死がふたりを分かつまで   作:ナイジェッル

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第24戦:悪竜現象

 「着弾確認。目標地点到達。(みな)、無事か?」

 

 シグルドは突入により派手に崩れた城の瓦礫を軽くグラムを振るって吹き飛ばした。

 隠れ家から射出され、瞬きした次の瞬間には既に目的地へとぶち当たったシグルドとクーフーリン手製の弩弓カタパルトの剛矢。

 その性能は言うに及ばず。

 兵士と魔術師が神々の炎の壁の一部を揺るがせ、その刹那の隙を縫い通すスピードと精度。

 結果だけ言えば、侵入は成功した。

 シグルド達を運んだ巨大な矢は神霊ブリュンヒルデの城に深々と突き刺さり、全員を欠けることなく送り届けた。送り届けたのだが……。

 

 「し、死んでしまいます……」

 「生きた心地がしないよぉ」

 「………吐きそう」

 「一瞬気を失った気がする……」

 

 スルーズ、ヒルド、オルトリンデ、トイネンは目を回しながら瓦礫の中から這い出てきた。

 外傷は見られないが、その光速に至りし速度の反動がそこにあった。

 音速飛行を常とする戦乙女(ワルキューレ)であっても、流石に今回の無理やりな移動方法には参ったと見える。

 

 「それでも音に聞こえし戦乙女(ワルキューレ)か。もうここは敵さんの腹ン中だぞ。ジークフリートを見習えジークフリートを」

 「いや、それは買い被りすぎだ。流石に平衡感覚に狂いが生じている」

 

 シグルド、ジークフリート、クー・フーリン、スルーズら戦乙女(ワルキューレ)にトイネン・アスラウグ。

 トイネン以外の量産型戦乙女(ワルキューレ)は協力に応じてくれた兵士と魔術師の救出に向かっている。

 実質、この七騎が神霊ブリュンヒルデの城を落とす全戦力となっている。

 はっきり言って無謀極まりない。超常たる神の城にたったの七騎だ。戦力差は依然開きがある。

 特に神霊ブリュンヒルデの私兵たる戦乙女(ワルキューレ)もまた、前回戦ったものと質が異なっていた。

 

 「ちっ、流石に早いな」

 

 クー・フーリンは舌打ちをして周囲を見渡す。

 いつの間にやら、城内にいた敵の戦乙女(ワルキューレ)が自分達を包囲していた。

 

 「見たところ外の警備に比べて性能が良さそうだ。直属の近衛兵ってところかね」

 

 今まで見てきたのはあくまで人間をヴァルハラに送るだけの量産型。

 此処に配備されている戦乙女(ワルキューレ)は、それこそ防衛及び戦闘に特化したタイプ。

 その証拠に彼女らが持つ武器は槍だけに非ず。

 剣、弓、鉄球、鎌とその戦乙女(ワルキューレ)に応じた武装が施されており、魔力だけ見ればスルーズらオリジナルと大差がない。

 

 「彼女達に構っている時間はない。玉座まで駆け上がる」

 「シグルド殿と同意見だ」

 「なら、こっからは競争だ。足の遅い奴はもれなく敵の足止めってことでいいか?」

 「「異論無し」」

 

 シグルドを含めた三人の男達は一斉に動いた。

 既に索敵のルーンを行使していたシグルドとクー・フーリンはどこが玉座まで繋がっているか把握している。その動きに一切の迷いはない。

 

 「オルトリンデ、ヒルド、トイネン! 私達も出遅れるわけにはいきません!」

 「了解! お姉様の目は私達が!」

 「覚まさせる!!」

 「私は、このトイネンの名に誓って!」

 

 彼らに遅れまいとオリジナルの戦乙女(ワルキューレ)達も白鳥礼装を用いて高速飛行を開始した。

 

 『城内に侵入者』『城内に侵入者』

 『カテゴリ:英霊』『カテゴリ:英霊』

 『捕縛不可:殲滅』『捕縛不可:殲滅』

 

 神霊ブリュンヒルデの城に侵入した七騎に対し、城内の兵力は捕縛ではなく、排除を選んだ。

 戦闘特化型の戦乙女(ワルキューレ)は侵入者を抹殺するべく、その膨大な魔力を羽根に注ぎ込み、全力で追跡する。

 

 「馬鹿正直にケツを追ってくるか。やはりちょいとばかしオツムが足りねぇな。そこは多少のロスを承知で敵の出方の一つや二つ、見るもんだ」

 

 クー・フーリンは通路を走りながら壁にルーン文字を刻んでいく。

 

 「「「ッ!!」」」

 

 戦闘特化型の戦乙女(ワルキューレ)達はその刻まれたルーンを見て立ち止まった。

 その判断は正しい。それから一秒にも満たない間で、彼女達が通るべき通路に焔の壁が立ち塞がった。

 本来であれば焔弾を放つ魔術を炎の壁として活用するクー・フーリン。

 これは簡易的な神の壁。まるで昔作ったことがあるかのような精巧さである。

 

 「ちょろいもんだ。やはり、私……ではない。かの大神が創りし戦乙女(ワルキューレ)とでは比べ物にすらならねぇな。製作に用いた理念、時間、手間。そのどれもが甘すぎる」

 

 クー・フーリンはそう言い残してその場を後にした。

 これならば、多少の時間は稼げるだろう。

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 「気付いているか、ジークフリート殿」

 「ああ。城内に入るまでは気付かなかったが、これは……」

 

 玉座まで突き進むシグルドとジークフリートはこの城内に蠢くいくつかの魔力を肌で感じ取っていた。

 

 「この先で待ち構えている巨大な魔力。そのうち英霊の魔力が一つ。そして、悪竜(・・・・・)の魔力が一つ。この城に潜伏していたか」

 「まさか悪竜現象(ファヴニール)まで従えているとは。しかしなんだこの魔力は。俺が対峙した邪竜とは異質の魔力。俺が討伐した竜では……ない?」

 

 ジークフリートは己の胸に手を当てる。

 悪竜現象(ファヴニール)と密接な関わりがあるジークフリートは、その竜が現界した際は嫌でも魂が気付くようになっている。それはファヴニールもまた、同じこと。

 されど、おかしなことにこうして認識した上でもこの先から感じる邪竜からはその縁が感じられない。

 

 「この世界が北欧から続く神代なれば、そこに呼ばれる悪竜現象(ファヴニール)もまた、北欧に連なるモノなのだろう。ならば、この先に待つ邪竜は―――当方が討ち果たした邪竜に他ならない」

 

 ジークフリートがその邪竜に対して縁を感じられないのは当然だ。

 人の大欲。人の身を超えた者。その始まりの邪竜こそが――――。

 

 「来るぞ!!」

 

 巨大な魔力反応。明らかな殺意を感じ取ったクー・フーリンは叫んだ。

 

 「オルトリンデ、ヒルド!!」

 「分かってます!」

 

 オリジナルたる戦乙女(ワルキューレ)は原初のルーンを発動。

 

 「シグルド、合わせろ!」

 「言われるまでもない!」

 

 シグルドとクー・フーリンも原初のルーンを起動させた。

 この場、この瞬間に選ぶべきルーンは上級宝具すら防ぐ防御結界。

 一本道である通路を突き進むシグルド達はまさしく格好の獲物。回避する場所などないのならば、防御するほかに道はない。

 咄嗟のことで何もできなかったトイネン・アスラウグは見た。

 仮に自分も動けたとしても、量産型でしかない己に何ができようか。

 なにせ、視界一杯に広がる業火が差し迫っていたのだから。

 その威力、魔力ともにたかだがトイネン一人の助力があったところで何も変わらない。

 暴力の権化と言わんばかりの圧倒的な火がシグルド達が突き進んでいた通路を悉く覆い尽くした。

 

 「これは、忌々しい記憶を引き吊り出されるかのようだ……!」

 

 結界を張り、難を逃れたクー・フーリンの皮を被った大神は悪態をつく。

 無礼にも初撃からブレスを吐いた邪竜は、オーディンとも縁深い。

 

 「急げ! 今はまだジャブの領域だ! 二撃目は更に火力を上げてくるぞ!!」

 

 だからこそ分かる。この程度の火力など欠伸にも等しいのだと。

 舐めた真似をしてくれる。天界に身代金を要求するほどの邪竜。更に傲慢に磨きが掛かったか。

 

 「ジークフリート殿! 当方の手を!」

 「ああ!」

 

 シグルドは早駆けのルーンを自身の脚に刻み、脚力を上げた。そして原初のルーンが使えず素の速度で後れを取るジークフリートに手を差し伸べ、一気に通路を駆け抜ける。

 

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 「ここは……」

 「外か? いや、空間を歪ませて広くしているのか」

 

 通路を抜けた先にあったのは、巨大な空間だった。

 恐らく城の内部の空間を歪めているのだろう。この城の本来の広さを歪め、暴れるにあたって何も問題ないように設定されている。

 それこそ、竜種が天高く飛んでも何も支障がないほどに。

 

 「待っていたぞ。英雄シグルド」

 「やはり貴殿か。ファヴニール……否、全ての悪竜の祖。ファフニール」

 

 そこで待っていた者は、巨大な邪竜――ではなく、人の形をした一人の男だった。

 ジークフリートの髪質に似た長き黒髪、深緑の瞳に、褐色交じりの茶色き肌。

 人の形を成しているが、そのうちに秘めたるは竜種の頂点に位置づけられし者。

 

 「俺をその名で呼ぶのは今やお前だけだ、人間」

 「貴殿が本来あるべき人の形を模しているのならば、それ相応の名で答えるが礼儀」

 「ふん。相変わらず律儀な奴だ。なに、こっちの方が人語は喋りやすいのでな。じきに邪竜へと姿を変えるが、その前に貴様と言葉を交わしたかった」

 「律儀なのは其方も同じこと……なぜ神霊ブリュンヒルデの元につく。貴殿は正しく神に敵対するもの。天界に仇名す者。北欧の神格に付き従うほどその怨嗟も浅くはあるまい。神霊ブリュンヒルデの束縛も貴殿ならば断ち切れよう」

 「あの女もまた、北欧の神に運命を、己が人生を捻じ曲げられた存在。その哀れさを知ればこそ、同志と言えんわけではない。それに……今、奴は神霊というには些か歪な在り方をしている。(・・・・・・・・・・)

 

 神霊というには歪な在り方だと?

 シグルドは確かにそう耳にした。

 おかしい。最後にシグルドが目にしたブリュンヒルデはまさしく神霊だった。あれこそはファフニールが最も忌み嫌う無機質な神性そのものだったはず。

 今、ファフニールが語った神霊ブリュンヒルデとシグルドが見た神霊ブリュンヒルデに相違があるとすれば……それこそファフニールがブリュンヒルデを許容している要素の一つであるならば、いったい彼女の身に何が起きている。

 

 「あと俺は神とは違い義理深いのでな。裏切り、策謀は最も忌み嫌う。大神ならいざ知らず、小娘のわがままを聴いてやるのも一興よ」

 

 仮にも神霊を小娘と宣うか。

 なるほど尊大だ。そして傲慢でもある。

 全てを下に見ているからこその言葉。子供の駄々を聴く大人の如し。

 そしてそれだけの言葉を吐ける実力が、目の前の男にはある。

 ただし、その大層な言葉を嘲笑にして伏す存在が、ここにも存在した。

 ケルト神話の大英雄クー・フーリン。その霊器に潜みし、大神の意志。

 かつてファフニールに煮え湯を飲まされた者が、前に出る。

 

 「ハッ、邪竜如きが何を偉そうに。大層な御託を並べて結局はシグルドと殺し合うことが目的なんだろう? なにもおかしいことはない。利害の一致。ただそれだけだ。自分の欲と雇い主の命令が同じだっただけの話だ。人間らしい浅ましさを未だ残しているとは驚きだ、ファフニール」

 「………貴様」

 

 ファフニールは目を細めてクー・フーリンを見た。

 それは無礼千万な物言いをする英雄を敵視する目ではない。

 何かを感じ取った瞳だった。

 

 「なるほど、なるほど。神性が異郷のものゆえ、まったく気づかなかった……クク、ハハハハハ! これこそ縁よなぁ! まさか、八つ裂きにして貪り喰いたいと思っていた獲物が、二匹! 雁首揃えようとは思わなんだぞ!!」

 「抜かせ元人間が。貴様の悪意が後の世界に大きな悪影響を及ぼした。悪竜現象(ファヴニール)とはよくぞ名付けた。シグルドが貴様を殺して終わったかと思えば、その呪いは北欧に伝染した。否、北欧を超え、他国にまで手を出した。身の程を知らぬ阿呆のやらかしほど厄介なものはない」

 「神が今更 人の味方面か!」

 「いいや。我々は人の味方でもないし贔屓もしない。あるようにあるだけ。こうして俺がお前の前に立っている理由。それはな―――不遜にも(・・・)を人質にした挙句、天界に身代金を要求するなど舐めた不敬を働いてくれた礼をする為だ……!」

 「テメェが俺の弟を皮財布にしたのが元凶だろうがクソ野郎がァァァァァァ!!!」

 

 

 

 ◆

 

 

 

 「いいのですか、シグルド! あの二人に任せて私達だけ進んで!? ジークフリートとクー・フーリン……いえ、きっとあの方は!」

 「だからこそだ。あの場において、彼ら以外に任せられる者はいない」

 

 シグルド、スルーズ、オルトリンデ、ヒルド、トイネン。

 この五人を前に進める為、竜殺しの大英雄と森の賢者はあの場に残った。

 存在違えど悪竜現象(ファヴニール)を打ち倒した経験のあるジークフリート。

 ファフニール自身に深い因縁を持つクー・フーリンの殻を被った魔術神。

 シグルドは何としてでも神霊ブリュンヒルデの元に至らなければならない故、あの場に残ることはできなかった。

 いや、あそこで足を止めることをあの二人が許さなかったと言えば正しいか。

 

 『知っての通り、あのくそ生意気……失礼。あの邪竜とは浅からぬ縁がある。ここで過去の汚点を清算するにはいい機会だ。お前は先に行け』

 『竜となればこの場は俺に任せてもらおう。なに、俺もまた竜殺しだ。神を斃した竜が相手とはいえ、その称号に恥じぬ戦いをしよう。すぐに倒して追いつくさ』

 

 そう言い残して二人はあの場所に留まった。

 彼らは己に道を託したのだ。

 そうである以上、託された者として何か異論を発することは彼らへの侮辱。

 なればこそ、彼らを信じるしかない。

 あのファフニールの強大さは身をもって経験している。

 それでも、彼ら二人ならば竜殺しを為す。

 そう信じて前に進むことこそが、彼らへの礼儀だ。

 

 「まだ、この先で正体不明の英霊が我らを待ち構えている。意識は切り替えよ、妹御らよ」

 「……貴方に妹と呼ばれる筋合いはない。そう、最初の頃に言ったはずですが?」

 「ああ、その調子だ。緊迫した時こそ、精神はできる限り平常でなければならない」

 

 この時、シグルドは嘘をついた。

 更にこの先で待ち受ける正体不明の英霊。

 正体不明。そう、口にしたシグルドだが―――彼の霊基が、囁いている。

 

 これ以上進めば、お前は過去の咎、過去の不義理、過去の裏切りと出会うのだと。

 

 

 ◆

 

 

 

 「いやぁ、助かる。ああ啖呵を切ったのはいいが、なにぶん力の制約が課されていては単騎では分が悪かったと思っていたところだ。英雄ジークフリート」

 「俺は世界の修正と、友の助けになる為に此処にいる。感謝されるほどのことはしていない。北欧の大神よ」

 「その口ぶりからして随分と前から感づいていたのか? 竜殺し」

 「最初から気付いていたわけじゃない。戦乙女(ワルキューレ)すらも知らぬルーン魔術に、ところどころ垣間見えた超常の瞳。喋り方も本来のものではないだろう違和感。純粋なケルトの戦士ではない、ということだけは途中で理解した」

 「上出来だ。良かったらヴァルハラに来ないかい? 異郷の神性を有していない大英雄。大歓迎だ」

 「丁重にお断りする」

 「そりゃ残念。気が変わったらいつでも声をかけてくれ」

 

 手ひどくフラれたものだと賢人は笑う。

 

 「いつまでくっちゃべってるつもりだ、大神」

 

 痺れを切らした男は静かに口を開いた。

 その言葉は言霊となって重圧に似た圧を二人に与える。

 

 「ふん。言の葉の重圧……大神()の真似か。このような挑発、格下くらいにしか使えんぞ」

 「なら使いどころは正しいな。目の前の相手は格下なのだから」

 「言うようになったな元人間。シグルドに負けて口喧嘩の鍛錬でもしていたか?」

 「ほざけ。貴様を殺した後はシグルドも殺す。神なぞはいわば前菜だ」

 

 男はそう宣言した瞬間、体から膨大な魔力を放出した。

 これは殺し合いの合図。容赦なく相手を踏み砕く予兆。

 

 「あの時は死ぬほど後悔したぞ、大神。貴様とロキとヘーニル。あの三柱は生け捕りにするのではなく、その場で速やかに殺しておくべきだったとなぁ!!」

 

 怒りの咆哮と共にファフニールは巨大にして強大な竜種に変容した。

 今までの悪竜現象(ファヴニール)とはわけが違う。

 北欧のみならず世界で見られた人間が悪竜へ姿を変える現象。その大本。元凶を生み出した人間。

 神霊すらも捕縛する、森林の怪物。天界に仇名す、強欲の化身。

 それこそがファフニール。世界に混沌を齎した邪竜である。

 

 「大神。貴方はいったい彼になにを………」

 「うむ。私はかつてロキたちと世界ぶらり旅している時期があってな。その道中でえらく粋の良い珍しいカワウソを見つけたんだ。食料にも丁度いいと思ってロキの奴が狩ったんだが……そのカワウソの正体が魔術で擬態して水遊びしていたファフニールの弟だった」

 「………」

 「神の目すら欺く見事な擬態だった。尤もそれが原因で私達は気付かずそのカワウソを掻っ捌いて喰った。皮は財布にした。それを宿先の店員……まぁファフニールに見せて恨まれた。以上」

 「それは、恨まれて当然では?」

 「神を欺いた不敬ものがいけない」

 

 ジークフリートは急激に胃が痛くなった気がした。

 もうこの男だけに任せてもよかったんじゃないかというほど聞いたことに後悔したのは秘密だ。

 

 【殺す、殺してやるぞ……オーディン……!!】

 

 竜に変貌したことにより、その言葉一つ一つに魔力の重みが更に付加されている。

 人の言葉を喋っていながら、その意味は幻想種にも伝わる邪竜の言霊。

 

 「貴様とて神霊ブリュンヒルデに呼ばれた使い魔の身。生前のような力は出せまい」

 【権能も使えぬであろう英霊の霊基に収まっているのは貴様も同じことだ!!】

 

 仲間は大神。敵は神すら捕縛した怪物。この場をシグルドに託された誉れ。

 全てが生前含めて最大規模の戦いとなる。命を張らねば、この命はすぐに絶えるだろう。

 まさしく一世一代の大勝負。気を引き締め直さなければ―――死ぬ。

 

 「竜殺しが一人、ネーデルラントのジークフリート。北欧の神話体系に連なる神と竜よ。その因縁共々、この場で断ち切らせてもらう!!」

 

 忘れるな。どのような超常の存在とはいえ、ファフニールが竜種であることに変わりはない。

 敵が竜である限り、ジークフリートに負けはない。

 それは竜殺しの概念であるからではない。ジークフリートが、ジークフリート足らんとする誇りがあるからだ。

 なにより、なによりだ。

 シグルドが倒せて、ジークフリートが倒せないでは格好がつかないというもの。

 遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ。

 

 我が武勇、我が誉れ、北欧神代の英雄に劣らぬと知れ。

 




 元々ファフニール(ファヴニール)とは北欧神話に登場するキャラクターのことを指します。
 それが型月ではファヴニール(悪竜現象)と一つの現象と化していました。
 シグルド、ゲオルギウス曰く「人が人の身を超える大欲を抱いた時に発生するもの」
 なぜファヴニールが現象と化していたのか、そもそもどういった経緯でそうなったのかは未だ公式では明言されず、不明なところがあります。
 このSSでは北欧神話のファフニールが討伐された後、呪いとなって世界に拡散した。それが人が竜に変貌する現象、悪竜現象(ファヴニール)になったのではないかと考察したものと定め、ぶち込んでみました。俺を斃しても第二、第三のファヴニールが現れる的なイメージで。
 また人間どころか巨人王スルトにまで悪竜現象(ファヴニール)化があった。人間だけではなく巨人にまで効力が及ぶ辺り、とても興味深い事象です。
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