ソードアート・オンライン 〜The Parallel Game〜 《更新凍結、新作投稿中》   作:和狼

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 タグに『ご都合主義』を追加しました。
 恐らくこれからも、ご都合主義な内容が増えて行く事でしょうから。

 話は変わるが、『幕間(interval)』と書いて『まくあい』って読むんですねぇ。
 今まで全然知らなかったなりよぉ……。


Interval:和人と詩乃

 

 

 キリトとシノン――桐ケ谷和人(きりがや かずと)と朝田詩乃(あさだ しの)との出会いは、あまりにも形の悪いものだった。

 

 その日、詩乃は両親と共に外出していたのだが、途中で交通事故に巻き込まれた。カーブを曲がり切れずに、反対車線から突っ込んで来たトラックが原因で、そのトラックに衝突された前方の車に、詩乃達が乗った車が衝突したのだ。

 

 トラックのドライバーは、フロントガラスを突き破って路面へと投げ出され、ほぼ即死。対する詩乃達は、幸いにも両親は軽傷で済み、後部座席のチャイルドシートでしっかりシートベルトをされていた詩乃は、ほぼ無傷だった。

 そして、前方からトラックに衝突、後方から詩乃達の車に追突された、詩乃達の前方の車の人物達は……前に座っていた大人二人はほぼ即死、後部座席に座っていた男の子も重症である。直ぐに救急に連絡した為、男の子は無事生還する事が出来た。

 

 ――その男の子の名前は……和人。

 

 駆け付けた母方の妹夫婦に面会した際、詩乃の両親は彼らに深く謝罪していた。

 それ以降、彼らは何度も和人――妹夫婦に引き取られる事になった為、苗字を桐ケ谷――の見舞に訪れる様になり、和人と詩乃は何時しか仲良くなっていた。

 

 和人が無事退院してからも、詩乃の両親の心は完全には晴れなかった。和人の事が気掛かりで仕方なかった。

 故に、彼らは東京から、桐ケ谷家の在る埼玉県へと居を移し、和人と……和人ら桐ケ谷家の人達と交流を持ち続けた。和人に何か罪滅ぼしになる様な事をしてやれる訳でもなかったが、ただ彼の事を見守っていたかったのだった。

 

 大人達のそんな思いなど露知らず、和人と詩乃は楽しい日々を過ごした。同じ小学校へと通い、一緒に遊び、勉強し、剣道をし、笑い、泣き、時に喧嘩もしたりと、二人の仲はより深まって行った。

 和人の従妹である桐ケ谷直葉(きりがや すぐは)も、詩乃の事を本当の姉の様に慕い、仲良くしていた。……時折、和人と仲良くしている彼女に対して、嫉妬や敵対心などを燃やす事も有ったが。

 

 だが、そんなある日、とある一つの出来事が起こった。

 

 PCに関する知識や技術が優れていた和人は、十歳の時に住基ネットの抹消記録に気付き、自身の出生について知ってしまったのだ。それを知った義理の両親は、詩乃達も交えて真実を話した。詩乃も、この時初めて事故の事を知った。

 

「本当に……本当にすまなかった!」

 

 深く頭を下げた詩乃の両親……そして詩乃。自分達も被害者側であるとはいえ、結果としては、和人の実の両親を殺してしまった加害者側とも言える。そんな複雑な思いで謝る詩乃達を、和人は咎める事は出来なかった……若しくはしなかった。

 

 それからだった。和人の中で、自身と他人との距離感が狂い始め、人と関わる事を恐れる様になったのは。安寧を求め、仮装世界に入り浸る様になったのは。

 

 それからだった。敵役であるはずの自身を責めようともせず、変わらず優しく接してくれる和人に、詩乃が負い目を感じる様になったのは。彼との距離感に思い悩みながらも、彼の対人関係に対してサポートする様になったのは。

 

 しかし、二人の複雑な関係は、これで終わりではなかった。

 

 一年後。詩乃は母親と共に買い物に出掛けた際、偶然にも和人と出くわした。親切にも同行を申し出てくれた彼と共に、途中で郵便局に立ち寄った。詩乃の母親が窓口で書類を出している間、直ぐ近くで、和人と詩乃は何気ない会話をしていた。

 すると、郵便局に一人の男が入って来た。灰色っぽい服装で、片手にボストンバッグを下げた、痩せた中年男性だった。その男を……男の目を見た瞬間、和人と詩乃は奇妙な……何処か嫌なものを感じた。

 男は詩乃達の隣の窓口の前に立つと、カウンターにどさっとボストンバッグを置く。そして――

 

「この鞄に、金を入れろ!」

 

 男は中から黒い物――拳銃を掴み出し、窓口の男性局員に突き付けた。強盗だった。

 

「両手を机の上に出せ! 警報ボタンを押すな! お前らも動くな! 騒ぐな!」

 

 拳銃を左右に動かし、奥に居た他の局員や、騒ぎ立てる周りの客達を牽制する。詩乃は恐怖のあまり、思わず和人の袖を掴んでいた。

 

「早く金を入れろ! 有るだけ全部だ! 早くしろ!」

 

 再び叫ぶ男。それに対し、男性局員は顔を強張らせながらも、右手で札束を差し出そうとした――

 

 

 ――パァン!

 

 

 その瞬間、郵便局に高い破裂音が響き、その後に、どさっ、という音を立てて男性局員が倒れた。……そう、撃たれたのだ。

 

「ボタンを押すなと言っただろうがぁ!」

 

 その光景に、男の叫び声に更に恐怖を抱いた詩乃は、和人に強くしがみついた。

 

「おい、お前! こっちに来て金を詰めろ!」

 

 男は拳銃を別の局員に向けて、金を詰める様にと叫ぶが、拳銃を向けられた局員は首を細かく振るだけで、動こうとはしなかった。

 

「早く来い! さもねぇともう一人撃つぞ! 撃つぞォォォ!」

 

 局員の対応に焦れた男は、あろう事か、その銃口を詩乃の母親へと向けた。それを見た詩乃は、何とかして母親を助けなければと思うが、恐怖のあまり動けずにいた。

 そんな詩乃の思いを感じ取ってか、和人は彼女の腕を振りほどき、なんと男に突攻を仕掛けたのだ。拳銃を握る右手首にしがみつき、噛み付いた。

 

「あぁぁぁ!?」

 

 驚愕と苦悶の混じった声を上げた男は、右手を和人ごと振り回す。それにより和人の身体は投げ飛ばされ、詩乃を巻き込んで後退する。同時に拳銃も男の手から滑り落ち、身体を起こした自分の足元まで転がって来たそれを、詩乃は無我夢中で拾い上げた。

 震える手で拳銃を握り、取り返そうと迫って来る男へと銃口を向ける詩乃。その震える手を、誰かの手が包み込んだ。

 

「大丈夫……」

 

 和人だ。彼は詩乃を落ち着かせる様にそう言いながら、彼女の指を拳銃の引き金へと誘導した。

 

 

「――俺も一緒に…罪を背負うから」

 

 

 その言葉に、罪悪感と同時に言い知れぬ安心感を抱いた詩乃は、和人に身を委ね、その引き金を引いた。

 

「あぁ…ああぁぁ!」

 

 弾丸は男の腹を貫き、男は苦悶の声を上げながら両手で腹を押さえる。その瞬間、それを見ていた局員や他の客達が駆け寄って来て、男を取り押さえた。その後、駆け付けた警察により男は逮捕され、事件は幕を下ろしたのだった。

 

 この事件で、詩乃は和人に対し、更なる負い目を抱いた。拳銃で人を撃った罪を彼にも背負わせてしまった事、そして……敵役であるはずの自分達を、助けてくれた事への負い目を。

 だから、彼女は決意した。彼を守る為に……これ以上彼を傷付けさせない為に、強くなる事を。

 

 それから三年の月日が経ち、世間では新感覚のMMORPGであるSAOが話題となっていた。勿論の事、和人もそれに食いついていた。

 ベータテスターに選ばれた彼の話を毎日の様に聞いていた詩乃は、楽しそうに話す彼の顔を見て、本当にゲームが好きなんだなぁと思った。そして、彼が愛するゲームの世界に対し、興味を持ち始めた。彼の気持ちをより深く知る為にも、自身もやってみようと思い始めた。

 

 そして二○二二年十月三十日、詩乃は両親からの援助を受け、和人には内緒でナーヴギアとSAOを購入した。彼を驚かせる為だ。そして、一週間後の十一月六日……遂に始まったSAO正式サービスの世界へと、彼女は飛び込んだ。

 ところが、最初こそ正常だったSAOは、『ゲームで死んだら、現実でも死ぬ』という異常事態へと発展。しかもGMの仕業により、アバターを現実の自身の姿へと変えられてしまった。

 

「し、詩乃!?」

 

「えっ!? 和人!?」

 

 だが偶然にも、そこで和人――キリトと合流する事が出来た。

 

 その後、それまで一緒に行動していた《カミヤ》というプレイヤーの話を聞き、異常事態を脱するのに協力する事を表明したキリト。

 

「私も。キリトに協力して、攻略に参加するわ」

 

 そんなキリトに協力すべく、自身もカミヤに協力する事を表明した。

 

「キリトはコミュ症だから、幼馴染みの私が、ちゃんとサポートしてあげないとね♪」

 

 そして決意した。キリトをサポートし、何が何でも、どんな事からも彼を守ろうと。キリト一人に、これ以上の重荷は背負わせないと。

 

「それじゃあ、宜しく頼むな、シノン」

 

「ええ、任せなさい」

 

 こうして和人と詩乃――キリトとシノンは、共に戦いの日々へと身を投じたのだった。




 という訳で、キリトとシノン――和人と詩乃の関係性でした。

 さて、この話で何と無く察した方も居るかもしれませんが、自分はキリシノ派です!
 勿論王道のキリアスや、マイナーなキリリズなんかも好きなんですが、何故かキリシノが一番なんです。
 という訳で、キリアス派やその他の派閥の方々……本当にすいません。

 さあ、次回は第一層攻略会議の模様です。
 ディアベルをどう救うのか? キバオウとの関係は…? そして、アスナとの接触は…?

 次回もお楽しみに!

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