鬼殺隊本部に着いた……はずなんだけど。
「(立派な屋敷じゃないか!!)」
私の目の前に聳え立つ『産屋敷』の表札が付いた屋敷になぜか私は通されてしまっている。
ちなみにここまでの案内役だった冨岡さんは任務が入ったとかで喋る烏に急かされて置いていかれた。
有馬さんに似て(口数が少ないとか、誤解されやすそうとか、天然だとか)放っておけないって思ってた矢先にこれだよ。
それからこの屋敷の使用人っぽい人にバトンタッチされて客間らしいところに通されて今に至る。
「お館様のお目見えです」
使用人の人の声とともに客間に入ってきたのは長い黒髪を切り揃えた線の細い男だった。皮膚が変質し痛々しい元は端正な造りであろう顔立ちをした、人を落ち着かせる雰囲気を纏った人だ。
「こちらから呼んでおいて、待たせてしまってすまないね」
「いえ、元々私を探して下さっていたと伺っております。私の方こそ、このような格好での面会をお許しくださりありがとうございます」
久々の改まった空気に宗家に戻ったような反応をしてしまった。反射だ。
「そんなに改まらなくていいんだよ、楽にしておくれ」
「しかし……」
「ね?」
「……かしこまりました」
何だろう。この人の雰囲気、声、存在そのものが心に浸透していくような不思議な感覚だ。
生まれながらにして人の上に立つことのできる人なのだろう。
「さて、あまり時間を取らせてしまうのも申し訳ないし、単刀直入に言おう。白代萼、君の実力を見込んで頼みたいことがある。君に鬼殺隊の隊士としてその力を貸してほしい」
「私が、鬼殺隊の隊員……」
「タダでとは言わない。衣食住はもちろん、鬼についてや君の特殊な体質……稀血に関しての情報も開示しよう。研究している隊士たちにも話を通しておく。……どうかな?」
私としては願ったり叶ったりな条件だ。あの時冨岡さんが言ったように私は稀血である以上ここ以外に身の置きようがないわけだし。
けれどせっかくの自由の身がまた組織に戻ることに迷いがある。そしてなにより、属する以上避けて通れないのが私についての説明だった。一歩間違えば狂人扱い待ったなしな説明。
「分かりました。ですが今度は私の話を聞いてください。鬼殺隊の隊員になるうえで話さなければならない話でございます。私の処遇はそれから決めてくださって結構です」
「分かった、聞こう。話しておくれ、君の話を」
―――
「……ですから私は純正の人間ではありません」
全て話した。本当は平行世界(?)から来たことだけを話そうと思っていたけど、目の前の聴き手に徹する人があまりにも真剣に入り込んで聴くせいか、気づいたらすべて話していた。和修の目がないとはいえ……私の落ち度だな。
「そうか、話してくれてありがとう―――白代萼」
「はい」
「君さえよければ、私たちに力を貸してほしい」
「え?」
「君が鬼のような生き物・喰種と戦っていたこと、稀血であること、そして今日こうして相まみえたこと。私にはこれがただの偶然とは思えない。君はきっと、この世界でやるべきことがあるからこの世界にきたのだと私は思う」
「では、私を、受け入れるというのですか?」
男―――お館様は微笑んで頷いた。
「萼、君はこの世界を生きるのが厳しいと言ったね。和修という家もないと。なら、今日からここを自分の家だと思うんだ。誰に縛られるでもなく自由に自分の意志で決めて生きるんだ。君の居場所はちゃんとこの世界にあるんだよ」
「お館様……」
「今日から君は―――私の家族だ」
「——ありがとう、ございます。拝命、致します」
今日、この世界に本当の居場所ができた。
お館様――産屋敷輝哉様と鬼殺隊。
もし死んでからも運命があったとするなら、私は最高の幸せ者なのかもしれないね。