〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』 作:やさぐれショウ
ここから、本格的に『Case 2(第1章)』に入って行きます。
では、本編へどうぞ
もうずいぶん前のことのように思える。
だが、過去と呼ぶにはあまりにも『アレ』は--
あの巨大な墓標の下に、幾つもの骸が眠っているのだろう。
数えることさえ許されない、有象無象の
それが、全ての始まりだ。
その犠牲の果てに--“彼女達”は目覚めた。
生きた人形だった少女たちは、失われた感情を取り戻しつつある。
唄い、踊り、戦い……
感情を燃やし戦場を戦い抜いている。
だからこそ----
隠匿すべきものだ。
切除すべきものだ。
唾棄すべきものだ。
この日の朝……
翔「……。」Zzz~……
翔は医務室のベッドで、ぐっすりと眠っていた。その時……
コンコンッ……
医務室の戸がノックされ…
『翔君?…翔君?』
戸の向こうから、翔を呼ぶ少女の声が聞こえてきた。それでも翔は起きることなく、眠っている。
翔「うーん……」
翔が布団に潜ると…
「失礼します、翔君。」
スー……
戸が開き、1人の少女が医務室に入ってきた。
翔「……んあ……?」
翔は目を開き、布団から顔を出した。
シオリ「きゃっ…!」
医務室に入ってきたのは、DollsチームAのリーダー『シオリ』だった。
シオリ「すみません、お休み中だったんですね…」
翔「…シオリか、どうした?」
ベッドから身体を起こし、目を擦りながら翔はシオリに尋ねる。
シオリ「あの、勝手に入ったわけではありません…!ノックをしてらお返事が返ってきたので、てっきりお目覚めなのかと…」
翔「…そうか。」
翔は布団から出てくると、ベッドに座った。
シオリ「あっ、翔君…松葉杖、どうぞ。」
翔「あぁ、ありがとう。」
シオリ「あ、あの、私…医務室前で待っていますね。支度ができたら、一緒に作戦室へ行きましょう。」
翔「分かった。なるべく急ぐ。」
翔はそう言うと、ベッドから立ち上がった。
シオリ「ふふ、集合時間までまだ時間がありますから。ゆっくりで大丈夫ですよ♪」
シオリはそう言うと、医務室から出た。
翔「…ふぅ。」
翔(さて、行くか。)
翔は松葉杖を使って、歩き始める。
シオリ「あの…!」
翔「っ!?」
医務室に急にシオリが入って来て、ビックリする翔。
シオリ「わわっ、ごめんなさい翔君!」アワアワ
翔「だ、大丈夫だ…!それより、どうした?」
シオリ「うっかり、本来の用件を忘れるところでした。昨日頼まれていた資料、まとめたんです。こちらに置いておきますから、目を通しておいてくださいね。」
そう言うと、シオリはまとめた資料をベッド近くの机に置いた。
翔「あぁ、分かった。」
シオリ「では、失礼します。」
資料を置いたシオリは、医務室から退室した。
翔(ビックリしたな……ま、眠気覚ましになったと思ってりゃ良いか……)
そう思うことにした翔は医務室を出て、シオリと共に作戦室へと向かった。
作戦室に入ると、Dollsは勿論…元ストライカー達やモシュネ達の姿があった。
シオリ「ふふ、みんな揃っているみたいですね♪」
翔「悪い、待たせちまったよな……」
少し申し訳なさそうに言う翔。
シオリ「大丈夫ですよ、集合時間には間に合いましたから。」
シオリは翔に微笑む。時計を見ると、集合時間の10分前であった。それを見た翔は、「良かった」と言うようにホッと一息をついた。
ヒヨ「翔さん、おっはよー♪今日もポカポカ、お日さまさんさんだよー!」
小春「おはようございます、隊長さん♪」
ヒヨと小春の挨拶に、翔は頷く。
ヤマダ「翔さんの顔が見れたなら、イベマラの手を止めて集合して良かったっすね。」
ナナミ「おはようございます、翔さん。寝グセがついてますよ?」
ヤマダとナナミは嬉しそうな笑顔を見せながら言う。ナナミの言葉を聞いた翔は、右手で自分の中の髪に軽く触れてみると……左右に寝癖ができてきた。
翔「みっともねぇとこ、見せちまったな……」
軽くため息をつく翔だが……
レイナ「MARVELOUS!そよ風になびくようなエアリー感あふれる寝グセ、とっても素敵よ、翔君♪」
翔「…そうか?」
レイナに褒められ、少しだけ戸惑った。
翠「そうだよ~、まるで妖精王みたいだね♪」
翔「それは言い過ぎだろ…」
翠にも褒められ、翔は苦笑いした。
アヤ「はいはい、そのへんにして!斑目さんが来るよー!」
アヤがそう言うと、場はすぐに静かになる。その後すぐに、作戦室のドアが開き……斑目、カナ、愛、深雪、蜜璃が入室した。
斑目「…よし、時間通りに全員揃ったな。では、会議を始めよう……と、その前に…」
メンバー「「「…?」」」
斑目は椅子を1つ持って来ると……
斑目「青空、ここに座るか?」
…と、翔に促す。
翔「…良いのか?」
斑目「ここまで来てくれたんだ…遠慮は要らない。」
斑目は翔に優しく微笑む。メンバー達一人一人の表情を伺う翔だが…メンバー達は皆、「遠慮しないで」と言うように、彼に優しい笑顔を向けている。
翔「…ありがとな。」
そして、翔は椅子に座った。翔が座ったタイミングで、会議が始まった。
斑目「まずはこれまでの作戦の成果だが--カナ、頼む。」
斑目の言葉に、カナは説明を始める。
カナ「渋谷区、豊島区に続き、対シレーヌ戦では墨田区の浄化に成功しました。これにより、東京を囲む…西、北、東の要所が浄化されたことになります。」
メンバー達がカナの説明に耳を傾ける中……
翔「……。」
翔(いくら浄化されたとは言え、それで「良かったな」って訳にはいかねぇだろうな……)
と、翔は思っていた。
カナ「ですが、この3地域に展開している害特から、気になる報告が上がってきているんです。」
翔(ほらな……)
カナの言葉を聞いた翔は、「やっぱりな」と言うような顔を見せる。
ミサキ「思わせぶりな言い方ですね。いったい、何が?」
ミサキの問い掛けに、斑目が答える。
斑目「ピグマリオンの、出現報告だ。」
ミサキ「……!!」
メンバー「「「……!!」」」
斑目の言葉に、ミサキだけでなく……メンバー全員がビックリする。
サクラ「そ、そんな…浄化した地域は、安全になるはずじゃ…」
サクラがそう言うと…
ユキ「…はぐれピグマリオンは、以前も浄化地域に出現していました。」
と、ユキが言う。
斑目「はぐれピグマリオンなら、片っ端から討伐すれば話は済むが…数、レベル、出現頻度。全ての観点から『狩り残し』とは考えがたいのだ。」
翔「…成る程。」
サクラ、ユキ、斑目の言葉を聞いた翔は…1つの推測を口にする。
翔「だとすると……まだ浄化されてねぇどこか別の場所から、化け物共が来ている可能性が
斑目「流石だな、青空。EsGも、同じ見解だ。」
どうやら、翔の推測は正解のようだった。
斑目「地表や上空の汚染濃度は、渋谷、池袋、墨田ともに一定以下に保たれている。」
翔「そうなると、流入ルートは地下。んで、発生源は--
……新宿、だろ?」
斑目「うむ。」
翔(東京には、地下鉄も多く通っている……となると、その路線から来ているんだろうな……)
この世界では、『新宿』は人々から忘れられている都市であるのだが……ごく一部の人間だけには、忘れられず…その記憶に残っているのだ。
蜜璃(翔君っ!すっごい推理力…カッコいい!!でも、確か新宿って……)
深雪(流石は翔君ですね。新宿はピグマリオン達の巣窟って聞いたことが……)
翔の推理力に関心する蜜璃と深雪は、新宿について聞いたことを思い出し始める。
カナ「皆さんもご存知の通り、ピグマリオンによる汚染が最も激しいのは新宿区。アタラクシアから無数のピグマリオンが地下をたどり、浄化地域に送り込まれている。これが、EsGの推測です。」
新宿は汚染度が最も高く…『ピグマリオンが生まれた場所』とも言われている。EsGと翔の推測では、『ピグマリオンの巣窟』と言われている『アタラクシア』から、地下を通って浄化された地域にピグマリオンが来ている…とのことだ。
斑目「ゆえに、次の作戦の調査地点は新宿の地下。」
今回の作戦の舞台となる場所は、新宿だ。それも、地下……
斑目「ほかの地域への流入ルートを潰し、アタラクシアを孤立させる。新宿包囲網の構築したためには、確実に遂行しておかねばならん作戦だ。」
ユキ「新宿…地下……」
斑目「アタラクシアの至近地域だ。準備は万端に整えて挑め。」
斑目の言葉に、緊張感を走らせるメンバー達。
カナ「まずはシミュレーターバトルでコンディションを確認してください。」
ヤマダ「ちょ、新ダンジョン前にしていまさら模擬戦っすか?」
ミサキ「早く討伐に向かった方がいいのでは?」
カナの言葉に疑問を抱くヤマダとミサキ。
カナ「ごめんなさい。作戦前に調査データがどうしても必要で……」
サクラ「調整データ……?何のことでしょう……」
カナ「後でちゃんと説明しますから。……ね、お願いします!」
シオリ「仕方ないですね。さ、みなさん、一緒に行きましょう?」
サクラ「はい!」
メンバー達は作戦室を出て、ある場所に移動する。
斑目「…シミュレーション、始まったか。」
カナ「はい。いま、モニターにリアルタイムデータを…」
モニターに表示されたデータを見る斑目。
斑目「……ふむ。皆、見事な数値だ。」
カナ「目標数値を突破しました。これで無事にロールアウトできますね。」
斑目「ファクトリーに連絡しろ。今回の作戦から使用する。」
カナ「はい、手配しますね!」
斑目「この短時間で、よくもここまで伸びるものだ。わからんものだな、人間というやつは。」
カナ「私も、数値を見るたびに驚きます。持って生まれた素質なんでしょうか。」
斑目「……。」
カナ「それとも、みんなのチームワーク?翔君の力も、きっと大きいですよね。」
斑目「持つ者と、持たざる者----」
カナ「え…?」
斑目の言葉に、困惑するカナ。
斑目「…ドールとしての素質にせよ、良い仲間に巡り会えた運にせよ、だ。
--Dollsは皆、持っている。」
カナ「でも、みんなはその分、過酷な運命を背負っています…!幸運だなんて、私には…」
そう言って、口角を下げるカナ。
斑目「……幸運なんだ。それでも、彼女らは----」
斑目はそう言うと、黙り込んでしまう。
カナ「斑目、さん……」
斑目「……いや、なんでもない。」
カナ「……。」
口角を下げ、悲しげな表情を見せるカナ。
彼女達は、一体……何を見てきたのだろうか……
いかがでしたか?今回はここまでです。
次回も、お楽しみに~