IS 〜夢のような旅路〜   作:フレイア

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某日常マンガパロ。短編2連構成

あと、今回少し時系列が飛んで、2年の時のエピソードとなっております


特別編その2 小話徒然

 IS学園2年生の夏。一夏達は今年も臨海学校で花月荘へやってきた。前年の福音事件の影響で実施が危ぶまれていたが旅館側は今回も快く引き受けてくれた。

 日程は去年と変わらない2泊3日でスケジュールも大差なし。今年も何かしら起こる、と身構えていた専用機持ち達だったが結果的には杞憂に終わり、スムーズに終えることができた。

 ここでは旅館内で起きた愉快なエピソードを紹介する——————

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ」

 

 温泉から上がった鈴が声を上げる。それに釣られて後ろについていたセシリア、ラウラ、シャルロットも反応する。

 

「へー、卓球台なんてあったのね」

 

 そこは旅館の一角にあるブースで、卓球台の他にもレトロなゲームも置かれており、暇を持て余した学園生徒達も楽しんでいた。

 

「去年来た時はこういうところ見れなかったからね」

「見る暇がなかったからな」

 

 去年の出来事を思い返しながら、シャルロットとラウラはブースを見て回る。

 某課長がやりそうなレトロゲームを楽しんでいた谷本が鈴達がいることに気付く。

 

「あ、鈴じゃん。鈴も卓球やるの?」

「うーん、セシリアー、卓球やる?」

 

 セシリアはふふんと微笑む。

 

「いい機会ですし、受けて立ちますわ。ラウラさんとシャルロットさんもやりますか?」

「うむ、いいだろう」

「負けないよ、セシリア」

 

 バチバチと火花を散らすセシリア達に鈴は不敵に笑ってみせる。

 

「ね、ならさ、アレやらない?古今東西」

 

 その言葉に3人はピクッと眉をひそめる。

 

「古今東西、聞いたことがあるな。確かお題に答えながら球を打つ、だったか」

「卓球の腕前と知識量が鍵を握る、というわけですか」

「そっ、どうよ。面白そうでしょ」

「いいね。面白そう!」

 

 皆1度やってみたかったのか、反対意見は上がらず、古今東西卓球対決が実施されることとなった。

 「じゃあ審判は私がやるね」と谷本が立候補し、4人は鈴とセシリア側、ラウラとシャルロット側に分かれ、臨戦態勢を整える。

 

「そうだ。やるなら罰ゲーム決めようよ」

 

 谷本の提案に「そうねぇ…」と鈴は考え込む。

 

「なら楯無生徒会長を1発殴る、は?」

『OK!!』

 

 この瞬間、学園で事務仕事をしていた楯無に悪寒が走ったのはまた別の話。

 鈴は肩が見えるまで袖をまくり、他3人も打ちやすいように袖をまくる。

 

「準備はいい?」

 

 谷本の言葉に4人は静かに頷く。

 

「3回負けたら罰ゲームね。第1回戦、お題は………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

芝3200メートル以上の長距離G1レースを2勝以上挙げた競走馬の名前!!

「は!?」

「始め!!」

 

 あまりにマニアックすぎるお題に鈴は自分の耳を疑う。しかしその間にもゲームはスタート、先手はラウラからだ。

 

「ではいくぞ……メジロマックイーン!」

「しかもなんかやけに渋い!」

 

 ラウラが放った球は真っ直ぐセシリアへ向かう。しかし彼女は慌てる素振りを見せることはない。

 

「甘いですわ!イェーツ!!」

 

 球はセシリアからシャルロットへ。

 

「マカイビーディーヴァ!」

 

 そしてついに鈴のターン、しかし…。

 

(え…えぇ……)

 

 鈴は何一つ思い浮かばずミス。ラケットを振ることも出来ずただ呆然と球が顔を掠るのを見届けていた。もっとも、知らなくて当然な知識ではあるが。

 余談だが、のちにラウラはこの春に放送されていたウ◯娘で得た知識が活きた、と語っている。

 

「ちょっ…ちょっと待って!なに今のお題!やけに難しくない!?てゆーか誰よさっきの考えたやつ!」

「第2回戦!お題は———」

「無視するんじゃないわよ!」

 

 困惑しながら抗議する鈴に構わず、谷本は次のお題を読み上げていく。

 

芥川賞を受賞した男性作家とその作品!

「だからぁ!!」

 

 またしてもマニアックすぎるお題に鈴がツッコミを入れる。しかしここでもラウラ達は強かった。

 

「石原慎太郎、太陽の季節!」

 

 ラウラ→セシリアのターン

 

「吉行淳之介氏…驟雨ッ!」

 

 セシリア→シャルロットのターン

 

 実はこの時点で鈴は1つだけ知っているカードがあった。数年前に某芸人が書いたとして話題になったあの作品。それを言いさえすればとりあえず1回は凌げる。そう確信していた。

 

「ピース又吉、火花」

(言われた…)

 

 しかしよりによってシャルロットに言われてしまったため不発。同じ単語を2度言うことは出来ない。よって鈴は2連続ミス、リーチとなってしまった。

 

「アンタ達打ち合わせしてるでしょ!」

 

 さすがに不満が限界に達した鈴が卓球台を叩きながらラウラ達を睨みつける。

 

「いや、全然」

「偶然ですわ」

「鈴が知らなすぎるだけだよ」

 

 当のラウラ達は普通にやってますけど感たっぷりに答える。シャルロットに至ってはdisりすら入っている。

 ぐぬぬ…と唇を噛む鈴は谷本の方を見る。

 

「癒子、次はあたしにお題決めさせて!」

「いいよ〜」

 

 許可を得た鈴はラウラ達に目をやりながらジッと考え込む。

 

(よし…これなら!)

 

 一泡吹かせられる、そう確信して叫ぶ。

 

「いくわよ!日本神話に登場する女神の名前!!イザナミ!」

 

 鈴→ラウラのターン

 

「イコナヒメ!」

 

ラウラ→セシリアのターン

 

「クシナダヒメ!」

 

セシリア→シャルロットのターン

 

「ムナカタサンジョシン!」

 

 シャルロット→鈴のターン

 

「えっ!?えーっとアマテラス!」

 

 鈴→ラウラのターン(2度目)

 

「イヅノメ!」

 

 ラウラ→セシリアのターン(2度目)

 

「アワナミ!」

 

 セシリア→シャルロットのターン(2度目)

 

「ヤサカトメ!」

 

 シャルロット→鈴のターン(2度目)

 

(イザナミとアマテラスしか知らないっての!!)

 

 結果、3度目を防げず惨敗。シャルロットが放った球は虚しく鈴のおでこにぶつかって落ちた。

 

(つーかなんなのよコイツら強すぎるわ!もういいわよアンタらの勝ちで!)

 

 3回ミスしたことにより鈴に罰ゲームが決定。マジで楯無を1発殴ることになってしまった。

 臨海学校から帰ってから数日後、ラウラ、シャルロット、セシリア、谷本に抑えつけられた楯無の顔面に右ストレートを放つ鈴の姿が目撃されたとか、されてないとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風がサァ、と突き抜ける。夕日に照らされた野草は揺れ、波を描く。

 ゆったりとした時間が流れる河原にて、今日は珍しく1人で外出していたラウラは寝っ転がりながら読書に勤しんでいた。

 

(風が強くて全く読めん……)

 

 読んでいたページが風に吹かれ、ラウラは河原の土手で読書に勤しもうとしたことを後悔する。

 

(失敗したな。河原で本など、読むべきでは無かった)

 

 これならどこかのカフェでゆったりくつろいでいた方がマシだ。ラウラは本を閉じて起き上がる。

 

(ん…?)

 

 草を踏む音が聞こえ、背後から気配を感じる。なんだ?と振り返ると、そこには1人の少女が佇んでいた。

 見たところ、着ている制服は他校。恐らく近郊の高校に通っている同年代だとラウラは推測する。

 

「………」

「………」

 

 ラウラが視線を前方に戻すと、少女はラウラのすぐそばに座り込む。

 

「………」

「………」

 

 どこからかガタンゴトンという音が聞こえる。近くに鉄道の陸橋があるから、その音だろう。

 

「………」

「………」

 

 全くの他人同士たる2人が同じ場所に座り無言のまま遠くを見つめる。そんな妙にシュールな空間に再び風がサァ、と吹き、草木がたなびく。

 

(………き、気まずい!な、なんだ!?誰だ!?)

 

 ラウラはとてつもなく気まずかった。何しろ全く知らない少女と同じ空間を共有しているのだから。しかも無言で。

 

(なんで無言なのだ、このだだっ広い河原でわざわざ私の隣に座っておいて!?)

 

 とにかくこのシュールな空気に耐えられないラウラが状況を分析する。

 

(何の用かは知らんが、やはり私から声をかけるべきか…?いや、しかし何故だ?とにかく気の利いた台詞など言えんぞ)

 

 2年にもなれば、多少なりとも改善されたが未だ人付き合いには難はあるしそれを自覚しているラウラ。どこかに話を切り出せるキッカケがないか探していると、河原を照らす夕日に目がいく。

 

(夕焼けが綺麗ですね。いかん、自分で思いながら恥ずかしくなってきた。大体この状況でそんなありきたりな台詞は合わん…。

そうだ、この状況。夕日に染まる河原で孤独に本を読む少女と出逢う幻想的なシチュエーション。同性なのは気にしない、気にしていられない)

 

 ラウラはさらに考え込む。

 

(恐らくあの女はロマンチックで非現実的なボーイミーツガールならぬ、ガールミーツガールを期待しているはず…)

 

 僅かな確証を秘めながら、ラウラはチラリと少女の方へと振り返る。

 

(…どうもそんな雰囲気だな)

 

 案の定少女はわかりやすいくらいにソワソワしながらこちらの様子を伺っている。

 

(となると、イカした一言だな)

 

 ラウラはほとんど口にしたことがない『イカした一言』を捻り出そうと思考をクリアにする。

 

(大体私はみんなが用事や訓練やらがあって暇だからこうして1人読書してるだけなんですが…)

 

 いの一番に誘った一夏は倉持技研に用事があると出かけ、次に誘ったシャルロットも今日中に片付けなければならない書類を仕上げるからと断られた。最近よく絡む鈴やセシリア達も皆それぞれ用事があり、唯一ラウラだけ何もなかったためこうしてポツンと河原で読書に勤しみ、今に至る。

 

(まぁいい。とにかく彼女の期待を裏切るわけにもいかん。飛ばしてやるさ、すかした言葉を!)

 

 背中を後押しするように風が舞う。ラウラは遠くを見ながらそっと呟いた。

 

 

 

 

「今日は……風が騒がしいな」

 

 

 

 

「………」

(………いやぁ、なんかアレだな、死にたくなってきたな。なんだこれ?恥ずかしいとかそういうのではなくなんかこう…死にたい)

 

 穴があったら入りたいとはまさにこのことなのだろうとラウラは痛く痛感するハメになってしまった。そして同時にいつものメンバーがここにいなくて良かったという安堵感もこみ上げてくる。

 

(やってしまったか?)

 

 顔には出さずとも羞恥心で壊れかけるラウラはチラッと少女を見やる。

 

(いやでも嬉しそうだぞ)

 

 心なしか少女は顔を赤らめ高揚感に身体をプルプル震わせている。とりあえず手応えはあったことにラウラは内心ホッとした。

 

(少し精神が崩壊しかけたが言ったぞ!さぁ、どう返す!?)

 

 少女はスッと立ち上がる。ラウラは少女に顔を向けずとも意識を注目させる。

 

 

 

 

「でも少し…この風、泣いています」

(へはははははは面白いなぁコイツ)

 

 意外とノリがいい少女にラウラは吹き出しそうになる。少女は2、3歩前へ進み、ラウラとの距離が少し縮まる。

 

(いやーぁ…勘弁してくれ名も知らぬ者よ、もうこっちは限界だ。正直少し嬉しいと感じる自分がいたことは認めよう。しかし私には所謂空想力というものがないらしくてな、この空間には耐えられんようなのだ)

 

 遠くから夕方を知らせるチャイムが聞こえてくる。そろそろそんな時間か、ならば尚のこと、一刻も早く決着をつけねば。

 

(なので、すでに呼ばせてもらったぞ。2人の救助隊を)

 

 この間、ラウラは何も策を弄せずにしてきたわけではない。すでにこっそりプライベート・チャネルを使用しピックアップした2人へ助けを求めた。

 

(こい!勇敢なる戦士達よ!この結界を破壊してくれ!)

 

 奴らのことだ、すでに用事は終えているはず、あとは来てくれるか祈るだけだ。

 数分後、土手道を歩いてきた少女に気付いたラウラは歓喜した。

 

(きた!早いな…!)

 

 ラウラが呼んだ戦士その1、セシリアの姿は夕日に照らされなんとも様になっていた。

 風にあおられる髪を押さえながら、セシリアは柔和な微笑みを浮かべる。

 

「急ぎますわよラウラさん。どうやら風が街に良くないものを運んできてしまったようですわ」

(なんっで今日に限ってテンション高いんだお前はァァァァァァァア!!)

 

 よりによってノッてきたセシリアにラウラは軽く目眩を覚える。当のセシリアはラウラの隣に佇んでいる少女に気付いたのか「あっ…」と顔を紅潮させ、やってしまったと気恥ずかしさから手で顔を覆う。

 

(カアアァ…じゃないわ!死ねっ!こっちはこっちでものすごく嬉しそうだし!もう嫌だ私を現実世界へ帰してくれ!)

 

 少女はというと胸を掴みながら顔を背けている。ラウラから少女のリアクションは見て取れないが、心躍っているだろうなとは容易に想像できた。

 もう我慢できない、ラウラは鞄を持って立ち上がる。

 

(河原で1人黄昏れる少女に声をかけるという願望はもう充分叶っただろう?そろそろこの空間をぶちぬいて帰らせてもらうぞ。現実的な一言でな!)

 

 ラウラはセシリアの元まで歩き始める。すれ違った少女の顔には僅かながら動揺が見え隠れしていたが、知るものか。至って現実的な一言を言い放つ。

 

「…急ごう、風が止む前に」(何を言っているのだ私はァァァア!!)

 

 何故だ、何故この空間から抜け出せない!?一刻も早く帰りたいのに!

 

(もういい!行けるところまで行ってやるさクソッタレめ!!)

「待って!」

「!」

 

 そこにはラウラが真っ先に助けを求めたルームメイトにして良きライバルにして親友のシャルロットがいた。

 

(貴様はもう1人の救助隊のシャルロット!)

 

 シャルロットなら、1番現実的に物事を考えれるシャルロットなら何とかしてくれる。ラウラは確信していた。さぁ、どうする。

 

 

 

 

「ねぇ!そこのコンビニ、ポテト半額だって!早く行こうよ!!」

(空気読めやお前はァァァァァア!!)

 

 確かに現実的、至ってありふれた台詞なのは間違いない。だが何かが違う。ラウラにはそれが何かは分からなかったが決定的に『違うそうじゃない』的な発言だということは瞬間的に察した。

 

「ふんっ!」

「なんでぇ!?」

 

 案の定、シャルロットは少女から思いっきりグーパンチを食らった。

 




ゲスト出演 文学少女
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