・風鳴訃堂という男
・だいたいフィーネのせい
・この世界ならではの政策
今回はこの世界がどんなのかという所に着目して書きました……えっ訃堂は違うって?
・風鳴訃堂という男
かつての政敵はその男を怪物と恐れてきた。日本の防人として国を守護し、手段の為なら目的を選ばな……い訳ではなく目的の為なら手段を選ばない男であった。特異災害対策機動部ニ課初代司令官であり齢100を遥かに超えて尚、矍鑠としている日本のフィクサーであった。
しかしそんな男も今では……
「ほぉぉ……今日も良い天気じゃ」
ボケてしまった。
どんな感じになっているかというと、縁側でアフタヌーンティーを楽しんだり、好きだった恋の桶狭間を聞かずに洋楽を聞いたり、翼の事を娘ではなく孫と思っていたりと全くの別人となっている。ちなみに翼の事を可愛がっていて家に来たらお小遣いをあげたり、お年玉をあげたりとただの孫馬鹿爺である。
昔お世話をしている人が訃堂に翼は孫ではなく娘だと伝えると
「何を言っておるんじゃ? あんな年の離れた娘が日本におるわけなかろうが」
と普通の人間が言ったら真っ当な言葉を言ったらしい……そんな訃堂は今日もツヴァイウィングのライブが収録されたBlu-rayをペンライトを振りながら見るのであった。
・だいたいフィーネのせい
遡ること結構前、先史文明の巫女の亡霊たるフィーネはある完全聖遺物を手に入れた。その完全聖遺物は使い切りだがどんな願望も叶える事が出来る聖なる杯、その完全聖遺物をもってバラルの呪詛にて人の言動と思想を分断する監視装置たる月の破壊を企てた。
その完全聖遺物を手に入れたフィーネは気分が良かった。良かったから酒場で酒を浴びるように呑んだ、これで己の計画が完璧なものになる……だから余計に気分が良くなって泥酔する程呑んだ。
それが駄目だった。泥酔するほど呑むということは判断力が鈍るということ、己が何をやったか覚えていないということだ。どんなめぐり合わせかフィーネの目の前で今で言うリア充カップルがイチャついていた。それを見た泥酔フィーネは自分はこんな事になっているのに目の前のカップルは何だと、見せつけているのか? 酔ってちゃんとした思考が出来ない頭でフィーネは考え思いついた。
そうだこの完全聖遺物を使えば良いと
そう思ったら泊まっている宿に千鳥足で戻りどうするか考えた。泥酔しているとはいえ先史文明の巫女の亡霊たるフィーネ、色々考えた……あのカップルだけを対象とするのか? それ以外を含めるなら? どんな願いにするのか? それを考えて出した答えはこうだ。
男が少なくなって、貞操観念が逆転すればいいと
翌日手元に完全聖遺物が無いフィーネは焦りに焦ったが前日の事を思い出し茫然となった。あんなつまらない事に使ってしまったと。
それからというもの、何度転生して男が少なくなろうと目の前にイチャつくカップルが現れ心をボロボロにしていく……そんな中フィーネは思った、自分もとりあえず彼氏をつくればいいんじゃないか?
そうしてフィーネは良い男を探し続けた。褐色の男がいないか、マッチョはいないか……そうしてついに見つけた、理想の褐色ゴリマッチョを。そしてそんな男に本気でハマって妻となり一緒に暮らしている……エンキ? 誰それそんな褐色細マッチョなんて知らないと彼女は心の中で言って、今日も早朝に全裸になっていると夫に毛布を包まれてお姫様だっこで連れて行かれるのであった。
・この世界ならではの政策
かつて日本にはとある政策があった。それは精子提供法、20歳以上の男は精子を提供しなければならない……それが世界渡が二歳の時の話。まぁ何が言いたいかというと渡の父親、世界のセックスシンボルたる男、世界駆も対象だった。
世界のセックスシンボルたる男の精子を誰もが欲した。かといって暴動が起こることはなく、金で買うこともなく、抽選で選ばれることになった。そして選ばれた後この政策は中止となった……理由は駆の精子だけが注目され嫌々ながら提供したのに誰も注目しない状態に世の男性が声を上げたからだった。
こうしてたった一週間の夢の政策は取り敢えず中止となった。この政策が再開するのは駆が亡くなってからだと政治評論家は悔しがりながら発言した……ちなみにこの政策は男性政治家を除いた与野党満場一致で可決された珍しい政策であった。