自体は避けたいなぁ。あくまで私は被害者で相手はテロリストなんだから」

 

 こちらはIS学園側。街への被害はさておき緑葉達には『学園を亡国機業というテロリストに襲撃され正当防衛の迎撃に当たった』という大義名分がある。少なくとも、米軍がこちらに敵対するつもりはないと見ていい。

 

 チラリと緑葉は遠くを見る。丁度<ユングフラウ>の反応がある方角だ。相手にも米軍接近は伝わっているだろう。

 

「……フン」

 

 鼻を鳴らし、ステップを踏みその場から離れると先程まで自分が座っていた場所を熱線が溶かす。

 やはり<ユングフラウ>からしても援軍が到着する前にケリをつけたいと見た。

 警告音が鳴り、目視でも4枚の羽をなびかせた<ユングフラウ>を捉える。緑葉は両手にブレードを握り、ニヤリと笑った。

 

 

 

 

 IS学園地下区画、残っていた最後の警備システムを破壊したレイナが『Level4』と書かれた扉の前に立つ。

 さすがにあっけなさすぎる、というのが率直な感想ではあったが、この場合はむしろありがたい。

 

 レイナは前もって『あるルート』から入手していた山田真耶の網膜と指紋のデータを用いて扉を開けようとするが、モニターにはエラーの文字。

 

「あかんか」

 

 レイナは悪態をついて腕を組む。教員のデータが手に入れられずやっとの思いで手に入れた切り札が使えないとなると、もはやお手上げだ。

 切り替えてせめて少しでも情報を掴もうと移動しようとした時、<シェアーフィンス>のマサラッキから通信が入る。

 

『隊長、レイナ隊長』

「どうした?」

『そちらに向かっている編隊をキャッチしました。例の専用機持ちです』

「もうきたか」

 

 ちょうどこの時間帯に京都から東京に戻ってくることは学園を離反したダリルからもたらされた情報と一致する。レイナ達も一夏達が乗り込むだろう新幹線の時刻は事前に調べ上げ把握していた。

 にしても展開が早すぎる。レイナはマサラッキに問うた。

 

「艦長、その編隊はどの方角からこちらに迫ってきている?」

『学園の位置から見て、11時の方角だ』

「とすると、奴ら手前で降りたな」

『恐らくそう見て間違いないだろう。相手は専用機持ちの代表候補生だ。いくら貴女の腕をもってしても厳しいと思うが』

「分かっているよ、こちらの残存戦力は?」

『学園を攻撃した本隊は既にこちらに撤退済みだ。そちらに残っているのは君だけだ』

「……」

 

 なんたる無様な結果だ。レイナは仮面越しに顔色を変える。

 元々が本隊も別働隊もレイナを学園地下区画へ侵入させるための陽動。練度の方も正直なことを言えば期待していなかった。しかしこれはあまりにも情けなさすぎる。

 あとで叱責ものだな、レイナはマサラッキへ呼びかける。

 

「別働隊はどうした?」

『全機健在です』

 

 その報告にレイナの表情は若干緩む。本隊の面々とは違って別働隊のメンバーであるヘレンとオパール、そしてアシェリーは組織内でも手練れの部類に入る。

 

『現在トロイ機とモルニ機は海上にて敵ISと交戦中。頃合いを見て撤収すると』

「そうか」

『それと…、<ユングフラウ>なのだが…』

 

 マサラッキの声色が変わる。

 

「アシェリーがどうした?」

『……敵ISと交戦に入り、現在単機で行動中らしい。トロイ機とモルニ機とは逸れてしまったようだ』

「そうか……しかしアシェリーならそれくらい切り抜けられるだろう」

 

 アシェリーの腕前はレイナやスコールからお墨付き。早々やられるわけがない。ましてや彼女が駆っているのは亡国機業が技術のすいを集めて作り上げた最新鋭機。なんとかなるはずだと、レイナは淡い期待を寄せる。

 

『しかし物事はそう上手くはいかないものだ』

 

 意味ありげな言葉を発するマサラッキに対し、レイナは顔を顰める。

 

「どういうことだ?」

『専用機持ちが、アシェリーの元へ急行している』

「何……?」

『横須賀の米軍も動き出している。我々もこれ以上留まり続けるのはマズい』

「米軍も?バルードは抑えられんかったんか」

 

 各国政府や大手企業、さらには軍相手にも深いコネクションをもつ亡国機業。

 亡国機業と横須賀に駐屯する米軍との間には今回の件を巡って『亡国機業が起こしたアクションについては静観するように』と横須賀に駐屯しているバルードなる高級将校と密約を交わしていた。

 

 しかし今、密約を知る由もないどこかの跳ねっ返りが出撃した。戦況は限りなく不利、レイナは扉から踵を返す。

 

「<シェアーフィンス>は全速で現海域から離脱。ヘレンとオパールも呼び戻せ!」

『ハッ!隊長は』

「アシェリーを迎えにいく。作戦は成功といっていい、ポイントP-35で落ち合うぞ」

 

 切り札が使えないのならこの場にいても意味がない。<ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ>を展開したレイナは一気に地下区画を滑空。セシリア達が到着する前に飛び去っていった。

 

 

 

 

 横須賀基地、IS格納庫にてアラートが鳴り響き、パイロットは愛機の元へと駆け寄る。

 

「イーリ、相手を間違えないでね」

「分かってるさ」

 

 ナターシャとイーリスもまた互いに握り拳を軽く当て、米軍が開発した第3世代機<ファング・クエイク>に乗り込む。

 機器のチェックを行いながらイーリスは通信を開きオペレーターへと繋ぐ。

 

「ターゲットの現在位置は?」

『鶴見地区だ。近くには住宅街だけではなく工業地帯もある。そちらへの被害は最小限にしろ』

「さっきナタルにも言われたよ。なんだ?そんなにアタシが信用ならねぇか?」

 

 心外だと言わんばかりに悪態をつくイーリスの隣に白い<ファング・クエイク>を纏ったナターシャが歩み寄り、イーリスの肩に手を置く。

 

「軽口は慎みなさいイーリ。作戦は始まっているのよ」

「りょーかい」

 

 上官であるナターシャに対しあっさり引き下がったイーリスの表情は次の瞬間にはキッと引き締まる。

 

「イーリス・コーリング、<ファング・クエイク>出るぜ!!」

「ナターシャ・ファイルス、<ファング・クエイク>出ます」

 

 カタパルトから発進した2機の<ファング・クエイク>の後を追うように灰色にカラーリングが施された4機の<ラファール・リヴァイヴ>が飛び立っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 イーリス達が横須賀を経った時、鶴見地区上空では緑葉の<瑞雲>とアシェリーの<ユングフラウ>による戦闘が再開されていた。

 防戦に専念するアシェリーが撤退の頃合いを見計らうのに対し、緑葉は攻勢の手を緩めることはない。

 

「くっ、ちょこまかと!」

 

 アシェリーが地面ギリギリまで急降下、緑葉も追うように続く。

 道路を走る車の合間を縫うように2機は激しいドッグレースを繰り広げる。車を運転している人や歩道を歩く人は突然の出来事に目を白黒させる。

 

 交差点に差し掛かったところでアシェリーが機体を急上昇させる。そこを見逃さなかった緑葉は両腰に装着していたロケットランチャーを掲げる。

 トリガーが引かれ、2弾のロケット弾がアシェリーへ襲いかかる。

 

「ちぃっ!」

 

 機体を旋回させたアシェリーは腕部に装備されたビームガンを迫りくるロケット弾へ放ち命中、ビームに焼かれたロケット弾は轟音と共に火球を作る。

 腰部のハードポイントからロケットランチャーの発射器を外した緑葉はヒートホークを抜き<ユングフラウ>へ肉薄する。

 

「キャッ!」

 

 メキンッ!と音を立て<ユングフラウ>の装甲のが溶断される。溶けた装甲の一部がアシェリーの肌を焼き、彼女は一瞬苦悶の表情を浮かべ怯む。

 

「ぐうううっ」

 

 いくら絶対防御を備えているISとはいえダメージはゼロではない。スク水とも例えられるISスーツに溶けた熱々の物体が肌に張り付くのは地獄以外の何者でもない。

 

「卸して焼き鳥だ!」

 

 緑葉がアシェリーの首を掴み、今まさにヒートホークを振り下ろさんとした瞬間、<瑞雲>と<ユングフラウ>に接近警報が鳴る。

 首から手を離した緑葉はアシェリーから距離を取りレーダーを見やる。

 

「新手?この反応は米軍か!」

 

 

 

 

 2機のISが戦闘を繰り広げる空域へ辿り着いたナターシャとイーリス率いるIS部隊は戦闘態勢に入る。

 

「アレだな」

 

 <ユングフラウ>と<瑞雲>の反応を認めたイーリスか呟く。

 

「IS学園からの援軍もくるわ、その間は私達で持ちこたえるわよ」

「あのガキがか?」

「そうよ。全く縁あるものね」

 

 しみじみと語るナターシャ。この2人はIS学園の専用機持ちとは何かと縁があるのだ。

 7月の合宿の際にはナターシャが乗っていた<銀の福音>が暴走事故を起こした時に身を呈して福音を止めてくれたのが彼らである。

 

 イーリスも少し前にある事案の際に空母内で侵入していた一夏と楯無と遭遇。流れのままに一夏と交戦状態に入ったが、自分でも気付かないうちに和解していた。

 

「協力者とコンタクトは?」

「まだ繋がらないわ」

「ならこっちから直接……、っておい!ディアドラ!突貫しすぎだぞ!!」

 

 モニターで協力者を探っていたイーリスが突如声を荒げる。見ると隊員の1人であるディアドラの機体が隊列から離れ<ユングフラウ>と<瑞雲>の元へ向かっていた。

 直後他の隊員からも通信が入るが、やはりその様子は緊迫していた。

 

『イーリス曹長!ディアドラ機が隊列から外れていきます!』

「分かってる!ちっ!功を焦るとロクなことがないってのに…」

「イーリ、他の子達は私に任せて貴女は」

「分かった、そっちは任せる!」

 

 イーリスは他の隊員達をナターシャに任せ、功を焦る部下の元へ向かう。

 

 丁度同じ頃、緑葉の攻撃によってダウンした計器を再起動させようとタッチしているアシェリーの<ユングフラウ>に衝撃が走る。

 

「なっ何!?」

 

 レーダーを見ると、1機の<ラファール・リヴァイヴ>が映り込む。灰色にカラーリングされた機体は米軍機を表す。つまり

 

「上の工作は失敗…?マズい!」

 

 段取りでは米軍はこの作戦には介入しないことになっている。しかしアシェリーに接近する米軍機は、それが何らかのアクシデントで破られた、無効化ことを意味する。

 レーダーは数機のISの反応を捉える。これら全て米軍の物と見ていいだろう。そしてアシェリーは単機。目の前にいる謎の機体も健在となれば

 

(つまり作戦は失敗、撤退か!!)

 

 となればこの空域に用はない。アシェリーは機体を翻そうとしたところへ米軍の<ラファール・リヴァイヴ>が迫る。

 直後、アシェリーはギョッとすることになる。何を思ったか米軍機はアシェリーへ向け発砲、それも1発2発の類いではなく連射、乱射と表現した方がいいほどだ。

 

「正気か!?」

「街中で発砲?軍用機が!?」

 

 その様子には緑葉も唖然とする。緑葉もアシェリーへ向けビームライフルの引き金を引いていたが、彼女の場合は街への被害を出さないように<ユングフラウ>が自機より直上に上がったタイミングで撃っていた。

 しかしこの米軍機は街への被害は二の次という具合に乱射を繰り返している。というより街への被害など考えていないのかもしれない。

 

 堪らず緑葉はオープンチャネルを開き、<ラファール・リヴァイヴ>の射撃を避け続けるアシェリーへ向け怒鳴りつける。

 

「4枚羽!もっと高度を上げろ!」

「言われずとも!!」

 

 <ユングフラウ>は自慢の大出力を利用し一気にスピードを上げる。そのスピードに追いつけない<ラファール・リヴァイヴ>に向け緑葉が渾身の蹴りを放つ。

 蹴りをもろに受けた<ラファール・リヴァイヴ>は空中で横回転しながらビルの外壁に激突する。

 

「あっやべ」

 

 自分のやったことに気付いた緑葉はやらかしたと手を口元へ近づける。

 相手からしたら味方(恐らく)だと思っていた機体から突然蹴りを食らったのだ、下手したらこちらも攻撃される。

 そう直感で感じ取った緑葉は建物の影に隠れて様子を伺う。幸いなことに、米軍機は<ユングフラウ>の方にお熱が入っているのか緑葉に構うことなく飛び去っていく。

 

 ホッと息をつく緑葉の元に1機の見慣れない機体が近づいてくる。黄色にカラーリングされたその機体に対し、<瑞雲>に収められたデータが<ファング・クエイク>とイーリス・コーリングの名を割り出した。

 何故アメリカの最新鋭機とその搭乗者のデータが<瑞雲>に入っているかはさておき、緑葉は<ファング・クエイク>のパイロット、イーリスへ話しかける。

 

「話に合ったアメリカの掩護が貴女達?」

「そうだ。お前は?」

「あ、えーと」

 

 イーリスからの返しに対し、緑葉は答えに窮した。一応今はIS学園の関係者、果たしてそれがまかり通るかは相手次第だ。

 

「……学園の客員ってことになってる」

「客員身分のやつがなんでIS纏ってテロリストと戦っている」

「事情もちなのよ」

「事情持ちぃ?まぁいいや、それよりお前が例のじゃじゃ馬なんだろ?」

「荒馬?」

 

 じゃじゃ馬、という単語に緑葉は首を傾げる。

 

「織斑千冬といえば分かるだろ?さっきアタシらにも学園から連絡が入ったんだよ。『ウチのじゃじゃ馬の掩護をお願いしたい』って直々に」

 

 なるほど、と緑葉は思わず苦笑する。

 確かに彼女からすれば、自分はじゃじゃ馬だろう。もっとも折り合いさえ合えば聞き分けのいい方だと自分では思っているのだが。

 

「先程の一部始終は遠巻きにだが観戦させてもらった。腕は立つみたいだな」

「そりゃどうも。現役の軍人さんに褒められて嬉しいよ」

 

 自分を評価してくれる米軍人へ緑葉はハッと冷や汗を垂らしながら顔色を伺う。

 今イーリスは一部始終を見たと言った、ということはさっき自分が米軍機に対し蹴りを食らわせたところも見られたことになる。

 

「安心しろって、お前がディアドラに対してやったことを責める気はアタシにはないからよ。むしろ、よくやってくれたと思ってる方だぜ?」

 

 糾弾されると思ってた緑葉は内心ホッと胸を撫で下ろす。もっとも『よくやった』と言われるとは思わなかったが。

 緑葉とイーリスは共に<ユングフラウ>と<ラファール・リヴァイヴ>の後を追い、スピードを上げた。

 

 

 

 

 ディアドラが駆る<ラファール>に執拗に絡まれていたアシェリーは軽く舌を打つ。あの米軍機はアシェリーを撃墜させることしか頭にない。街への被害などお構いなしだ。

 

「ファンネル!」

 

 バインダーから数基のファンネルが射出されディアドラの機体に襲いかかる。

 しかし流石は米軍の精鋭部隊所属のパイロット。命中こそすれど巧みなダメージコントロールによって直撃には至らない。ディアドラは機体を上昇させ、アシェリーより数十メートル高い位置からアサルトライフルを構え、ニィッと笑みを作る。

 

 ——それが、油断のもとだ。

 

「ッ!?」

 

 ファンネルから放たれたビームが命中し、ディアドラの身体を揺さぶる。それだけならまだなんとかなる、しかし何かおかしいことに気付く。

 異変に気付いたディアドラが計器を見るとみるみる高度が下がっていくのが確認でき、思わず青ざめた。先程の攻撃がたまたま打ち所が悪いところへ命中したのだろう。

 

 それを回顧している時間はディアドラにはない。機体は急降下を続け、このままでは地面に激突する。

 絶対防御がある分死ぬまではいかないかもしれないが、それでもこの高度からの落下、重傷は免れない。街にも多大な被害が出る。

 助けを呼ぼうにも単機で突出しすぎたため、本隊とは離れてしまい呼んだところで間に合わない。

 

『ホワイト1ダウン!ホワイト1ダウン!』

 

 ディアドラ機が落下していく様子はイーリスやナターシャ達からも見て取れたが間に合う距離ではない。ナターシャはただ歯噛みしながら見ることしかできなかった。

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