鬼に育てられた少女   作:ねみのや

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鬼・累君視点です。


第3話

 

ーーー酷くみすぼらしい少女を拾ったのは、単なる気まぐれだった。

 

理由の一つとしては、毛色が自分と似ていたから、そして、家族が欲しいかと聞いたら、「家族がどういうものか分からない」と答えたから。

 

ーーー自分と、何処か似ていたから。

 

小屋に連れて帰り、洗い、着物を着せ、髪を切ると少し驚いた。

自分とそっくり、とまではいかないが、何処か似ていたから。 

 

はじめは僕に怯える少女に苛つき、殴ったり、蹴ったりもした。

 

二月目になり、やはり、今回も自分の求めた家族になるのはムリだと思っていた時、ポツリと少女の口からある言葉が漏れる。

 

「…抱きしめて、くれませんか?」

 

まさか僕にそんなことを言うとは予測できず、かなり驚いた。

動揺して、どうしたらいいのかよく分からなくて、取り敢えず抱きしめたら少女がポロポロと泣き出たから、ますます戸惑った。

 

それから、少女は僕に毎日抱きしめてほしいと言うようになる。

毎日抱きしめているうちに、なんだか少女に苛つくことはなくなって、少女に暴力をふるうことはなくなり、少女は僕にとても懐いた。

 

それから少しずつ会話することが増えて、話す話題ができたらいい、ぐらいの気持ちでかんざしを贈ったら大げさなくらいに喜んで、一生大事にすると言うものだから贈り物をするのも悪くないと思い、着物や食べ物も人間が好むものを贈った。

 

贈り物をする度、なんだか家族に近づいていくような気がして、色んなものを贈った。

 

そうして会話がどんどん増え、少女との時間も増え、君、とかお前、とか呼ぶのが煩わしく感じたから、名前をつけることにした。

1月7日が誕生日だったから、その日の誕生花、芹だ。

 

少女ーーーいや、芹は泣きながら喜び、芹と呼ぶたびに顔を綻ばせて僕に抱きついてきた。

 

それから僕は他の「家族」のことは二の次にして、一日の殆どを芹と過ごした。

まるで、本当の妹のように愛おしく感じて、何か人間の頃の記憶が戻るような気がしたが、途中でつっかかるような感じで思い出せない。

 

だが、酷く幸福に感じた。

 

芹といるだけで、心が温まって、抱きしめる度、愛情が増して、芹の笑顔を見るたび、幸福になった。

 

だが、最近少し芹といる時間が減ってきた。

理由は、最近鬼殺隊の奴らがこの山をうろちょろしているからだ。

そいつらを始末している時間が多くなって、芹との時間が減るのはとても苛つく。

 

この山は、いざとなれば離れてもいい。

芹だけ連れて、遠くで二人きりになり暮らすのも悪くないだろう。

 

ーーーまあ、そられは鬼殺隊の奴らを始末してから。

大丈夫、芹は何があっても守らから。

 

「おかえりなさい、累さん!抱きしめてください」

「ただいま、勿論だよ、芹。」

 

 

 

 

ーーーああ、涙が溢れそうな程幸福だ。

 

 

 


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