異世界の騎士、地球に行く   作:Anacletus

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第101話「休日の使い方」

 

 

「おんやぁ~~CBPやら国家安全部やら元G7の各安全保障分野のお歴々ではありませんか~~これはこれは元諜報員なら真っ青になりそうな大物が休日の深夜だからって沢山揃ったもんだ。錚々たるメンツですな~~」

 

「「「「「「「「「(@_@)………」」」」」」」」」

 

「あはは、これは失敬。そう睨まんで下さいよ。あんたらもワシの成果、欲しいんでしょう?」

 

 チッという顔をした者はいなかった。

 

 しかし、この時期の東北において極めて歴史の転換点になりそうな会合。

 

 眼鏡姿の男女数名は一人の米国人の老人。

 

 いや、それにしては若いだろうまだ50代に見える79の男を前に鉄面皮になるのは心労が大きい、という事では一致していただろう。

 

 それも陰陽自に確保されているに等しい老人からの招待状に彼らが払った代償は決して少なくないものであった。

 

「さて」

 

 東北にアメリカが引越しを完了して早10年近く。

 

 三沢を拠点として僻地を大規模に開拓、北海道を主要居住地とするUWSAの周囲には亡命政権の領土が軒を連ねている。

 

 各国からの亡命者達はアメリカ一強の下で管理されているに等しく。

 

 日本が今も何とか関東圏の混乱の最中も各国の制御に気を揉まずにいられるのもこういった統治政策があるからこそだ。

 

「皆様におかれましては散々にワシの研究を昔は小馬鹿にしてくれた怨もありますし」

 

 嘗てアメリカは超大国であったが、今も少数派虐めが出来る大国としての地位は変わらず。

 

 日本国内でならまだデカイ顔が出来るという図は各国からしてみれば、苦々しい限りであったが、同盟国の手前は昔よりも穏便に事を済ませるようになった印象もあった。

 

「こちらも小馬鹿にしてみたいところではあるのですが」

 

 150か国以上の亡命政権の国々は小さな合衆国の属州呼ばわりされながらも何とか山岳地帯や森林地帯の中に点在する猫の額程はあるだろう仮の国土に整備された街で生きている。

 

 半数が嘗て6歳以下だった若年層。

 半数がそれ以外のインテリ層。

 

 そして、残りが帰化者として日本人となる事を選択した昨今。

 

 安全保障分野の者達は嘗てとは違い。

 

「ワシは大人ですから、そういった品性を損なう事は止めておきましょう」

 

 日本からの補助金という名目の薄弱な財政基盤の下。

 

 秘密らしい秘密も殆どなく。

 

 唯々諾々と日本国内の治安を向上させるシステムの一つとして米国の下で機能していた。

 

 それは元共産圏の国家も同様。

 特に世界でも最大級の領土を誇っていたロシアや中国もだ。

 この屈辱的とも思える安全保障環境。

 

「いやぁ~~落ちぶれたもんですなぁ~~3000円のスーツに使い古したネクタイ。同情しますよ?」

 

 しかしながら、人類存亡の危機を前にしては他者の脚を引っ張っても何も良い事が無い、と学んだ彼らは祖国の土くれかゾンビと化した同胞達の為にも断固として、その辛酸を舐めて耐え、いつか祖国に戻る事を夢見て活動を続けている。

 

「まぁ、嫌みはここら辺にしましょうか。これが欲しいでしょう? ふふ」

 

 頭部がかなり薄くなった男は丸眼鏡にシャツとズボンとガンホルダーを下げ、擦り切れた革靴を履いているが、その場で最も力を持っていた事は間違いない。

 

 クツクツと悪魔のようなアルカイック・スマイルだ。

 

 その男の土の色が落ちない指先には数枚の白い紙切れが摘ままれていた。

 

「ほ~~ら、ワシの厚意という奴で進呈しましょう。くくくく」

 

 大人げないにも程がある老人の顔は完全に弱い者虐めを楽しむ表情。

 

 だが、それに汗を浮かべ、俯き加減になりながらも『いつか、絶対ぶっ殺す』という感情をフツフツさせた40代から60代のオフィサー達は紙切れを一枚ずつ受け取った。

 

「では、冗談は程々にしてと」

 

 本当に冗談では済まない事をサクッとやらかした学者が真面目な顔になるとパチンを指を弾く。

 

 すると、会議室となっていた三沢基地の一角にある部屋には暗幕が降り、壁際に映像がプロジェクターで映し出される。

 

 ―――【いつも悲しい結末でお話は終わるのです】

 

 味気ない石板らしいものに書かれた未知の文字列。

 それにはそう書き出しが英語で訳文を置かれていた。

 途中で様々な注意書きが付箋だらけ。

 

 しかし、それ故に訳文の内容が彼らには信憑性を以て感じられた。

 

 ―――【この石碑を見て下さる方がいる時代がどうか平和でありますよう】

 

 ゆっくりと文章が下へと下がっていく。

 

 ―――【我々は欺かれた地より来る迷い子】

 

 ―――【この石板は同胞達がいつかまた来訪した日の為に置く道標】

 

 ―――【皆さん。この星に生きる現生種たる方々】

 

 ―――【我々は彼方達がいつか“来るべき日”を迎える事を信じ、此処に碑文を残します】

 

 ―――【我々の事は我々の文明の残骸を見て学んで下さい】

 

 ―――【我々は高度な技術力を有した大陸より多くの力を持ち込みました】

 

 ―――【ですが、我々にはそれを御すだけの御者がいなかった】

 

 ―――【世界がそれを我々に残さなかった】

 

 ―――【ですが、いつか力を御す者が来る可能性も示唆されている】

 

 ―――【故に我々はこの地に全てを封印します】

 

 ―――【その鍵は旧い我々の技術において頚城と呼ばれる存在】

 

 ―――【この地を封ずるは王家の御子によって生成した大門の頚城】

 

 ―――【この門が解放されし時、我々の世界に我々と神無き魂は導かれる】

 

 ―――【その代価によって我々は皆さんに我らが力を開放しましょう】

 

 ―――【滅びたる我らが願いがどうか聞き届けられますように】

 

 ―――【そして、またいつか我らが世界に帰れますように】

 

 ―――【門に至る鍵となりし、7つの頚城は我らが偉大なる聖女を模して】

 

 ―――【世を拓く鍵となりし、2つの頚城は我らが神と対となる者を模して】

 

 ―――【それを運ぶ箱舟は永遠の異相を絶えず渡る宿願の戦艦】

 

 ―――【終わりの先へ至る勇気持つならば、必ずや道は開けましょう】

 

 プロジェクターが停止する。

 

 それと同時に驚くよりも更に何かに気付いた者達が男を凝視した。

 

「今日は皆さんの命を貰いに来た次第です。まぁ、この情報が何を意味するか。皆さんならもうお分かりですな?」

 

『まさか、コレは噂のペンタゴンⅡの【消失書庫(ロスト・アーカイヴ)】か!?」

 

 老人がやっぱりアルカイック・スマイルを浮かべる。

 

「ええ、米国がひた隠しにしてきた最高機密の一つ。全部失くした、なんて嘘っぱちですとも、ええ……その中にあったユーラシアの碑文です。あの研究所からようやく本体の情報を持ち出してきたのです。こういう事をする為にね」

 

 急激な銃撃音と同時に老人以下、その場にいた全員の胴体が猛烈な弾幕で薙ぎ払われた。

 

『A班は偽装を急げ!! 資料は全て回収して特定施設で焼却!! ドローンの暴走事故だ。そのドローンは全て破壊しろ!! ああ、そうだ!! 中枢までしっかり砕け!!』

 

 次々に完全武装に黒尽くめの男達がやって来て、今だ煙る室内に脚を踏み入れ、円筒形型の警備ドローンをその場で重火器で破壊し、内部で倒れ込んだ者達の死亡を確認後、搬送用の担架を内部に運び入れた。

 

『一体、あの博士何考えてたんですかね』

『私語は慎め』

 

『だって、せっかく陸自に拾われたのにわざわざこちらで担当者集めて機密のお披露目会とか。明らかにオカシイでしょうよ』

 

『……分からん。前々からこの男には色々な噂があったが、死んだ今となってはな。そもそも殺されないと本気で信じていたのか? 機密を盗み出して、その懐で他国のフィクサーにそれを開陳だと? 明らかに狂っていたと言わざるを―――』

 

 特殊部隊の男達が愚痴っている合間にも工作する者達が室内の偽装を始めようとした時。

 

 彼らがどうやってそれっぽく演出するか僅か視線を死体から離した時だった。

 

「痛いなぁ。いやぁ、痛い。実に痛い」

 

 咄嗟に男達が声の方に銃口を向けた。

 

 ズルリ。

 

 男達は見てしまう。

 死んだはずの者達がゆっくりと起き上がる様を。

 

「ゾ、ゾンビ!?」

 

 咄嗟に撃ったのは正しい判断だっただろう。

 だが、それは遅過ぎた。

 

 彼らの銃弾がキュガガガッッと半透明の輝く方陣によって弾き散らされる。

 

「な?!!」

 

「これで条件は整った。陰陽将殿(かれ)にはまた借りが増えましたな……貴方達も理解したでしょう? 彼らがどういう類のものであるのか」

 

『………それを教える為に命まで取られるとはね』

 

『清々しい気分だ……生への執着が無いからなのか?』

 

『まさか、ゾンビに……いや、違うな……この感覚は……』

 

『貴様をぶっ殺したくはあるが、まずは……』

 

 次々に起き上がった者達。

 喋る彼らを前にして部隊が喉を干上がらせた。

 眼光は赤光を帯び。

 

 傷口がゴポゴポと音を立てて鉛玉を吐き出し、再生していく。

 

「「「「「「「「「(T_T)」」」」」」」」」

 

「ヒッ?!! く、来るな!?」

 

「命のやり取りです。銃で撃つものは撃たれる覚悟がいるのですが、ご存じない?」

 

「―――!!?」

 

 老人がいつの間にか杖を持っていた。

 それは瑞々しい若木の枝だ。

 

 だが、その装飾は今現在公的に知られるどのような文明の象形文字でもない。

 

 いや、近頃は日本国内で大量に見掛けるようにはなったかもしれないが、あくまで医療器具……MHペンダントなどに用いられていた代物に違いなかった。

 

「あのハンプティ・ダンプティーに伝えるといい。ワシを甘く見た事を死ぬ程に後悔しつつ、己らの迂闊さと愚かさを呪うがよろしい、とね」

 

 男が杖で床を一度打った。

 

 それと同時に起き上がった一度死体だった者達の身体がローブによって覆われていく。

 

「さて、オフィサーの皆様方。皆さんをそういう存在にしたのには訳がありまして。ああ、あの碑文に書かれてあったでしょう? 終わりの先へ至る勇気、と。米国はまったく度し難い事にどうやら今のワシと同じ事をしていたようですよ」

 

『まさか―――』

『そういう、事なのか……』

 

「この術式をペンタゴンⅡのサーバーからサルベージするのは骨が折れましたが、問題はありますまい? 今、皆さんが感じ、理解した事が全てです。米国もそれなりに代償は支払ったようだが、懲りていないのは今のでお分かりでしょう?」

 

 黒木ローブ姿の者達が兵士達を見つめる。

 

「そもそも、この蘇り現象は本質的にゾンビの生成ではないのですよ。皆さんが体感している通りにね。我々がそう名付けただけに過ぎない」

 

『だが、連中は人を食う』

 

「あれも本質的に食っているのではない。本当はね。伝染するのも単純に技術的な限界というやつでしかない。まぁ、皆さんもコレで資格は手に入れた」

 

『コレを資格と言うのならば、あの石碑の連中は―――』

 

「それは当人達に聞くしかないですな。まぁ、その前に分け前の相談をしましょう。全ては米国との交渉次第……死んだ事を恨むというのなら、まずは共通の敵を叩いてからにしませんか?」

 

『いいだろう』

『一時休戦だ。狂科学者』

『我々を集めた意味はソレか』

 

「では、皆様方。お帰りになるとよろしい。何、あちらはもう手出しも出来ませんよ。我々を殺せば、人類の絶滅は格段に捗るでしょうからな♪」

 

 杖を一振り。

 それと同時に男達が壁際に見えざる力。

 

 魔力の衝撃波への転化によって弾き飛ばされ、力なく呻いて横たわる。

 

 彼らが室内から歩き出して玄関先に向かうと。

 

 もう筋肉に頭部が埋もれたような男が周囲に部隊を展開させて、一切手出しさせずに待ち構えていた。

 

 部隊を指揮する者が最前線の兵達の手前に立つというのだ。

 

 まったく、度が過ぎたロマンチストだと老人は肩を竦める。

 

「おやおや、これはマーク・コーウェン陸軍准将閣下ではありませんか」

 

 慇懃無礼に杖を持った老人がにやける。

 

「……やってくれたな。ガラート・モレンツ元特務技官」

 

「ははは、何をやってくれたと? ワシはドローンの事故に巻き込まれて自分の開発した魔術で皆さんを救って差し上げただけの心優しい普通の紳士な博士ですが何か?」

 

 その言葉にギリッと歯を軋ませそうになった准将は指を弾いた。

 

 すると、同時に彼の背後にいた部隊が道を開ける。

 

「この代償は高く付くぞ。【凶科学者(ザ・マッド)】」

 

 その准将の声にガラートと呼ばれた男は喜悦に唇を歪めた。

 

「これから代償を支払うのはそちらでしょう? 精々、高く買ってくれる事を期待したいところだ。それともまた()()にしたような事をしてみますか? いいですよ? その時こそ米国は真にこの世界で孤立する事になるでしょうな……ワシが情報を収集していなかったでもお思いで?」

 

「ッ」

 

「我々の死は人類の絶滅と同義だ……いやぁ、碑文は残しておくべきではありませんでしたね。パズルのピースを集めていたワシには全て推測するのは簡単に過ぎましたよ」

 

「……行け。二度と顔を見せるな」

 

「さぁ、帰りましょうか皆様方……ワシを含め10人……人類を救える確率が上がって良かったですなぁ~~准将閣下」

 

「【BFP(ビッグ・ファイア・パンデミック)】時の混乱で制御方法は失われたはずだ。どうやって貴様は……」

 

「HAHAHA、相変わらず鈍い方だ。サルベージした情報を元にして創ったに決まってるでしょう? なぁに今話題沸騰中の善導騎士団の技術と知識をちょっと仕入れて応用しただけに過ぎませんよ」

 

「連中の技術からよくもそこまで……」

 

「まぁ、あなた達の優秀な技術者達がこれから開発しようとしたら軽く120年は掛かるでしょうけどね!! お持ちの頚城を使う前に米軍が瓦解しないといいですなぁ♪ くくくく」

 

 アルカイック・スマイルな老人が自分の顔に杖を翳した。

 

 その途端、今の今まで老人だった顔の内部が次々に盛り上がり、肉体までもが膨れて若々しさを肌に取り戻していく。

 

 染みと皺は消え失せ。

 

 毛髪が抜け落ちたかと思うと今度は後頭部にまでサラリと金髪が生えた。

 

 そこにいるのはどう見ても20代の米国人。

 恐らくはアイルランド系の男だった。

 

「我々は祖国と人類の為に戦いましょう。だが、米国の為には戦えません。そこをよく理解して頂いた上でご連絡を」

 

 名刺を一枚卵男に渡した若者は赤色に瞳を染めて。

 

「フリィイイダァアアアアアアアアム!!!」

 

 ガラート・モレンツ。

 

 陸自の魔術一派に匿われていたはずの男は……自前の日本の軽自動車がある駐車場に子供のように燥ぎながら去っていく。

 

 ローブを纏った者達もまた准将を一瞥してから、その後を追った。

 

「………チッ」

「准将閣下? よろしかったのですか?」

 

「こちらのミスだな。奴らをゾンビと()()()()()()()()()のだよ。今話題の怪異として認定したところで、あちらはこちらの手の内は知り尽くしている」

 

「政治的に屠れない、と」

 

「そうだ。手段があったとしても、()()()()協力的だろう連中を殺す政治的な理由も無い……その上で最も重要な地位を占められた……腹立たしい事にな……」

 

「……心中お察しします」

 

「プロジェクト・メンバーを今一度精神分析に掛けろ……善導騎士団の技術蒐集は継続。今回の件は事故を起こしたが、全員が無事だったと」

 

「分かりました」

 

「それとあちらの予定を繰り上げろ。風向きが変わる前に終わらせておかねばならん」

 

「了解しました。CIAの方にはそのように……」

 

 部隊が今だに去っていく者達を見つめていた。

 その最中で男は僅かに天を仰ぐ。

 

(……状況の変化が早過ぎる……ユーラシアへの出征を加速させる必要があるな……)

 

 その日、都道府県に米軍はドローンの事故を報告。

 

 再発対策を徹底させる旨を共に告げ、一部問題が解決するまで20日間のドローンの使用停止を決めたのだった。

 

 *

 

「………ん?」

 

 チュンチュンとスズメが鳴く竹林の中の緋祝邸。

 

 襖部屋の襖は全開放されており、四方には跳ね乱れた枕乱舞。

 

 ついでに心地良い朝の陽ざしが庭側から差し込んでいる。

 

 家全体が部屋を中心にして魔力式のエアコンに調整されているような状態だ。

 

 その中心域である場所は寒くも熱くもなく。

 春の日差しを思わせて心地良い。

 ヒューリがむくりと起き上がった時。

 彼女は俯せであった。

 

 何か柔らかいものに顔を埋めていたようなのだが、起きてショボショボする瞳2を擦る。

 

 未だ残る倦怠感の割には身体に魔力が漲っているせいか。

 

 彼女の中心は芯から熱く。

 ようやく焦点が合った瞬間。

 

 彼女の目の前にあるのは……一糸纏わぬ尻であった。

 

「はひゃ?!!」

 

 ビクッとした彼女がようやく周囲の惨状に気付く。

 

 布団と枕でグチャグチャな部屋には全裸のフィクシー、ハルティーナ、ユーネリア、アステリアが布団やまくらを抱きしめながらムニャムニャと幸せそうに寝入っていた。

 

 全員が彼女を中心に密集状態。

 

 最初に見えたのは酒瓶らしいものを持って寝入るフィクシーの尻だ。

 

 しかし。

 

「ベ、ベルさんがいません!? ベ、ベルさ~~ん!?」

 

 彼女が呼んでも休日を満喫するべき当人の応答は無く。

 

「ベ、ベルさんを探さないと!! こ、この惨状は一体……ひゃん?!」

 

 ヒューリが思わず乙女チックに喘いだ。

 

 自分の股間に密着している何かが柔らかく擦れたのだ。

 

「うぅ、一体何が―――」

 

 思わず下を見た少女は思わず固まる。

 自分の視線の下には男性の象徴が存在していた。

 そして、まさかと思うなかれ。

 

 彼女は微かに自分の股間の下から湿り気のある風……呼吸をほぼ直で感じた。

 

「ベ、ベベベ、ベルさぁあああああああああああああああああああん!!?」

 

 ビクゥッと少年は反応したが、すぐにシーンと静まり返る。

 

 ついでにいつの間にかやってきた猫ズが『見せられないよ!!』と言わんばかりに縦横無尽の働きを見せて、ヒューリ以外の少女達の大切な場所を寝ぼけながら誰かの視線からがっちりガードした。

 

「お、起きて下さい!? ベルさん!? ど、どうして私の下にいるんですか!? こ、こんな!? 皆裸だし!! 一体、お食事の後に何があったんですか!?」

 

 しかし、少年に反応は無い。

 そして、ようやく彼女は気付く。

 股間に殆ど口と鼻を塞がれた少年の状況を。

 

「あっ!? ひゃぅ?! ん、ちょ……うぅうぅぅ、ご、ごご、ごめんなさい!? まさか、失神して―――あぅ~~もーどーすればいいんですかぁ~~~!!?」

 

 朝から煩い緋祝邸の5時35分頃。

 周囲のスズメは一斉に羽ばたき。

 野鳥は消え。

 

 屋敷から響いた声は竹林を騒がせたが、誰も気付かず。

 

 二日酔いではないものの。

 

 まったく起きない全員に服を着せるやら大事な部分を布で隠すやら少年を介抱するやら……騎士ヒューリアの休日の朝はそうして過ぎていくのだった。

 

 ―――1時間後。

 

「うぅ、朝から疲れました私……」

 

「昨日の記憶が食事をして風呂から上がった辺りから無いな」

 

 フィクシーが何をどうしたのだろうかと首を傾げつつ、明日輝の作った洋風の簡単な朝食。

 

 ベーコンエッグにサラダにピザ・トーストを摂る。

 サラッと昨日少女が用意していた自家製パン生地。

 風味豊かなレモンを使った自然酵母仕立てだ。

 

 香りも爽やかソレはモッツァレラと生バジルと自家製トマトソースでピザ風になって更に美味しい。

 

 スープは昨日の残りもの。

 

 だが、それにしても十分な味を堪能しつつ、テーブルに付いていた少年以外の全員が恥ずかしそうにはしながらも首を傾げる。

 

「ええと、枕を投げなかったような?」

「そうそう。枕は投げなかったわ」

 

 緋祝姉妹はそう証言し。

 

「ジュースを飲みました。お菓子も食べたような?」

「ええ、確かにそういう記憶があるような無いような?」

 

 ヒューリとハルティーナがそう続けた。

 

「で、ベル。何か知らないか?」

「ボクハナニモシリマセンヨ」

 

「そうか。ベルが知らないのでは調べようも無いな。まさか、猫に聞くわけにもいくまい?」

 

「マヲヲ~~?」

「クヲヲ~~?」

 

 ナンニモシラナイヨ?と猫ズは主演女優賞並みの演技力を見せて小首を愛らしく傾げる。

 

 その言葉が分かる明日輝は何か棒読みだなぁ、とは思ったものの。

 

 貼り付けたような笑みを浮かべる少年を前に何か聞くのも憚られ。

 

 美味しい朝食を美味しく頂きながらも少年と猫ズ以外の全員が首を傾げて昨日の事は思い出せもせず。

 

 二日目の休日が開催される事になったのだった。

 

 *

 

「ディーンさん」

「久しぶりだな。小さな騎士」

 

 善導騎士団東京本部地下儀式上。

 長距離転移用のポートがある最重要区画内。

 

 方陣が展開された部屋には一人の米国人がやって来ていた。

 

「ええと、確かあの人って……」

 

「ああ、そうだ。あちらで剣を打ってくれていた協力者だ。鍛冶はあちらでは貴重だからな」

 

 ヒューリとフィクシーが何か二人の間に友人のような親しさを感じて、いつの間に仲良くなったのだろうかという顔で首を傾げた。

 

「ええと、鍛冶師のディーンさんです。今までも色々と通信でやり取りしながら、刀剣類や装甲の構造に関して共同で研究してたんですよ」

 

「いつの間に……」

 

 ヒューリも知らない事実に驚く。

 

「まだ、この国には刀剣を専門に打つ鍛冶師がいるそうで。そちらの方も日本政府の方で関東圏に呼んで貰いました。剣を打てるところを整備して貰ってたので、今日はそこに行って実益と趣味を兼ねて見学を……と言っても善導騎士団のすぐ横なんですけどね」

 

 少年が何かを作る事に目覚めてから、色々と見てきたフィクシー達であったが、その最たる武器を作るのが趣味と言い切る辺りが何とも男の子だなぁという顔になる。

 

 いつも厚手のデニム生地のGパンとタンクトップの男は今日は上に一張羅らしい革ジャン姿で少年に先導されて専用パスを渡され、共に施設内の短距離転移を用いて一気に地表へと向かい。

 

 そのままハルティーナの運転する軍用車両ですぐ傍の工房へと向かった。

 

 少女達も初めて目にする工房はそれと分からぬ雑居ビルのように見える。

 

 それどころか外見は確実に単なるテナント募集中の古ぼけた代物だ。

 

 しかし、裏手の地下1階に降りる階段先の扉にサッと自分のパスを翳した少年の前で扉が開き。

 

 内部に全員が入って閉まった瞬間。

 通路全域がそのまま地下へと降りていく。

 

「おお?! 日本はハイテクだなぁ!?」

 

「ええ、本当に日本国は凄い技術力を持ってますよ。今は此処に退避された技術成果や知識が大量に存在するとの事ですし、取り込んで発展させれば、かなり研究も進みそうです」

 

 驚く鍛冶師と少女達は知らない。

 

 陰陽自研と呼ばれ始めている場所で日夜産み出されている魔術と科学の融合によって様々な科学的な作用で動く機械の数多くが魔力とその成果によって強化されている事を。

 

 これはフィクシーが行っていた事の反対。

 

 科学で魔術の成果を取り込んで再現するという事に外ならず。

 

 通常の油圧ジャッキではあり得ない速度、圧力を生み出すソレが少年の3Dプリント方式による建築で様々な建物に実は密かに実用試験中なのである。

 

 巨大な構造物の配置転換や基地内部の安全確保の為の各隔壁の閉鎖など。

 

 魔力だけでも科学だけでも安易に突破出来ないシステムを使う。

 

 これは対騎士、対ゾンビ用の備えであると同時に対米国をも見越したセキュリティーの一端。

 

 その技術レベルからの対処であった。

 

「お待ちしておりました。騎士ベルディクト」

「あ、明神さん」

「む……」

 

 ヒューリが思わず警戒した。

 28歳の日本人女性。

 

 日本国政府から国会議員の元秘書が少年には近頃付けられたのである。

 

 政府との間の意思疎通をする為に置かれた連絡役。

 

 黒髪ロングに眼鏡という知的な容貌。

 

 その美貌はどちらかと言えば、お局様とか言いたくなる感じだろう。

 

 女性は落ち着いており、元工学系専攻の理系女らしい。

 

 (はしばみ)色の瞳とキラリとしたスタイリッシュな飴色の丸眼鏡。

 

 仕事上の付き合いとはいえ。

 

 それでも妙に少年の傍に女性が増えていく状況にヒューリは心がピキピキする自分を感じていた。

 

剛山(ごうさん)様が既にお待ちです」

「分かりました」

 

 通路が降り切ったところで全員が見たのは80畳程の地下2階から3階に広がる大広間だった。

 

 その周囲には複数の実験室らしい場所が大量に置かれており、陰陽自研からの派遣組らしい者達がやって来ていた作業着姿の人々に何やらレクチャーしている。

 その通路を降りた先。

 

 中央にはまるで炉のようなものが置かれており、その周囲には明らかに普通の素材ではないカラフルな大量のペレットやメタリックな板が複数。

 

 ついでにそれを打っている70代くらいの男が白装束を着込んでハンマーで炉から取り出した鉄片を叩いていた。

 

「剛山様。騎士ベルディクトとディーン・ハート様が起こしになりました」

 

「おお、そうか。後、10分待っててくれ」

「分かりました」

 

 客が後ろにいるのに10分待てという話をサラッとされた一行であったが、その枯れた男の手が軽々とハンマーを振り下ろして、通常の鋼ではないモノを別の形にしていくのを見つめて驚く。

 

 いや、驚かざるを得なかったと言うべきだろうか。

 

 その洗練された手際は刀鍛冶というよりはもっと小さな小物を作るようなものに見えたのだが、確かにものの8分で形になったソレは小さなナイフのようだった。

 

「後は任せる」

「はい」

 

 横から出てきた同じ装束の男達が仕事を引き継ぐ。

 

剛山良英(ごうさん・よしひで)だ。鍛冶師……いや、鍛冶師紛いの事をさせて頂いている。よろしくお願いする。騎士ベルディクト」

 

「は、はい」

 

 少年が差し出された分厚い手。

 胼胝と筋肉の塊のような手を握って頷く。

 

「さて、見目麗しいお嬢さん方も一緒だとの話だったが、確かに若いのには目が毒そうだ。しばらくはあちらの研究室を見学して来てはどうだろう。これからする話は若いお嬢さんには酷く退屈なものになるだろうしな」

 

「いえ、剛山殿。此処にいる誰もが戦う者であります故にそのような心配はご無用です」

 

 そのフィクシーの言葉に驚いた男だったが、少女達の瞳を見て、納得したか。

 見回してから頷いた。

 

「分かった。そうさせてもらおう。では、そこの会議室で」

 

 全員が研究室が立ち並ぶ一角のホワイトボードが置かれた会議室に入ると。

 

 周囲の壁には幾つも資料らしきものが手書きのマジックで鉱物の名前らしい文字と共に分けられていた。

 

「ああ、ウチの若いのがね。構わなかったかな?」

「ええ、大丈夫です」

「そうか。では、さっそく本題を話そう」

 

 座った少年を少女達を対面にして男がしっかりと告げる。

 

「善導騎士団からのオーダーは可能だ」

「―――本当ですか?!」

 

「ああ、そちらが用意した機材と幾らか君から送られてきた玉鋼を打った感触から言って、あの炉と君が持って来た槌とディミスリル合金、ディミスリル純化金属類があればな」

 

「どういう事だ? ベル」

 

 フィクシーが訊ねる。

 

「ええ、日本政府の方にディミスリルの総合加工技術で鍛冶師の方を一人オブザーバーにして欲しいという事を言っていたんです。そして、剛山さんが手を上げて下さって……ディーンさんと共にお二人には善導騎士団が扱う刀剣類の全てのオリジナルを打ってもらう事が決まったんです」

 

「オリジナル?」

 

「この間、3Dプリンター方式で色々出来るようになったのは話したと思うんですが、刀剣類などは剛性や靭性を損なう事無くポケット内で加工するのは色々と難しくてやっぱり最終的には本業の方に打ってもらう方式が一番だという結論になりました」

 

「ふむ……そうだったのか」

「フィーも知らなかったんですか?」

 

「装備開発は全てベルに任せ切りだったからな。装備が更新されても今は銃主体で接近戦をする事も無かった為、切れ味を試す事もな……自分で言っていて何だが政治に感けていた感が酷いな」

 

「で、でも、そうしなきゃならなかったわけですし」

 

「まぁな」

 

 フィクシーとヒューリの会話にこの少女が善導騎士団の実質的なトップかと剛山が僅かに驚いていた。

 

「それで剛山さんにはお弟子さんも沢山いたという事で他にも刀鍛冶の方々も誘ってもらって」

 

「いきなり、刀鍛冶を20人集めて欲しいと言われた時には困ったが、確かに面白い素材に出会わせて貰った。そして、芸術ではなく実用品として、人類の未来の為にゾンビの親玉を討つ為の刀剣を作って欲しいと言われては断る理由もないだろう」

 

 剛山がその太い眉毛を八の字にして苦笑する。

 

「こんな感じに僕らの剣を打ってもらう事になりまして。陰陽自研でも合金製の刀剣は作れますが、あくまで型からくり抜くようなタイプのものばかりで量産するにはいいんですが、能力的には最高と言えませんし、事実としてディーンさんが北米で打っていた同じ素材の刀剣類と比べても明らかに劣りました」

 

「まぁ、どのような刃でも使えるのが騎士に求められる資質ではあるが、良いものが欲しいのは人情だな。やはり」

 

「確かに使い易い方がいいですよね。私はフィーみたいな剣技こそ無いですけど刀剣の良し悪しくらいは分かります。鍛冶師が量産しない前提で打った刀剣類に実際市販品は劣ります」

 

 フィクシーとヒューリがその言葉に理解を示す。

 

「そうですね。ウチの家系でも僅かな差が生死を分けるからと鍛冶に刀剣類は頼んでいました」

 

 ハルティーナもまた頷いた。

 

「冶金学が進んで合金の技術が上がるとそんなに気にならないって話も大陸ではあったそうですが、やっぱり黙示録の四騎士相手だと性能が僅かでも高い方がいいので少しでも討伐の確度を上げる為に皆さんの力を貸して貰ったんです」

 

 少年が剛山に向き直る。

 

「君が持ち込んだ純粋波動魔力とやらを込めて打つ技術も魔力電池から魔力を放出しながら打つ機材でしっかりと実現出来た。確かに打ち上がった刀剣の様々な能力が桁違いだったよ」

 

「機材の改良点などがあったらすぐにおっしゃって下さい。出来る限りすぐ対応しますので」

 

「心得ている。その改善点の指摘などは全て弟子達が纏めている最中だ。ほれそこに」

 

 剛山が指差した壁には大量の付箋が張り付けられた機材の写真がデカデカと張られており、他にも金属類の比率や経験則に基づいた様々なノウハウがやたらと書かれた巨大な元素記号表までもがあった。

 

「この数日でよく此処まで……」

 

 感心する少年に剛山が苦笑する。

 

「我々は昔とは違い。単なる工芸品としての刀を打つのが生業になっていた。実際、人が斬れる刀を打っても、人を斬る為の刀は打っていない。いなかった……」

 

 その言葉に少年が真摯な瞳を向ける。

 本来はそれでいいのだ。

 

 それは純粋に平和な時代にあって素晴らしい話だろう。

 

 だが。

 

「純粋に伝統工芸品を打つ我々はそれでも誇りを持ってやってきた。だが、人類がこのような状況で伝統工芸など何の価値がある? ゾンビの前に無力感を感じていたのは何も戦う人間だけではない。我々とて、それを感じる一人だった」

 

 剛山がそう大きく息を吐く。

 

「だが、君は我々に無力ではないと言ってくれた。君が人を救う為に何よりもただ優秀な刀剣が必要だからと我々に機会を用意してくれた。それが嬉しくないわけがない……我々にもまだ出来る事がある。そう言ってくれる者達がいるのならば、それに応えたいと思うのが人間だろう」

 

 老人が手を差し出す。

 

「陰陽自研からの様々な合金やその資材やノウハウの大量の習得には今しばらく時間が掛かるだろう。だが、弟子達は優秀だ。この古い考え方の老人が教えるのは古来から変わらぬ叩いて打って曲げて伸ばして温めて冷やす。たったそれだけの事だ……」

 

 ただ真摯に何よりもソレが難しいと知りながらも微笑む老人はちょっとだけ悪戯小僧のような悪い顔でニヤリとした。

 

「必ず君達の要望に応えられるだけの刀剣を打とう。子供心に悪党を討つ刀を打ってみたいという夢を見た頃の願いが叶ったよ。ありがとう」

 

「いえ、全ては皆さんが継いできた技術故です」

 

『ディーン。メール以外では初めてだな。送った情報や幾らかのやり取りでは分からない事も多いだろう。共に彼らの剣を打ってくれるか?』

 

 流暢な英語で言われて、ディーンが驚いていた。

 

「これでも英会話教室に入ってたんだ。昔、西洋の剣を打った鍛冶師などの話を紐解くのに必要だったもので……」

 

 それにディーンは一言。

 やろう兄弟。

 そう答えた。

 

「では、まず最初にオーダーされていた幾つかの剣の形状と雛型としてのデザインを示そう。使う者の膂力などにも寄るが、完全にその人間専用として打つ、という事でいいのかね?」

 

「はい」

 

 少年と少女達が次々に出される刀剣類の造形と使う時の状況に応じた欲しい能力からディスカッションを開始するまで時間は掛からなかった。

 

 意見という意見を全て聞き集めたディーンと剛山が戦場の実質を聞き取りながら、自分達が戦う事になる相手の超常的な能力を突破する為の力としての刀剣。

 

 つまり、重火器の火力では対応出来ない極めてヤバイ存在達に対抗する為の近接攻撃用の刀剣に付いての詳細が詰められ始めた。

 

 昼頃までの数時間。

 その白熱した会話は続き。

 全員がそれぞれの要望を出した後。

 

 また、別の日にはクローディオや片瀬、善導騎士団の団員達が来る事を伝え、少

 年達はその施設を後にするのだった。

 

 その後、彼らを見送った鍛冶師達が若いのから老人まで集まってくる。

 

「剛山先生。彼女達小さかったですね」

 

「ああ、そうだな。だが、その肩で彼らは今戦っている。そして、戦おうとする者達が刃を欲している。我々はその要望に応えられるだけの力を身に付けねばならん」

 

「はい」

 

 弟子達が大きく頷く。

 剛山が次々に視線をそんな彼らに向けた。

 

「……ジャック。今日の要望を総合してサイズの見直しを。目であの子達の体形と身長の採寸は済ませたな?」

 

「はい。先生」

 

「ダニエル。陰陽自用の量産品にはユニバーサル・デザインが必要だ。将来的なゾンビとの戦いに際して自衛官達や他の国の者達にも使えるようにしたい。お前のデザイナーとしての腕を振るえ」

 

「任せて下さい。先生」

 

「トニー。冶金学専攻だったお前の知識と技術で打ち方が変わる。最適な工程をプランニングしてくれ。それが我々の生み出す刃の完成、その道導となる」

 

「了解です。先生!!」

 

「野村。砥ぎ師の方達に見た目ではなく実戦用の砥ぎ方をと注文を。それと刃を幾つか送る。潰してもいいから、砥ぎ方を研究して欲しいと。予算は全てこちら持ちで構わない。砥ぎ石に関しては従来のものもこちらで用意したモノもどちらも送ってくれ」

 

「分かりました。先生」

 

 日本人よりも外国人の方が多い弟子達が互いに頷いて仕事に掛かる。

 

「さて、皆さん。先程の会話からして、我々はどうやら妖刀魔剣。いや、聖剣の類を求められているようだ。水の代わりに魔力という海のものか山のものか分からない何かを使い。未知の金属を前に震えて座している。だからこそ、その先の光景を見なければならない。見れなければ、滅ぶのだとこの老骨の勘が言っている……やりましょう。日本と人々と彼らと……我々自身の未来の為に!!」

 

 それに応えるは一言。

 誰もが使命感に燃えていた。

 彼らは今、工芸品を作る職人では無かった。

 何者かを害し、何者かを殺害する為の手段を創る者。

 それは古の者達が武器一つで戦わねばならなかった頃。

 その誰かに刃を手渡していた者達と同じ瞳。

 

 己の力量が他者の生死として直結するからこそ、そこに妥協は無く。

 

 後に一部の者達から【魔剣工房(まけんこうぼう)】と呼ばれる者達は確かに新たな叡智と技術へ手を伸ばし始めていたのだった。

 

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