ソードアート・オンライン 〜The Parallel Game〜 《更新凍結、新作投稿中》   作:和狼

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大ッッッッッッッッッッ変お待たせ致しました!
リアルでの私用が忙しく、加えて毎度お馴染みの文法や表現の関係により、更新に二ヶ月も掛かってしまいました。
しかも、ぶっちゃけ今回の更新の出来にはあまり自信がありません。

そんな感じではありますが、タイトルから分かる通りのキリユウ回……どうぞお楽しみ下さいませ。




……それと、作者はファッションに関してはかなり疎い方なので、たとえ問題が有ったとしても、其処はどうか目を(つぶ)って下さいませ。



Interval:黒と絶剣《前編》

 

 

 

アインクラッド中を騒がせた《圏内殺人》、及びそれに深く関連する《指輪事件》の解決より数日が過ぎた。

 

事件解決後、解決に尽力した《十六夜騎士団》の一部メンバーの証言を元に発行された新聞には、事件に使われたトリックと、実際には一人の犠牲者も出ていなかった事が記されており、騒動を起こした人物及び理由に関しては、関係者の事情を考慮して詳細には記載されなかった。

その関係者である《ヨルコ》らはというと、事件が解決したその日に、事件解決への協力に対する御礼と迷惑を掛けた事に対する謝罪をしに、十六夜騎士団のホームを訪れたのだという。

 

 

 

 

──閑話休題。

 

 

 

 

さて、その十六夜騎士団なのだが……実は今日この日、ある意味でのちょっとした騒動が起きようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午前九時。

十六夜騎士団がギルドホームを置く、広大なフロアの大部分を常緑樹の森林と点在する湖に占められた、アインクラッド第二十二層。殆ど小さな村と言ってもいい《コラル》という名の主街区の転移門広場に、広場に生えた大きな木に(もた)れ掛かる一人のプレイヤーが居た。

 

そのプレイヤーの名は《キリト》。十六夜騎士団に所属する幹部格のプレイヤーの一人であり、その出で立ちから他のプレイヤーからは《黒の剣士》などと呼ばれている。

しかし、今の彼の出で立ちは《黒の剣士》の所以(ゆえん)である黒ずくめではあるが、普段のそれとは違っていた。何時もは羽織っている黒のコートや背中の黒の片手剣の姿形は無く、シンプルな黒の長袖のシャツと黒の長ズボンだけという、どちらかと言えばオフの格好だ。

 

そう、今日の彼はオフなのだ。それも、他のプレイヤーから共に過ごそうと誘われてのだ。

詰まる所、今の彼は絶賛《待ち合わせ》の最中なのである。

 

「ごめんキリト〜、ちょっと準備に戸惑って遅れちゃった〜」

 

暫く上層の天井に覆われた空を眺めながら待っていると、遅れて来た事を謝罪しながら彼の許へと駆け寄って来る足音が聞こえて来た。どうやら待ち人来たりの様だ。

 

「いや、大して待ってないよ。其れよりユウ…キ…………」

 

やって来たその待ち人というのは、キリトと同じく十六夜騎士団に所属する幹部格のプレイヤーであり、若干幼いながらも《絶剣》という異名を持つ凄腕の片手剣使いの少女《ユウキ》だった。

キリトは声が聞こえて来た方向へと振り向き、やって来たユウキへと自身が抱いていた疑問を投げ掛けようとしたが、彼女の姿を視界に捕らえた途端に呆然としてしまい、それ以上言葉が続かなくなってしまった。

 

彼女の今の出で立ちは、上は白いシャツの上に桜色のカーディガンを羽織り、下はチェック柄の赤いミニスカートで、脚には黒のニーハイソックスを履いている。加えて髪型も、何時もは腰の辺りまで伸ばしている濃い紫色の長い髪を後頭部で纏めてポニーテールにしており、前髪も何時ものリボンは外し、ヘアピンで額の両側にて留めている。

その容姿から見受けられる雰囲気は、普段の可愛くも凛々しいそれとは違う、純粋に女の子らしくて可愛いものであり、詰まる所キリトは、普段とは違う彼女の姿に思わず見惚(みと)れてしまったのである。

 

「ど、どうしたの、キリト? 急に黙り込んじゃったりして」

 

「あ……えーっと、ゴメン……何時もと格好が違うから、一瞬誰だか解らなくて。それにその……結構似合ってて可愛かったから、つい……」

 

「ッ!? え、えーっと、その……あ、ありがと……///」

 

其の事を言われた──其れも異性から──ユウキは、嬉しさと気恥ずかしさから頬を朱に染め、少々(ども)りながらもキリトへと礼を述べる。

一方のキリトは、ユウキの其の照れた表情に普段はあまり見る事の少ない女の子らしさを感じ、自身が口にした言葉に気恥ずかしさを感じた事も相俟(あいま)って、此方もまた頬を朱に染めている。

 

「…………」

 

「…………」

 

気恥ずかしさ故に双方共に急に黙り込んでしまい、二人の間を沈黙が流れる。

しかし、その沈黙はそう長く続く事はなく、先に沈黙に耐え切れなくなったユウキがキリトに問いを投げ掛ける事によって破られた。

 

「と、ところでさ……キリトはボクに何か聞きたかったんじゃないの?」

 

「あ、ああ……そう言えばそうだった」

 

空気を変えてくれたユウキに心の中で感謝しつつ、キリトは先程尋ね損ねた疑問を口に出す。

 

「いやな、待ち合わせの場所の事だけどさ……俺たち同じギルドなんだからさ、態々(わざわざ)此処にしなくても、ギルドの玄関前とかで良かったんじゃないか、って思ってさ。其れにそもそも、待ち合わせをする必要なんて有ったのか?」

 

「もう、キリトは分かってないなぁ……。ムードだよ、ムード。折角のデートなんだもん、少しはそれっぽい事したいんだよ♪」

 

キリトの意見も一理有るだろう。同じ場所に住んでいるのであれば、態々時間をずらして出発して待ち合わせなどせずとも、双方の準備が整ってから一緒に出発すれば良い様にも思えるだろう。……尤も、其れは『普通に』出掛ける場合の話だ。

 

そう、二人がこれから行くのはただのお出掛けではない。ユウキが言った通り、二人はこれからデートなのだ。

 

事の発端は数日前、指輪事件の口封じの為にと殺されそうになったヨルコらの危機を救うべく、彼女らの許へと駆け付けた際の事。キリトとユウキは移動の為にと利用した騎馬から落馬してしまい、起き上がろうとしたキリトが誤ってユウキの胸を触ってしまったのだ。キリトはその謝罪の際に「何でも一つ言う事を聞く」という口約束をしており、ではと、後日ユウキはその権利を用いて「デートして欲しい」と要求して来たのである。

まさかデートを要求されるなどとは思ってもみなかったキリトは大いに面喰らったものの、言い出した手前拒否する事など出来る訳も無く、彼女の要求を承諾し、今に至っているという訳である。

 

「そ、そういうもんなのか?」

 

「そういうもんだよ。今後の為にも、ちゃんと覚えといてね♪」

 

返しの言葉に「え? 次が有るのか?」と戸惑うキリトの手を引き、ユウキは転移門の方へと歩き出す。

 

「じゃ、そろそろ行こっか。今日はとことん付き合って貰うから、覚悟しといてよね♪」

 

「お、おう。任せとけって」

 

そして、二人は転移門が放つ青いテレポート光に包まれて、上層へと飛んで行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……行ったな」

 

「ああ、行ったねぇ」

 

……その様子を、村に生えている木や茂みの裏、更には建物の陰など、至る所に隠れて窺う者たちが居た。

 

「しっかしよぉ、まっさかキリトの野郎とユウキの嬢ちゃんがデートとはなぁ」

 

「ほんとビックリですよねぇ。キリトさんってシノンさんと一緒に居る事が多いから、てっきりシノンさんとそういう関係なのかと思っていたんですけどねぇ」

 

「あー……其れ俺も思った」

 

「いや、多分うちのメンバーの殆どがそう思ってる筈だよ…………ユウキちゃんも其の筈だと思うんだけど」

 

「マジで!? つー事は、ユウキちゃんって結構怖いもの知らずなのか?」

 

「かもしれないね。普段の行動からも、時折それっぽい節が見受けられるし」

 

「あー……言われてみると確かに……」

 

「あははは……なんか、妹がすみません……」

 

彼らは二人の事や、二人の周囲との関係性に関してよく知っているらしく、二人がデートをするという事に対して、思い思いの言葉を口にする。

 

其れも其の筈……何故ならば彼らは、二人と同じく十六夜騎士団に所属している面々なのだから。

因みに、今この場に居る面子は、アスナやクライン、ケイタ、シリカ、シウネーらなどといったキリトやユウキと特に親交の深い者たちに加え、ユウキの双子の姉であるラン、更に数名の恋愛好きのメンバーとなっている。

 

尚、今この場に居るメンバーの中に、シノンの姿は無い。

彼氏彼女の関係が疑われる彼女に二人がデートをしている光景を見せては、キリトが危険な目に遭いかねないという懸念から、彼女には今回の事を伝えていないというのも理由なのだが、其れよりも、ここ数日のシノンには何処か少しキリトを避けている、キリトから少し距離を置いている様な気振りが見られるのだ。

其の切っ掛けは《圏内殺人》の捜査中にあった何かしらの出来事に有るのだろう、とカミヤは当たりを付けているが、心配して尋ねてみても「大丈夫。大した事じゃないから」と濁されるのと、戦闘には特に支障を来たしていない事から、下手に干渉するべきではないのだろうと考え、今の所は(・・・・)執拗には触れない様にしている。

 

 

 

 

──閑話休題。

 

 

 

 

「其れにしても、キリトさんとユウキは何時の間にあの様な関係になったんでしょうか?」

 

「さあ? でもさぁ、あの二人って見た感じ仲は良いし、波長も結構合ってそうだから、そんなに意外って訳でもないんじゃないかなぁ」

 

「うーん……言われてみるとそうかもしれないね」

 

「まあ、その辺の事は後で本人たちに直接聞いてみるとして、今は二人の後を追いかけましょ。メリダちゃん、二人の現在地は?」

 

「え〜とですね〜……四十二層の主街区をゆっくりと移動してますね〜」

 

「《サビア》の街かぁ。て事は、先ずはショッピングをして回るって事なのかな」

 

何はともあれ、二人の後を追い掛ける気満々といった様子で、続々と物陰から出て来るメンバーたち。

 

「よーし、それじゃあみんな……そろそろ二人の後を追い掛けるわよ! 念の為に、二人の《索敵》の範囲に引っ掛からない様に、二人との距離にしっかり注意してね!」

 

「「「了解!!」」」

 

転移門へと歩き出して行く、張り切る方向性を何処か間違えているであろう、アインクラッドの精鋭剣士たち。

そんな彼らを見て、呆れの籠った声を(こぼ)す者が居た。

 

「…………お前ら、マジで何やってんの」

 

何時も通りに攻略へと向かうべく、転移門を利用せんと近付いて行ったが、丁度二人が話し込んでいる最中であったために、連れのメンバー共々隠れていた追い掛け隊の面々によって強引に引き留められてしまった、十六夜騎士団団長のカミヤである。

 

「何って……キリトくんとユウキがデートするんだよ! 何だか物凄く気になるから、二人の後をこっそり追い掛けるんだよ!」

 

その呟きには、他のメンバーを先に行かせて、アスナが凄まじい気迫を纏って返して来た。

 

「それは話聞いてたから分かってるよ。俺が言いたいのはな、攻略を休んでまでする程の事なのかって事だよ。そりゃ、行動は自由だって言ったけどさあ」

 

「そうだよ! あの二人に限らず、他人(ひと)の恋の行方は意外と気になるものなんだよ! しかもそれが親しい間柄の人のものとなれば、尚更だよ! 追い掛けてでも見守りたいんだよ!」

 

「そ、そうか……」

 

「カミヤくんは気にならないの? あのコミュ症だったキリトくんと、普段はちょっぴり女の子らしさに欠けてるユウキが、二人でデートなんだよ!」

 

「…………生憎と、俺は他人の恋愛にはあんま興味は無えよ。有ったとしても、後を追っ掛けてまで見守ろうとは思わねぇよ」

 

何処か鬼気迫る雰囲気のアスナに圧倒され、若干引き気味となってしまうカミヤだが、其れでも、アスナからの問い掛けにはしっかり自身の考え方を返答した。……尤も、その内容は大分冷淡なものではあるが。

 

「えー……カミヤくん、ちょっとつれなーい」

 

「考え方なんて人それぞれだろ」

 

「むぅー……確かにそうかもしれないけどさぁ……」

 

案の定、アスナはカミヤの冷淡な考え方に多少の不満を抱き、異議を唱えるが、カミヤはあまり取り合おうとはせず、むくれるアスナに向けて忠告の言葉を掛ける。

 

「まあ、俺の考え方なんてこの際どうでも良いだろ。……取り敢えず、お前らに一つ忠告」

 

「……なに?」

 

「あんまやり過ぎて、馬に蹴られねぇようにな」

 

「あ、うん、そうだね。気を付けまーす」

 

「其れともう一つ……今日の夕方六時に、三十三層主街区の転移門広場だからな。絶対に遅れるなよ?」

 

「うん、分かってるよー。それじゃあまた後でねー!」

 

そして、カミヤが何やらとても重要そうな用件を伝え終えると、話はお終いとばかりに、アスナは転移門を使って目的の層へと消えて行ったのだった。

 

「何か用事ッスか?」

 

「んー? ちょっとな」

 

「若しかして、カミヤさんもアスナさんとデートですか?」

 

「ダァホォ、ちげーよ。つーか、何をどう考えたらそういう結果に行き着くんだよ? 俺なんかがアイツと釣り合う訳がねぇだろうが」

 

「本当にそうでしょうか?」

 

「そうなの」

 

其の後ろ姿を何処か疲れた様子で見送ったカミヤ。そんな彼に、彼の本日のパーティーメンバーである両手剣使いの赤髪の巨漢《マース》と、長い赤髪を左側で結ったメイサーの少女《ラビ》が、先程アスナに伝えていた用件に対する詮索の言葉を掛ける。

 

余談たが、此の三人……《投擲(とうてき)》スキルと並んでサブウェポンとして扱われがちである《体術》スキルを、メインウェポンに劣らぬ頻度で多用しており、今では第二のメインウェポンと言っても差し支えない程に熟練度を鍛え、数々の敵を打ち倒していたりする。

 

「ホレ、んな事どうでも良いから、俺らもとっとと攻略に行くぞ」

 

「ウッス」

 

「……分かりました」

 

何はともあれ、カミヤは二人からの問い掛けに適当に応えを返してから、二人を伴って漸く攻略へと出発した。

 

 

 

 

──こうして、攻略組四大ギルドの一角たる《十六夜騎士団》に於ける、ちょっとした騒動(キリトとユウキによるデート)の幕が上がったのであった。

 

 

 


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