〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』 作:やさぐれショウ
数十分後、ライブ会場に着いた一同。
アヤ「…いつもながらの満員御礼ね。うれしいわね、こんな時でも。」
会場は、Dollsのパフォーマンスを楽しみにしている客でいっぱいだ。
レイナ「…それだけ人々は忘れたいのよ。」
ヒヨ「悲しいこと……たくさんあったから……」
ヒヨが言うように、悲惨な事件があったことで……墨田区民のほとんどが、心に深い傷を負っているのだ。
ヒヨ「でも……ううん、だからこそ!ヒヨたちが元気をあげなきゃ!」
ヒヨの言葉に、メンバー達(一部を除く)の表情が明るくなる。
レイナ「美しい心がけね。」
サクラ「私たちが助けられなかった人たち……せめて、残された人たちの心を少しでも軽くしてあげられるのなら--」
シオリ「頑張る甲斐、ありますよね。」
シオリの言葉に、笑顔を見せるサクラ。
サクラ「はい!」
ナナミ「…とはいえ、ハードなライブ構成。いつも以上に連携が必要なステージです。今の精神状態でうまくいくんでしょうかね…」
ナナミの言っていることは最もだ。今のメンバー達の精神状態は不安定である。
ヒヨ「だ、大丈夫だよ!ねっ!みんな!」
ヒヨはそう言うが、
ミサキ「……。」
ヤマダ「……。」
大丈夫だという保証はどこにもない。
ユキ「はい……」
ユキは渇いた声で、返事をした。
翔「……。」
今の翔にできることは……ただ、彼女達を信じることだけだった。
「あっ、みんなー!」
その時、どこからか聞き覚えのある声が聞こえてきた。
ヒヨ「ひよっ!?ルリちゃん!」
声の主はルリであり、会場の出入口から出て来て、こちらに向かってくる。
ヒヨ「きてくれたんだねー!」
ルリ「うん!お姉ちゃんたちの新曲、初披露だもん!」
ルリの言葉と無邪気な笑顔は、Dollsに元気を与えるには充分だった。
ルリ「ルリ!一生懸命、応援する!」
アヤ「ありがとね!私たち、頑張るからね。」
ルリ「うん!じゃあ、また後でね!」
ルリはそう言うと、会場に戻っていった。
サクラ「またルリちゃんに元気、もらっちゃったな。」
アヤ「そうだね。くよくよしてらんないね。」
翔「…お前達。観客の想いを、ルリちゃんの想いを……決して無駄にするなよ?」
メンバー「「「はいっ!」」」
ライブ開催まで、後少し……
サクラ「…もうすぐ時間ですね。私たちも移動しましょう。」
その後、一同は会場に入り、ステージ裏にある控え場所へと足を運んだ。
サクラ「いよいよ、開演ですね…」
アヤ「ライブ自体は1時間ちょっとだからね。幕が上がればあっという間よ。」
ライブ開催まで、後数十分である。
レイナ「そろそろ、ウォームアップを始めるわよ。みんな、集まって。」
レイナはメンバー達に号令をかける。
ナナミ「ほら、ヤマダさん!いい加減ログオフしてください!」
ナナミはパソコンを弄るヤマダに言う。
ヤマダ「あーもう、いいとこだったのに…」
ヤマダは文句を言いつつも、パソコンをログオフした。
シオリ「ミサキさん…準備はいいですか?」
ミサキ「……。」
シオリの問い掛けに、ミサキは黙ったままだった。
シオリ「ミサキさん……?」
ミサキ「っ!!……ああ、ごめんなさい。少し考え事をしてたの。」
サクラ「ミサキさん……」
そんなミサキを、サクラとシオリは心配していた。その時……
カナ「た、大変です、翔君!」
慌てた様子のカナがやって来た。
翔「どうした!?」
カナ「ドールハウスから緊急連絡が…」
翔「何?」
カナ「会場付近で、ピグマリオン反応が検出されたとのことです!」
翔「くそっ、こんな時に…!」
何と、ライブ会場の近くにピグマリオンが現れたのだ。
ミサキ「……!」
翔「害特の連中は何をしているんだ!?」
カナ「害特に出動要請をかけましたが、到着までは時間がかかるみたいで--どうしたら……」
カナは困ってしまう。
翔(何で会場付近に害特を待機させねぇんだよ…無能政府共め…!!)
政府の対応に、翔はますます不信を感じていた。そんな中……
ヤマダ「キタッ、キタキタキターッ!」
突如声をあげるヤマダ。そして……
ヤマダ「決まってるじゃないっすか!討伐1択っすよ!」
ヤマダの言葉に、
カナ「ダ、ダメですよ!戦闘行為は禁止ですから!」
カナはヤマダに注意する。
ミサキ「では、見殺しにするのですか!」
カナに抗議するミサキ。
カナ「そ、それは……」
言葉を詰まらせたカナを見た翔は……
翔「躊躇ってる場合か!害特の連中がやらねぇんなら、俺がやる!」
と、ピグマリオン討伐に向かおうとする。
カナ「で、ですが…!」
翔「じゃあどぉすんだよ!?」
ミサキ「止めても無駄です。…行くわよ、ヤマダ。」
ヤマダ「アイアイサー!」
翔とカナが言い争っている隙に、ミサキとヤマダは行ってしまう。
カナ「ちょ、ちょっと!」
翔「あっ!コラ、待て!…南田さん、俺たちも行く!」
どうしようもないことを察したカナは……
カナ「……やむを得ません。斑目さんにも緊急事態として連絡しておきます。」
急遽、斑目に連絡を取ることにした。
レイナ「もうめちゃくちゃ…!美しくない展開だわ…」
サクラ「自衛隊のみなさんが来れないなら、ほうっておけませんよ!」
アヤ「ああ、もう!何なのよ!みんな、いくわよ!」
自衛隊の対応にイラつきながらも、出撃していくDollsと翔。カナはやむを得ないということで、斑目に連絡を入れた。そして、万が一怪我人が出た時のために、深雪と蜜璃にはここで待機するようにと、カナは指示を出した。
いかがでしたか?今回はここまでです。
狂い始めた歯車は……ゆっくり、確実に…少しずつ、狂っていく方向へと進んでいた。
次回も、お楽しみに