ソードアート・オンライン 〜The Parallel Game〜 《更新凍結、新作投稿中》   作:和狼

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辻褄合わせを考えながら故に遅くなりましたが、漸く更新出来ました21話。……良いタイトルが浮かびませんでした。

さて、原作は先日15卷『アリシゼーション・インベーディング』が発売。
9卷から始まった『アリシゼーション編』は今卷で7冊目と、かなり長いですねぇ。……後何卷続くんでしょう?

そして、アニメSAO2では、キリト君がBoBにてフォトンソードで大暴れ。いやぁ、弾弾きの描写は凄かったですねぇ。
予選でアレなんですから、本戦は更に楽しみですねぇ。




P.S.
オリ主無しのIS×リリなのが読んでみたいです。
資料(原作)が無い、文才が無いので、どなたかお願いします。


Chapter.17:圏内殺人

 

 

 

《圏内》に於いて一人の男性プレイヤーのHPがゼロになった……それも、誰か他のプレイヤーの手によって殺されるという形で──その事実に、俺も、少し遅れて俺の隣に駆け寄って来たアスナとユウキも、俺達の眼下に集まっている観衆達も、皆が唖然となり、一瞬の後に広場は観衆達が放つ悲鳴によって埋め尽くされた。

無理も無い事だ。圏内に於いてプレイヤーのHPがゼロになる事など……人が死ぬ事など、本来ならば有り得ない筈の事なのだから。

 

「皆! デュエルのウィナー表示を探してくれ!!」

 

そんな俺達にの耳に、そのざわめきを上回る程のキリトの叫び声が届き、俺達は我に返って僅かに冷静さを取り戻す。

 

「二人は外を頼む! 俺は中を調べてみる!」

 

「「分かった(わ)!」」

 

そして、キリトの意図を読み取り、二手に分かれてデュエルのウィナー表示を探し始める。

 

キリトはこう考えているのだろう──アンチクリミナルコード有効圏内である主街区に於いて、プレイヤーのHPをゼロに出来る方法はたった一つ……それ即ち《完全決着モード》によるデュエル。死んだ男性はそれに挑み、敗北し…………そして死んだのだと。

だとすれば、何処かに必ず『WINNER / 名前.試合時間 / 何秒』という表示形式の巨大なシステムウインドウが出現する筈であり、そうすれば男性を殺した犯人を簡単に特定出来る筈なのだ。

 

ただし、ウィナー表示が出現するのはたったの三十秒間だけなので、急いで見付けなくてはならない。

外をアスナとユウキに任せて、俺は室内へと目を向けるが、ウィナー表示は何処にも見当たらない。ならば部屋の外かと思い、部屋の出入り口へと向かい、《索敵スキル》も使いながら廊下を覗くが、やはり何処にも見当たらない。

 

「アスナ! ユウキ! ウィナー表示有ったか!?」

 

「ダメー!! 全然見付からないよー!!」

 

「こっちもダメだわ!! カミヤ君! そっちはどう!?」

 

「こっちもダメだ!! 表示も見付からねぇし、プレイヤーの反応もねえ!!」

 

「嘘ッ!?」

 

背後からキリト、ユウキ、アスナの順に声が聞こえ、こちらも答えを返してから尚も捜索を試みるが、全く何も見付からない。そして……

 

 

 

 

「……ダメだ。三十秒経った…………」

 

……外から、誰かがそう呟くのが聞こえてしまったのだった。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「カミヤの言った通り、教会の中には他には誰も居ない」

 

ウィナー表示捜索終了の直後に、シノンと共に教会の中に入って来たキリトが、俺達が居る問題の部屋に入って来るなりそう報告する。

 

「ねえ、隠蔽(ハイディング)アビリティ付きのマントで隠れてる可能性は無いの?」

 

「いや、俺達程の索敵スキルを無効化する程のアイテムは、最前線でもドロップしてないし……」

 

「もし仮に隠蔽(ハイディング)してるんだとしても、リトとスーナの嗅覚から逃れられるとは思えない」

 

「それに念の為、教会の入り口に、プレイヤーに隙間無く立って貰ってる。透明化してても出る時に接触で自動看破(リビール)される筈だ。この建物には裏口も無いし、窓が有る部屋は此処だけだ」

 

キリトの報告に、隠蔽(ハイディング)の可能性を示唆して来たアスナだったが、キリトと俺の二人でそれを否定する。

 

俺達《十六夜騎士団》は、最前線での攻略を主な方針としている為、安全マージン確保の為のレベル上げは必要不可欠。故に、モンスターを見付け易くする為にと、メンバー全員に《索敵スキル》の取得と熟練度上げを義務付けている。その結果、大半の中堅メンバーの索敵スキルの熟練度は半分を超えており、上位メンバーに至っては《完全習得(コンプリート)》している者すら存在する。

この場には、その完全習得者である俺、キリト、ユウキの三人が存在する上に、アスナやシノンだって八割台まで上げている。そんな俺達を相手に隠れ切れるであろうアイテムなど、今の所は存在しないし、そうそう存在するとも思えない。

 

加えて、先に教会に突入した俺、アスナ、ユウキと共に付いて来た、俺の使い魔のオオカミのリトとスーナだ。

隠蔽(ハイディング)は確かに便利なスキルではあるが、決して万能という訳ではない。視覚以外の感覚を持つモンスターが相手では、効果は薄いのだ。そして、オオカミであるリトとスーナは、その視覚以外の感覚──嗅覚の発達したモンスターであり、いくら隠蔽(ハイディング)スキルで隠れていたとしても、僅かな体臭で見付ける事が出来るのだ。

 

俺達の索敵スキルに引っ掛からない、リトとスーナも反応しないとなれば、隠蔽(ハイディング)の可能性は極めて薄くなる。

 

「そっか……分かったわ。これを見て」

 

それを理解したアスナは頷くと、部屋のとある一画を指差す。

そこには《座標固定オブジェクト》──つまりは動かす事の出来ない置物である、簡素な木製のテーブルが設置されてあり、その脚の一本には、例の全身金属鎧(フルプレ)の男性を吊るしていたであろう、やや細いが丈夫そうなロープが結えられていた。

 

「これは一体、どういう事なのかしら?」

 

「えっと、普通に考えれば……」

 

シノンが小首を傾げながら口火を切る。対して、アスナも同じ様に小首を傾げながら、彼女の質問に答えを返す。

 

「……あのプレイヤーのデュエルの相手がこのロープを結んで、胸に槍を突き刺したうえで、首に輪を引っ掛けて窓から突き落とした……って事になるのかしら……」

 

「けど、何の為に?」

 

「何かの見せしめのつもり……なんだろうか? けど、それ以前に……」

 

ユウキの素朴な疑問に答えた直後に、俺はこの騒動に於いて最も重要な問題点について指摘する。

 

「犯人は、どうやってあの男性を殺したっていうんだ?」

 

「ウィナー表示は見付けられなかった。広場に詰め掛けてた数十人が誰も見付けられなかったんだぜ。デュエルなら、必ず近くに出現する筈だろう」

 

「でも……有り得ないわ!」

 

俺の言葉の後に、明瞭な声で暗意に『これはデュエルによるものではない』と告げるキリトだか、それに対してアスナが強く反論する。

 

「圏内でHPにダメージを与えるには、デュエルを申し込んで、承諾させるしかない。それが常識の筈でしょう!」

 

「……ああ、その通りだ。……その通りの筈だ」

 

だが、実際にはその有り得ない筈の方法で人一人が殺されており、しかも現状、その手口は勿論の事、誰が、どういった理由や目的でやったのかも、一切分かっていない。

教会前の広場からは、尚も集まった観衆達がざわついているのが聞こえて来る事から、皆がこの事件の異常性に恐怖や不安の念を抱いている事が分かる。勿論、それは此処に居る俺達五人も同じだ。

 

だがやがて、アスナが何かを決意したかの様な表情で、俺達に告げた。

 

「何にしても、このまま放置しておいたらまずいわ。もし《圏内PK技》みたいなものを誰かが発見したんだとしたら、外だけじゃなくて、街の中に居ても危険だって事になっちゃうわ」

 

「だな。早い所この事件のカラクリを解かなきゃ、安心して攻略に集中出来ねぇだろうからなぁ」

 

アスナの言葉に頷いて俺も、そして残りの三人も、アスナ同様に決意を固めた表情へと変える。

 

「しゃあない。前線を離れる事になっちまうが、俺達でこの事件を解決するぞ!」

 

「「「おー!」」」

 

こうして俺達五人は、主街区に於いて起こったプレイヤーの死亡事件──《圏内殺人》の解決に、急遽乗り出す事になったのだった。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

証拠物件であるロープを回収した俺達は、教会を後にして広場へと戻った。因みに、同じく証拠物件である黒い短槍(ショートスピア)は、教会に入って来る前にキリトが回収済みである。

 

「すまないが、さっきの一件を最初から見ていた人、居たら出て来て話を聞かせて欲しい!」

 

先ずは事件が起こった時の様子、更には殺された男性の詳細なんかを調べる為に、広場に居る観衆に情報提供を呼び掛ける。

すると数秒の後、おずおずといった感じで、一人の女性プレイヤーが俺達の前に進み出て来た。緩くウェーブの掛かった濃紺色の髪と、髪と同じダークブルー色の大きな瞳をした、見た感じ俺達とそう歳は離れてなさそうな少女だ。身に付けている片手剣や防具からするに、恐らくは観光に来た中層プレイヤーなのだろう。

 

俺の足下に居るリトとスーナが原因か、少しばかり怯えている様子の少女に対し、代わって前に出たアスナが優しく声を掛ける。

 

「ごめんね、怖い思いをしたばっかりなのに。あなた、お名前は?」

 

「あ、あの……私、《ヨルコ》って言います」

 

そのか細い震え声に、俺は聞き覚えが有った。

 

「もしかして、さっきの……最初の悲鳴も、君が?」

 

「は、はい……」

 

俺達がNPCレストランで聞いた、此処に駆け付ける切っ掛けとなった、あの絹を裂く様な悲鳴と同じ声質だ。

同じ様に気付いたらしいキリトがその事を尋ねると、少女・ヨルコさんは頷き、その直後に事件が起きた時の事を語り始めた。

 

「私、さっき殺された人と、一緒にご飯を食べに来ていたんです。あの人、名前はカインズっていって、昔同じギルドに居た事が有って……」

 

そこまで来て、無惨にも殺された昔の仲間の事を思い出したのだろう。悲しさからか涙を流すが、それでも尚その時の事を話してくれる。

 

「でもこの広場ではぐれちゃって……周りを見回したら、いきなりこの教会の窓から彼が……」

 

だが、そこまでが限界だった様だ。それ以上は言葉にならないという様に両手で口許を覆い、我慢出来ずに泣き出してしまう。

そんなヨルコさんに寄り添い、落ち着かせる様に彼女の背中をさすりながら、アスナは彼女に優しく問い掛ける。

 

「その時、誰かを見なかった?」

 

「……一瞬なんですが、カインズの後ろに、誰か立っていた様な気がしました……」

 

「その人影に、見覚えは有った?」

 

「…………」

 

ヨルコさんは暫く考えていたが、やがて申し訳無さそうに分からないとかぶりを振った。

 

「その……嫌な事を聞く様だけど、心当たりは有るかな? カインズさんが、誰かに狙われる理由に……」

 

次いで、今度はキリトがヨルコさんに質問を投げ掛ける。昔の仲間を失った直後に、その人を疑う様な質問をするというのは、多分に配慮に欠けている事なのだろう。だが、この事件を早急に解決する為にも、少しでも多くの情報が必要である為、どうしても聞いておかなければならないのもまた事実である。

 

だが残念な事に、今度の質問にもヨルコさんはかぶりを振るのみだった。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

その後、日を改めてまた事情を聞く事にて、一人で下層まで帰るのが怖いと言うヨルコさんを、アスナとシノンに任せて最寄の宿屋に送って貰う。その間に残った三人で、転移門広場にて待機していたプレイヤー達(主に攻略組)に、今回の事件に関する情報を報告する。

 

「さて……」

 

それも終わり、二人も戻って来たところで、今後の捜査の方針について話し合う。

 

「とりあえずは、証拠であるスピアについて調べてみよう。そこから何か手掛かりが見付かるかもしれないからな」

 

「成る程な。となると、鑑定スキルが居るなぁ」

 

先ずは、凶器であるスピアと、現場に残っていたロープについて調べる事になった。

が、それには《鑑定スキル》と呼ばれるものが必要であり、基本的には商人プレイヤーや鍛冶屋といった職人プレイヤーが持っているもの。戦闘色の強い俺達は生憎と持ち合わせてはいないのだ。

 

「わたしの友達で、武器屋やってる子が持ってるけど、今は一番忙しい時間だし、直ぐには頼めないかなぁ……」

 

「俺にも武器屋をやって後輩が居るけど、多分同じだろうな……。同じ理由でエギルさんも駄目だろうし……」

 

ならば、その手の知り合いに頼めば良いのだろうが、生憎とこの時間帯は、昼型のプレイヤーが手に入れたアイテムの売却や、武器のメンテナンスやらでそれぞれの店に押し掛ける頃だろう。下手に営業を邪魔してしまうのは気が引けるというものだ。

 

「けど、この時間帯なら《ヴィント》さんが帰って来てる頃じゃないかしら?」

 

「あっ、そう言えばそうだな」

 

俺達が頼む相手に困る中、シノンが新たに目星となる人物の名を挙げる。

《ヴィント》──十六夜騎士団所属の、顎髭を蓄えた長身の男性で、エギルさんと共に商人を兼任している大剣使いのプレイヤーだ。夜はエギルさんが経営している雑貨屋の手伝いをし、昼間は迷宮区(基本的に最前線)に赴いて、攻略に訪れるプレイヤーを相手に商売を行っている。予想外の消費を強いられる事の有る最前線に於いては非常に重宝であり、俺達もよく利用させて貰っている。

 

「どっちか一人に頼めば、鑑定して貰えるんじゃないかしら?」

 

「可能性は高いだろうな。よし、早速聞いてみるか」

 

そのヴィントさんかエギルさんのどちらかに鑑定を依頼出来ないかと、とりあえずはヴィントさんに宛てて、『ヴィントさんかエギルさんのどちらかに頼みたい事が有るから、今から会いに行っても良いか』という旨のメッセージを作成・送信する。

そして暫くした後に、ヴィントさんから『良いぜ。俺が聞いてやるよ』という承諾の返事が返って来たので、俺達はエギルさん達の店へと向かうべく、転移門で五十層へと下りるのだった。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

猥雑な雰囲気が漂う、某電気街の様な第五十層の主街区《アルケード》。迷い込んだら二度と出て来れないのではと思わせる様な、その街の裏通りを奥へ奥へと進んで行けば、目当ての人物達が営む雑貨屋へと到着。

中へと入り、絶賛商談中の店主の横を通り抜け、依頼を引き受けてくれたもう一人の店員・ヴィントの後に付いて、カミヤ達五人は店の二階へと上がる。

 

「圏内でHPがゼロに? デュエルじゃなかったのか?」

 

「いや、ウィナー表示は見付けられなかったから、恐らくは違うと思う」

 

「マジかよ……」

 

小さな丸テーブルを六人で囲みながら、事件のあらましを説明すれば、ヴィントは目を丸くして驚く。

 

「直前までヨルコさんと歩いてたなら、睡眠PKの線も無いしね」

 

「第一、突破的デュエルにしては遣り口が複雑過ぎる。事前に計画されたPKなのは確実と思っていい。そこで……これだ」

 

アスナ、キリトの順に自論を述べた後に、キリトがアイテムストレージから問題のスピアを取り出し、テーブルの上に置く。全体が同一素材の黒い金属で出来ており、長さは一メートル半、柄にはびっしりと逆棘が生えているそれを、ヴィントは手に取って指でタップし、開かれたポップアップウインドウから《鑑定》メニューを選択する。

 

「コイツは……プレイヤーメイドだな」

 

そして、少しの間を置いて表示された結果に、キリトは思わず「本当か!」と声を上げる。声こそ上げていないが、他の四人も同じ気持ちだ。

 

「製作者は誰なの?」

 

ユウキから投げ掛けられた質問に、ヴィントはシステムウインドウを見下ろしながら答える。

 

グリムロック(Grimlock)……聞いた事のねぇ名前だな。少なくとも、一線級の刀匠って訳でもねぇだろう。それに、武器自体にも特に変わった事は無さそうだぞ」

 

「けど、手掛かりにはなるわね」

 

「だな。一応固有名も教えてくれ」

 

それを聞いて冷静に言葉を口にするシノンに頷き、キリトが更に質問を投げ掛ける。対して、ヴィントは三たびウインドウを見下ろし、答えを返す。

 

「えっと……《ギルティソーン》だってよ。訳すと『罪のイバラ』ってところだな」

 

SAOに於いて、装備フィギュアに設定されていない武器を地面に落とす(ドロップする)、或いは誰かに渡したり、モンスターに刺したままで遠ざかると、三百秒で所有者属性がクリアされ、システム上次に拾ったプレイヤーがそのアイテムの所有者となる。

現在の所有者はキリトである為、鑑定を終えたスピアがヴィントからキリトへと手渡される。そして、手渡されるそれを端から見つめながら、カミヤはポツリと呟くのだった。

 

「罪のイバラ、ねえ……」と。

 

 

 




・その後、カミヤはヴィントに鑑定の報酬にとマッサージを頼まれた為、《生命の碑》の確認にはカミヤを除く四人で行く事に。

・ヴィントのマッサージを終えるも、今度はエギルに頼まれ、人の良いカミヤは断れずに了承。

・漢二人を揉み終えてから帰宅したカミヤは、事件の所為で夕食を食べ損ねた為に、先に帰って来ていたアスナに軽く作って貰ったのだった。

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