IS 〜夢のような旅路〜   作:フレイア

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#44 猟犬、前へ!

「どうもこんにちは!私は鶴屋重工からきた明石と言います!」

「同じく夕張です!今日はよろしくね!」

 

 フレンドリーに挨拶をした両名はアリーナの一角に集められていた一夏、箒、セシリア、鈴、シャルロット、ラウラ、簪、本音と握手を交わしていく。

 

「あの、1ついいですか?」

「おっ、なんでしょうか!」

「俺達なんで集められたんですか?」

 

 一夏を始めとした面々は、今日IS学園へ訪ねてきた明石と夕張に召集されていた。

 元々彼女達が学園に来た理由は緑葉の<瑞雲>のメンテ、新たに搭載されたスラッシュウィザードの試験。既に粗方の試験は終えており、訓練に参加した緑葉や生徒達は現在休憩している。

 

「まぁ、そうなるよねぇ」

「とりあえず、モノ見てもらった方が早いんじゃないかな?」

「それもそうだね!んじゃ、早速これを見てもらいましょう!」

 

 そう言うと、明石は先程から皆の目を引きつけていた幕で隠された物体へと近づき、幕を取り払った。

 

「ん…?」

 

 取り払われた幕の下から現れたのは、ブルーグレイを基調とした配色が施されているメカ。大きさ的にはゴルフカートほどの大きさだが、何より特徴的なのが、まるで四本足の獣に似た、翼を背中に負おう姿は、神話に登場するグリフォンを彷彿とさせている。

 背中には連装砲が装備されている鉄の猛犬がそれぞれ8機、飼い主を待っているように鎮座している。

 

「なにこのアイボをめちゃくちゃ物騒にさせたやつ」

 

 言い得て妙なコメントを鈴が残す。

 

「この子は<バクゥ>!我々鶴屋重工が作り上げた機械犬です!」

「といってもこれらは人が操るプロトタイプで、まだまだ試作段階なんですけどね」

 

 明石と夕張の説明に一同「おぉ」と唸る。

 一夏達からのウケもいいのか、皆興味深々といった様子で<バクゥ>を見つめていく。メカ要素に心躍る一夏や簪、ラウラは特にまじまじと見つめている。

 

「この<バクゥ>、元々警備会社用に作ったやつなんですよ。あ、もうちょっとコンパクトなやつですよ?そんなデカいの建物の廊下とか入れないので」

「その大きいのは専用の操作ルームで人が操縦するやつです。それこそアイボみたいなちっちゃいコンパクトバージョンは主にコンピュータ制御で動かしていくんですけど、そのデータがまだ不足気味なんですよ」

 

 説明を聞くラウラは「成る程」と相槌を打つ。

 

「つまり、正規品に取り付けるコンピュータのデータ採取。それを我々にこのデカいのを動かしてもらって行なってもらおうというわけか」

「端的に言えば、そういうわけです」

 

 ラウラの指摘に明石が頷く。

 

「それなら、自社で行えばよろしいのではありませんか?鶴屋重工ほどの会社なら、試験場などもあるはずですし…」

 

 セシリアの疑問はもっともだ。それもそうだよね、と皆も同意する。

 

「うーん、まぁそれも考えたんですけど、この機体緑葉さんまだ知らないんですよ」

「それで?」

「驚かせてやろうかなー、と」

 

 満面の笑みを見せる明石に、一夏達は苦笑いを浮かべた。緑葉も変だが、この明石も中々変な人物である。

 先日スラッシュウィザードを受領した緑葉は一夏達に「明石と夕張のお遊びに付き合わされてる」と愚痴を吐いていた。大方この<バクゥ>もそうなのだと、直感的に察することができた。

 

「あと何人かにやらせてみたら笑っちゃうほど下手くそで撮れ高もないし、なら同じ下手くそでも代表候補生とかにやらせた方が面白そうだなって」

「あまりにもあんまりな言われようだな」

「それは分かったけど、これであたし達に何をしてほしいの?ただコースを周るとかは考えてないでしょ?」

 

 鈴の問いかけに明石と夕張は何とも言えない笑みを作る。間違いなく図星だ。

 

「そうですね。単刀直入に云いますと——」

 

 明石は笑顔を崩さず、手に摘んだ連装砲の弾を見せつける。

 

 

 

 

「———()()()I()S()()()()()()()()()()!!」

『は?????』

 

 一夏やセシリア、あの本音ですら思わず素っ頓狂な声を漏らした。鈴は信じられないといった面持ちになる。

 

「待って、これで?嘘でしょ?」

「ガチです」

「そんなユー◯ューブのメントスコーラやってみましたみたいなノリで言われても」

「メントスコーラってなんですの?」

「後でやらせてあげるから」

 

 ISの絶対的な強さは彼らIS乗りが1番知っている。正直明石達には悪いが、この<バクゥ>でISに勝てる可能性はほぼゼロだと言わざるを得ない。

 

「大丈夫です。さすがに私達もハナから勝てるなんて思ってません」

 

 明石達もそこは弁えている事実に、とりあえず皆はホッとする。

 

「まず向こうには様々な縛りを課します。まず1番大事な飛行の禁止です。あとは最大5秒間のジャンプは可、ホバー移動の禁止などです」

 

 それと、と前置きをおいた明石は改めて先程見せていた弾を掌に置く。

 

「この弾が直撃と判定される箇所、それに準じる箇所に数回ヒットすればあちらのISは動かなくなってキル成功となります。そのためのプログラムを訓練機に取り付ける許可も学園には取ってあります」

「ちなみに<瑞雲>には緑葉さんに内緒で無許可でやりました⭐︎」

 

 テキパキと説明していく明石と夕張の手際の良さに一夏達は感服する。

 

「ちょっと勝てる可能性は見えたかも」

「あちらはあちらで相当なハンデを知らず知らずのうちに背負ってるわけだしな」

「上手く立ち回れば…勝てる」

 

 シャルロット、ラウラ、簪に自信が芽生え始めた時、<バクゥ>を眺めていた箒が呟く。

 

「だが、私達これを操ったことないぞ」

 

 「確かに」と誰かが小声で呟く。

 

「明石さん、<バクゥ>のテスト走行をする時間ってありますか?」

 

 セシリアの質問に、明石は夕張と小声で二言三言言葉を交わしたのち、皆を見るなり両手を合わせた。

 

「ごめんなさい!こっちも時間ないのでぶっつけでお願いします!」

「マジかぁ」

 

 鈴が溜め息に呼応するように、みんな同じタイミングで肩を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「めんどくさいよー」

「まぁまぁ、倉庫まで備品置きに行くだけだからじゃん」

「そーそー。それもISつけたままでいいんだよ?そんなラッキーなことないよ」

「そうだけどさー」

 

 訓練機を纏った少女が各々愚痴を呟く。彼女達は<瑞雲>のスラッシュ装備や自主訓練に精を出していた生徒達。貴重な休日を返上して頑張ったせいか、足取りはIS越しにも分かるくらいクタクタだ。

 片付けを行なっていると、アリーナの管制室にいた教師からアリーナの倉庫にある備品を校庭にある倉庫まで運んでいってほしいと頼まれた。普通なら荷車に載せて生身で運んでいくのだが、今回は訓練機を纏ったままでいいと言われていた。そのためかなり積載した荷車を押していても苦にはなっていなかった。

 

 荷車を押す生徒の後を追うように、こちらもISを纏った緑葉、谷本、鷹月が訓練で使用した備品を持っている。

 

「緑葉さーん、そういえば清香はー?」

「カレシとデート」

「また?」

「また」

 

 谷本に呼ばれた緑葉はめんどくさそうに返す。谷本は「あ〜…」と声を出しながら空を見上げる。

 疲労から小言をボヤき続ける谷本達を横目に、緑葉は声に出さずとも心の奥底でほくそ笑んだ。

 

(私には分かる、これはワナだ。我々を待つ何かは途中で待ち伏せている)

 

 緑葉は歩くのをやめ、片膝を立てるような体勢で座り込んだ。

 

「? 緑葉さん、どうしました?」

 

 先頭を歩いていた生徒が緑葉の異変に気付き、振り返る。そんな彼女に緑葉はやれやれと言った様子を見せる。

 

「大したことはないよ。ちょっとした操縦系統のトラブル。先行ってていいよ、すぐ追いつくから」

「分かりました〜」

 

 生徒達は校庭の方まで再び歩くのを再開させる。谷本と鷹月も続こうとしたが、緑葉が鷹月の腕を掴む。

 

「谷本さん、鷹月さんは私と一緒に動いて」

「えっ?」

「理由はそのうち分かるから」

 

 意味深な台詞を言う緑葉に、谷本と鷹月は首を傾げたが、特に急ぐ用事もないので了承することにした。およそ10分後、緑葉達も動き始める。操縦系統のトラブルで動きを止めていた<瑞雲>はウソのように快調な動きを見せる。

 数分もしないうちに3人は校庭にたどり着いたのだが、校庭に広がる光景に谷本と鷹月は訝しんだ。

 

「なんでこんなに瓦礫散乱してるの?」

「織斑先生にバレたら殺されるよ」

 

 校庭には大小数えきれないほどのスクラップが満遍なく散乱していた。

 谷本は先に行った子達が派手にやらかしたものかと思ったが、それにしては散乱しすぎているし、戻ってくる様子もない。

 

「それに余熱もこんなに…、てかなんで余熱があるのよ…」

「あーあ、これも片付けなきゃダメだよね…緑葉さんどうします?」

「………」

「緑葉さん?」

 

 緑葉は笑みを浮かべたまま谷本の問いかけに応じない。緑葉はニィッと微笑う。

 

「いや、私には分かる。何度もドッキリを仕掛けられ、騙し騙され罵りあってきた私には、その微かな息遣いが聞こえる。その……己が体内の血を滾らせんとして———

 

 

 

 

明石!!!!」

 

 瞬間、緑葉はバズーカをコール。目にも留まらぬ速さで呼び出したバズーカをスクラップへ向け、放つ。放たれた弾頭は真っ直ぐにスクラップへ直撃、すると影から犬のような形状をしたメカが現れる。

 それを合図に、スクラップの影から一気に7機、計8機の<バクゥ>が姿を現し、背中に背負った連装砲を緑葉達目掛けて一斉射をかます。

 

「えっ!?なになに!?」

 

 緑葉達は散開し一斉射を躱す。未だ困惑から抜けきれていない谷本と鷹月は避けるだけで精一杯だ。

 

『緑葉さーん!谷本さーん!鷹月さーん!』

 

 と、緑葉達のもとに通信が入る。相手は3人も知っている明石、緑葉は明石のバツの悪そうな笑顔を見て疑惑を確信に変えた。

 

「やっぱりだと思ったよ」

『いきなりすみません、ちょっと模擬戦に付き合ってもらいたくて』

「模擬戦?アレと?」

『この模擬戦をやる際にIS側に課す縛りの内容を綴ったデータを今送りますね』

 

 明石の言葉と共に、緑葉達にも縛りの内容が添付された画像が送られる。飛行禁止、ホバー禁止、先程明石が一夏らに教えた内容と全く一緒である。

 

「オッケーわかった。ならこっちもそれなりにやるから」

 

 明石との通信を切った緑葉はニヤリと笑い、

 

「踏み殺してやるよ!!」

 

 と威勢よく叫ぶ。谷本と鷹月はそれぞれ左右に展開しマシンガンを撃つ。

 

「確認しました!二個小隊かと!」

「8輌か!行くよ!」

 

 緑葉は<バクゥ>目掛けてバズーカを放つ。

 一方その頃、アリーナ付近に特設された専用のシミュレータールームにて、<バクゥ>を操る8人は普段は見慣れたはずの砲撃に恐怖を感じる。

 

「恐え!アレあんなに恐かったっけ!?」

 

 一夏も緑葉と模擬戦をしたことがあり、その時にもバズーカの威力は経験している。しかし今ここで感じるソレは以前IS戦で味わったものとは明らかに緊迫感が違うし。

 

「むりだよ〜!」

 

 本音が弱音を漏らす。

 

「飛ばれないだけマシでしょ!やってみなきゃ分かんないわよ!」

「各車止まるな!殺られるぞ!!」

「一気にファーストダウンですわ!」

 

 啖呵を切った鈴、ラウラ、セシリアの真横を緑葉が放ったバズーカ弾が掠め、簪の<バクゥ>に命中、爆散する。

 

「まず、1つ!もっと距離を詰める!」

 

 緑葉は手振りで谷本と鷹月に散開を指示、<バクゥ>も負けじと応戦するが、<打鉄>の堅牢な盾に弾かれてしまう。

 

「くそっ全車後退!接近戦は不利だ!」

 

 指揮官に任命されているラウラが指示を飛ばし後退する。しかし後進に手間取っている機体を見つけ、舌を打つ。

 

「バカ者!相互援助などやっている場合ではないぞ!」

『分かってい………ぐわっ!?』

 

 直後、箒が駆る<バクゥ>は<打鉄>の砲撃の餌食に遭い、火球を作る。このままでは味方の陣形は崩れ、各個撃破される運命だ。

 

『箒!うわっ!?』

「一夏さん!」

 

 セシリアは一夏の叫び声が聞こえた方向を見やる。見ると一夏の<バクゥ>は瓦礫の一部が引っ掛かったのか、脚を取られ動けなくなっていた。そしてそこを見逃すほど緑葉の<瑞雲>は優しくない。

 

「えっちょ待て待て待て待てユニヴァァァァァァァァァス!!!!」

 

 一夏機、大破。緑葉は飛行・ホバー縛りをものともしない走行で残りの<バクゥ>を追う。

 

「あと5つ。谷本!横合いに回り込め!」

「はっ、はい!」

 

 一方の<バクゥ>陣営は未だにISに手傷を加えれてないことにラウラ達は焦りを覚え始めていた。やがてその焦りは狙いの甘さにも伝染する。

 

「無駄弾を撃つな!」

 

 今また闇雲に撃っていた本音機に緑葉の砲撃が命中、これで残りは4機。

 

「まずは鷹月を狙う!各車フラッシュ弾装填!自分の目を潰すな!」

 

 <バクゥ>隊は目眩し用に支給されているフラッシュ弾を鷹月目掛けて発射。弾道は見切られはしたが、ラウラ達はシミュレーターの中で笑みを作った。

 瞬間、鷹月の周りでフラッシュ弾が破裂。何の身構えもしていなかった鷹月はラウラの狙い通り、閃光によって目が潰れ、視界が利かなくなる。

 

「きゃあっ!め…目が…!」

 

 まさにラウラの思い描いた通りになった鷹月は動きを止め、攻撃も明後日の方向を向いている。こうなるとただの的だ。

 

「がふっ…!」

 

 <バクゥ>の集中砲火を浴びた鷹月の<打鉄>は直撃判定を食らい、倒れ込んだきり動かなくなった。

 <打鉄>が動かなくなったのを確かめたセシリア機から歓声が上がる。

 

「やりましたわ!」

 

 相手に縛りを課していたとしても、本当にISを倒せるとは思わなかった鈴もしめしめとはにかむ。

 

「どうよ、あたし達だってやれば———」

 

 しかし、鈴の台詞は直後に襲った爆発音に遮られた。

 

「鈴!」

 

 シャルロットが叫ぶ。2機のISはラウラとシャルロットにターゲットを絞り、挟撃で追い込んでいく。

 

「くそっ!追いつかれる…!シャルロット後ろだ!」

『えっ……?』

 

 反応が遅れたシャルロット機はすぐ後ろにまで迫っていた谷本に蹴り上げられ、地面を転がる。さらに横転が止まったピンポイントの位置に待ち構えていた緑葉によって押し潰される。

 

「んーふふふふふ、残り2つ」

 

 ついに残り2人となったラウラとセシリアは苛烈な集中砲火の間を掻い潜り、緑葉との距離を詰める。

 

「<瑞雲>の背後に回り込みますわ!」

「よし!スモークだ!全て撃ち尽くせ!」

 

 <バクゥ>に取り付けられたスモーク発生装置が白煙を噴射。途端に辺り一面煙に覆われ視界が利かなくなる。

 

「どこだ!?」

 

 煙をかき分ける緑葉と谷本の耳に、ガシャンという音が響く。

 

「そこ!」

 

 音のした方向に<バクゥ>がいると踏んだ谷本がマシンガンを撃つ。予想通り、弾着位置から爆炎が上がり、<バクゥ>の部品が宙を舞う。

 

「もらったぁ!!」

「えっ!?」

 

 ラウラの叫びが聞こえると同時に、谷本の身体に衝撃が走る。その衝撃が煙に紛れ、いつの間にか目の前にまで距離を詰めていたラウラ機が放った渾身の一撃で、見事に直撃していたことを感じる前に谷本の視界はブラックアウトしていった。

 

「後はヤツだけ……!」

 

 谷本機撃墜、の文字列が浮かび上がった画面を消した緑葉はバズーカのマガジンを装填し、ラウラ機目掛けて乱射していく。

 

「残り1輌に!」

 

 緑葉は神経を研ぎ澄まし、煙幕に紛れたラウラ機を探す。如何に敵の気配を感じ取るか、野性味じみた感覚がものを言う。

 

「どこだ……………」

 

 その時、視界の隅で何かが動く。それが何か確かめる前に、緑葉は無意識にバズーカを構えていた。

 

「そこだぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

 

 緑葉とラウラが一撃を放ったタイミングはほぼ同時。ラウラの砲撃は緑葉の上を掠め、緑葉が放った弾は吸い込まれるように<バクゥ>へ命中した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「惜しかったなぁ………」

 

 動いている者は誰もいない、荒れに荒れた校庭で緑葉は静かに笑う。目の前には黒煙を上げる<バクゥ>の残骸。

 

「全く明石め、校庭を元通りにするのだってバカにはならないn————」

 

ズウゥゥゥゥン!!

 

 瞬間、背中に強烈な衝撃を覚えた緑葉は前のめりに倒れ込む。衝撃の拍子にバズーカを離してしまうが、それ以上に困惑していた。

 

「な、何…!?」

 

 緑葉が背後へ振り返る。そこには全機倒したはずの<バクゥ>が1輌、雄々しく立ち尽くし連装砲を構えている。

 

「そんな…確かに8輌全て倒したはず…!」

『惜しかったですわね、緑葉さん』

「セシリアさん…?それってどういう…」

『簡単な話ですわ。わたくし達は9輌いたというわけですわ』

「!」

 

 そう。実は模擬戦を始める前、シミュレータールームへ向かう途中ばったり会った真耶を誘い、9輌目に乗せていたのだ。ちなみに煙幕立ち込める中瓦礫に衝突し、そこを谷本に撃破された<バクゥ>を動かしていたのが真耶である。

 

 セシリアは話は終わりと言わんばかりに砲撃を放つ。何発も直撃判定を食らった<瑞雲>は機能を停止させ、気絶した緑葉はうつ伏せの体勢で地面に倒れ伏せた。

 

「やったぁ!!」

「よくやったぞセシリア!」

「せっしーすごーい!」

 

 模擬戦終了。汗を拭いながらシミュレータールームから出たセシリアに惜しみない拍手と称賛が贈られる。

 

「いえ、これは山田先生がいたからこそ得られた勝利ですわ」

「あ、あはは…何が何だか分からない内にやられちゃいましたけどね…」

 

 まさか本当に勝てると思っていなかったみんなの喜ぶもまた大きい。明石と夕張も大はしゃぎでハイタッチしているが、若干笑顔は引きつっている。

 

「では、そろそろ…」

「うむ…」

「そうだね…」

「おう…」

「あぁ…」

「うん…」

「そうね…」

「私もですよね……はは…」

「私達も例外じゃ…」

「ないよね…」

 

 さっきまでの歓喜はどこへやら。恐る恐る振り返ると、メキメキと音を立てるほど出席簿を握り締め、眉間には青筋を浮かばせこれ以上ないほどニッコニコ笑顔の千冬が腕を組んで仁王立ちしていた。

 

『校庭の後片付けしてきまーーーす!!』

「あと緑葉さん達を保健室へ!!」

 

 鬼教官千冬から逃げるように、一夏達は校庭へ全力疾走でしていくのであった。

 

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