IS 〜夢のような旅路〜   作:フレイア

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戦闘シーンは難しいですね定期


#9 Awake

『せぇぇぇぇい!』

『おっと!』

 

 一夏と鈴の勝負は依然として熾烈を極め、両者一歩も引かない攻防が続いていた。

 

「後に続くわたくし達のことも考えてもらいたいですわ」

 

 モニターで観戦していたセシリアがはぁっと溜め息をつく。こんな白熱した試合の後にアリーナで戦うことになる自分達の身にもなってほしい。

 

「少なくとも、無様な姿は見せられんな」

 

 ラウラが不敵に笑う。モニターに映し出されている映像の中では青龍刀をバトンのように振り回しながら鈴が斬り込んでいる。

 

「ん?本音どこいくの?」

「ちょっとね〜」

 

 ぷら〜っと本音が控え室から退出していくが、特にそれを気にする者は居ない。それよりも試合だ。

 

 試合開始から20分が経とうとしていたが未だに決着がつく様子がない。お互いアリーナの土壌が剥がれて形成された自然の盾を活用しながら一進一退の戦いを続ける。

 そしてついに動きがあった。焦れたのか鈴が動いた。一夏も待ってましたとばかりに土壁から姿を現し雪片弐型を構える。

 

「ああっ!!」

 

 誰かが叫ぶ。恐らくこの一撃で決まる。

 誰もがそう確信した瞬間、突如としてモニターの映像が乱れ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一夏と鈴は決着をつけようと得物を構える。しかし突如として走った不可解なノイズに試合は遮られる。

 

「なっ、何よ。いいところだってのに」

 

 一夏と鈴は何が起こったのか分からずにいると不意に視界の隅に何かが投げ込まれるのが確認できた。

 

(何だ……?)

 

 投げ込まれたボトル状の容器は1つだけではなく、アリーナ全体に不規則にばら撒かれている。鈴も困惑しながら一面に撒かれたボトルに目をやっている。

 

(まさか、襲撃者か?)

 

 一夏は過去の経験からそう仮定し、鈴と共に岩陰へと隠れる。

 

「鈴、アレが何か分かるか?」

 

 鈴は横に首を振る。

 

「全然、仮にアレが学園側のならあたしたちに一言あってもいいはずなのに…」

 

 その時、ボトルのキャップ部分に取り付けられたコルクが外れ、内部から白い煙が勢いよく放出される。アリーナに撒かれた大量のボトルのコルクが外れ、一斉に煙を噴き出す。

 

「口塞げ!ガスの類いかもしれねえ!」

「う、うん!」

 

 一夏と鈴は慌てて口を塞ぎ、身を伏せながら口を覆う。例え絶対防御があったとしてもガス攻撃は危険だ。あの煙が有毒ガスであったら2人はお陀仏になる。

 辺りが完全に煙に包まれ、目視では1メートル先も見えなくなってしまった。

 

「どうやらガスではないようだが…何も見えねぇな…」

 

 どこを見ても白い煙、否、正確に言えば霧に包まれてしまう。やっと隣にいる鈴の姿が見えるほどの霧の濃さだ。

 

「センサーが使えない。鈴はどうだ?」

「だめ。あたしも全く反応しない。熱探知も無理。これじゃ何が起きてるかわからない」

 

 2人は頭をフル回転させ、この状況からの打開策を考える。

 時間にして30秒経った時だろうか。どこからか扉を蹴破る音が響き、少しずつではあるものの霧が晴れていく。

 

「やっぱり何かいるわね。霧が晴れたら一気に仕掛けるわよ」

「ああ」

 

 互いに作戦を確認し、霧が晴れるのを待つ。未だにセンサーは復帰していないが、目視で確認できるようになるのはチャンスだ。

 そうしてやっと目視が効くようになった一夏と鈴だったが、直後、2人は我が目を疑うことになる。

 

 

 

 

 一方管制室では、突如として立ち込めた霧に困惑しきっていた。センサーも通信も使えなくなってしまっては、こちらから指示が飛ばせない。

 

「やはりダメです。何度試しても通信が回復しません」

「センサーも反応ありません」

「そうか……」

 

 各所から寄せられる報告に、千冬は苦々しい表情を見せる。せめて通信が使えれば一夏と鈴に指示を下すことができる。が、それも叶わない。

 

「織班先生!」

 

 そこへセシリア達が入室してくる。彼女達も異変に気付いたのだろう。相当急いできたのか息も絶え絶えな彼女達の方へ千冬は身体を向ける。

 

「今の状況は…!」

 

 肩で呼吸を行う簪の横で、一夏と鈴の様子が気が気でないセシリアがモニターを見て愕然とする。

 

「…この有様だ。通信もセンサーも使えなくなっている。オマケにこの霧では目視も出来ん」

 

 千冬の口から語られる内容に皆暗い表情を落とす。

 その時、管制にあたっていた真耶がアリーナの変化に気付き叫んだ。

 

「霧が晴れます!」

 

その言葉に管制室にいる全員がハッとしてセンサーや通信、モニター、窓の外をかぶりつくように凝視する。

セシリア達も一夏と鈴の安否を確かめようとモニターや窓の外から目を離さない。シャルロットも通信を起動させている中、千冬は異常な気配を感じ取っていた。

 

(何だ……?)

 

 その気配をラウラは感じ取り、千冬の方へ目配りする。

 

「教官」

「…あぁ」

 

 何かいる。一夏と鈴以外の何かが、あの霧の中にいる。

 そしてついに霧が完全に払われた時、管制室の中は凍りついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 霧が晴れきり、一夏と鈴は得物を握りしめ岩陰から様子を伺った時、衝撃の光景を目の当たりにする。

 

「何アレ、あんなの今までいなかったよね?」

「味方……なのか?」

 

 霧が晴れたと思ったら突如として3機のISが現れた。なんとか冷静さを保ちながら一夏は改めて3機のISを見る。

 

 まず異彩を放つのは白いカラーリングに赤が入った機体。機体の至る所には絢爛な装飾が施されており、左腕には巨大な大鏡が装備されている。恐らくシールドの類いと想定していいだろう。どことなく昔の日本の神様とかが着ている衣装みたいだなと一夏は感じ取った。

 左右両肩に備えられたカスタムウィングの先端部には2つの砲門が見受けられ、腰には日本刀を模した刀をさげている。

 顔はバイザーに覆われ、素顔を確認するこそ出来ない。しかし、明らかにこれまで出会ったISとは違った雰囲気を纏っている。

 

 左右には真ん中の機体を護るかのように2機の<打鉄>が立っている。

 <打鉄>もまた異彩を放っており、それぞれ右手には巨大なランスを握り、左手には縦に長い楕円形のシールドを携えている。こちらも素顔を確認することが出来ないが、バイザーではなく何故か能面をつけており、どこか不気味な気配を醸し出している。

 

『な…なんですの…あの機体は…』

『お、おい一夏!そっちはどうなっている!』

 

 するとセシリアと箒の声が耳に入る。どうやら通信が回復したらしい。しかしやはり彼女達も新たな乱入者の出現に困惑している様子だった。

 

「俺にも何が何だかよく……。霧が晴れたらアイツらがいたんだ」

「学校側の機体、じゃあ…ないでしょ?」

『そ、そんなわけありません!あんな機体があるなんて見たことも聞いたことも…! 』

 

鈴の問いかけに真耶が反論する。そこへ千冬の普段通りの凛とした声が割り込む。

 

『落ち着け。アレらが誰で、一体なんの目的があるかは分からんが、気を付けろ』

「あぁ、分かってる」

 

 目の前のアンノウンISにはまだ動く様子は見られない。観客席で観戦している生徒や来賓らは何かのデモンストレーションだと思っているのか、固唾を飲んで両者の動向を見守っている。

 

「とりあえず、もうしばらく様子を見よう」

「うん、分かった」

 

再び岩陰へと身を潜めた一夏達はこっそりと顔を出し、アンノウンの様子を伺う。

 

(動きが止まっている。仕掛けるか?いや、まだか?)

 

 ジッと攻撃のチャンスを伺っている中、アンノウンに変化が起きた。

 

『一夏さん!アレを!』

 

 彼らの目に再び奇異な光景が飛び込む。左右に待機していた<打鉄>が突然、何の前触れもなく互いに手にしたランスをぶつけ合い始めた。ぶつかり合うランスからは金属らしい重く甲高い音が響き、少し火花が飛んできていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何してんの、アレ」

「さぁ」

 

 乱入してきたアンノウンが始めた行動に観客席はどよめく。自分達を鼓舞しているのか、相手の士気を下げるためか。いずれにせよ、謎でしかない。

 

「…………」

 

 そんな光景を呆れながら見つめていた鶴屋は頭を抱えこんだ。

 

「あれは必要なことなのか…?」

 

 嬉々として「パフォーマンスだ」「いい初陣にしよう」と提案してきたヒゲ面のオッさんの顔を思い出しながら鶴屋は水を一口飲み込む。

 

 これ以上アレをやらせてたら何故かこちらが恥ずかしくなってくる。鶴屋は携帯を取り出し何処かへとメッセージを送信する。

 しばらく<打鉄>による民族舞踊を堪能していると携帯が鳴り、メッセージが添付される。そこには

 

『今から動く』

『さすがにあれはない』

 

 ただ二言、素っ気なくそう綴られたメッセージを読んで、鶴屋は思わず吹き出しそうになった。

 

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