IS 〜夢のような旅路〜   作:フレイア

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 アカーン!!


#35 おじちゃぁぁぁぁぁぁん!!!!

 織班一夏の襲撃に失敗し、直ぐにその場から逃走。今は同僚であるアシェリーにトラックの運転を任せ、助手席に座っているオータムはイライラしながら指でトントンと肘掛けを叩く。

 

「そんなにイライラしないで下さいよ、こっちの肩身が狭いです」

「けっ」

 

 飲み物に口をつけながら、右手でハンドルを握るアシェリーが気まずげにオータムへ話しかける。

 オータムとアシェリーは亡国機業の実働部隊内での同僚で、オータムから見てもアシェリーは接しやすく気軽に話し合える貴重な部隊員ということもあり高く評価していた。

 

「いいから前見て運転しろ。この先の高速に乗ってくらますぞ」

 

 ホルダーに飲み物が入ったペットボトルを収めたオータムは、袋の中から茎わかめを取り出しそれを口の中へと入れる。

 

「隊長、これ高速道路じゃありません」

「どっちでも良いんだよそんなこたぁ。いいから飛ばせ。ヤツらがくる」

「法定速度の70キロは守りますからね」

「分かったから前を向いてくれ」

 

 若干生真面目な面があるアシェリーを適当にあしらいオータムは窓を開け海を眺める。

 

 思えばここ最近のオータムの戦績は思い出したくないレベルで散々なものであった。

 学園祭ではわざわざ偽名を使い変装して潜入し、織斑一夏を追い詰めることはできたものの乱入してきた更識楯無に完敗。エムに助けられる屈辱を味わった。

 

 戦績ではないが、篠ノ之束を亡国機業へと引き入れる際には束が連れていた少女、クロエ・クロニクルを人質にとる強行策にでたがそれも失敗し、オータム自身は束に蹴られるわ肺をナイフで突き刺されるわで怪我も負った。しかもその後エムを見た束はちゃっかりとエムへ新型ISを供給している。

 

 IS学園が修学旅行の下調べという名の亡国機業掃討作戦を画策した際にも出撃、IS学園を裏切ったダリルとフォルテの援護もあり一夏を袋小路まで追い込んだが、専用機持ち計6人に囲まれるという無理ゲーに屈する形で敗北。その後起きた騒ぎのどさくさに紛れスコールに助けられた。

 しかもここ数戦の戦闘の影響で愛機である<アラクネ>も根を上げたのか、次の作戦に備えてオーバーホールに出している。

 

 と、ここまで全ての戦いで敗北しているオータムなのである。恋人であるスコールからは「気にしなくてもいい」と言われたが、大事な作戦を控えている今、オータム自身この辺りで結果を出しておかなければならないと思った。

 今回もスコールには物資輸送を行うと誤魔化し、アシェリーを連れ単独で織斑一夏襲撃を計画し実行したが、結果として防がれてしまい失敗に終わった。

 

「ちっ…せめて<アラクネ>が使えれば…」

 

 ホルダーに入れられているスナック菓子をつまみながら愚痴をこぼす。前述の通り、現在は亡国機業が所有する秘密ドッグでメンテナンス中である。ちなみにトラックの荷台の中にはISの予備パーツや物資が詰め込まれている。

 そんな物資の中に80代の老人の遺体が紛れ込んでいる事など知る由もなく、オータムを乗せたトラックはバイパスへと入る。

 窓を閉めようとした途端、遥か後ろの方で叫び声がした。

 

「「待てぇぇぇぇぇぇぇ!!」」

 

 聞き覚えのある叫び声に反応し、オータムはサイドミラーを覗き込む。サイドミラーに反射して映った2機のISを確認したオータムは軽く舌を打つ。

 

「やっぱり追ってきやがったな」

 

 シートベルトを外したオータムはぼやきながらダッシュボードの上に置いてあるアクセサリを手に持つ。<ラファール・リヴァイヴ>の待機状態であるアクセサリだ。

 

「こちらの心配はありません。ご武運を」

「おうよ」

 

 オータムは勢いよくドアを開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ!高速に乗っちまう!」

「待て、あれはバイパスと呼ばれる市街地などを迂回するための——」

「今はどっちでもいいから!」

 

 一夏とラウラは共に<白式>と<シュヴァルツェア・レーゲン>を展開し、上空から亡国機業のトラックを追いかける。まだトラックの方はおじちゃんの遺体が紛れ込んでいることには気づいていないようだ。

一夏がマップを表示しながら隣を飛ぶラウラを見やる。

 

「ラウラ分かってるな、今回はアイツらと戦うことが目的じゃない。おじちゃんを回収した後は直ぐに離脱だ」

 

 今回はある種の救出作戦だ。トラックの荷台に紛れ込んだおじちゃんの遺体を回収した後は脇目も振らずに離脱する。

 万が一亡国機業との戦闘に入った際におじちゃんの身体に傷でもついた時にはその時点で作戦失敗。最悪自分達も魂を抜き取られることも覚悟しておかなければならない。

 

「安心しろ。私はシュヴァルツェ・ハーゼの隊長だ。この手の救出作戦には長けている」

 

 ラウラが頷いた瞬間、警告音が鳴り響く。一夏はレーダーに映った機影を確認する。機影に映ったISは自分達もよく知っている<ラファール・リヴァイヴ>だ。

 

「くるか!」

 

 機影を確認した一夏は臨戦態勢に入る。雪片二型を右手に持ち、かかってこいとばかりに剣を握る。だがそれを見たラウラは一夏へ一つの提案を投げかけた。

 

「一夏、お前はトラックを!二手に分かれて動いた方がいい」

「いいのか?でもラウラが」

「心配は無用だ。私は<ラファール>に遅れをとるつもりはない」

 

 ラウラの提案を聞き、少し考え込んだ一夏は納得したように頷いた。

 

「分かった、すまねぇ!」

 

 一夏は機体を降下させ、オータムには目もくれず海沿いのバイパス線を行くトラックへと向かう。

 

 白式とすれ違ったオータムはトラックへ接近する白式の姿を捉え、そちらにマシンガンを構えるが割り込んできたレーゲンのタックルを食らいバランスを崩す。しかしオータムも熟練のIS操縦者、不意打ちのタックルの衝撃に動じることなく機体を持ち直す。

 

「ほお、今日は第2世代機か。いつもの蜘蛛型のヤツはどうした?」

 

 ラファールの操縦者がオータムだと気づいたラウラは侮るような笑みを浮かべる。ラウラの挑発が少し癇に障ったオータムは噛みつかんばかりに吠える。

 

「けっ、テメーらのせいでメンテ中だよ」

「それは悪かったな」

 

 オータムの睨みつけに動じることなくラウラは嗤う。そこへ一夏からプライベートチャネルを経由し通信が入ってきた。

 

『ラウラ、なるべく飛び道具は使うな。真下は道路や住宅街だ。近接武装で足止めをしてくれ、出来るか?』

 

 一夏の通信を聞きながらラウラは眼下に広がる街並みを見る。即座に一夏の考えを理解したラウラは含み笑いをする。

 

「無論だ。こちらも最初からそのつもりだからな」

 

 両手にブレードを構えながらラウラは<ラファール>から目を離さない。

 それを見ていたオータムがレーゲンへ向けマシンガンをむける。するとそこへアシェリーから通信が入ってきた。

 

『隊長!銃火器は使わないで下さい!』

 

 唐突にアシェリーが寄越した通信の内容に思わずオータムは「はぁ!?」と素っ頓狂な声をあげる。

 

『眼下は街です!それにこちらにも被害が出ます!』

 

 アシェリーの正論にオータムは渋々従いマシンガンを収納する。

 自分で言うのも癪だが馬鹿だと自負しているオータムに対し、アシェリーは名門大学の出で頭の回転が速い。そんな2人を見てどうしてウマが合うのか疑問に思う人物も少なくないほどだ。

 

「どうやら、貴様も私と同じことを言われたみたいだな」

「けっ、言ってろ」

 

 ラウラが嘲笑的な笑みを浮かべ、オータムもブレードを展開する。やがて両者の剣先がぶつかり合い、近接武装のみという縛りが形成された特異な戦闘が始まった。

 

 

 

 

「あれか!」

 

 おじちゃんの遺体を載せたトラックはスピードを緩めずに追い越し車線を走っている。ISが出てきたあたり、あちらもこちらへ気付いているだろう。

 一夏はおじちゃんがシートを突き破った辺りをくまなく探す。そして荷台の中に混ざっているおじちゃんを見つけ出せた。

 

「やっぱり荷台の中に入っちまってるか!」

 

 シートに包まれた荷台の内部は暗くてよく見えないが、うっすらとおじちゃんの身体が確認できる。走行する時の衝撃か何かでおじちゃんの身体は荷台の中へずれ落ちたのだろう。

 外へ放り出されてたという最悪のパターンを回避し、周りの人々から見られるケースは無くなった事は幸運ではあるがこうなってくると今度は回収が難しくなる。

 

「なんとかこのトラックを止めねぇと…」

 

 まずはどうにかしてトラックを止める、あるいはスピードを落とさせるかしないと安全に回収が出来ない。相手はあの亡国機業、IS学園の敵である。聞き入れてくれる可能性は低いがダメ元でやるしかない。

 

 一夏は助手席のドアに手を伸ばし、勢いよくドアを開ける。そして身体を車内に入れるため咄嗟にISを待機状態に戻しドアを閉めた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁあ!?」

 

 助手席に座った一夏を見て運転席のアシェリーはパニックでハンドル操作を誤り、トラックは2車線の間をフラフラと走行する。

 

「待て待て待て待て!やめろ!これ以上車体を揺らすんじゃあねぇーーッ!!」

 

 一夏も一夏で荷台の中のおじちゃんの様子を想像してか顔を青ざめさせ、テンパりながらアシェリーを落ち着かせようとする。

 

「止めろーッ!トラックを止めろーッ!」

「止めろと言われて止める人がいると思いますか!?」

「質問に質問で返すなあーっ!いいから早くトラックを止めて!止めてくださいホントマジでお願いします!!」

 

 幾ばくかの口論ののち、何とか両者ともに落ち着きを取り戻す。

 

「でもいきなり止めろなんて無理ですよ」

「本当にお願いします。でないと俺ら死んでしまいます」

 

 尋常ではない一夏の懇談っぷりにアシェリーは敵ながら困惑してしまう。ここでもしトラックを止めてしまい援軍を呼ばれてしまったら自分はおろかオータムもただでは済まない。そうなってしまっては元も子もない。

 そしてアシェリーはある行動に出た。

 

「ならせめて理由は教えてくれても良いのではないですか?」

「え”っ!?えーーっと……」

 

 質問をぶつけられた一夏は答えに迷い、しどろもどろになっている。

答えに窮した一夏は固く閉ざした口を開く。

 

「理由は言えません。だけど今回は戦闘が目的ではありません!これだけは本当です!信じてください!」

 

 トラックの車内で敵に頭を下げられるというシュールな光景にアシェリーは茫然としてしまう。一夏の態度のそれはどうも嘘とは思えない。ただこれを真に受けてトラックを止めてもダメな気がする。

一体どうしたものか。一夏に従うか否か迷っているアシェリーの前で、ある事案が発生したのは、このすぐ後の事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 国府津駅の横を海に沿うように走る国道1号線と西湘バイパス。その上空500メートルの地点で2機のISが交錯する。ラウラが駆る<シュヴァルツァ・レーゲン>とオータムの<ラファール・リヴァイヴ>だ。

 

「グッ……!」

 

 戦前ラウラはラファールに遅れは取らないと豪語した。だが自身が思っていた以上にオータムの猛攻が激しく、押され気味になっていた。

 

「どうした!?その程度か!ならみじん切りにしてやるよ!」

(こっちがメインか!)

 

 ラウラには誤算があった。それはオータムが格闘戦に強いという点だった。オータムが繰り出す剣撃を交わしながらラウラは隙を見計らおうとするも中々隙を現さない。

 まだシールドエネルギーは充分ある。このまま耐えることは出来るが、ここでラウラは敢えて本来の目的をボカしながらオータムへ告げる。

 

「言い忘れていたが、今回我々は貴様らと戦闘するのが目的ではない!」

「はぁ?」

 

 オータムは何言ってんだコイツと言わんばかりに怪訝な表情を見せる。

 

「我々は貴様らが乗るトラックの荷台を確かめたいだけだ」

 

 さすがに『80代男性の遺体があのトラックの荷台にある。それを回収したい』とは口が裂けても言えるわけがないし、そもそも信用するはずがない。しかしトラックの荷台を確かめたいというのは本当であるためラウラは続ける。

 

「トラックの荷台の中を確かめたら我々は直ぐに退く。だからトラックの荷台を——」

「お前バカか?あれだけやられて今更そんな子供騙しに引っかかるかよ!」

「くっ…………」

 

 やはりというべきか、そりゃあそうだろうなというべきか。オータムは一度緩めた攻撃を再び激しくさせる。

 

 やむを得ない。そう判断したラウラはプラズマ手刀を展開しオータムが振るうブレードに矛先をぶつける。ガキンと鉄同士がぶつかり合う音が2人の間に響き渡る。

 

「へっ、そうこなくちゃ面白くねえな」

「私はスロースターターだからな」

 

 ラウラは小粋なジョークを飛ばし、鍔迫り合いを続ける。そうして小競り合いを続けるうちに戦況に変化が現れる。機体性能の差か、少しずつラウラが押し始め、オータムが苦悶で顔を歪める。

 

「少し眠ってもらうぞ」

 

 鍔迫り合いに勝ったラウラはバランスを崩したオータムを地面へ向け蹴り付ける。体勢を立て直すのが遅れたオータムの<ラファール>は落下を続け、年季が入った駅舎の屋上へと激突する。

 

 その様子を見届けたラウラは一夏の元へ向かおうとしたが、念のためオータムの様子を確かめに機体を下降させる。絶対防御の賜物で死にはしないだろうが、500メートルの位置から落下してコンクリートの建物に叩きつけられたのだ。怪我の一つや二つを負って、それで戦闘不能になってくれているのが理想的なのだが。

 

 駅舎の屋上へと降り立ったが、オータムの姿が見えなかった。それどころか<ラファール>の破片も見当たらない。

 

「逃げたか」

 

 ラウラは屋上からロータリーなど一通り見渡したがオータムの姿は見当たらなかった。恐らく逃げたか隠れたかであろう。

 それならそれでいい。トラックを追跡するために機体を飛翔させようとした時、後ろの方で耳をすまさなければ聞こえないほどの小さな音がした。

 

「どこの誰が逃げただとコラ!」

 

 後ろから聞こえた声に振り向いた瞬間、ラウラの身体中に衝撃がはしる。

 

「なに…っ、ぐわっ!」

 

 背後から現れたオータムが繰り出したタックルを食らいラウラは思わず仰け反る。完全な不意打ちだった上、屋上の端に立っていたため足を踏みはずしてしまう。

 

(しまった!)

 

 己の慢心を呪いながらラウラは煙幕を張り、寸前のところで地面に着地する。上を見上げるとオータムが肉薄してきたのが見え、ラウラはその場から後ろかがみで飛び退く。

 ブレードを持ったオータムが消えかかっていた煙幕を突き破りラウラへ飛びかかる。

 

「チッ!」

 

 両者再び剣先を交えた鍔迫り合いへ。オータムがラウラを押し込むような形で駅前を通る国道へと出る。

 

「なんだなんだ!?」

「えっ、キャア!」

 

 突如として駅前で始まった戦闘に、たちまち往来はパニックになる。通行人が逃げまどい、車を運転する人々はブレーキを踏み車を止める。

 周りにお構いなしで2機のISはそれぞれプラズマ手刀と近接ブレードで切り結ぶ。

 

「待て!我々は本当に貴様らと戦う気はない!大人しくあそこで隠れていれば見逃したものを…!」

「見逃しただと!?冗談じゃねぇ、こっちはまだ戦えるんだよ!」

 

 オータムが繰り出した突きがレールカノン砲を貫き微小な爆発を起こす。計器を確認するとエラーの文字。

 これでレールカノン砲を封じられた、が、まだ射出式のワイヤーブレードは残っている。しかし人が密集している中でのワイヤーブレードはリスクが高すぎる。オータムが射出されたワイヤーブレードを交わし、その先に人がいたら二次被害の拡大は避けられない。

 

 まだ武装のストックはあるもののそれらは全て飛び道具、どのみちラウラはこのプラズマ手刀だけで戦う他なかった。

 プラズマ手刀を上から下へ薙ぎ、オータムは反射的に後ろへ飛び退く。その際僅かに空へ浮いたオータムをラウラを見逃さなかった。

 

「ッ! てめぇ!」

 

 ラウラがパッケージから取り出したものを捉えた瞬間、オータムはギョッとする。ラウラが取り出したもの。それはドイツ軍が開発し今現在も活躍している無反動砲、パンツァーファウストであった。

 

「機体を上昇させたのが仇となったな」

 

 一夏は『なるべく飛び道具は使うな』と言った。空中戦の時に下方に撃った場合ほぼ確実と言っていい確率で地上にいる人々に被害がでる。

では逆に地上戦の際上方に撃つというのはどうだろうか?上方に撃った場合、流れ弾が人へ当たる可能性は低くなる。更にこの至近距離、ラウラの腕前なら外しようがない。

 

 ラウラは笑みを浮かべ、パンツァーファウストの引き金を引く。発射された弾頭は面白いようにオータムの機体に吸い込まれ、数瞬経った後閃光が走り爆発が起こる。

 

「ゲホゲホ…、このクソガキが…!」

 

 しかしそこはIS、生身なら間違いなく粉微塵になるが、咳込んでこそいるがオータムは全くの無傷である。

だが機体の方は無傷というわけにはいかなかった。機体を立て直したオータムが計器を弄ると左脚のバランサーがイかれてしまったのが判明した。

 このまま戦闘を行えないことも無いが、ラウラ相手に不完全な状態で戦うのは得策では無い。

 

 そう判断したオータムは機体を反転、アシェリーが運転するトラックまで一気に飛び去っていく。

 

「トラックの方へ向かう気か!」

 

 ラウラも機体を上昇させオータムを追う。結果として思った以上にあっさりとオータムに追いついた。

 

 オータムはラファールの機体制御に苦労しているように見えた。さっきの爆発でどこか損傷したのだろう。思わぬ副産物を味方につけラウラは<ラファール>の肩を掴む。

 

「トラックへは行かせんぞ。一夏が事を済ますまで私と一緒にいてもらうぞ」

「てめぇさっきと言ってること違うじゃねえか!」

「それはそれ、これはこれだ」

「ざけんな!」

「こちらの案件が済んだら撤退でも何でもするといい。言っただろ、我々は今貴様らと戦うつもりはない」

 

 「またローキックを食らいたいのか?」とラウラが付け加えると散々吠えていたオータムが少し大人しくなった。それほど掃討作戦の折に食らったキックは強烈なものだったのだろう。

 

「…なら1つ質問だ。なんでトラックに用があるんだよ?戦うつもりねーならわざわざ追ってこないだろ」

「む…、それは……」

 

 ラウラは答えに迷った。いっそのこと本当のことを言ってしまおうか?『80代男性の遺体があのトラックの荷台にある。それを回収したい』と。ダメだ、言っても信じてもらえる気がしないし、仮に自分が言われた立場にいることを想像したら絶対に信じない。

 返答に迷っている時、オータムとラウラの元にそれぞれアシェリー、一夏から悲鳴混じりの通信が入ってきた。

 

『たいちょぉぉぉぉお!助けてくださいぃぃぃい!』

『ラウラぁぁぁあ!ヘルゥゥゥゥプ!!』

 

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