ソードアート・オンライン 〜The Parallel Game〜 《更新凍結、新作投稿中》 作:和狼
……って、そんなんで大丈夫か? 俺。ソードアートは戦闘描写多いんだぞ。
それと、ダッカー君の武器を《片手剣》から《短剣》に変更しました。
原作2巻には、ちゃんと《短剣》って書いてありましたからねぇ。……よく確認せなアカンな。
翌日――十二月四日、日曜日、午前十時。
昨日攻略会議が行われた広場には、ボス攻略に挑むプレイヤー総勢八十四人が集まっていた。誰一人欠けていなかった事に、攻略リーダーであるディアベルは大いに喜んでいた。
俺達のパーティーは、元ベータテスターである俺とキリトをそれぞれリーダーとした、二つのパーティーに別れた。
俺のパーティーは、片手剣の俺、短剣使いのシリカ、棍使いのケイタ、槍使いのサチ、レイピア使いのアスナ、片手剣と盾使いのヒースクリフの六人。一方のキリトのパーティーは、片手剣のキリト、短剣使いのシノンとダッカー、メイサーのテツオ、槍使いのササマル、両手斧使いのエギルの六人。双方の構成やパワーバランスが、ほぼ均一になる様に振り分けたつもりだ。……勿論本人達の要望なんかも込みだ。
因みに、俺達二グループの担当は、ディアベルが率いるグループと共にボスへの攻撃部隊。理由としては、俺とキリトが未知数であるボスの武器に唯一対抗出来るであろうからだ。
町を出発してから約二時間半。途中モンスターとの戦闘や、アスナがパーティープレーでのテクニックを知らないというハプニングなどが有ったりしたが、俺達は無事にボス部屋の前まで辿り着いた。今は、各々戦闘で負ったダメージを回復したり、武器のチェックをしたりしている。
「そんじゃ、最後の確認だ。俺達の担当は、ディアベル達と共にボスへの攻撃だ。前衛は片手剣の俺と盾持ちのヒースクリフが担当する。素早さの有るシリカとアスナはボスの隙を突いて攻撃をして、ケイタとサチは武器のリーチを活かして後方からの支援だ」
「了解した」
「うん!」
「分かったわ」
「任せて」
「はい!」
柄にもなく俺が作戦を指揮し、皆がそれに頷いてくれる。基本的には似た様な戦闘スタイルの二人一組で行動し、スイッチをしながら攻撃をしていく作戦だ。
「それと、ボスのHPゲージがレッドゾーンに入ったら、必ず一旦ボスから離れる事」
これは俺達六人だけではなく、ボスと戦う攻略メンバー全員が行うべき行動だ。さもなくば、ボスの未知なる武器による不意打ちを喰らう事になるだろう。
「そこから先の作戦は、ボスが使う武器次第だ。俺とキリトの指示をしっかり聞いてくれ」
再び頷くメンバー達に向けて、俺は最後に一番重要な事を伝える。
「最後に。お前ら…………誰一人として死んでくれるなよ」
言い終わった直後、ボス部屋の巨大な二枚扉を背にしたディアベルが、攻略メンバー八十三人に向けて声を上げた。
「皆……もう、オレから言う事はたった一つだ…………勝とうぜ!」
その掛け声に、攻略メンバーが一斉に鬨の声を上げる。これにより、攻略メンバーの士気が一気に高まった事だろう。
「…………行くぞ!」
そんな攻略メンバーに背を向けたディアベルは、大扉に手を当てて短く一言だけ叫ぶと、思い切り押し開けた。
扉が開き切って数秒後、暗闇に沈んでいたボス部屋の左右の壁で、ぼっという音を立てて松明に灯が灯る。それを皮切りに、ぼっ、ぼっ、と松明は次々に明かりを灯して行き、やがてそれは部屋の最奥部に設けられた巨大な玉座と、それに腰掛ける巨大なシルエットを照らし出す。
「全軍、突撃!」
ディアベルの指示の許、俺達攻略メンバー八十四人は一斉にボス部屋へと雪崩込む。そして、俺達と玉座との距離が二十メートルを切ったその瞬間、それまで微動だにしなかった巨大なシルエットがようやく動いた。
「グルルラアアアアッ!!」
飛び上がり、空中でぐるりと一回転し、地響きと共に着地した獣人の王――《イルファング・ザ・コボルトロード》が、大きく口を開いて咆哮を上げる。
二メートルを軽く超える真っ赤な巨体に、獰猛なまでに輝く赤い目をしたボスは、右手には骨を削って造られたであろう斧を、左手には革を貼り合わせたバックラーを携えている。そしてその周りには、取り巻きである重武装モンスター――《ルインコボルト・センチネル》が三体現れる。
此処までは、ベータテスト時の記憶や攻略本の情報と同じだ。問題は、ボスが腰の後ろに差している武器……ベータテストの時はタルワールだったが、正式版である今回は果たして……。
そんな一抹の不安の中、初となるボス攻略は幕を上げたのだった。
◆ ◆ ◆
「スイッチだ、カミヤ君!」
「了解! せらァ!」
ボスとの戦闘は、今の所何の障害も無く、順調に進んでいる。
壁役であるA隊、B隊、D隊が交代でボスの攻撃を防御し、大きな隙が出来た所へ、ディアベルが率いるC隊を中心とした攻撃部隊五パーティーで攻め込んでいる。今現在のボスのHPは、もう少しで四本目のゲージに入ろうかという所だ。
残りの六パーティーは、二パーティーずつで一体の取り巻きコボルトを相手にしており、リポップする度に交代している。
やはり、数にものを言わせた戦い方が功を奏しているのだろう。ベータテストの時よりも圧倒的に早いペースで、ボスのHPがどんどん削れていく。
そんな事を考えながら、ヒースクリフがバックラーを弾いた所へ攻撃を叩き込む。どうやらそれで三体目のHPゲージを削り切れたらしく、とうとうボスのHPゲージがラスト一本になった。
「ウグルゥオオオオオオオオ――!!」
ボスが猛々しい雄叫びを上げ、後方ではラスト三体の取り巻きコボルトがリポップする。
「攻撃が来るぞ! B隊、ブロック!」
再び動き出すボスコボルト。ソードスキルで仕掛けて来るが、ディアベルの指示で前衛に出たB隊が盾で、武器でそれを防ぐ。ソードスキル発動後の硬直に陥った隙を突き、残る部隊でボスへと一斉攻撃を仕掛ける。
俺やキリトの片手剣が、シリカやシノンの短剣が、アスナのレイピアが、槍が、斧が、両手剣が、次々とボスのHPを削っていく。
「はあっ!」
その中でも特に目覚ましのは、レイピア使いの少女――アスナの奮闘っぷりだ。
彼女が使っているソードスキルは、専ら細剣スキルの基本技である単発突き攻撃《リニアー》一つのみ。他のソードスキルを使おうとする様子が、全く見られない。だが、だからこそ気付いた事が有る。
(なんつー速さだよ……)
そう、アスナの攻撃は速い。技の初動からダメージが発生するまでの時間が、とにかく速いのだ。
意図的に技の威力や速度をブーストする事は誰にでも可能だが、あれはそう簡単に出来る様な技術ではない。それを、恐らくゲーム初心者であろう彼女がやってのけているというのは、驚き以外の何物でもない。彼女の秘めたる戦闘センスは、非常に高いと思われる。
技一つだけの状態でこれだ。もしもこの先、知識や技術を増やして磨いていったのならば、彼女は一体何処まで強くなるというのだろうか? 想像するだけでも冷や汗が出そうだ。
「――カミヤ!」
「ッ…!? おっと!」
キリトに呼び掛けられて我に返ると、ボスの攻撃が目の前に迫っていた。それを見て慌てて攻撃を躱し、ボスに反撃の一撃を叩き込む。
危ない危ない。アスナの剣技に気を取られて長考していた所為で、注意が散漫になっていた様だ。気をつけなければ……。
「悪い。助かったぜ、キリト」
「ああ。次来るぞ!」
「了解!」
後退してキリトに礼を述べてから、再び迫り来る攻撃を今度は余裕を持って回避。そして、再度反撃の一撃を叩き込む。
そんな攻防を続ける事数分、ボスのHPはどんどん削れていき、そしていよいよ――
「グルラアッ! グルルラアアアア――!!」
ボスのHPが、レッドゾーンへと突入した。
「来るぞ! 皆下がれ!」
ディアベルの指示に従い、ボスの相手をしていたメンバー全員が直ぐさまボスから離れる。
ボスは咆哮を終えると、両手の斧とバックラーを投げ捨て、腰の後ろに携えた武器へと手を掛ける。そして、ボスが鞘から引き抜いたそれは――
「ッ…!? 野太刀か」
刃の緩い反りこそ同じなれど、タルワールよりも幅が細く、研ぎ澄まされた鋼鉄の色合いをした野太刀――つまりは《カタナ》だ。
「気をつけろ! あれはタルワールじゃなくて野太刀……カタナだ!」
その情報を、ボスと対峙するメンバーへと大声で伝える。
「ボスを後ろまで囲むと全方位攻撃が来るぞ! 無理にソードスキルで相殺しなくても、盾や武器でしっかり守れば大ダメージは喰わない!」
続ける様に、キリトも声を張り上げて注意を促す。
「了解した! 皆……ボスのHPはもう後少しだが、油断せずに行くぞ!」
ディアベルの声に、攻略メンバー全員が気を引き締める。
そんな中、俺の隣に立つアスナは急にその身に纏うフーデッドケープを掴み、一気に身体から引き剥がした。恐らくそれは、これから臨む最後の攻防に対しての、彼女なりの気の引き締め方なのだろう。
ケープの中から現れた艶やかな栗色のロングヘアは、松明の光を浴びて綺麗な輝きを放つ。一瞬だがその輝きに見惚れてしまった俺だが、今が戦闘中である事を思い出し、意識をボスへと集中させた。
「グルルラアッ!」
「来るぞ! 防御だ!」
そして、ボスとの最後の攻防が幕を開ける。
開始早々から居合系統のカタナ直線遠距離攻撃である《辻風》を放って来たボスだが、初動のモーションで技を確認したキリトの指示で動いた壁役のA、B、D隊がそれを防御。HPは削れはしたが、大きく吹き飛ばされる様な事は無かった。
ボスがソードスキル発動後の硬直に陥った所へ、すかさず残りのメンバーで攻撃を仕掛ける。勿論の事、ボスを全方位から囲まない様にだ。
「次、来るぞ!」
ボスがソードスキルを発動させては防御し、その隙を突いて攻撃を仕掛ける……そんな攻防を繰り返す事数分、ボスのHPがいよいよ残り僅かとなる。そこから先は、畳み掛けるかの様な連続攻撃だった。
「ふんっ!」
ヒースクリフがボスの攻撃を弾き返し――
「ぬおおおッ!」
エギルが、両手斧系ソードスキル《ワールウインド》でボスを後退させ――
「「はああっ!」」
そこへ、サチとササマルが槍スキルの単発突き攻撃《スタッブ》を撃ち込む。
それに続く様に、シリカが、シノンが、ケイタやディアベル達が、次々に攻撃を決めて行く。
「グルルラアッ!」
「させるかああッ!」
最後の足掻きとばかりに野太刀を振り下ろそうとするボスに対し、それを迎撃するべく俺もソードスキルを発動させる。右手の剣を左腰へと構え、身体を転倒寸前まで倒し、右足を全力で踏み切って駆け抜ける。片手剣基本突進技《レイジスパイク》だ。
右上からの袈裟斬りと左下からの突き上げの軌道は見事に交差し、甲高い金属音を響かせる。
「行っ……たれえええええッ!」
上から振り下ろされた分威力の勝る袈裟斬りを、意地と気合い、そして隣を走るキリトとアスナへ向けての、ボスへの止めを煽る意を込めての絶叫と共に弾き返し、ボスをノックバックさせて隙を作る。
「はああっ!」
「行っ……けえッ!」
そこへ、アスナが渾身の《リニアー》を撃ち込み、それに僅かに遅れて、キリトの剣がボスの右肩口から腹までを斬り裂く。HPゲージ……残り一ドット。
「お……おおおおおおッ!」
その事にボスはニヤリと笑みを浮かべる――様に見えた――が、キリトの攻撃はそれで終わりではなかった。振り下ろした剣を跳ね上げ、先の斬撃と合わせてV字の軌跡を描き、ボスの身体を斬り裂いた。片手剣二連撃技《バーチカル・アーク》だ。
それにより残り一ドットだったHPはゼロとなり、アインクラッド第一層のフロアボス――《イルファング・ザ・コボルトロード》は、その身体を幾千幾万ものポリゴンの破片へと変えて盛大に四散した。
――初のボス攻略は、俺達の勝利に終わったのだった。
「「「うおおおおおおォ!!!」」」
「「「よっしゃああああああァ!!!」」」
部屋のあちこちから、勝利を喜ぶプレイヤー達の絶叫が沸き起こる。互いに腕を組み、拳をぶつけ合い、中には互いを抱き合っているプレイヤーすら居る。
「お兄ちゃん!」
「カミヤ君!」
そんな中、シリカとサチが俺の許へと駆け寄って来て、シリカに至っては俺に抱き着いて来た。それに遅れて、俺とキリトの他のパーティーメンバー達も歩み寄って来る。何気なくサムズアップして見せれば、皆も笑顔でそれぞれに反応を返してくれた。
更に遅れてアスナと、LA(ラストアタック)ボーナスとして手に入れたのであろう黒いコートを羽織ったキリトが、こちらに歩み寄って来た。
「二人ともご苦労さん。グッジョブだったぜ」
「ああ」
「あなたもね」
ボスへの止めを担ってくれた二人に向けて賛辞を述べ、最初にキリトと、次いでアスナと軽くハイタッチを交わす。直後に、俺は彼女に声を掛けられた。
「あなたの言った通りだったわね」
「ん?」
「何事も、やってみなくちゃ分からないものね」
「お、おう……。そうだな」
その際にアスナが見せてくれた美しい笑顔に、俺は一瞬見惚れてしまう。が、直ぐに気持ちを振り払い、彼女へと言葉を返した。
「一人じゃ難しい事でも、仲間が居れば乗り越えられるもんさ。だから、もし何時か信頼出来る仲間が出来て、パーティーやギルドに誘われたら、あんま断るなよ。協力して、頼って、一緒に上を目指すんだぜ」
「ええ。そうするわ」
その後、俺達攻略メンバーは第一層ボス部屋を後にし、第二層へと続く螺旋階段を上って行く。次に待ち受けるボスを倒し、更に上へと進む為に。
――遥か先に存在するはずの、希望という名のエンディングを迎える為に。
何度も言うが、戦闘描写難しい。
という訳で、第一層……無事攻略出来ましたねぇ。おめでとう〜。
次回からは、オリジナル展開に突入したいと思います。……上手く書けるかなぁ?
それと、活動報告にアンケートを投稿しましたので、そちらにも目を通してみて下さい。今後の展開に関わって来るものとなっております。
それでは〜。