〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』   作:やさぐれショウ

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お久しぶりです。


第二百九十三話 約束

南国リゾートから戻った翔達は、ドールハウスにて通常の生活をすることに…帰って来て早々、作戦室に呼ばれたため、すぐに向かった。

 

斑目「よし、皆揃ったな。これよりデータ解析の共有を行う。」

 

全員揃ったかに見えたが……

 

ミサキ「揃っていません。シオリが不在です。」

 

シオリだけは、この場にいなかった。

 

翔(オンライン通話では元気そうな様子を見せていたが…本調子じゃなかったのかもな……)

 

シオリが不在であると知った翔は、思わず口角を下げる。

 

ミサキ「私たちは、何の説明も受けていません。まずは、シオリの容態の説明を。あの桁外れの戦闘能力…まさか、チヒロと同じ--」

 

斑目「それとは違う。シオリは無事だ。異常なしと検査結果が出ている。」

 

翔「なら、何故この場にいねぇんだ?」

 

斑目「先のシオリの状態は『Eモード』--『EXECUTION(エクスキューション)モード』だ。」

 

ダイダロスにて見せたシオリの戦い…あれは、彼女がEモードを経て覚醒した姿と考える斑目。

 

アヤ「い、イー、モード……?」

 

翔「何だよ、そのEXECUTIONモードってのは…?」

 

翔の質問に斑目は応える。

 

斑目「自己防衛のための意識のストッパーを外し、自身の中のみでエネルギー循環を成立させ--

 

フィールのエネルギーを加速することによってドレス強度や運動能力が大幅に上昇する。」

 

彼女の返答に反応を示したのは…Dolls屈指のゲーマー、ヤマダだ。

 

ヤマダ「おおおっ、つまり、リミッター解除の無敵モード!サイッコーじゃないすか!」

 

ヤマダの反応に、隣にいたアヤは呆れていた。

 

ヤマダ「アレ、ジブンらもできるんでショ?えっと…どうやるんだ……?」

 

斑目「やめろ。理論上可能だが……許可できない。」

 

DollsがEモードを発動するのを、斑目は拒否する。

 

ヤマダ「はぁ?そりゃ無課金ってわけじゃないでしょうけど、多少のデメリットで済むなら…」

 

翔「そうじゃねぇよ。」

 

ヤマダの言葉を遮った翔…幾つものライダーシステムを扱う彼は、知っていた。

 

 

翔「強大な力を出せる分、発動した者には多大な負荷が掛かる。そうだろ?」

 

 

斑目「青空の言う通り…そのデメリットが割に合わんからだ。」

 

数々のライダーシステム、リミッター解除等々…多彩な強化方法を見たり体験した翔。力が強くなれば強くなる程、使用者へ掛かる負担は大きくなる。最悪の場合…命を落とすこともある。Eモードでは、死に至るという言葉は出てきていないが…

 

斑目「Eモード発動は記憶の喪失を伴う。どこまで失われるかは…コントロールできない。」

 

記憶を失うリスクがあるというデメリットがある。だが、これはほんの1部に過ぎないらしい…

 

アヤ「え……!?じゃあシオリは…あたしたちのこと、忘れちゃってるの!?」

 

アヤは心配するも、斑目は説明を続ける。

 

斑目「今回、Eモードを実施していたのはそう長い時間ではない。失われる記憶は実施時間に比例したいた。今回の例では…そこまでは遡らないだろう。」

 

どうやら、この『Eモード』には…使う時間が長ければ長い程、記憶を失うそうである。今回、シオリのEモードは短時間の使用であったため…多くの記憶は失われなかったようだ。

 

レイナ「けれど、もしも記憶が全て失われていたら?『シオリ』が『シオリ』でなくなっていたら?」

 

斑目「ドールとして機能しないならば……

 

最悪、破棄の可能性すらある。

 

斑目がそう言った次の瞬間……

 

 

翔「ッ!!」ガタッ!!

 

 

ガシッ!!

 

斑目「ッ!?」

 

翔が彼女の胸ぐら掴んだ。その表情は、怒りに満ちていた。

 

 

翔「それ以上喋ったら…

 

…どうなるか分かってんだろうなぁ?

 

 

怒鳴りはしなかったものの、ドスの効いた低い声を出す翔。

 

愛「翔君、ちょっとこっちに行こう?」

 

彼は愛によって連れられ、作戦室から退室した。

 

ミサキ「破棄って……!なら、何故そんな危険なことを!?」

 

翔が去った後、ミサキは斑目に抗議した。

 

斑目「だから…お前たちには伝えていなかった。」

 

ミサキ「……っ!!」

 

何かを察したのか、黙り込むミサキ。

 

斑目「記憶を…メモリアを直接フィールに変換している。エネルギーの反動で身体への懸念もある。自己完結で戦闘遂行能力を担保できる利点はある。今回はテアトル展開に不測の事態があった。緊急回避の手段としてやむを得ない事もあるだろう。だが……それでも割のいい手ではない。」

 

斑目の説明が終わると、ミサキは再度抗議する。

 

ミサキ「どうしてシオリなんですか……!その理屈なら、私たちにだってーー」

 

斑目「加えて言うなら……『あれ』が彼女の役目だからだ。」

 

レイナ「どういうこと?役目っていうのは……」

 

困惑するメンバー達の前に、彼女が現れる。

 

 

シオリ「…役目だなんて、言い方がよくありませんね。」

 

 

それは、休んでいる筈のシオリだった。

 

ミサキ「シオリ……!」

 

シオリ「私にとっては、大事なお約束。そうでしょう?斑目さん。」

 

レイナ「目が覚めたの!?」

 

その時、作戦室のドアが乱暴に開かれ…翔が戻って来た。

 

翔「ッ!!…シオリ、お前…休んでなくて良いのか?」

 

シオリ「はい、大丈夫です♪」

 

彼女はいつものシオリであった。そんな彼女に、思わず固まってしまう翔。

 

シオリ「ダイダロスに向かった所までは覚えているんですが。」

 

メンバー「「「……。」」」

 

シオリ「びっくりしちゃいました。起きたら医務室のベッドの中で……」

 

翔「…もう良い。それ以上言うな……」

 

アヤ「ほんっともう…!あたしたち、どれだけ心配したか…!」

 

シオリ「すみません。でも、私は平気ですよ。」

 

心配するメンバー達に謝罪するシオリ。

 

 

シオリ「今のお話と私の状況を鑑みると…お約束は果たせたのでしょうか?

 

サクリファイス

 

は、殲滅できました?」

 

 

翔(サクリファイス…?)

 

斑目「その結論を出すのは早い。それにその呼称はーー」

 

シオリ「あら、それじゃあなんて呼びましょう?

 

イケニエちゃんにします?

 

いつものシオリだと思っていたが…何やら様子がおかしい。

 

ヒヨ「いけにえ……?」

 

シオリ「そう、私たちの前身といえば良いのかしら?」

 

斑目「……。」

 

翔「シオリ…気でも狂ったか?」

 

やっとのことで声を出す翔。彼も珍しく戸惑っている。

 

シオリ「いいえ、狂ってませんよ?」

 

翔「……。」

 

翔が黙り込むと、シオリは再び口を開き始める。

 

 

シオリ「それでは……昔話をしましょうか?まだここが、アイドル事務所じゃなかった頃の話。

 

『シオリ』が作られるために

 

犠牲になった女の子たちの話

 

いいですよね?斑目さん……それともご自分でーー」

 

 

翔「…どういうことだ!?お前が作られる為に、犠牲になった奴らって……」

 

斑目「……構わん。シオリの言葉で伝えたいのならばな……」

 

戸惑う翔を尻目に、斑目はシオリの背中を押す。

 

シオリ「……。」

 

少しの沈黙の後、シオリはゆっくりと語り始める。

 

 

……昔々、あるところに1人の可愛い女の子がおりました。

 

女の子は死にかけていましたが、神様の奇跡…ギアを胸に入れ、生きながらえたのです。

 

女の子は奇跡の力で恐ろしい悪魔を打ち払いました。今まで誰も倒せなかった悪魔を…

 

でも力を使い切った女の子は、長い眠りについてしまった。

 

女の子は、いつまでたっても目が覚めません。これでは『悪魔』を倒せない。

 

 

彼女が一通り語ると、ユキが反応を示した。

 

ユキ「……!それは……わたし……?」

 

翔「…は?」

 

ユキの言葉に、戸惑う翔。シオリは続ける。

 

 

国のえらい人たちは考えました……

 

『どうすればこの奇跡をもう一度起こせるだろう。』

 

そうして、国中の年頃の女の子が集められ…

 

ギアを胸に入れる

 

残酷な実験が始まりました。

 

翔「…な、何だと…!?」

 

冷や汗をかき始める翔。シオリの話は、まだ終わらない。

 

 

だけど皆、ギアが胸に入りません。

 

みぃんな胸をかきむしって、のたうち回って…

 

色んな穴から血を吹いて死んでしまいました。

 

翔「……!!」

 

サクラ「そ、それって……」

 

 

この実験は

 

多くの犠牲者を出しました。

 

その実験でただ一人、ギアの適合を果たした成功例ーー

 

 

それが『シオリ』

 

この私です。

 

 

翔「…そういうことか……」

 

彼女の話を聞き、全てを理解した翔。

 

つまり…ドールであるシオリは、漸く誕生するまでに多くの犠牲者を出したのだ。それは、国が公認した狂った実験。これを経て、ドール達が次々と誕生…現在に至っているのだ。

 

斑目「その実験で犠牲になったものたちは肉塊となり、フィールを求め貪る亡者となった。」

 

そして、シオリが言うサクリファイスとは……

 

 

翔「その狂った実験で死んだ奴らが、サクリファイスの正体だってのか……」

 

斑目「あぁ…悪趣味な名だ……」

 

 

ドールを生み出す為の実験で命を落とした者達だっだ。

 

斑目「地下鉄に現れた、あの異形ーー地下に投棄されたサクリファイスの遺体が、アタラクシアの影響により再び命を持ったのだろう…」

 

翔「…死体遺棄じゃねぇか、クソが……」

 

サクラ「あれは……ヒトだったんですか……?そんなの……ひどい…!斑目さんは……その非道的な実験を知っててーー?」

 

斑目「私が気づいたのはその『成功』の後だった。実験は…費用対効果を理由に凍結させた。EsG(エスジー)でドール適性を確認できるようになれば非道的手法を選ぶ必要もない、という体裁でな…」

 

サクラ「……そんな理由だなんて……」

 

斑目の言葉に、まだ納得いかないサクラ。それもそうだ…結局、国の身勝手な手法により、多大な犠牲が出た挙げ句……終いには死体を地下に放り捨てたのだ。

 

ヤマダ「ふひひ…さすがブラック国家。効率最優先で合理的っすなぁ…」

 

斑目「……この件を伝えられなかったのは、ひとえに私の感傷のせいだ。皆を動揺させたくなかった。犠牲になった少女らの存在で…」

 

翔「……。」

 

斑目の言葉に、何かを言いたげな顔を見せる翔だが…しばし黙っていた。

 

シオリ「……でも、こうなってしまってはみなさんにちゃんとお伝えしないと。」

 

すると、シオリがまたも口を開いた。

 

シオリ「私は『シオリ』。

 

2番目に確定されたドール。

 

そして1番最初に『着任』したドール

 

出来損ないのサクリファイスや壊れたお人形…

 

ピグマリオン殲滅を妨げるモノの処分実行…

 

 

それが私の役目…

 

わたしと国の『お約束』…

 

ドールの秩序維持と…

 

監視のため…

 

 

彼女の瞳は、赤く不気味な光を放っている。

 

ミサキ「なによ……それ…」

 

サクラ「シオリさんが……監視……?」

 

震える声を出し、動揺するミサキとサクラ。

 

シオリ「……。」フラッ…

 

全てを語り終えたシオリは、危うく倒れそうになる。

 

シオリ「……まだ少しよくないのかしら。医務室に戻ります。みなさん、また後ほど…」

 

そして、作戦室から退室した。メンバー達が解散し、それぞれの持ち場に戻って行った。

 

 

 

翔「……。」カツンッ……カツンッ……

 

杖をついて歩く翔は、終始無言だ。そんな彼の側には、愛がいる。

 

愛「…翔君。」

 

翔「…心配は要らねぇ……ちっと落ち着かねぇだけだ…」

 

愛「……。」

 

翔「…あんたも、知っていたのか?あの狂った実験のこと……」

 

愛「ううん、初耳だよ……あたし、あんなの信じたくない…」

 

翔「…俺もだ。」

 

そして、医務室へと到着した。翔とシオリの部屋は、別々となっている。

 

翔(全く…こんなクソみてぇな話を聞かされたら、寝られやしねぇよ……)

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