ソードアート・オンライン 〜The Parallel Game〜 《更新凍結、新作投稿中》   作:和狼

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 五日ぶりの更新です。

 今回はオリジナル展開……ギルド《月夜の黒猫団》の結成に関する話です。

 それではどうぞ〜。


Chapter.8:月夜の黒猫団

 

 

 第一層ボス攻略から、数ヶ月の月日が流れた。

 

 あの後、第二層に於ける武器の強化詐欺事件や、第三層より始まった、ちょっとした手違いで発生したイレギュラー含みの大型クエストなど、様々な出来事が有った。

 

 現在、アインクラッド攻略の最前線は第十一層。俺達七人は、頑張って……けれども無理の無い範囲で攻略組の一角としての地位を維持しており、最前線で激しい戦闘の日々を送っている。

 サチも、あの夜以来あまり弱音を吐かなくなり、一生懸命攻略に励んでいる。それでもやはり戦うのは怖い様で、ほぼ毎晩の様に俺の部屋にやって来て、俺と一緒に寝ている。俺も別に構わないし、ケイタ達も容認してくれているので良いのだが、ただ……ほぼ毎晩の様にシリカといがみ合うのだけはやめて欲しい。間に挟まれて寝ている俺の身にもなってくれ……。

 

 そんな日々を過ごしていた、ある日の事だった。

 

「ギルドを結成したい?」

 

 一日の攻略を終え、第十一層の主街区《タフト》の宿屋で夕食を取っていた時の事だった。皆を代表して、ケイタが唐突に切り出したのだ。

 

「うん。僕達もそろそろ、そういうのが必要かなと思ってね」

 

 ギルドの結成は、第三層に到達した時点で可能だった。が、俺はギルドに対して特に興味は無かったので、特に何も言わないままでいた。

 因みに、今アインクラッドに存在する中で最も有力なギルドは二つで、一つはディアベルが率いる《アインクラッド解放軍》、もう一つはヒースクリフが率いる《血盟騎士団(KoB)》だ。両のギルドから一度ずつ勧誘を受けた事が有るのだが、自分達のペースで無理無くやりたい為、どちらも断った。

 

「んー……まあ、良いんじゃないか? 結成しても」

 

「本当かい!?」

 

「ああ、俺は構わないぜ。……てか、わざわざ俺に許可求めなくても良かったんじゃねぇか?」

 

「い、いやぁ……ほら、うちのパーティーの実質的なリーダーって、カミヤだと思うからさぁ」

 

 そうは言うが、俺は単にベータテストで得た情報や経験を以てパーティーを引っ張っているだけで、そんな大層な器ではない。それに、ベータテスターであるというアドバンテージは次の第十二層で終わりで、それ以降は俺も他のプレイヤーと同じだ。

 

「まあ良いや。んじゃまあ、明日は《ギルド結成クエスト》を受けに、第三層に下りるという事で」

 

「「「おー!」」」

 

 まあ、リーダーの話はとにもかくにも、俺達は《ギルド結成クエスト》を受けに行く事を決定して、皆それぞれの時間に就寝した。……勿論、俺は何故かいがみ合うサチとシリカの二人に挟まれてだ。

 

 そして、翌日の夕方。

 

「んじゃまあ、ギルド《月夜の黒猫団》の結成を祝って……乾杯!」

 

「「「かんぱーい!」」」

 

 無事《ギルド結成クエスト》をクリアした俺達は、《タフト》の宿屋でギルド結成の祝杯を上げている。といっても、此処最近口にしている飲み物よりも少し値の張るものと、何時もよりも少し多い食事を頼んだ程度だが。

 

「今更だけど、本当に俺がリーダーで良いんだな…?」

 

 始まって早々、皆にそう問い掛ける俺。そう……俺達のギルド《月夜の黒猫団》のリーダーは、討論の末に俺に決まったのだ。……といっても、実際には六人とも全員が俺をリーダーに推し、俺が根負けして了承したのだが。

 因みに、ギルド名の《月夜の黒猫団》というのは適当に考えたものだ。……攻略ギルドとしては些か迫力に欠ける名前だと思われるが、ギルド名に関しては皆に一任した為とやかく言えないし、言うつもりも無い。

 

「言っただろ? カミヤが一番適任なんだって」

 

 俺の往生際の悪いとも取れる最後の確認に、皆は「まだ言うか」とでも言いた気な表情を浮かべ、ケイタが代表して口を開いた。

 その言葉を聞いて、俺はリーダーを決める際の彼とやり取りを思い出す。

 

 

     ◆ ◆ ◆

 

 

「俺にはリーダーなんて務まらねぇよ。素質なんてねえだろうし、上手くやれる自信もねえ」

 

「それは僕達だって同じだよ。けど、君には僕達には無い経験が有るじゃないか」

 

「経験の有無も、あんまり関係ねえと思うぞ?」

 

「そうかなぁ? 僕としては重要だと思うんだけど」

 

 俺は現実じゃあ人付き合いが苦手であり、他人とあまり話そうと……積極的に接しようとしない。そんな俺に、人を纏める立場であるリーダーなど務まるとは思えない……そう理解しているが故に、色々と理由を付けて推薦を断ろうとするが、ケイタは尚も俺を推して来る。

 

「それに……カミヤは素質や経験なんかよりも、もっと重要な物を持ってると思うんだ。この中の誰よりも」

 

 そんな問答が続く中でケイタが口にした思わぬ言葉に、俺は驚きと疑問の念を抱いて思わず聞き返した。

 

「素質や経験よりも…重要な物…?」

 

「意思だよ」

 

「意思…?」

 

 そして、ケイタが口にした答えに再び聞き返す俺。今度は疑問オンリーだ。

 

「仲間を……全プレイヤーを守ろうっていう、強い意思……そういう強い思いの力を持った人が、リーダーに相応しいと思うんだ」

 

 ケイタのその言葉に納得する俺。確かに、何かを成そうとする強い思いは自然と人を引き付け、そこから生まれる信頼なんかがその人物をリーダーたらしめたりするものだ。だが……

 

「理屈は何と無く分かる。……けど、俺にはそんな強い意思なんて……」

 

「何を言ってるのさ!」

 

 俺には強い意志など無い……そう言おうとした俺を、ケイタが声を上げて止めた。

 

「カミヤはデスゲームが始まったあの日、僕達ビギナーの為に講習会を開いてくれた……あれは、全プレイヤーを助けたいっていう思いが有ったからだろ?」

 

「あ、ああ。確かにそうだが……」

 

「それに、カミヤは僕達が危なくなった時には、何時も僕達を庇って戦ってくれてる……それは、僕達を守ろうっていう思いが有る事の証拠だよ」

 

 確かに、俺には多くのプレイヤーを……メンバーの皆を守りたいという思いが有った。そして、その思いに従って今まで行動して来た。

 

「カミヤには、皆を守ろうとする強い意思が有る。だからこそ、君か一番リーダーに適任なんだ」

 

 

     ◆ ◆ ◆

 

 

 ケイタの言う強い意思とやらが、本当に俺なんかに有るのかは未だに疑問だ。だが、俺がメンバーの皆を……多くのプレイヤーを守りたいと思っているのは事実だ。

 その点をケイタ達に突かれて言葉が返せなくなった俺は、彼らの推しに根負けしてリーダーになる事を了承したのだ。そして……

 

「分かった分かった。単なる確認だ。今更辞めるなんて言わねぇよ」

 

 今でもまだ、俺がリーダーでは不相応ではないかと思っているが、了承した以上は覚悟を決め、不相応なりにも頑張ってやってみるつもりだ。

 やると決めた責務は最後までやり通す……それが俺のポリシーだから。

 

「ほらほら、せっかくの祝いの席なんだしよぉ、真面目な話は後にしようぜ」

 

「そうだよカミヤ君。楽しもう?」

 

「ああ。だな」

 

 そんな祝いの席には相応しくない真面目な雰囲気の俺を見兼ねてか、ダッカーが、次いでサチが声を掛けて来た。二人その言葉に頷いて、今は宴を楽しむ事にする。

 飲んで、食べて、談笑して……あまり贅沢とは言えず、何時もとあまり変わらない光景だが、それでも充分に楽しい。こいつらと居ると、何だかとても心温まって来る気がするから不思議だ。

 

 だからこそ、俺はこいつらの事を守りたい。その為にも、俺に出来る限りの事をしよう……心の中で、俺は強くそう決意した。

 

「お兄ちゃん…どうかした?」

 

「ん? いや、何でもない」

 

「そう…?」

 

 その後、ある程度宴を楽しんだ所で、リーダーとしての初の仕事――ギルドの方針について話す事にした。

 

「うちの方針についてだが……先ず、行動は自由だ」

 

「「「自由…?」」」

 

 俺の自由行動発言に、メンバーはそれぞれに驚きや疑問の表情を浮かべる。

 

「攻略に向かうも良し。クエスト受けて、アイテムや情報を入手するも良し。宿で待機するも良し。各々好きな様に行動してくれて構わない。ただし、攻略やクエストに行く時は一人では行動せずに、必ず二人以上で行動する事。それと、犯罪紛いな事もしない様に」

 

 命が懸かっているとは言え、一応これはゲームだ。楽しむとまでは行かないまでも、皆それぞれに自由にやりたい事だろう。行動を強制して、束縛するのは良くない……そう考えての判断だ。

 だからといって、これが命懸けのデスゲームである事を忘れて貰ってはいけないし、何をしても良いという訳でもない。なので、そこはしっかり注意しておく。

 

「次にレベルについてだが、攻略に参加するつもりなら、なるべく積極的に上げて、安全マージンをしっかり確保しといて欲しい」

 

 最前線に於いてギリギリのステータスで戦う事はつまり、死の危険性が高まる事を意味している。それを充分に理解しているからだろう、これにはメンバー全員が強く頷く。

 

「最後に、これだけは絶対に守って欲しい」

 

 俺の『絶対』という言葉に、メンバー全員の表情がより一層真剣なものとなる。対する俺も、より一層真剣な表情で言葉を続ける。

 

「…………このデスゲームがクリアされるその日まで、誰一人として死んでくれるなよ」

 

 ボス攻略の度に、嫌と言う程口にして来た言葉。それだけ重要な事であるが故に、誰も茶化す様な事は言わず、ただ真剣に頷くだけだった。

 

「増員やギルドホームの事については追い追い考えて行くから、今は目の前の攻略に集中する事」

 

 続く内容はさほど重要でもないので、俺は真剣な表情を崩して言葉を続ける。

 メンバーの増員はともかく、ギルドホームの購入はいずれ行う予定だが、今はまだその時ではない。何も纏まっていない状態であれもこれもと手を出そうとすれば必ず失敗し、最悪全てがダメになってしまう。故に、ギルドの形が纏まるまでは、一つの事……つまりは攻略に集中するべきだろう。

 

「以上が、俺が考える限りのうちの方針だ。他に何か意見・要望が有ったら随時報告してくれ。皆で検討しよう」

 

 伝えるべき事を伝え終えた俺は、最後に皆を鼓舞するべく声を上げ、左手で持ったグラスを高々と掲げる。

 

「それじゃあ皆……このゲームのクリアを目指して、気ィ引き締めて行くぞ! 絶対に生き残るぞ!」

 

「「「おお――!!!」」」

 

 直後、皆も掛け声と共にグラスを高々と掲げ、掲げられた七つのグラスは、カチーンという心地好い音を響かせた。

 

 これが、後に《攻略組の四大ギルド》の一角となるギルド……更にその一角となるギルドの、始まりの瞬間だった。




 やっぱり自分…表現力が無いわ〜。下手くそだわ〜。
 だが! しかし! それでも! 下手くそなりにも書いてみせますよ〜!

 という事で、今回一番最後に伏線を一つ張らせて頂きました。
 ええ。黒猫団は今後他のギルドと合併して、かなり大きくなっちゃいます。

 さて、次回もオリジナル展開……第二十五層の攻略辺りを書こうと思っています。

 それではまた次回。

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