秘蜜の刃   作:紗代

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白代萼と風柱

基本任務は少人数でこなすことが多いらしい。

私は単身だけどね。

 

「次、次の任務ー!!」

「次かあ、ありがとね玖楼くん」

「がんばる!ウテナさんダイジョーブ?疲れてる?」

「大丈夫だよ。さ、いこう」

「コッチ、コッチ!」

 

任務から任務へがザラなこの仕事のせいか旅することにも慣れた。蝶屋敷のみんなとご飯が恋しいけど、我慢して帰ってからみんなと食べるご飯は格別においしいので楽しみは後でに取っておく。

ちなみに私の今の階級は己。単独であっちこっち行って鬼をばっさばっさ切り続けていたらいつの間にか上がってた。まだ入隊して一か月も経ってないよ!なんでだ。

アオイちゃんはどうしているだろうか。新人隊員はすぐに死んでいくらしい。一年持つだけでも立派だと、そういわれている。本当に、喰種捜査官みたいだなあ鬼殺隊って。

また生きて再会できたらいいけど。

 

「この先藤の家!藤の家!泊まって休もう!」

「うんそうだね、着いたら玖楼くんの羽もチェックしようね」

「カアー!」

 

毛並みのチェックもそうだけど、この子の場合は怪我とかしていないかというのも確認しないといけない。前に猫に襲われてボロボロになってやってきたのを私は忘れない。

 

「ようこそ、鬼狩りさま。ゆっくりなさっていってくださいね」

「今晩お世話になります」

 

挨拶して頭を下げる、ともう一足揃えて置いてあった。

 

「私の他にも隊員が?」

「はい。もうお一方。男性でいらっしゃられます」

「分かりました、ありがとうございます」

 

とりあえず私はそのまま部屋に通してもらうことにした。

 

「じゃあ羽の調子見ようか」

「ウウー」

 

唸りながらも玖楼くんは素直に寄ってきてくれる。外側、内側、風切り羽――と順に見ていく。うん、今日は何もない。大丈夫そうだ。

 

「よし、異常なし。玖楼くん偉いねえ」

「僕エライ?」

「うん。怪我しないのはいいことだよ」

「僕エライ!」

 

玖楼くんはご機嫌だ。私もつられて笑顔になる。これが任務じゃなくてただの旅行ならこのまま気を張らずにいられるんだけどなあ。

 

「そういうわけには、いかないんだよねえ……」

「?」

「うふふ、なんでもないよ。さ、今のうちに休もう」

「ヤスモウヤスモウ!」

 

藤の家から見える美しい海に背を向けて私は畳に腰を下ろした。

 

****

「てめえがお館様が勧誘したって隊員か」

「!……不死川さん」

「お前、俺を知ってんのか」

「柱の方々の名前と特徴は把握しています」

 

不死川実弥。現風柱。まさかこんな大物と仕事が重なるとは。というか玖楼くんいわく形式的に合同任務らしい。私どころか不死川さんも不意打ちだったみたいだけど。

 

「おい」

「はい」

「お館様の勧誘した隊員だろうが何だろうが、着いて来れねえようなら見捨てるからな」

「承知しました」

「……チッ、行くぞ」

 

そして私たちが着いたのは海だった。昼には聞こえなかった美しい歌声が木霊する。

 

「あらあ?この匂いどこかで……」

「お前がここらの船を難破させて襲撃してる鬼か」

「ああそうそう!一週間前くらいにきた鬼狩りと同じ匂いだわ。でも、筋肉質で硬くてあんまり好みじゃなかったわあ。――あなたたちの方がとっても美味しそう」

 

飛び掛かってくる鬼を避けて刀で応戦する。

 

「――血鬼術・織り唄」

 

鬼が再び歌い始めると海から腐乱死体がゾンビのように這い上がってくる。

 

「!これは」

「うふふ。これぜぇんぶ私が殺したの、すごいでしょう?――その日輪刀ってやつに当たらなければあんたたちなんて怖くないもの」

 

不敵に嗤う鬼が手を払うと同時に死体が襲いかかってくる。

 

「ウゼーんだよ!」

 

不死川さんが剣圧で瞬く間に蹴散らすものの死体はカタカタと音を立てながら元に戻っていく。キリがない。

 

「(そういえば)」

 

くん、と鼻で匂いを嗅ぐ。周囲から感じる鬼の濃い鉄錆びの匂い。最初はあの歌の鬼がこれだけの人間を食い殺したせいで酷く濃く広い範囲で香ってくるのかと思ったけどたぶんそれだけじゃない。

 

「(あの鬼と死体は血鬼術で繋がっている)」

 

不死川さんが凪ぎ払った時に匂いは一瞬消えた。でも再生していく死体そのものからあの鬼の匂いと気配がしたのだ。ということは鬼までは遠くて時間がかかるかもしれないけど、この死体たちは私の血にあてることができるかもしれない。

 

「不死川さん!」

「アァ?」

「考えが、あります」

 

近づいて小声で話す。不死川さんはその間何も言わずに聞いてくれた。

 

「成功する保証はあんのか」

「私の確証が正しければほぼ確実に」

「成功しなかったらお前ごとぶっ殺す」

「はい――ではいきます!」

 

そして私は手の甲に日輪刀を当てて軽く傷付ける。すると――やはり死体は私に一目散に襲いかかってくる。

 

「え、ちょっとなんでっ……戻りなさい!言うこと聞きなさい!」

 

鬼の制御よりも私の血の効力の方が強いのか、遠くにいる鬼は困惑する。

 

「蜜の呼吸 弐ノ型・蜜牢細(みつろうさざめ)

 

高く真上に跳び上がり、無数の斬撃で下の集まってきた死体を一掃する。

 

「不死川さん!」

「わざわざ、呼ぶんじゃねえ!!」

「なに、この、香りィ、い?」

 

鬼がやっと私の血の匂いに気づき気が緩んだその瞬間。不死川さんの薄緑の日輪刀がその首を刎ね飛ばした。

すると死体も動きを止めて倒れ崩れた。

 

「おい」

「はい?」

「聞いてねえぞ、お前が稀血ってこともそんなやり方で引き付けることもなァ」

 

……そういえば『死体は私が引き付けますから、鬼本体をお願いします。』ってしか言ってなかったっけ?

 

「す、すみません。不死川さんなら単身で鬼倒せそうだったし、これはその……必要最小限の負傷のうちというか」

「んな御託はいいからさっさと止血しろ。また何か寄ってきても俺は助けねえぞ」

「はい!」

 

ん?心配してくれてる?いやそんなわけないか。初対面だし。

とち狂ったことを考えそうになる頭を否定して今回の任務も完了したのだった。




風柱
「こんな事なら俺がやればよかった。嫁入り前の女が自分で傷作るか、普通」



「トゲトゲしてるかと思ったら案外優しいかもしれない人」
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