魔銃使いは恋に堕ちた 作:魔法少女()
それまでの話を読んでいない場合、話の意味が分からない可能性がある為注意。
賑わいを通り越して喧騒と化した大広間。我が派閥には不相応に豪奢絢爛な会場。
絶望的な戦力差であったアポロンとの
勝利したにも関わらずまともに賠償金を得る事も出来ず、本来ならばこの豪華な会場施設を借り受けるどころか満足のいく飲食物すら用意するのが難しい程に資金難状態であった。しかし、ヘスティアファミリアに代わりロキファミリアが会場施設の借用や飲食物等にかかる費用の全額負担を申し出てくれたのだ。
おかげ様で、身分不相応にも思える豪奢絢爛な
そんな
と言うよりは一部の酒飲み達が酔い潰れて静かになりはじめた、と言うべきか。
酔い潰れた功労者達が隅っこに纏めて並べられ、何処から持ってきたのか毛布を掛けられて寝ている。
ヴェルフが椿さんに潰されたらしく、真っ赤な顔でうんうん唸りながら女神ヘファイストスに膝枕されていた。多分記憶が飛んでるだろうし、後から教えたら後悔しそうなやつだ。リリルカの方はそんなヴェルフに呆れた視線を向けているが、彼女もそれなりに飲んだのか目が据わっている気がする。
ベルの方は未だにアイズさんとティオナさんに挟まれてベートさんに絡まれていた。ベート・ローガ、ロキファミリアの第一級冒険者の彼は────前に酒場で見たときレベルに出来上がっていた。
「何度言えばわかるんだ
「ごっごめんなさい!」
「あ~あ、ベート酔ってるよこれ」
「あ? これぐらいで酔う訳ねェだろ」
ぐいっと
アイズさんの方は
俺の方はぐるりと会場を一周してお礼回りを終え、フィンからこの
一足先にディアンケヒトファミリアの面々は帰って行ってもう会場には居ない。『再生薬を早く完成させねば。ミアハの所では無理だろうしなぁ』等とミアハファミリアを煽るだけ煽っていったみたいだし。
ロキファミリアの面々は幹部達はベートさんと、意外な事にティオネさん以外は酔っていない。というかティオネさんはなぜ酔い潰れているので? そしてドワーフのガレスさんがあまり酔っていないのも疑問を覚える要因だ。
首を傾げつつも会場中央でロキと話し合ってるヘスティア様の元へ向かおうとすると、ベルに声をかけられた。
「ミリア、ようやく見つけた。姿が見えなかったから何処か行っちゃったのかなって思ってたんだ」
「ん? ずっと会場をうろついてたのよ。ベルの方は、ほら……【
もし俺が近づいたら、きっと俺も存分に絡まれていたであろう。それを見越してベルを生贄に捧げた形だ。ごめんね。
「あはは……それよりも、もうお終いかな」
寂寥感が混じりだした会場。普段なら派閥の枠を超えてこのような交流は成されない事だろう。今回はヘスティアファミリアの出した『再生薬』と言う、どの派閥も喉から手が出るほどに欲するだけの代物があった。
そして、それを取引する為にはヘスティアファミリア存続が最低条件であり、
故に、各々の派閥は俺達ヘスティアファミリアが契約をすることでこのように協力関係を築き上げて同じ会場で他派閥の勝利を祝う
今後、このように集まる事はないだろう。『神の宴』で神々が交流する事はあれど、俺達眷属達は神々の友好関係次第で敵対したり対立したりする。
特に────ロキファミリア。
俺達の主神、ヘスティア様と仲が悪い事で有名である神ロキが主神を務める派閥。派閥同士の区切りをつける事になるだろう。それでも俺達に貸しを作る為に友好的には接してくれるが、深くは繋がり合えない。微妙な溝が生じるのは致し方の無い事である。
終わりに近づく
開催直後から別れ、今までロキファミリアの第一級冒険者に絡まれていた僕も、ようやく肩から力を抜いた。
「ヘスティア様の所へ行きましょう」
「うん」
足取り軽く神様の元へ向かうミリアの後を追う様に歩んでいくと、ロキファミリアの団長である【
「ヘスティア様」
「ん? ああ二人とも、どうだった? 楽しめたかい?」
「はい、十二分に楽しませていただきました。神ロキもありがとうございます」
まるでどこぞのお貴族様の令嬢を思わせる、洗練されたミリアの動きに一瞬見惚れてしまってから、慌てて僕も頭を下げた。
今回の
「気にせんでええでー。ええもん見せてもろたしな」
「ああ、むしろあれだけの
彼の第一級冒険者。オラリオ二大派閥を率いる団長からかけられた言葉に、嬉しさが込み上げてくる。ベートさんに悪かった点を散々指摘された後で少し凹んでいたというのもあるかもしれないけれど、優しい笑みで見上げてくる威風堂々としたフィンさんの言葉に照れてしまった。
頬を掻いて誤魔化していると、フィンさんの視線が僕と、ミリアと、そして神様を捉えた。
「さて、役者は揃ったかな」
「……? 何かあるんですかね」
ミリアが首を傾げて質問を飛ばすと、フィンさんは厳かに胸を張って、僕を見上げて声を上げた。
「僕たちロキファミリアから提案がある」
彼の堂々とした佇まいに気圧されかけ、今この瞬間がどういう場なのか理解して慌てて背筋を伸ばす。
派閥の名を出した、それも率いる団長が。横に控える様に立つ神ロキがニヤニヤしながら成り行きを見守り、副団長であるハイエルフのリヴェリア様も静かにしている。
これは、派閥同士の会談だ。
「僕たちロキファミリアは、キミ達ヘスティアファミリアと同盟を結びたいと考えている」
────派閥同士の、同盟。
オラリオにおいて二大派閥と称されるほどに大きく、規模も戦力も桁違いなロキファミリアからの同盟提案。
余りの事態に言葉を詰まらせていると、フィンはゆっくりとした動作でミリアに片手を差し出した。
「ロキファミリア団長であるこの僕【
「え、えええええええええええええええええええええっ!?」
────ミリアが、求婚されている。
いや、それ自体は前にもミリアがさらりと語っていた気はする。けれど、こうやって目の前で真剣な表情でフィンさんが言い放った事で、あれが冗談ではなかったと理解させられた。
「ヘスティアファミリア団長、ベル・クラネル。そして女神ヘスティア、損の無い話だと思う」
子供の様な容姿にも関わらず、纏う雰囲気は大人の風格。そんな彼が放った言葉に強い衝撃を受けて言葉を失う僕に、フィンさんは畳みかける様に続けた。
「ヘスティアファミリアには失礼かもしれないが、キミ達は今、とてつもなく
『再生薬』と言うオラリオの常識を塗り替える新薬。それを生み出す事が出来る素材を得られる飛竜。
そしてミリアが持ち得る異質なスキル。魂そのものから形を変え、無数の
彼女が持ち得る常識を塗り替える超遠距離砲撃。
ヘスティアファミリアは大きくなった。今までの極小派閥ではない、一端の中堅派閥にまで急成長した。その上で、だ。
で、だ。
────ヘスティアファミリアは、
持ち得る利益を生み出す
故に、此処で二大派閥として力も規模も兼ね備えたロキファミリアと同盟を結ぶ証として、最重要人物であるミリアを守る為にも、婚姻と言う形をとりたい。
「どうだろうか?」
損の無い話。と言う言葉に嘘は無かった。
むしろ、今の現状からこれから先に訪れるであろう苦難に対して力不足である僕たちを、手助けしてくれるのだろう。それは、間違いない。
あの、アポロンファミリアの襲撃。血溜まりに沈む彼女の姿が一瞬脳裏に浮かんだ。
────僕の、力不足が招いたあの事態。
もう一度、同じことが起きるかもしれない。それは、戦争遊戯の準備期間中にも伝えられた事だった。
「無論、無理強いはしない。断って貰っても構わない」
これまで通り、困っている事があれば手を貸そう。貸し、と言う形になるのは止むを得ない事であはる。
────今すぐ答えを出せ、なんていう積りは無い。話し合う必要もあるだろう。
────とはいえ僕にも時間がある訳じゃない、後片付けが終わるまでに返事を聞かせて欲しい。
ミリアの立ち位置、その重要性。狙われるのはほぼ間違いなくて、それを第一級冒険者に守ってもらえる。それの意味が分からない程、僕は馬鹿ではなかった。
ミリアの為になる事なのは、間違いなくて────もし、ミリアがこの求婚を受けたとしたら……僕は、どうするのだろうか。
「私個人としては、ですが。受けても良いかなとは思ってますね」
ミリアの口から告げられた言葉に息が詰まった。
片付けが始まった会場の片隅、僕、神様、そしてミリアにリリの四人で輪になって先ほどの話題を上げれば、彼女は真っ先にそう発言した。
「……良いのかい、ミリア君?」
「【
神様とリリの言葉を聞きながら、そわそわと落ち着かない身をなんとか誤魔化そうとミリアに声をかける。
「で、でも、ほら……あの……」
「どうしたのベル、落ち着きないけど? 大丈夫?」
不相応じゃないかな。なんてしょうもない言葉を呟きそうになって、思い返してみればとても良くお似合いな二人だと背筋が凍り付いた。
その持ち得る才能に、僕だって何度も救われてきたじゃないか。
特殊な魔法に、特殊なスキル。そして『再生薬』や飛竜を
同種族の中でもとりわけ小柄な彼女は、片目が赤くなっているけれど柔らかな金髪に碧眼の美少女だ。フィン・ディムナも同様に黄金色の髪に碧眼。僕の様な少年では叶いっこない様な大人の風格を、二人とも持っている。
落ち着きを払ったミリアの声に、出口の失われた袋小路に囚われような感覚に陥る。
「…………」
血溜まりに沈む姿が脳裏を過る。
フィン・ディムナなら、第一級冒険者ならあんな惨劇を華麗に回避していくことだろう。
いつも、彼女が傍に居て、共に冒険を続けてきた。そのさ中に何度も、何度も彼女に救われて────僕は、ミリアに見合う事が出来ているのだろうか。
ただがむしゃらに強くなろうとはしてきた。けれどそれを遥かに超えて行ってミリアは高い所に居る様に思えた。
「んー、ミリア君。悪いんだけど喉が渇いたから水を貰ってきてくれないかい?」
「わかりました。ちょっと行ってきますね」
軽い足取りで────求婚された本人でありながら、全く気にしていない様な彼女が歩いていく。それを見送っていると、ぽんっと神様が僕の胸に手を当ててきた。
「ベル君、キミはもしかして、自分よりも彼が守る方が良いとでも思ってるんじゃないかい?」
「えっと……僕は、その」
神様の指摘通りだった。
あの血溜まりに沈んだミリアと言う、忘れる事の出来ない光景を彼なら回避できるんだと、僕はそう考えてしまった。
彼女の重要性、そこから導き出される未来予想図には、やはり数多の苦難が待ち構えている。たったLv.3、第二級冒険者になっただけの僕では、守り切れない敵すら現れるかもしれない。
第一級冒険者が本気で、彼女を狙ったとして────僕では時間稼ぎすら出来ずに倒されるに違いない。
だとするなら、都市有数の第一級冒険者の集まりであるロキファミリアと同盟を結ぶのは間違っていないと思う。
僕なんかよりずっと格好良くて、強くて────ミリアに見合うだけの風格を持った彼なら。彼女を確実に守れる。
…………僕なんかが、口出ししてもしょうがないのだと。
「言っておくけど…………ボクはミリア君が同盟を受ける気なら、止めないぜ?」
僕の考えを見透かした様に神様は言った。
神ロキと仲の悪い神様なら、もしかしたら断るかもしれない。そして神様が断るなら、ミリアは迷わずそれに従うだろう。そんな風に縋る様に考えていた僕を咎めるように。
「もしかしたら手強い
呆然とする僕が小さく呟かれた神様の言葉を聞き逃していると、神様は顔を上げた。
「ベル君、キミはこのままミリア君が行ってしまっても良いのかい?」
「ぼ、僕は……」
「キミはさ、もっと我儘になるべきだよ」
僕の心の中を見通す様な青みががかった瞳に微笑まれ、立ち尽くしていた僕は。
次の瞬間、拳を握り締めていた。
「ヘスティア様、水貰ってきましたよ……っと、ベルはどうしたんです? 返事は決めました?」
「ありがとうミリア君、ほらベル君、返事が決まったのなら行こうじゃないか」
僕は────。
既にテーブルの上の料理や汚れた食器等は片付けられ、モップを手に床に飛び散った酒や食べカスを片付ける団員の姿が見て取れるのみ。
片付けも大詰めと言う段に至って、ようやくベルが返事を決めたらしい。
俺個人の意見としては、やはり同盟を受けるのが安定であろう。フィンとの婚姻というのはまあ、悪い話と言う程でも無いし、フィンの事を嫌っている訳でもないので即承諾してもよかったのだが。
ベルが何か悩まし気にしていたのが少し気になるぐらいか。俺は婚姻自体に拒否感はないんだがね。
「ベル・クラネル。返事を聞かせてもらおうか」
「はい……この同盟、お断りさせてください」
……うぉ? え? 断るの? 割と良い感じの条件だと思うんだが。
何か不満事項があった?
「理由を聞かせて貰っても?」
真剣な表情でベルが此方を見回し、覚悟を決めた様に口元を引き結んでフィンに向き直った。
「確かに、この同盟を結んだほうが良いっていうのはわかるんです」
同盟そのものには肯定の言葉を放つベル。けれども何か不満があってその同盟を蹴るらしい。
何処に不満があるのだろうか。第一級冒険者が多数所属する規模の大きな派閥、隷属ではなく同盟と言う時点で対等に扱ってもらえるというのは破格に等しい。
フィンの目的も達成できつつ、ヘスティアファミリアの安全も約束される。良いこと尽くめではないか?
まあ、あえてデメリットを上げるとするならば……そうだな。
ロキファミリアとの同盟となる訳だから、変な行動を起こせばロキファミリアの方の看板にも瑕が付きかねない。故に派閥方針はやはりロキファミリアに合わせなくてはいけないし、ロキファミリアが敵対している派閥からヘスティアファミリアも狙われる事になるだろう。けれど戦力的にも返り討ちにできるだろうし……。
何が不満なんだろうかね。
「でも────僕が守りたいんです」
はて?
「守りたい、そう考えるなら僕たちの手を取るべきだと思うけれど」
「違うんです。僕が、僕の手で守りたいんです」
戦争遊戯に向けて、ベルが胸に抱いた数多くの複雑な想い。
その中でも、とりわけ、大きく、強い願いは────守りたい、その願いだった。
「たしかに、ロキファミリアと同盟を組めば、守ってもらえる……僕じゃなくて、第一級冒険者の皆さんに」
────でも違うんだ。僕は、誰かに守ってもらうんじゃない。
────自分で、守りたいから強くなりたいって思ったんだ。
「今の僕は、まだ弱い。第一級冒険者が襲ってくれば、きっと時間稼ぎも出来ない」
────それでも、僕は僕の手で守りたい。ファミリアを、皆を────
「今は、まだ弱い。でも、いつか強くなる。皆を守り切れるぐらい、どんな悪意からも、守れるぐらいに強くなる!」
いつの間にか、フィンに向けられていた言葉は、俺に向けられていた。
「約束する。僕は強くなる、強くなって────キミを守る。キミを守り切れるぐらいに強くなる!」
だから、僕たちと一緒に居て欲しい。そう、力強く宣言された。
ぼんやりとバルコニーの座椅子に座ったまま、片付けが進められている会場に視線を向ける。
火照った頬に当たる夜風が心地よく────火照りの原因が
────キミを守る。
その言葉が何度も頭の中を反響して、込み上げてくる嬉しさと、顔が熱くなる様な、未知の感覚におかされて早鐘を打つ心臓。気が付けば冷静さを欠いていく自身を理解しつつも、なんとか平常心を保とうと頬をぐにぐにと揉んで────ベルの声が響いて心臓が一際大きく跳ねた。
「ミリア、ここに居たんだ」
「ベ、ベルじゃない。どうしたの?」
座ったまま微笑みかけ────ちゃんと微笑みの表情になっているだろうか。顔が熱く、ベルの顔を上手く見れない。早鐘を打っていた心臓が更に加速し、体が熱を持って体温が上がった気がする。
「ううん、その……さっきはごめん。その……勝手に同盟を蹴っちゃって」
「え、ああー……問題ないわ。その分、その……貴方が守ってくれるんでしょ?」
冗談めかして呟こうとしたのに、思わず視線を背けてしまった。
普段なら、いや、多分先ほどの出来事以前なら悪戯っぽく笑いながら冗談を零せたはずなのに────心拍数は無駄に、激しく上昇しては精神を揺さぶる。顔が発火したみたいに熱くなり、冷静さを保てない。
今の自分の状態を冷静に分析するならば────端的に行って『恋に堕ちた』状態だろう。
気まずい沈黙が下りたのに気付き、何か言葉をかけようと口を開く。
「そ、その……座ったら?」
なんで、こんな時にそんな妙な台詞が出てくるのだろうか。自分が言った台詞に妙に冷静に突っ込みをいれつつ、恋に堕ちるとこんな風に冷静さを欠いてしまうのだな、と他人事の様に思いながらも全力でそれを隠そうとする。正直、上手くいってる気がしないが。
「え、ああ、うん」
三人並んで座っても余裕のある長椅子。端っこに座っている俺に対し、ベルは拳一つ分を空けて、俺の隣に腰掛けた────近い、いや普段の距離だ。
近い、とても近く感じる。それはきっと、俺の心境の変化によるものだ。ベルの方は、普段通りの距離感で接してきているだけだ。前までは気にならなかったそれが、今はとても気になる。
「ごめんね、弱くて」
「────え?」
よわ、弱い? 誰が? 俺が?
思わず逸らしていた視線をベルの方に向けてしまった。すぐ隣、手を伸ばせば届く距離に、ベルが居た。心臓が跳ね上がり、顔が熱くなる────絶対に顔が赤くなってる。
「ヒュアキントスから、キミを守れなくて……」
「あ、その……気にしなくていいわ。むしろ、肩は大丈夫? あの時、撃っちゃったけど」
「全然平気だよ、むしろごめん。僕がもっと強ければ」
それは、違う。あれは仕方の無かった事だ、なんて口にはできなかった。
ベルは、空を見上げていた。満天の星空を見据え、
見慣れた筈の、少年のその顔に心臓は早鐘を打ち、爆発してしまいそうな程に暴れ回る。
「ミリア、僕強くなるから。絶対に────キミを守れるぐらいに」
星空から俺の方に視線を戻す。真正面から視線が交じり合い────力強い宣言に、心臓が爆発したかと勘違いするぐらいに跳ねる。誤魔化しが効かない程に、林檎みたいに真っ赤になっているであろう顔で、なんとか微笑みを浮かべた。
「うん、ありがと」
どこか頼りなさげだった雰囲気を持つ、小動物を思わせる線の細い少年だった彼。それが嘘みたいに、力強い笑みを浮かべた彼に、心から惹かれていく。
いつも、守る事ばかり考えていた。あの人を守りたくて、悪に身を染め、自ら堕ち続けたあの日々。
死に物狂いで仲間の身を案じ、行動をしてきたオラリオでの日々。
いつも、いつも守りたいとしか考えてなかった────守られる、なんて微塵も考えた事は無かった。
いや、守るとか守られるとか、打算的に第一級冒険者に守られるのは良いだろう、なんて考えた事はある。けれど、打算も何も含まれていない────そんな純粋な想いからの行動は、初めてだった。
心臓が跳ね────思わず、本当に思わずだ。俺は行動に出ていた。
「ねぇ、ベル。『月が綺麗ですね』って知ってる?」
「何それ?」
そっか。知らないのか。うん、それなら────。
「ちょっと耳貸して?」
不思議そうな表情を浮かべて耳を寄せてくる少年の頬に、軽くキスをしてから身を離して立ち上がる。
「え?」
「ふふっ、ねぇベル、貴方は本当に────いえ、なんでもないわ」
反応が本当に初々しくて可愛いわね、と言いかけてやめる。ベルもこう見えて男の子だ、可愛いと褒められたくはないだろう。
「ミ、ミリア、今、そのっ」
何をされたのか分からずに慌てふためく彼に微笑みかけ、天を示して口を開く。
「
きっと、意味は通じないだろう。けれど今はそれでいい。
ああ、けれど────この胸が熱く燃え上がる様な感覚は、嫌いじゃない。
「────え?」
意味のわからない事を言った俺に困惑の表情を浮かべる少年に、とびっきりの笑顔を向けておいた。
原作主人公すげぇ……あの攻略難易度激高のミリアちゃんを堕としたぞ(震え声)
今まで『守る事』しか考えてなかった子に、『キミを守りたい』と言う台詞。
『守る対象』であった彼が、確かに『守ってくれる相手』だと思える程に、共に苦難を乗り越えて、遂にって感じ。
ヘスティア様は
というか恋愛ってこんなんで良いんかね?
次は『√フィン・ディムナ』ですかね。