〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』 作:やさぐれショウ
小鳥遊大臣が言っていた『運命からの解放』とは……
本編、どうぞ
それから、約3日後……
ドールハウスの事務所に呼ばれた翔とDolls。事務所には、ドールハウス3巨頭はもちろん……深雪と蜜璃、更には元ストライカー達の姿もあった。
ヤマダ「くぁ……あー…ねむ……」
眠そうに欠伸をするヤマダ。
アヤ「どーせここ3日、ネトゲ三昧だったんでしょ。」
ヤマダ「3日でログイン時間70時間…さすがに体がガタつくすなぁ…」
どうやら、ほぼ3日間ネットゲームにのめり込んでいたのが原因だそうだ。
アヤ「本当、自堕落ね。せっかく自主連しようと思ったのに…」
呆れた口調でヤマダに言うアヤ。
ユキ「……さみしかったです。」
と、ヤマダに言うユキ。チームCは、ヤマダを除く2人がレッスンに励んだ模様。
ヒヨ「ヒヨとナナミンは、いっぱいレッスンしたよー!」
ナナミ「新曲のフォーメーション、完璧ですね。“少なくとも、チームBは”。」
レイナ「Dollsは戦いだけではないもの。アイドルとしての鍛錬は怠れないわ。」
チームBの3人はいつも通りの様子。一方、チームAの方は……
サクラ「ミサキさん……ミサキさんはどうしているんでしょう。」
シオリ「…珍しいですね。ミサキさんが一番最後なんて……」
いつもは一番乗りで集合場所にいるミサキが、この日はまだ来ていなかった。そんな彼女を心配するサクラとシオリ。
サクラ「集合時間までは、まだ少しありますけど…」
その時……
ガチャッ……
ミサキ「……すみません。遅れました。」
ミサキが到着した。
サクラ「ミサキさん…!」
翔「……。」
黙っている翔に、ミサキは気まずそうに声をかける。
ミサキ「あ、翔さん……遅れてしまい、申し訳ありません。」
翔「……気にするな。」
翔にそう言われ、ミサキは少しだけ気が楽になった。
カナ「…斑目さん。Dolls、全員揃いました。」
斑目「……よし。」
全員揃ったところで、斑目が話を始める。
斑目「休暇中に呼び出して済まない。政府により、今後のドールハウスの方針について、正式決定があった。」
斑目のこの言葉に、周りが緊張感に包まれる。
メンバー達「「「……。」」」
斑目「今後----
----今後、Dollsによる戦闘行為の一切を禁止する。」
メンバー達「「「っ!?」」」
驚くメンバー達を余所に……
斑目「Dollsはフィール収集を任とし、アイドルとしての活動のみ、これを許可する。」
と、斑目は淡々と説明していった。
斑目「以上、だ。」
翔(運命からの解放って……まさか、この事か!?)
小鳥遊大臣の言葉を思い出した翔は、『運命からの解放』=『Dollsの戦場が奪われること』だと、漸く理解した。
ミサキ「なんですって…!」
この方針に、納得できずにいるミサキ。
ヒヨ「……えーっと…ヒヨ、難しくてちょっと分かんなかったよー!」
混乱し、ムリに明るく振る舞うヒヨ。
ナナミ「…ピグマリオン及び妖魔討伐は禁止。ライブだけやってろってことですよ。」
混乱するヒヨに、ナナミは簡単に説明した。
ヒヨ「ほえ……」
ナナミの説明を聞き、漸く状況を理解したヒヨは口角を下げる。
サクラ「…あの、それじゃあ、街の巡回は……」
斑目「…全て、害特の管轄となる。」
当然、戦闘行為が禁止であれば、巡回も禁止だ。
斑目「都内各所に簡易駐屯地を設営。『害獣駆除』に当たるそうだ。」
レイナ「期間は、いつまで?」
カナ「……本日以降、です。」
シオリ「命令に変更のない限りは、永久的に…ということですね。」
カナ「……そうなります。」
話を聞く限り……戦闘禁止期間は『無期限』と言っても過言ではない。
サクラ「……戦ってはいけない…………戦わなくて、いい……」
ヤマダ「フツーのアイドルに戻ります、ってか。」
複雑な思いをするDolls。そして遂に……
ヤマダ「ははっ……くっ…だんねえ……!!」
ヤマダの不満が爆発した。
斑目「いまは、耐えろ。必ずDollsの力が必要になるときが--」
斑目はヤマダをなだめようとする。だが…ミサキの不満も爆発する。
ミサキ「私、抗議してきます。この決定は、間違ってる。小鳥遊大臣に、直接そう伝えます。」
翔「ミサキ、待て…!」
翔はミサキを止めようとするも……
ミサキ「交渉材料だってある。この体が、この力が、何よりの証拠--」
彼女は止まらない。その時……
シオリ「ミサキさん…!!いい加減にして!!」
シオリが声をあげた。
サクラ「…ッ!?」
ミサキ「ッ……!」
それに驚くサクラとミサキ。
雪枝「し、シオリさん……」
シオリはミサキに言う。
シオリ「そんな要求、通ると思う?私たちは人形、オートギアと同じ、駒なの!」
モニカ「えっ…ど、どういうこと…?」
シオリの言葉に、戸惑い始める元ストライカー達。
シオリ「そうよ、私たちは国家機密の塊…!反抗すれば消されるだけ…!」
ほたる「う、ウソ……」
幸子「そ、そんな……」
シオリ「分かってるでしょう、あなただって…!」
サクラ「シオリ、さん……?」
シオリ「あ……」
シオリはハッとして、冷静さを取り戻した。
翔(国に抗議すれば消される!?……それだけは…!!)
シオリの言葉を聞き逃さなかった翔は、衝撃を受けていた。
シオリ「……すみま、せん。少し、取り乱してしまって。」
シオリは謝罪すると、
シオリ「斑目さん。内容、全て了解しました。」
斑目の話を受け入れた。だが、一つのお願いをつけて……
シオリ「ただ、突然巡回任務がなくなると、体がなまってしまいます。シミュレーターの使用だけは、許可してくださいますか?」
シオリの話に、斑目はこう答えた。
斑目「……ああ。禁止されているのは『戦闘行為』だ。」
斑目の次に、カナが言葉を付け加える。
カナ「シミュレーターはあくまでも『訓練』です。禁則事項には当たりません。」
2人の説明に、
シオリ「…ありがとうございます!」
と、お礼を言うシオリ。
シオリ「……レイナさん。今日はこれで、解散にしましょう。」
レイナ「……そ、そうね。」
レイナはメンバー達に言う。
レイナ「受け止めるには時間が必要。今日は解散して、また集いましょう。」
しかし……
ミサキ「私は……
私は……納得できません!」
ミサキは声を荒げると、事務所から飛び出して行ってしまった。不安げな表情を見せるDollsのメンバー達。
翔「……。」
ユキ「翔さん……翔さん……」
ユキも不安そうな表情を浮かべている。
ユキ「私たち……これからどうなるのですか……」
ユキの問いかけに、翔は……
翔「……。」
何も答えなかった……むしろ…答えられなかった。ただでさえ不安な彼女達に、無責任な言葉をかけるのは邪道である。余計なことを言ってしまえば、かえって不安を大きくさせるだけ……この時の翔は、そう思っていた。
Dollsと翔は事務所から退出したが……元ストライカー達は、事務所に残っていた。彼女達には、2つの疑問があったからだ。
あから「あの、斑目所長……気になることがあるのですが?」
斑目「どうした?」
あから「Dollsの皆さんは、戦うことを禁じられましたが……隊長殿も戦いを禁止されているのですか?」
マリ「それと、私たちも戦うことを許されないのかい?」
あからとマリの質問に、斑目は……
斑目「青空と君たち元ストライカーは、戦うことを禁止されていない。」
と、答える。彼女の返答に「えっ?」と困惑する元ストライカー達。
斑目「君たちの実力は本物だが…しかし、実戦経験が浅い……そのため、戦場に出すことはできない。」
愛「翔君に関しては、政府の人たちもその実力を認めているの……彼は戦わせても良い、むしろ…戦ってくれると助かる…ってね……」
斑目と愛の説明を聞いた元ストライカー達は、政府に不信感を抱き始める。
深雪(利用できるものは、利用していく……)
蜜璃(何だか、政府のやってることがよく分かんなくなってくるよ……)
彼らを歯車に例えるとすると……
そのうちの幾つかにボロが出たのだが……メンバー達は『いつか治せる』と信じていた。
だが、ここから歯車は……
徐々に…徐々に……狂っていく…………
その日の夜……
翔「…?」
翔が目を覚ますと……そこは、あの庭園だった。
翔「…またか……部屋に戻ったと思ったんだがな。」
翔はため息をつき、立ち上がった。
マキナ「あら、お久しぶり。」
庭園にはマキナがいた。彼女は翔の姿を見るなり、微笑みかける。
翔「…またお前か。」
マキナ「ため息をつくと、幸せが逃げたしまうわ。」
翔「そんな事はどうでもいい。」
翔(くそ……こんなことになっちまって……いったい、どうすりゃいいんだ…)
険しい表情を浮かべる翔。
マキナ「……困惑、疑念、反発、憤怒、そして諦念。」
翔「…は?」
マキナ「アナタは人形たちに渦巻く感情に、心を激しく揺さぶられている。」
マキナは翔に言う。
マキナ「だけど、アナタ自身の感情は----あら?」
急に戸惑い始めるマキナ。
マキナ「戦ってはいけない。戦わなくていい。傷つけなくていい。傷つかないから、いい。それは、とても喜ばしいこと。なのに……今のアナタ自身の感情は、分からない……」
翔「……。」
黙っていた翔だったが、ここで口を開いた。
翔「…お前の言ってることは一理ある。戦う必要はない、だから傷つかない……確かに、それは良いことだ。だが……戦いを奪われたアイツらの感情はどうだ?喜ばしいどころか、むしろ……『存在意義』を奪われたことに対する怒りや戸惑いが渦巻いている。安心なんて、できるかよ……」
マキナ「…そう……アナタのその感情も、言ってることも、間違ってはいない。」
翔「いくら間違ってなくとも、アイツらの感情が変わることは無い。アイツらは--」
マキナ「…慣れるわ。」
翔「…?」
マキナの呟きに、言葉を止める翔。
マキナ「慣れます。いまはただ、戸惑っているだけ。遊んでいたおもちゃを取り上げられて、泣いているだけ。すぐに、それが『普通』になる。戦わない日常が…」
翔「……。」
マキナ「だから…アナタは何も、間違ってはいないわ。」
翔「…どうだか。」
マキナ「安心して……安堵して……」
翔「……。」
マキナの言葉を聞いた翔は……
翔「他人事みてぇに言ってんじゃねぇよ…!」
と、マキナに怒った。
その頃、ミサキは……
夜の公園に、一人でいた。
ミサキ「うまくいっていたの。」
誰もいない公園で、独り言を呟くミサキ。
ミサキ「…今までは、うまくいっていたの。
…体は動く。
強くなってる。
翔さんが『新しい存在意義を探せば良い』と言ってくれた……
けど……
今の私には戦いしかない。」
彼女の声は、僅かながら震えていた。
ミサキ「戦いがなくなったら----
きっと、私は壊れてしまう。」
ミサキの目からは、涙が溢れ始める。
ミサキ「怖い----怖い--------助けて、助けてよ。
やっぱり、私じゃダメだったよ。
貴女がいないと、私はダメだよ。
だから助けて。助けて----」
----チヒロ。
いかがでしたか?今回はここまでです。
戦場が奪われたことにより、混乱し始めるDolls。翔までも不安に飲み込まれそうになっていた。
次回も、お楽しみに