〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』   作:やさぐれショウ

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やさぐれショウです。



小鳥遊大臣が言っていた『運命からの解放』とは……

本編、どうぞ


第百八十五話 奪われた戦場

それから、約3日後……

 

ドールハウスの事務所に呼ばれた翔とDolls。事務所には、ドールハウス3巨頭はもちろん……深雪と蜜璃、更には元ストライカー達の姿もあった。

ヤマダ「くぁ……あー…ねむ……」

眠そうに欠伸をするヤマダ。

アヤ「どーせここ3日、ネトゲ三昧だったんでしょ。」

ヤマダ「3日でログイン時間70時間…さすがに体がガタつくすなぁ…」

どうやら、ほぼ3日間ネットゲームにのめり込んでいたのが原因だそうだ。

アヤ「本当、自堕落ね。せっかく自主連しようと思ったのに…」

呆れた口調でヤマダに言うアヤ。

ユキ「……さみしかったです。」

と、ヤマダに言うユキ。チームCは、ヤマダを除く2人がレッスンに励んだ模様。

ヒヨ「ヒヨとナナミンは、いっぱいレッスンしたよー!」

ナナミ「新曲のフォーメーション、完璧ですね。“少なくとも、チームBは”。」

レイナ「Dollsは戦いだけではないもの。アイドルとしての鍛錬は怠れないわ。」

チームBの3人はいつも通りの様子。一方、チームAの方は……

サクラ「ミサキさん……ミサキさんはどうしているんでしょう。」

シオリ「…珍しいですね。ミサキさんが一番最後なんて……」

いつもは一番乗りで集合場所にいるミサキが、この日はまだ来ていなかった。そんな彼女を心配するサクラとシオリ。

サクラ「集合時間までは、まだ少しありますけど…」

その時……

 

ガチャッ……

 

ミサキ「……すみません。遅れました。」

ミサキが到着した。

サクラ「ミサキさん…!」

翔「……。」

黙っている翔に、ミサキは気まずそうに声をかける。

ミサキ「あ、翔さん……遅れてしまい、申し訳ありません。」

翔「……気にするな。」

翔にそう言われ、ミサキは少しだけ気が楽になった。

カナ「…斑目さん。Dolls、全員揃いました。」

斑目「……よし。」

全員揃ったところで、斑目が話を始める。

斑目「休暇中に呼び出して済まない。政府により、今後のドールハウスの方針について、正式決定があった。」

斑目のこの言葉に、周りが緊張感に包まれる。

メンバー達「「「……。」」」

 

斑目「今後----

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

----今後、Dollsによる戦闘行為の一切を禁止する。

 

メンバー達「「「っ!?」」」

驚くメンバー達を余所に……

斑目「Dollsはフィール収集を任とし、アイドルとしての活動のみ、これを許可する。」

と、斑目は淡々と説明していった。

斑目「以上、だ。」

翔(運命からの解放って……まさか、この事か!?)

小鳥遊大臣の言葉を思い出した翔は、『運命からの解放』=『Dollsの戦場が奪われること』だと、漸く理解した。

ミサキ「なんですって…!」

この方針に、納得できずにいるミサキ。

ヒヨ「……えーっと…ヒヨ、難しくてちょっと分かんなかったよー!」

混乱し、ムリに明るく振る舞うヒヨ。

ナナミ「…ピグマリオン及び妖魔討伐は禁止。ライブだけやってろってことですよ。」

混乱するヒヨに、ナナミは簡単に説明した。

ヒヨ「ほえ……」

ナナミの説明を聞き、漸く状況を理解したヒヨは口角を下げる。

サクラ「…あの、それじゃあ、街の巡回は……」

 

斑目「…全て、害特の管轄となる。」

 

当然、戦闘行為が禁止であれば、巡回も禁止だ。

斑目「都内各所に簡易駐屯地を設営。『害獣駆除』に当たるそうだ。」

レイナ「期間は、いつまで?」

カナ「……本日以降、です。」

シオリ「命令に変更のない限りは、永久的に…ということですね。」

カナ「……そうなります。」

話を聞く限り……戦闘禁止期間は『無期限』と言っても過言ではない。

サクラ「……戦ってはいけない…………戦わなくて、いい……」

ヤマダ「フツーのアイドルに戻ります、ってか。」

複雑な思いをするDolls。そして遂に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤマダ「ははっ……くっ…だんねえ……!!

 

ヤマダの不満が爆発した。

斑目「いまは、耐えろ。必ずDollsの力が必要になるときが--」

斑目はヤマダをなだめようとする。だが…ミサキの不満も爆発する。

ミサキ「私、抗議してきます。この決定は、間違ってる。小鳥遊大臣に、直接そう伝えます。」

翔「ミサキ、待て…!」

翔はミサキを止めようとするも……

ミサキ「交渉材料だってある。この体が、この力が、何よりの証拠--」

彼女は止まらない。その時……

 

シオリ「ミサキさん…!!いい加減にして!!

 

シオリが声をあげた。

サクラ「…ッ!?」

ミサキ「ッ……!」

それに驚くサクラとミサキ。

雪枝「し、シオリさん……」

シオリはミサキに言う。

シオリ「そんな要求、通ると思う?私たちは人形、オートギアと同じ、駒なの!」

モニカ「えっ…ど、どういうこと…?」

シオリの言葉に、戸惑い始める元ストライカー達。

シオリ「そうよ、私たちは国家機密の塊…!反抗すれば消されるだけ…!」

ほたる「う、ウソ……」

幸子「そ、そんな……」

シオリ「分かってるでしょう、あなただって…!」

サクラ「シオリ、さん……?」

シオリ「あ……」

シオリはハッとして、冷静さを取り戻した。

翔(国に抗議すれば消される!?……それだけは…!!)

シオリの言葉を聞き逃さなかった翔は、衝撃を受けていた。

シオリ「……すみま、せん。少し、取り乱してしまって。」

シオリは謝罪すると、

シオリ「斑目さん。内容、全て了解しました。」

斑目の話を受け入れた。だが、一つのお願いをつけて……

シオリ「ただ、突然巡回任務がなくなると、体がなまってしまいます。シミュレーターの使用だけは、許可してくださいますか?」

シオリの話に、斑目はこう答えた。

 

斑目「……ああ。禁止されているのは『戦闘行為』だ。」

斑目の次に、カナが言葉を付け加える。

カナ「シミュレーターはあくまでも『訓練』です。禁則事項には当たりません。」

2人の説明に、

シオリ「…ありがとうございます!」

と、お礼を言うシオリ。

シオリ「……レイナさん。今日はこれで、解散にしましょう。」

レイナ「……そ、そうね。」

レイナはメンバー達に言う。

 

レイナ「受け止めるには時間が必要。今日は解散して、また集いましょう。」

しかし……

 

ミサキ「私は……

 

私は……納得できません!

 

ミサキは声を荒げると、事務所から飛び出して行ってしまった。不安げな表情を見せるDollsのメンバー達。

翔「……。」

ユキ「翔さん……翔さん……」

ユキも不安そうな表情を浮かべている。

ユキ「私たち……これからどうなるのですか……」

ユキの問いかけに、翔は……

 

翔「……。」

 

何も答えなかった……むしろ…答えられなかった。ただでさえ不安な彼女達に、無責任な言葉をかけるのは邪道である。余計なことを言ってしまえば、かえって不安を大きくさせるだけ……この時の翔は、そう思っていた。

 

 

 

Dollsと翔は事務所から退出したが……元ストライカー達は、事務所に残っていた。彼女達には、2つの疑問があったからだ。

あから「あの、斑目所長……気になることがあるのですが?」

斑目「どうした?」

あから「Dollsの皆さんは、戦うことを禁じられましたが……隊長殿も戦いを禁止されているのですか?」

マリ「それと、私たちも戦うことを許されないのかい?」

あからとマリの質問に、斑目は……

 

斑目「青空と君たち元ストライカーは、戦うことを禁止されていない。」

 

と、答える。彼女の返答に「えっ?」と困惑する元ストライカー達。

斑目「君たちの実力は本物だが…しかし、実戦経験が浅い……そのため、戦場に出すことはできない。」

愛「翔君に関しては、政府の人たちもその実力を認めているの……彼は戦わせても良い、むしろ…戦ってくれると助かる…ってね……」

斑目と愛の説明を聞いた元ストライカー達は、政府に不信感を抱き始める。

深雪(利用できるものは、利用していく……)

蜜璃(何だか、政府のやってることがよく分かんなくなってくるよ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼らを歯車に例えるとすると……

 

 

そのうちの幾つかにボロが出たのだが……メンバー達は『いつか治せる』と信じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、ここから歯車は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

徐々に…徐々に……狂っていく…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜……

 

翔「…?」

翔が目を覚ますと……そこは、あの庭園だった。

翔「…またか……部屋に戻ったと思ったんだがな。」

翔はため息をつき、立ち上がった。

マキナ「あら、お久しぶり。」

庭園にはマキナがいた。彼女は翔の姿を見るなり、微笑みかける。

翔「…またお前か。」

マキナ「ため息をつくと、幸せが逃げたしまうわ。」

翔「そんな事はどうでもいい。」

翔(くそ……こんなことになっちまって……いったい、どうすりゃいいんだ…)

険しい表情を浮かべる翔。

 

マキナ「……困惑、疑念、反発、憤怒、そして諦念。」

 

翔「…は?」

マキナ「アナタは人形たちに渦巻く感情に、心を激しく揺さぶられている。」

マキナは翔に言う。

 

マキナ「だけど、アナタ自身の感情は----あら?」

 

急に戸惑い始めるマキナ。

マキナ「戦ってはいけない。戦わなくていい。傷つけなくていい。傷つかないから、いい。それは、とても喜ばしいこと。なのに……今のアナタ自身の感情は、分からない……」

翔「……。」

黙っていた翔だったが、ここで口を開いた。

 

翔「…お前の言ってることは一理ある。戦う必要はない、だから傷つかない……確かに、それは良いことだ。だが……戦いを奪われたアイツらの感情はどうだ?喜ばしいどころか、むしろ……『存在意義』を奪われたことに対する怒りや戸惑いが渦巻いている。安心なんて、できるかよ……」

 

マキナ「…そう……アナタのその感情も、言ってることも、間違ってはいない。」

翔「いくら間違ってなくとも、アイツらの感情が変わることは無い。アイツらは--」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マキナ「…慣れるわ。」

翔「…?」

マキナの呟きに、言葉を止める翔。

マキナ「慣れます。いまはただ、戸惑っているだけ。遊んでいたおもちゃを取り上げられて、泣いているだけ。すぐに、それが『普通』になる。戦わない日常が…」

翔「……。」

マキナ「だから…アナタは何も、間違ってはいないわ。」

翔「…どうだか。」

マキナ「安心して……安堵して……」

翔「……。」

マキナの言葉を聞いた翔は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翔「他人事みてぇに言ってんじゃねぇよ…!」

 

と、マキナに怒った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ミサキは……

 

夜の公園に、一人でいた。

ミサキ「うまくいっていたの。」

誰もいない公園で、独り言を呟くミサキ。

 

 

 

ミサキ「…今までは、うまくいっていたの。

 

…体は動く。

 

強くなってる。

 

翔さんが『新しい存在意義を探せば良い』と言ってくれた……

 

けど……

 

今の私には戦いしかない。」

彼女の声は、僅かながら震えていた。

ミサキ「戦いがなくなったら----

 

 

きっと、私は壊れてしまう。

 

ミサキの目からは、涙が溢れ始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミサキ「怖い----怖い--------助けて、助けてよ。

 

 

 

やっぱり、私じゃダメだったよ。

 

貴女がいないと、私はダメだよ。

 

 

 

だから助けて。助けて----」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

----チヒロ。




いかがでしたか?今回はここまでです。



戦場が奪われたことにより、混乱し始めるDolls。翔までも不安に飲み込まれそうになっていた。

次回も、お楽しみに
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