〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』 作:やさぐれショウ
結局、翔はミニライブを見ることは無かった。翔が戻って来ないことを心配する残りのメンバー達……しかし、彼女達にはまだやるべきことがあった。そこで見た物とは……
では、本編へどうぞ
時は少し戻って……ライブが無事に終了し、身体を休めるメンバー達だが……
ヒヨ「翔さん、来ないね……」
サクラ「歌いながら、観客席を探しましたが…翔さんはいませんでした……」
ナナミ「一体、どこをつき歩いているんでしょうか……?」
翔が戻って来ないため、不安が大きくなる。
V「ごめんなさい…お兄さんを任されたのに……」
Vがそう言うと…
アヤ「V、翔はどうしたの!?」
と、アヤが尋ねた。
V「お兄さんに、会場に戻るよう告げられたの…私じゃ、ザモナスとゾンジスに敵わないからって……」
アヤ「……そう。それは、翔の判断なのね?」
V「…うん。」
Vの話を聞いたアヤは、それっきり何も聞いて来なかった。そこに、
斑目「ライブ、ご苦労だった。」
斑目とカナがやって来た。その理由は……
斑目「今回のライブで収集したフィールを届けるよう、小鳥遊大臣から要請があった。」
集めたフィールを、害特に届けるためだ。
斑目「会場から北東方面に進んだ地点に、自衛隊のバンカーがある。ただちにそこへ向かうぞ。今回は、私も同行する。」
シオリ「ライブの余韻にも浸らせてくれないのですね。」
ナナミ「…まったく、人使いの荒いことで。」
ライブが終わってすぐのことであるため、軽く不満を言うシオリとナナミ。
レイナ「シレーヌを倒すためよ。…私たちはやれることはやったわ。」
斑目「3バカにはこちらから連絡を入れておく。……?」
何やら辺りを見渡す斑目。
斑目「…おい、青空はどうした?」
カナ「それが、ライブ会場に来ていないみたいなので…深雪さんと蜜璃さんが探しに行きました。」
斑目「……そうか。」
斑目(こんな時に…青空がいないのは痛いな……)
翔がこの場にいないことを知った斑目は、思わず右手で頭を抱えた。数十分待ってみても、翔は戻って来なかったので……メンバー達はそのまま自衛隊のバンカーへ向かうことにした。
翔 side……
その頃、翔は……
XとY、妖魔たちとの戦いを終えたのだが……ボロボロの状態だった。2人のアバドンから手当てを受け、身体を休めていたが……ライブ会場に戻ろうとしなかった。
翔「……。」
翔(…そういや、通信機……ぶっ壊しちまったんだよな…)
今の彼の手元には、通信機が無いため…ドールハウスの関係者と連絡が取れない。しかし……
ヴーッ…ヴーッ……
スマホは手元にあった。画面を見ると、『斑目 セツナ』と表記されている。コールボタンをタッチし、スピーカーモードに切り換える。
斑目『斑目だ、青空。』
スマホからは斑目の声が聞こえてくる。翔は言葉を発することなく、黙っていた。
斑目『我々はこの後、北東方面に進んだ地点にある自衛隊のバンカーへ向かう。』
翔「……。」ハァ…
翔はため息を着くと、通信を切った。その後、翔を探しに来た深雪と蜜璃と合流……コーヒーを飲みながら会話をしていた。
そして現在……コーヒーを飲み終えた翔は、
翔「斑目さんらが、北東方面にある自衛隊のバンカーに行ったんだとよ。」
と、深雪と蜜璃に言う。
深雪「私たちも行ってみますか?」
翔「そうしたくてもよぉ…こっから徒歩で行くと時間がかかるだろ?」
蜜璃「うーん…あ、そうだ。ベルトさんに来てもらおうか。」
蜜璃はそう言うと、クリム・スタインベルトに連絡を入れる。連絡を入れて十数分後……上空からトライドロンと思われる物体がゆっくりと降りてきて、吊るしていたジャングレイダーをゆっくりと地上に下ろした。その後、トライドロン(?)もゆっくりと地上に降りてきた。
蜜璃「ありがとう、ベルトさん!」
クリム「全く…『ブースタートライドロン』をこれに使うとは……考えたものだ。」汗
『ブースタートライドロン』……それは、トライドロンに赤と青の2台の『ライドブースター』が合体した姿である。機銃等の武装に、高速飛行能力を持っている。2台のライドブースターはトライドロンから分離すると、ドールハウスへと飛び去って行った。
クリム「翔、傷だらけじゃないか!」
トライドロンから降りたクリムは、翔の元に向かう。
翔「そんな事はどうでもいい……それより、ここから北東方面に進んだ地点に、自衛隊のバンカーがあるってよ。少し行ってみる。」
翔はジャングレイダーに乗ると、エンジンをかける。
深雪「私たちも行きましょう。」
蜜璃「うん、そうだね。」
深雪と蜜璃はクリムと共に、トライドロンに乗る。そして、自衛隊のバンカーを目指し、出発した。
翔 side OFF……
一方、自衛隊のバンカーに到着したDollsの6人と斑目とカナとV。
小鳥遊「…やあ、Dollsの諸君。ライブの開催、ご苦労だった。」
彼らを歓迎し、労いの言葉をかける小鳥遊大臣。
シオリ「…ありがとうございます。」
シオリは小鳥遊大臣にお礼を言うと……
シオリ「小鳥遊大臣や害特の皆様も、いらしてくださればよかったのに。」
と、ジト目を向ける。
アヤ「そうよ!偉そうにする割りに、大事な時に来ないんだから!」
アヤは小鳥遊大臣に文句を言う。
アヤ「おかげでこっちはライブ前に、ピグマリオン討伐を--」
小鳥遊「ああ、その件についてはすまないと思っている。ちょっと別件で取り込んでいてね。」
小鳥遊大臣の言葉に……
斑目「その間、私の命令でDollsの防衛出動を許可した。」
と、斑目は言う。
斑目「異論はないな?」
小鳥遊「もちろんだ。感謝こそあれ異論はないさ。」
小鳥遊大臣は斑目に言うと……
小鳥遊「さて、君たちに見せたいものがある。ついてきてくれ。」
と、メンバー達を奥に案内する。
ヒヨ「……。」
メンバー達は黙って彼についていく。そこで、彼女達が見た物は……
斑目「これは--」
小鳥遊「試験型オートギア『
通常のオートギアより大きく、真っ白な色、足やフェイスには『試作機』という文字がかかれているオートギアだった。『EXAM』…それが、このオートギアの名称である。
小鳥遊「この試運転に人員を割いていたせいで、ピグマリオン駆除が後手に回ってしまった。」
どうやら、害特が来られなかったのは…このオートギアが原因だそうだ。
小鳥遊「だが…その意味は十分ある、すばらしい試験結果が出たよ。」
口角を上げる小鳥遊大臣。
ナナミ「1000m…ということは、上空のシレーヌにも十分届きますね。」
小鳥遊「その通り。EXAMを実戦投入すれば、シレーヌを撃ち落とすことができる。」
このEXAMを実戦投入することで、シレーヌに勝てると言うなれば小鳥遊大臣。だが…メリットばかりではない。
小鳥遊「それだけの威力の兵器。発射にはそれなりの代償が求められる。」
その代償……つまり、デメリットとは……
レイナ「この高射砲を撃つためには、『桁違いに膨大なフィールが必要。』…ということね。」
小鳥遊「理解が早くて助かる。」
通常のオートギアに必要なフィールよりも…遥かに多いフィールが必要なのだ。オートギアの動力源はフィールであり、このEXAMもフィールで動いている。
小鳥遊「どうかな。…わかったんじゃないか?君たちDollsの重要さが。」
小鳥遊大臣の説明に、メンバー達は……終始、黙ったままだった。
小鳥遊「君たちほど効率的に大量のフィールを回収できる者はいない。駆除のような泥仕事は、心の無い機械に任せておくべきだ。」
メンバー「「「……。」」」
小鳥遊「君たちは美しい舞台でスポットライトと称賛を浴び--フィールを回収していればいい。」
小鳥遊大臣の言葉を言い換えると……
『戦場には…お前達の出る幕は無い。』
と言える。
アヤ「なーんか、気にくわない。」
サクラ「アヤさん……」
アヤ「だってそうじゃん。」
アヤは言う。それは……
アヤ「結局、ヤマダが言ってた通り、フィール回収ドレイってことだよ。」
ヤマダが言っていたことと、全く同じことだった。
サクラ「ファンのみんなの感動が…兵器の動力に使われるなんて……」
アヤの言葉に、サクラも害特の不信感を感じ始める。
斑目「……ひとまず、約束は約束だ。今回のライブで集めたフィールを提供する。」
斑目は重い空気の中、6人となったDollsが集めたフィールを小鳥遊大臣に渡した。
小鳥遊「……おかしいな。これで、全てかい?」
少し困惑する小鳥遊大臣。
ヒヨ「ほよ……これでぜんぶだよ!ヒヨ、自分で使っちゃったりしてないよー!?」
小鳥遊「……。」
ヒヨの言葉に嘘は無いと感じた小鳥遊大臣は……
小鳥遊「フィール総量が、予想値を大幅に下回っている。」
…と、言う。
小鳥遊「観客動員数、ライブ時間、盛り上がり。全ての数値が予想よりも高水準だったのだが…
……3名が欠けたせいか。」
斑目「否定はしない。」
現在、Dollsは6人……本来、9人いるのだが…その内の3人がDollsからほぼ脱退している状態なのだ。そのため、あまりフィールを得られなかったのだった。
小鳥遊「何もかもが急だったからな。仕方ないさ。」
だが、害特にはまだ打つ手はある。
小鳥遊「こちらの予備をあてがうよ。」
害特の隊員達の中には、楽器を演奏したり、手品をする等の特技をもったいな者達もいる。被災者が避難している避難場所で、それらを披露することで……僅かながらも、フィールを得られていたのだ。
小鳥遊「ご苦労様だった。今日は速やかに、帰還してくれ。」
V「……。」
メンバー達は、自衛隊のバンカーを去り、ドールハウスへと戻っていった。
その頃、例の3人組は……
辺りが暗くなっても、巡回を続け…現れたピグマリオンを狩っていた。斑目の連絡を無視して、ただひたすら……戦っていた。
ミサキ「……。」
ヤマダ「……。」
終始、空気が重く…3人での会話は殆ど無い。
ヤマダ「あーあ、つまんねっすなー……」
ミサキ「…つまらないって、何が?」
ミサキの問いかけに、
ヤマダ「そりゃ、ピグマリオンがいねーからっすよ。ましてや、妖魔もいないですし。」
と、ヤマダは答える。この周辺のピグマリオン及び妖魔は、彼女達が狩り尽くしていた。
ユキ「全部、狩り尽くしました…」
敵が殲滅し、スマホで暇を潰していたこともあったが…
ヤマダ「スマホも充電切れちまったし暇だなー、やることないなー。」
そのスマホも、とうとう充電が切れてしまったのだ。そのため、ヤマダは終始退屈そうにしていた。そして、彼女が出した答えは……
ヤマダ「……よし!仕方ないけど、帰るっすかね!」
帰ることだった。
ユキ「…ドールハウスに?」
ヤマダ「まぁ、必然的にそーなりますね。ジブンの全財産、あそこで管理されてますから。」
ユキ「……。」
ヤマダ「なにせあのPCがねーと、スイスの隠し口座からの引き出しも--」
もちろん、ドールハウスにだ。しかし……
ミサキ「帰って、どうするの?」
ヤマダ「へ……?」
ミサキの問いかけに、ヤマダは困惑する。
ミサキ「帰って、またみんなと一緒にレッスンして、ライブして、お喋りして……」
ヤマダ「ネトゲして……」
ミサキ「それでいいの?それだけの存在なの?」
自分達の存在意義が分からなくなった今の彼女達は、ドールハウスに戻りづらかった。命令を無視して、ミニライブを放棄した……何より……
……翔との約束を破ってしまったからだ。
ミサキ「私は……Dollsは……なんのために……」
ユキ「……ミサキさん。」
ユキはミサキにかける言葉に迷ったが……
ユキ「……帰りましょう。ご飯を、食べましょう。わたし…お腹が空きました。」
…と、言葉をかけた。
ミサキ「……ユキ……」
ヤマダ「……。」
ここにいても、どうしようもないと感じた3人は……
ミサキ「…そう、ね。」
ユキ「……。」
ヤマダ「……。」
ミサキ「……帰り、ましょう。」
ドールハウスに戻るため、重い足を運んだのだった。
斑目らがバンカーから去って数十分後……
…グォオオオンッ!
…キキィッ!
バンカー前に、ジャングレイダーとトライドロンが到着した。
小鳥遊「…?」
隊員「な、何だ?あのバイク…」「あの車も、何だか変わった形だな……」
突如目の前に現れたジャングレイダーとトライドロンに、害特の隊員達は珍しい物を見たような目を向ける。すると、ジャングレイダーに乗っている人物はヘルメットを外し、ジャングレイダーから降りてこちらに歩いてくる。トライドロンからは、2人の人物が…更に、赤い目と口と思わしき光を放つ2足歩行の小さな物体が降りてこちらに歩いてくる。隊員達は警戒するが……歩いてくる人物がライトに照らされ、警戒心が解けた。
小鳥遊「…青空君。それに、胡蝶先生と七草先生も。」
歩いて来たのは、青空 翔と胡蝶 深雪、七草 蜜璃の3人とクリム・スタインベルトだった。バンカーの出入口で4人は足を止める。
翔「おい、ここで何をしている?」
翔が口を開いたと思ったら……
翔「お前らの対応がクソ
…と、害特に文句を言った。
小鳥遊「それについては申し訳ないと思っているよ。それと、君も知っていると思うが…防衛活動は禁止されていないんだ。」
翔「んなこたぁ関係ねぇんだよ!それと、申し訳ないで済めば警察なんて要らねぇよボケ!!」
小鳥遊大臣の言葉にものともせず、害特を罵倒する翔。
翔「ライブ会場付近に仮設施設を設置して、いつでも出撃できるようにするとか…何でそんな事もできねぇんだよ!!何で考えられねぇんだよ!!」
小鳥遊「ちょっと別件に取り組んでいたんだ。そのせいで、ピグマリオン駆除が後回しになってしまってね。」
小鳥遊大臣の言葉は、翔を怒り狂わせるのには十分過ぎた。
翔「別件?そのせいで化け物退治が後回し?……
……ふざけんじゃねぇよ!!」
翔の怒鳴り声がバンカー内に響き渡ったため、奥から他の隊員達が何事かと集まって来た。
小鳥遊「心配無い、来客が来ただけだ。」
小鳥遊大臣は集まって来た隊員達に声をかけた。
小鳥遊「少しついてきてくれ。」
そして、翔と深雪と蜜璃とクリムを、バンカーの奥へと案内した。
クリム「こ、これは一体……」
小鳥遊「試験型オートギア・EXAMさ。」
深雪「…EXAM、ですか?」
蜜璃「これで、シレーヌっていう敵を…やっつけられるんですか?」
小鳥遊「もちろん。EXAMには、射程距離1000mの高射砲を搭載している。そのため、上空にいるシレーヌを撃ち落とすことができる。つまり、EXAMを実戦投入すれば、勝利は確実だ。」
小鳥遊大臣は4人に言う。
翔「…そいつはどうかな?」
小鳥遊「…ん?」
ここで、翔は口を開いた。
翔「奴は進化し、生物を支配できるようになった……奴をぶっ潰すことは、そんな甘っちょろいモンじゃねぇだろ。」
小鳥遊「だからこそ、心の無い機械に任せれば良いだろう?」
小鳥遊大臣が翔にそう言うと……
翔「…その機械すらも、支配したりしてなぁ?」
と、翔は嫌みったらしく言い返した。
小鳥遊「……。」
隊員「「「……。」」」
翔の言葉に、小鳥遊大臣と自衛隊員達は黙り込んだ。それを見た翔は……
翔「……撤収だ。」
と、深雪と蜜璃とクリムに言う。
クリム「翔、もう帰るのか?」
翔「ここに居たって何になる?」
クリム「それは……」
翔「そもそも俺は、
翔はそう言うと、ジャングレイダーの方に歩いて行く。深雪、蜜璃、クリムもトライドロンに向かって行く。そして、ドールハウスに戻るべく、バンカーから走り去って行った。
小鳥遊「……。」
小鳥遊(青空君…君は一体……何者だと言うのかね…?)
いかがでしたか?今回はここまでです。
試験型オートギア『EXAM』…それは、宿敵『シレーヌ』を倒すために産まれた新兵器であった。
次回も、お楽しみに