〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』 作:やさぐれショウ
今回は、翔とレイナの回になります。
かつて(ドールになりたて)の彼女は、感情を失っており、無表情のままだった。通りかかる人々は彼女を気味悪がり、振り向いてはいたものの…“心から”振り向こうとはしなかった。そんな時……たった1人、心から彼女に振り向いた少年がいた。それは……『青空 翔』だった。
では、どうぞ
この物語は、サクラがDollsに加入し、翔がDollsに心を開く前の物語……
レイナ…彼女はDollsチームBのリーダーであり、Dolls全体のリーダーである。
レイナの過去……
ドールになりたてだった頃の彼女は、主に教会で讃美歌を歌う等の活動をしていた。だが…当時の彼女は、無表情のままだった……感情を失っていたのだ……そのため、通りかかる人々はそんな彼女を気味悪がり、振り向いてはいたものの…“心から”振り向こうとはしなかった。そんな人々を見て、彼女は悲しみに満ちていた。その時……
???「あの~…」
誰かが、彼女に話しかけてきた。レイナが振り向くと、そこには……優しそうな顔をした1人の少年が、心配そうにレイナの顔を覗き込んでいた。少年は、自己紹介をする。
翔「あ、まだ名乗ってませんでしたね。俺は『青空 翔』って言います。貴女は?」
レイナ「…レイナ。」
翔「レイナさんですか、素敵な名前ですね♪」
翔は笑顔を見せる。そして、世間話や自分の趣味等をレイナに話し始めた。その時…彼女に、思わず…笑みがこぼれた。この瞬間こそ、レイナが…感情を取り戻した瞬間である。
翔「あ、綺麗な笑顔ですね♪」
翔はレイナに言う。レイナは翔に笑顔を褒められたことを嬉しく思い、美しさを愛するようになり、自らも美しくいようと、努力をするようになった。そんな彼女の唯一の楽しみは、彼に会って何気ない会話をすることだった。
ある日、レイナはとある海浜公園で翔と会い、彼と会話をする。その時の彼の話に……彼女は凍りついた。
彼曰く……自分は両親から“虐待”を受けていた。両親は働きもせず、家事もしないし、自分を育てたりもせず、家事は全部、自分に押し付けていた…
父親はギャンブル好きであり、いい結果でない日は、“八つ当たり”という形で…自分に暴力を振るっていた。おまけに教育費等は、全部ギャンブル代として、使っていた。
母親は酒好きで、これでもかと言わんばかりに飲酒をし、少しでも気に入らないことがあれば、自分に暴力を振るっていた。父親と同じ“八つ当たり”で……しかも、教育費等は、全部酒代として使っていたのだ。
これらのことは、自分が3歳の頃…実の両親と死別した時に起こったことである。実は…実の両親を殺害した犯人は…自分に虐待をしていた“親”である。3歳の頃…自分は、実の両親が殺される瞬間を、無意識にシャッターで切り取ってしまった。
そして去年、高校に入学した頃…全ての証拠を持って警察署に向かい、被害届を提出した。両親はすぐに逮捕され、“無期懲役”となった。その時…両親は顔を鼻水と涙でグシャグシャにし、『今まで悪かった』、『助けて』、『許して』等、自分にすがり付いてきたが…自分はその両親を助けるつもりは、微塵もなかったため…両親を見捨てた。それ以来、その両親のことは全く分からない…。
レイナは翔の話を聞き、ショックを受けた。
翔「でも、今はもう…1人で頑張っているので、大丈夫です。」
翔は笑顔を見せるが…その笑顔は、悲しそうであった。彼はベンチから立ち上がり、去っていった。この時、レイナは彼を呼び止めることができなかった…。
その数日後…レイナは翔が亡くなる瞬間を、目の前で見てしまった。Dollsのメンバー1人を庇い、四つ足ロボットの光線を受けたのだ。
後日、彼の葬式が行われ、Dollsは漸く気づいた…
青空 翔…彼は誰よりも、自分達Dollsに“心から寄り添ってくれていた”…と、いうことに……
そして、後悔した……自分達は彼に、何もできなかった……、と……
レイナは、翔の遺体に向かうと…そこには、Dollsのメンバーの1人、『ミサキ』がいた。
ミサキ「…翔さん!……ごめんなさい…!」
ミサキはその場にへたりこみ、泣いていた。そして、ヌケガラとなった彼に、何度も「ごめんなさい」、と謝罪をしていた。
ドールハウスに戻った後……
「ミサキさん!何をしているんですか!?」
突然『シオリ』の声がしたため、レイナ達はミサキの部屋に向かう。そこには……痩せこけたミサキが、包丁を持って、自分を刺そうとしていた。
ミサキ「翔さんの元に、行くのよ…」
レイナは素早くミサキから包丁をはたき落とし、彼女の頬を叩いた。
レイナ「ミサキ!青空君が亡くなる直後、貴女に何て言っていたか、思い出しなさい!」
ミサキ「……貴女には、生きていて…欲しい…」
ミサキは、弱々しく言う。そして、力が抜けたようにベッドに座った。
レイナ「その通りよ!…貴女が死ぬことを、彼は望んでいないわ!貴女は、彼を裏切るつもりなの!?」
レイナは強い口調でミサキを叱りつけた後…
ギュッ!
ミサキ「…っ!?」
ミサキを優しく抱きしめ、
レイナ「今は、沢山泣きましょう……彼のために…ね?」
と、優しく言った。そういってすぐに、ミサキは…声を上げて泣いた。他のメンバー達も彼女の泣き声につられたのか…声を上げて泣き出した。
次の日、レイナは亡くなった翔の面影を探すように、とある海浜公園にやって来た。いつものベンチに向かうも、そこには誰もいない……。
レイナ(感情を失っていた私に、心から振り向いてくれたのは…青空君、いいえ…“翔君”だけ……翔君が振り向いてくれたから、今の私がある……なのに、私は…)ジワッ
レイナは、目に一杯涙を浮かべる。
レイナ(…翔君に、何もしてあげられなかった…!…翔君に、“ありがとう”と、言えなかった…!…あぁ、神様……もう一度、翔君に会わせてください…!)ポロポロ
レイナの目から、大粒の涙が零れ出し、そして……彼女は、声を上げて泣き出してしまった。通りかかるDollsファンはレイナに駆け寄り、精一杯彼女をなだめた。それでも彼女は……泣き止むことはなかった。
数時間泣いた彼女は、泣き疲れて眠ってしまった。そこに、ヒヨとナナミがやってきて、2人はドールハウスに連れて帰っていった。
レイナの過去 side OFF……
現在…ドールハウス、女子寮にて……
レイナはキッチンにいた。彼女は、料理をしているのだ。メンバー達は、そんな彼女を見て、驚いて声を失っていた。しかし、レイナはそんなメンバー達を気にせず、料理をする。
レイナ(確か翔君…肉料理が好きだったわね…でも、野菜も食べないと、ね。)
レイナは作った料理を、弁当箱に詰めていく。
レイナ(私の手料理…翔君にも是非、食べて欲しい…)
レイナは優しい笑顔を浮かべ、弁当箱を巾着袋で包んだ。そして、
レイナ「少し出掛けてくるわね。」
と、一言告げると、女子寮を出た。メンバー達は、ポカンとしていたが、
ヒヨ「ナナミン!レイナちゃんを“びこう”しよう!」
ナナミ「は、はい!」
ヒヨとナナミは、レイナの後を追った。
その頃、とある海浜公園にて……
翔「…。」
青空 翔がいた。彼は『仮面サイダー』を片手に、ウミネコ達を眺めていた。彼は、心に深い傷を抱えており、誰も信じられなくなってしまっている。そこに……
レイナ「…!…翔君…♪」
レイナがやって来た。
翔(…またDollsのメンバーか…)
翔は思った。レイナの方に振り向こうとはせず、ずっとウミネコ達を眺めている。
レイナ「隣に座っても、いいかしら?」
翔「…勝手にしろ。」
翔はレイナに冷たく放つ。レイナは翔の右隣に座った。
レイナ「翔君♪」
翔「…。」
レイナは翔に優しく話しかけるが、翔は彼女を無視している。
レイナ「実はね、お弁当を作って来たの♪」
レイナは巾着袋に包まれた弁当箱を取り出した。
翔「…?…。」
翔は目を向けたが、すぐにウミネコ達に目を向けた。レイナは巾着袋から弁当箱を取り出すと、フタを開け、箸箱と一緒に翔に渡す。
レイナ「このお弁当、翔君に食べて欲しいの…♪」
翔「…。」
翔はレイナの方に振り向く。彼女の弁当は、肉のオカズと野菜のオカズに、ご飯が入ったバランス弁当であった。
翔「…どういうつもりだ?」
翔は警戒して、レイナから弁当を受け取ろうとしない。
レイナ「深い理由はないわ。ただ、翔君にこのお弁当を食べて欲しい…それだけよ♪」
レイナは翔に言う。その時…
キュルルルル~…
翔(ヤベッ…)汗
翔のお腹が鳴った。
レイナ「ふふっ。お腹、空いていたのね。…翔君のためのお弁当、お楽しみあれ♪」
レイナはそう言って、優しく微笑んだ。
翔「……いただこう…」
レイナ「ふふっ、召し上がれ♪」
翔は平常心を保ちながらも、レイナから弁当を受け取った。そして、一口…二口と、レイナの手作り弁当をいただいていく。
レイナ「…どう、美味しい?」
レイナは翔に聞く。翔は箸を止めると、
翔「……悪くねぇ。」
と、ボソッと言った。翔は続ける。
翔「…お前、相当練習したんだろ……その傷だらけの手を見れば、すぐに分かる。」
翔はレイナの手を見て言う。彼女の手の至るところに絆創膏が貼ってあった。
レイナ「…翔君……良かった…♪」
レイナは聖母のような優しい笑顔を浮かべ…思わず、涙を流した。
翔は再び、レイナの手作り弁当を食べ始める。レイナはそんな翔を、優しく見守る。
ヒヨ「あ、翔さん…レイナちゃんの手料理を…」ヒソヒソ
ナナミ「でもヒヨさん…翔さん、レイナさんの手料理を「悪くない」って言ってましたよ。」ヒソヒソ
ヒヨ「ほえっ…?」ヒソヒソ
ナナミ「レイナさんの両手には、幾つもの絆創膏が貼られています。恐らく、料理を練習していた時に、手を切ってしまったのかと…」ヒソヒソ
ヒヨ「ほんとだ…だからレイナちゃん、ウトウトする日が続いていたんだね。」ヒソヒソ
ヒヨとナナミは、遠くから翔とレイナを見守り、レイナに気付かれないように、小声で話していた。すると…
ヒヨ「ねぇねぇ、ナナミン。あそこにいる人…」
ナナミ「確かに、いかにも怪しい人物ですね。」
ヒヨとナナミは、人気のなさそうな路地裏の辺りを見てみると…翔とレイナの様子を妬ましそうに見ている、1人の男がいた。2人は、レイナとその男に気付かれないように、行動を開始する。
B(んなっ!?青空の奴…レイナの手作り弁当だと!?)
Bは、人気のない路地裏の辺りから翔とレイナの様子を見ていた。
B(こちとら毎日コンビニ弁当だぞ!?アイツだけヒロインの手料理だなんて…ふざけやがって!)
Bは翔の元に向かおうとした。その時…
グイッ
B「!?」
後ろから首根っこを掴まれ、引っ張られる。Bはびっくりして後ろを振り返ると……そこには、ヒヨとナナミがいた。2人のハイライトは消えており、いかにも『怒っていますよ』オーラを出している。
ナナミ「何なんですか?さっきからコソコソコソコソと…」
B「っ!?そ、それは…」
ヒヨ「ひょっとして、翔さんがレイナちゃんの手料理を食べているのを見て、嫉妬しているんでしょ?」
B「…うっ!?」
ヒヨがそう言うと、Bの表情がみるみる青ざめていった。
ヒヨ「やっぱり、そうだったんだ…」
B「ち…違う…違うんだ…!」
ナナミ「本気で違うなら、わざわざ顔を青ざめる必要なんて無いですよね?」
B「…!!」
ナナミ「いつまで付きまとうんですか?…警察呼びますよ?」
ナナミはそう言うと、スマホを取り出した。Bはマズイと感じ、青ざめた表情のまま、逃げていった。
B(何でだ…何でアイツだけ!?)
翔「……ご馳走さん…」
レイナ「ふふっ、お粗末様でした♪」
翔は、レイナの手作り弁当を食べ終えていた。
レイナ「お弁当箱は私が洗うから、翔君は何も気にしなくても平気よ♪」
翔「…。」
翔は恐る恐る、弁当箱と箸箱をレイナに渡した。レイナは翔から弁当箱一式を受けとると、巾着袋で包んでいく。
レイナ「翔君、今日はありがとう♪また、作って来るから、楽しみにしていてね♪」
レイナはそう言うと、去っていった。
翔「…。」
翔(人の手料理…最後に食べたのは……俺が“裏切り者”達の隊長をつとめていた時だったな…)
翔はそう思い、サイダーを飲み干すとその場を去っていった。
いかがでしたか?今回はここまでです。
Dollsのメンバー、斑目、カナ、そして1人のオリキャラの番外編を書いてから、『仮面ライダーイクサ』の活躍を“番外編”という形で書こうと思っています。
ちなみに…本編にも登場させる予定です。
次回は、翔とヤマダの回になります。お楽しみに。
では、またね