ソードアート・オンライン 〜The Parallel Game〜 《更新凍結、新作投稿中》   作:和狼

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お待たせしました。
先にこちらの投稿になります。

因みに書き方ですが、こちらはこちら、向こうは向こうという風にさせて頂きます。
急に大きく変えたら、それまでの雰囲気を壊してしまう事になると思いますので。


Interval:剣士達の癒し

 

 

 

「うーん、疲れたぁ……」

 

とある日の夕方、その日一日の攻略を終えてギルドホームへと帰って来たキリトは、一人大広間のソファーに腰掛けて呟く。

 

「お疲れ様です、キリト様」

 

そんなキリトに、大広間を通り掛かった一人の女性プレイヤーが声を掛ける。

プレイヤーネームを《リーシャ》といい、白に近い金色をした長髪に、翠玉色(エメラルド)の瞳、抜ける様な白い肌をした、ヨーロッパ系の外人を思わせるかの様な美少女。料理や裁縫、薬の調合や、必需品や食糧の買い出し、果てはギルドの経費の管理など、後方支援に特化したプレイヤーである。

 

因みに、同じ《十六夜騎士団》のメンバーであるカナツグとは主従関係にあり(尤も、彼女が勝手にその様に慕っているだけなのだが)、アスナをはじめとした女性陣曰く『出来てる』との事。

 

「随分とお疲れのご様子ですね?」

 

「まあな。アインクラッドの攻略も半分を切った事で、モンスターのパラメータやアルゴリズムも大分高くなって来たからな。肉体的な疲労は無くても、精神的な疲労は溜まるもんなんだよ」

 

さて。リーシャの問い掛けに対し、キリトは首を右に左にと曲げて、肩が凝っているとでも言いたげな仕草をしながらそう答える。……尤も、このSAOに於いて本当に肩が……延いては身体が凝るという事はあり得ないが。

 

「でしたら、お食事の後に団長様のお部屋に伺ってみては如何ですか?」

 

「ん? カミヤの部屋に?」

 

「はい! 恐らくキリト様の疲労も解消されるかと」

 

そんなキリトにリーシャはカミヤの部屋に行く様にと告ると、「それでは、リーシャはお仕事が有りますのでこれで」と言って大広間を去って行く。後に残されたキリトは、今度はリーシャの言葉に対する疑問から首を傾げるが、とりあえずは言われた通りにしてみようと、一旦自分の部屋へと戻るのであった。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

そして夕食後しばらくしてから、キリトはリーシャに言われた通りにカミヤの部屋へと向かっていた。

 

「おう、キリトじゃねえか」

 

そんな彼に、背後から声を掛ける者が現れた。

 

「よお、クライン」

 

その人物とは、趣味の悪いバンダナを巻いた無精髭の男……今でこそ同じ十六夜騎士団のメンバーだが、かつてはギルド《風林火山》の頭を張っていた男……そして、キリトやカミヤ、シノンやシリカとは第一層の頃からの付き合いである、頼れる兄貴分・クラインである。

キリトの許まで歩み寄って来た私服姿のクラインは、歩みを止めるとキリトへと話し掛ける。

 

「もしかしてよぉ、おめぇもこれからカミヤの部屋に向かうところか?」

 

「ああ。『も』って事は、お前もなのか?」

 

「おうよ!《アレ》を受ける為にな」

 

クラインの問いかけに答えた後、彼の言葉振りが気になったキリトが彼へと問い返せば、彼は肯定と共に気になる言葉を口にした。

 

「なあクライン……《アレ》って何だ?」

 

「あれ? おめぇ…《アレ》を知らねぇのか?」

 

「あ、ああ、知らない……」

 

「そうか。おめぇはまだ《アレ》を知らねぇのか」

 

その《アレ》というものが何なのかをクラインへと尋ねるが、当のクラインはキリトが《アレ》を知らない事に意外そうな向けるだけで、《アレ》が何なのかを答えようとはしない。

 

「んじゃあよぉ、おめぇは何でカミヤの所に行こうとしてんだ?」

 

「ああ、カミヤの部屋に行ったら、疲れが取れるってリーシャから聞いたから……」

 

「なーんだ、やっぱりおめぇも《アレ》を受けに行くんじゃねえか」

 

もしかして違う用事なのかとクラインが問い掛けるが、キリトの答えを聞いて目的が同じであると理解し、そして「成る程。リーシャちゃんからねぇ」と一人納得した様な表情をする。

 

「だから《アレ》って何なんだよ?」

 

一向に《アレ》が何なのかを話さないクラインに少し苛ついたキリトが再び問い掛けるが、クラインは尚もはっきりと答えてはくれない。

 

「まあ、行ってみりゃ分かるってもんよ」

 

そう言われ、不服ながらもそのままクラインと共にカミヤの部屋を目指す事にしたキリト。

 

その後しばらくしてカミヤの部屋の前に到着し、ドアをノックする。すると中から「どうぞ」というカミヤの声が聞こえ──

 

 

 

 

『うあぁ〜……』

 

 

 

 

──直後に、今彼の部屋に居るらしき、別の人物の呻き声の様なものが聞こえて来た。そしてそれは、尚も続いている。

 

「……えっ?」

 

その声を聞いて、キリトはドアノブに掛けようとしていた手を止めた。

今の声は何なのか? 今この部屋では何が起こっているのか?──ドア一枚の先にて起こっている未知なる事への恐怖から、キリトは目の前のドアを開ける事を躊躇してしまったのだ。

 

「おっ、どうやら先客が居るみてぇだなぁ」

 

そんなキリトの不安を他所に、《アレ》の内容を知っているクラインは、未だ中から聞こえて来る声に臆する事無く、キリトの代わりにドアノブに手を掛けてドアを開けてしまう。

果たして、その先に広がっていた光景とは──

 

 

 

 

「よお、クライン。それにキリトも一緒か」

 

「あぁ……団長さん、そこ気持ち良ぃ〜……」

 

──私服姿のユウキがうつ伏せでベッドに寝転がり、そんな彼女の腰をカミヤが親指で押しているという、所謂マッサージをしているというものだった。

 

「……え? これってもしかして……マッサージ…か?」

 

「おう。当たりだぜ」

 

恐怖した事の内容がまさかのマッサージだったという事実に、キリトは安堵したのと同時に脱力してしまう。

その他にも、クラインの言っていた《アレ》がマッサージだと分かった事への爽快感、リーシャが『披露が回復する』と言っていた事への納得感なんかも感じていた。

 

「にしてもカミヤ、お前…マッサージなんて出来たのかよ」

 

「まあ、ちょいとかじる程度にな」

 

「いやいや。ありゃあちょっとかじったってレベルじゃねぇだろ」

 

「そぉだよぉ〜……団長さんのマッサージ、すっごく気持ち良いよぉ〜」

 

さて。お約束な展開(?)も済んだところで、入り口横に置かれたソファーにクラインと共に腰掛けて、カミヤに素朴な質問を投げ掛けるキリト。その問い掛けに、ユウキへのマッサージを続けながらも答えたカミヤだが、クラインとユウキの二人はカミヤのその答えに異を唱えた。

 

「そりゃあまあ、システムのアシストも受けてるからなぁ」

 

それに対するカミヤの答えは、システムの恩恵によるものという、遠回しに本来の自身の技術を低く評価する様なものである。

 

「な、何ィ!? マッサージのスキルなんて有ったのかよ!?」

 

「うひゃ……どおりですっごく気持ち良い訳だよ。……あ、それ気持ち良ぃ〜……」

 

それを聞いたクラインとユウキの二人は、真意には気付かず、それぞれマッサージのスキルが有る事に対する驚嘆を漏らす。声こそ出してないが、キリトも僅かに目を見開いている。

 

「ああ。上の層のフィールドでたまたまそのスキルを会得する為の場所を見つけてな」

 

「へぇー」

 

「……言っとくけど、会得するにはガタイの良いNPCのおっさんを揉み続けにゃならんし、熟練度上げるのだってひたすら床押しや相手を揉み続けにゃならないから、そんなに簡単じゃあないぞ?」

 

「う、うへぇ……そ、そうですか……」

 

カミヤはそんな彼らにスキルの会得情報を伝えるが、クラインが興味津々な表情をしているのに気付き、セクハラ紛いな事をしない様にという意味合いも兼ねて、会得するのが簡単ではない事を伝える。それにより、クラインの表情は急に暗くなり、会得を断念する様な雰囲気を漂わせた。

尚、このマッサージスキルの情報……とある事情から既にアインクラッド中に公開されてはいるが、詳細が詳細な故に、殆どのプレイヤー──主に男性陣──はクライン同様に会得を断念したのだった。

 

「俺はまあ……普段世話になってる奴の疲れを取ってやりたかったから、ちょっと頑張ってみたんだけどな」

 

「へぇー。団長さんは優しいんだねぇ。 ……うおぉ〜……足の裏効くぅ〜……」

 

ユウキの足の裏を押しながら、カミヤは更にその後の経緯を語って行く。

 

「そうかな? ……んで、そいつがある日そいつの友達にマッサージの事を話したらしくて、そこからどんどん他のプレイヤーに情報が拡散。次々とマッサージや情報を求める奴が増えて、今じゃこうしたギルドメンバーへのサービスや、その他のプレイヤー相手の商売をするに至ってるよ」

 

「ええっ!? お前…商売までしてるのか!?」

 

カミヤが淡々と語って行く中、最後の最後にとんでもない事実が判明した為、キリトは驚いて思わすカミヤへと聞き返した。

 

「ああ。俺も攻略が有るから、夕方限定でな。大分利用者が増えて来た辺りで、アスナが『店を出してお金を取るべきだ』って強く提案するから、流される形でな」

 

「アスナの意見は正しいよ。こんなに気持ち良いんだから、お金を取らなきゃ損だよ。……うあぁ〜……その足引っ張るの良ぃ〜……」

 

「……アスナさん」

 

と、足を牽引されながらアスナの意見に賛同するユウキに対し、キリトは意外と強引なアスナに対して呆れてしまう。

 

「けど、店なんて何処てやってるんだ?」

 

「ああ、それはな、うちのホームの一室を使ってやってるんだぜ。後方支援の奴らがそれ用にって部屋を増築した上に、客用の出入り口まで有るんだぜ」

 

「……ああ。どおりで最近この層に来る奴らが多い訳か」

 

クラインの説明を聞いて思い当たる節が有るらしく、キリトはへぇー、と納得した顔になる。

余談だが、十六夜騎士団のホームが有る二十二層の湖でよく釣りをしている《ニシダ》という五十代の男性は、釣りの帰りにとよくマッサージを受けに来ては、帰り際にその日釣った魚をお裾分けしてくれたりしている。

 

「因みに、お前にこの事を教えてくれたリーシャちゃんは、カミヤの店のアシスタントをしてくれてるんだぜ」

 

「成る程。それでか」

 

「彼女には主に受付を担当して貰ってる。何より彼女は経理面が得意なみたいだからな。……っと、ほい、お疲れさん」

 

「ありがとう、団長さん。……ふぅ、気持ちよかったぁ」

 

そして、最後にアシスタントとして働いてくれているリーシャの話が出たところで、ユウキへのマッサージは終了した。

 

「さて、次はどっちが受けるんだ?」

 

「キリト……おめぇが先に受けて良いぞ」

 

「良いのか? クライン」

 

「おう。俺はもう何度か受けてるからな。おめぇも早えところ受けてみろ。……ハマるぞぉ?」

 

「それじゃあ、お言葉に甘えさせて貰って……」

 

そして、次に受ける事になったのは、クラインの勧めで未だ経験の無いキリト。先程までユウキが寝ていたベッドにうつ伏せになると、カミヤがその背中に手拭いを掛けて……

 

「んじゃ、始めるぞ?」

 

──今此処に、キリトにとってSAOに入って初めてのマッサージが始まった。

 

 

 

 

『うおぉぉぉ〜〜……確かにこれ効っくぅぅぅ〜〜……!』

 

 

 

 

──結果は、翌日キリトが最前線で敵モンスターを無数のポリゴン片へと変えるものとなったのだった。

 

 

 

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