ソードアート・オンライン 〜The Parallel Game〜 《更新凍結、新作投稿中》   作:和狼

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結論から言おう…………オリジナル入ると難しい! 大分時間が掛かってしまいました!


Chapter.13:聖夜にサチ有らん事を

二○二三年十二月二十四日。

デスゲーム開始から一年と一ヶ月が経過し、攻略最前線は間も無く第五十層ーーつまりは城の半分に到達しようとしていた。

 

俺達《十六夜騎士団》のメンバーの人数は俺の予想に反してどんどん増えて行き、気が付けば《KoB》や《軍》に勝らずとも劣らない程の勢力にまでになっていた。

ただ、全ての物事が上手く行っているという訳でもなく、現時点での死者の数は二千人を超えており、その内の約二割はなんと俺達と同じプレイヤーによって(・・・・・・・・・・・・・・)殺されていたりするのだ。

曰く「ゲームなのだから何をやっても許される」「ゲームで人を殺したからと言って、実際に現実でそいつが死ぬという証拠は無い」「どうせ茅場晶彦が罪を被るのだから、これは合法的殺人なんだ」と、積極的に犯罪ーー殺人を行っている節が見られる。……性質(たち)の悪い奴らだと、殺人を楽しんでいる節すら見られる。

 

そんな様々な事情を孕みながら浮かび続ける鉄の城は、今日…二度目のクリスマスイヴを迎えていた。

一度目……つまりは去年のクリスマスは、デスゲームが開始されてからまだ日が浅かった為に楽しむ暇や余裕など全く無かったが、今年は皆幾分か余裕が出て来た様で、今日という日を楽しもうとしている人達が多く存在している。それは勿論の事俺達十六夜騎士団も例外ではなく、夜には皆で集まってパーティーをする予定となっている。

 

「ふいー。こんくらい上げときゃ大丈夫か?」

 

「大丈夫なんじゃね? こっちは人数も居る訳だしさ」

 

「それでも、油断はしない方が良いと思うよ」

 

「分かってるって」

 

だとしても、攻略を怠る様な事はしない。……まあ、俺以外の奴らは別の目的が有るが故に攻略……正確にはレベルアップに励んでいるんだがな。

 

「で、肝心の巨大な樅の木の場所は?」

 

「キリトさん達が目星を付けてくれてるそうよ。アルゴさんからも情報を買っているみたいだし」

 

「おお! だとすりゃあ《ニコラス》は俺達で頂きだな! キリトさんは勘鋭いし、《鼠》の情報は確実だしな!」

 

「「ああ(ええ)!」」

 

彼らが今話しているのは、今日……十二月二十四日の夜二十四時ちょうどに現れるという、一年に一度だけのクエストMob《背教者ニコラス》……その出現場所についてである。NPC曰く「何処かの森に有る樅の巨木の下」との事だ。

そのニコラスが担いでいる大袋の中にはたっぷりの財宝が入っているとの事で、攻略を重視している攻略組のプレイヤーまでもが必死になって探している。また噂によれば、ニコラスの大袋の中には《命尽きた者の魂を呼び戻す神器》ーーつまりはプレイヤー用の《蘇生アイテム》なる夢の様なアイテムまで入っているとの事なので、それもまた多くのプレイヤーを必死にさせているのだろう。

 

「にしてもよぉ、団長はマジで来ないつもりなんスか?」

 

「ああ。俺は夜は基本…部屋でゆっくりしていたいもんでな」

 

さて。パーティーメンバーの一人にも言った通り、俺はそのクエストには参加するつもりは無い。ゆっくりしたいという理由も確かに有るが、本当の所はあまり長い事人と接していたくないのだ。一人になりたいのだ。人との接し方が分からなくなり始めてからは、一人で居る方が気が楽になる様になったのだ。

そしてもう一つ……クエストに対して、あまり興味を持てないのだ。歳の所為だろうか、イベントや祭りなどに対して段々と興が冷めつつある。何だがつまらないのだ。

 

「ノリ悪いですよ、団長〜」

 

「そんな事言ったら駄目ですよ。人には人それぞれに思う所が有るんですから。それに、うちは各自の行動は自由のはずですよ?」

 

「そりゃあ分かってるけどさぁ……」

 

「あはは……ノリの悪い団長で悪かったな。それとサツキ…気を使わせちまって悪いな」

 

「いえ、こちらこそ団長のご気分を害してしまってすみません」

 

兎にも角にも、未だに俺のクエストへの不参加に納得のいかない様子の二人と、律儀に礼儀正しく謝るサツキと共に、俺達はレベルアップを兼ねての迷宮区攻略を続けるのだった。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

「それじゃあ、これよりクリスマスパーティーを始めたいと思います。乾杯!」

 

「「「カンパーーイ!!」」」

 

今日の攻略を終えてから数時間後の現在、第二十二層の大きな湖の近くに有る洋館風の十六夜騎士団のホームでは、俺の音頭を合図にクリスマスパーティーが始まった。

 

「うはぁ! やっぱりアスナの料理は美味しいやぁ!」

 

「ふふっ。まだまだいっぱい有るから、どんどん食べてね」

 

「はいキリト、これ…私が作った料理よ」

 

「おお! 美味そうだなぁ!」

 

「おっ、彼女からの手料理だなんて、羨ましいねぇ」

 

「オメーも隅に置けねえなぁ。コノコノー」

 

「うわっ!? やめろよダッカー、クライン! それに、俺とシノンはまだ(・・)そんな関係じゃあ……」

 

「まだ、ねぇ(ニヤニヤ)」

 

「ちょっ、キ、キリト!?////」

 

「はいお兄ちゃん、あ〜ん!」

 

「おい兄貴、こっちのメシも中々に美味えぜ!」

 

「ご主人様…リーシャの作った料理もお召し上がりになって下さい!」

 

「ちょ、お前ら、そんないっぺんに差し出すな!」

 

「成る程。あれくらい積極的に行くべきなんだね」

 

「……シリカ…お前さんは何をそんなに真剣に観察してるんだ? で言うか、お前さんだってもう既に充分に積極的だと思うんだが……」

 

「あははは。キリト達もカナツグ達も、やっぱり仲が良いのな」

 

「……アレは仲が良いっていうレベルなのかなぁ?」

 

皆《料理スキル》持ちが作ってくれた料理を食べ、談笑し、騒ぎながら、このパーティーを大いに楽しんでいる。一応俺も、それなりには楽しんでいる。……皆とは多少距離を置いてではあるが。

 

「カミヤ君」

 

そんな俺の許に、料理が乗った食器を持ったサチがゆっくりと近付いて来た。その表情は、まるで何かを心配しているかの様に見える。

 

「サチか。どうかしたのか?」

 

「うん。……カミヤ君がちゃんとパーティーを楽しんでるのかなって、ちょっと心配になっちゃって」

 

ーー否、事実心配してくれていた様だ。

 

「楽しんでるよ、ちゃんと」

 

嘘は言っていない。皆とは距離は置いてはいるが、パーティー自体は楽しんでいる。……百パーセントかと聞かれればそうでもないが。

 

「てか、何でそう思ったんだ?」

 

「カミヤ君…さっきからずっと皆から離れて、一人で居るのが多いから」

 

余計な詮索をされる前に、何故俺が……楽しんでいない様に見えたのかをサチに尋ねてみるが、やはりと言うべきか、俺が一人で居たのが理由だった様だ。まあ、一人で寂しくやっている(俺自身はそんなつもりは無い)のを見れば、誰だって『楽しんでいないのでは?』と思ってしまうだろう。

 

「どちらかっつーと、一人で居る方が好きなんだよ。それでも、話し掛けられればちゃんと応えるし、何よりパーティーはちゃんと楽しんでるから、そんなに心配すんなって」

 

これ以上はサチに心配は掛けまい、安心させようと声を掛ける。

 

「それなら良かった。……けど、やっぱりちょっと心配だから、私しばらくの間カミヤ君と一緒に居るね?」

 

が、完全には信用してもらえなかった様で、サチが監視役として付く事になってしまった。

 

「……好きにしろ」

 

けとまあ、異性(おんなのこ)(しかも可愛い)と二人で居るというのも、存外悪くもあるまい。

 

「やった(カミヤ君と一緒に要られる口実が出来た!)」

 

「ん? 何か言ったか?」

 

「う、ううん! 何でもないよ!」

 

その後、しばらくサチと二人(+足元にオオカミが二匹)で何気無い会話をしながらパーティーを楽しんでいると、俺達を見つけたシリカとアスナが近付いて来てサチとちょっとした口論をし始め、それを見ていた周りの奴らが集まって来て茶化して来るという、最終的には沢山の人に囲まれてパーティーをする羽目になってしまったのだった。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

カミヤ君ーー和也君に対する私の第一印象は、一言で言うと『暗い』だった。

 

始めて和也君と出会ったのは高校一年生の時。偶然同じクラスになったというだけで、特に接点が有ったという訳でもない。

誰とも話そうとせず、ずっと一人で居て、話し掛けられても短く・素っ気なく返して、あまり友好的な感じじゃなかった。

正直近寄り難くて、あまり関わりたいとは思わなかった。けど…何故か気になって仕方が無かった。気が付けば、次の日からも彼の事を目で追う様になっていた。気にする様になっていた。多分…私自身が内気で、臆病で、引っ込み思案な性格だから、同類を見つけた様な気がして気になったんだと思う。親近感を抱いたんだと思う。

 

ある日の事だった。私に…和也君と接する機会が訪れた。

その日は夕方から雨が降って来て、傘を持って来るのを忘れた私は昇降口で立ち往生していた。家が近所のケイタ君は同じパソコン研究会の皆と一緒に寄り道して帰るとの事で居なくて、周りの人に頼もうにもあまり親しい訳でもないし、何よりも自分の性格柄頼みづらくて、どうしようかと思って悩んでいた。

 

そんな時だった……

 

「……入るか?」

 

突然声を掛けられて、振り向いて見るとそこには傘を持った和也君が居た。

 

「えぇと……お願いしても良いかな?」

 

「構わない……てか、そのつもりで声掛けたんだけどな」

 

「ありがとう」

 

「別にお礼なんていい。単なる気まぐれだから」

 

相手が和也君だったのは驚いたけど、折角の好意なのでありがたく入れさせて貰う事にした。

 

「…………」

 

「…………」

 

最初のやりとり以降、会話は殆ど無かった。和也君も私もあまり話す方でもないから、ただ黙々と歩くだけ。話し掛けたとしてもそれは全部私からで、彼からの応えも普段通り短くて素っ気ないもの。正直な所…彼と二人だけというのはかなり辛かった。

 

「送ってくれてありがとう」

 

「別にいい。言っただろ? 単なる気まぐれだって」

 

そんな気まずい雰囲気だったとはいえ、家まで送ってくれた事には感謝しています。なので私は和也君にお礼を言ったんだけど、彼は素直には受け取ってはくれず、「じゃあな」と一言だけ言ってそそくさと帰ってしまいました……元来た道の方向へと(・・・・・・・・・)

 

「……え?」

 

それを見て、私は一瞬驚きました。家が同じ方向だと思っていた為に、それに反して逆方向へと歩き出したのだから。けど家は近くで、少し戻る程度なのかな…とも考えたけど、まさかと思って翌日クラスの子に和也君の帰る方向を聞いてみた所、なんと…彼の帰る方向は私の家とは全くの逆方向でした。……つまり、彼は態々私を家まで送ってくれたみたいなのです。

この時、私は彼に対する印象を改めました。彼は暗い性格をしているけれど、本当はとても優しいんだと。それが証拠にもう一つ……彼は私を送ってくれる間ずっと、私の方に傘を寄せていてくれました。自分が半分濡れてしまう事も構わずに。

 

その日から、私は別の意味で和也君の事が気になる様になりました。もっと彼の事が知りたくて、度々話し掛ける様になりました。

 

そして一年前の第一層ボス攻略の前の日の夜、私の中に和也君に対する明確な恋心が芽生えました。怖がる私を気遣ってくれる彼の事が、異性として好きになりました。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

クリスマスパーティーも終わり、殆どのメンバーが『二次会』と称した『ニコラス狩り』に出掛けた中、現在俺は一人自室でゆっくりと休んでいる。

 

コンコン

 

「カミヤ君…入っても良いかな?」

 

すると、ドアをノックする音と、直後に俺同様にニコラス狩りに行かなかったらしいサチの声が聞こえて来た。因みに、シリカは俺の分まで頑張って来ると言って張り切って出掛け、ユウキに誘われたアスナもノリノリで出掛けて行った。

さて。ドアの向こうに居るサチに向かって「どうぞ」と声を掛けると、ドアを開けてパジャマ姿のサチーー何時ものと違って、少しばかり色っぽいものを着ているーーが入って来た。どうやら何時もの様に、一緒に寝る為の様だ。

 

ピロリーン。ピッ、ピッ……

 

…………おかしい。何故システムサウンドが聞こえて来る? 何故サチはウインドウを操作している?

 

「……サチ、お前…何してるんだ? 何でドアに鍵掛けてるんだ?」

 

サチの行動の意図が分からない俺が彼女に尋ねると、彼女はこちらに振り向いてーー

 

「他の人が入って来れない様にだよ。今晩は私だけでカミヤ君を独り占めなんだから」

 

ーーと、満面の笑みを浮かべて仰って下さいました。

 

「……えーっと」

 

「ほぉら、もう寝よう♪」

 

「ちょ!? お、おい、サチ!? 」

 

直後、俺は有無を言う間も無くサチにベッドの中に引き釣り込まれて思いっ切り抱き着かれてしまい、他にやる事も無かったのもあって、そのまま彼女と寝る事にしたのだった。

 

「……まあ良いか」

 

……これはこれで悪くないと思いつつ。

 

 

 




おまけ


「「しまった! 抜け駆けされた!!」」

その頃、サチが居ない事に気付いたシリカとアスナの二人は、サチに抜け駆けされたと思い悔しがり、同時に自分達が取った行動に多少後悔したのだった。

シノン「ふっ。二人とも甘いわね」(←思い人と共に行動しているが故の上から目線)


という訳で、今回は後半でサチにスポットを当ててみました。苦労して書いてみたけど、こんな出来で大丈夫だろうか…?

さて、次回は本編に於けるシリカストーリー『黒の剣士』の辺りを投稿予定です。
しかし、本作のシリカは攻略組に属している為、本編みたいな展開にはなりにくい。ではどうなるのか…?

ーーそれは次回のお楽しみなのです。


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