〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』 作:やさぐれショウ
これは、翔がまだ寝ていない昨夜の頃…
ドールハウスにて、Dollsは集まっていた。
ヒヨ「……わかんない、わかんないよ。」
あの狂った実験の話を聞かされ、落ち着ける筈もなく…
ヒヨ「シオリちゃんはヒヨたちの味方だよね?みんな、お友達だよね?ね?」
ナナミ「でも監視ってことはつまり…私たちの誰かが『壊れた』としたらーーサクリファイスとやらにそうしたように、あの大きな鎌を…」
サクラ「そんなこと…そんなはずありません!」
サクラが大声を上げ、ビックリするナナミ。
サクラ「シオリさんはいつだって、笑顔で優しくて、皆に気づかってくださって……」
サクラが言っていることは、ここにいるメンバー達が1番分かっている。
アヤ「それはみんなわかってるよ。いつものシオリがウソなわけない…!」
ユキ「わたしも…そう思います…シオリさんは…いつもわたしたちを…」
普段は自分の意見を言わないユキも、素直な思いを伝えている。
ヤマダ「見守ってくれてた…ってか…いや、見張っていたともいえるのか…?」
ユキ「……。」
しかし、ヤマダの言葉を聞き…すぐに黙り込んでしまう。
ヤマダ「ああ…思いだしてきた…少し前、いや…だいぶ前でしたね……リーパーたんにライブ会場までストーキングされたときでしたっけね…」
レイナ「覚えているわ…美しくない決断…ファンを犠牲にしようとした…」
ミサキ「……斑目所長はシオリに直接命じた。テアトルを閉じることを…」
かつて、翔が彼女達に心を開いたばかりの頃……Dollsのライブ会場に、リーパーというピグマリオンが現れた。斑目は最悪の決断をしようとしたが、翔がそれを阻止し、リーパーを撃破に成功し、最悪の未来は消された……
レイナ「それも…『約束』…?私たちが知らない……」
サクラ「……でも、それは!」
様々な考察が飛び交う中、メンバー達の元にシオリがやって来る。
シオリ「あら、皆さん。こんな遅くまで起きていてはいけませんよ。」
シオリの登場に驚くメンバー達。今、目の前にいるシオリは、いつものシオリだ。
シオリ「明日は早朝から検査でしょう?どうしてテアトルが展開できないのか、調べるって。」
いつの間にか展開出来なくなったテアトル…その理由は、解っていない。
アヤ「そ、そうね……」
レイナ「シオリ……」
目の前にいる彼女は、いつも通りのシオリ…メンバー達はそう思いたかった。サクリファイスとの遭遇…シオリの変貌…狂った実験の話……これらを知った今、彼女達は精神的に参ってしまっている。
ヒヨ「し、シオリちゃん!」
シオリ「なあに?ヒヨちゃん?」
思い切ってシオリに話し掛けようとしたヒヨだったが、言葉を詰まらせ…黙り込んでしまう。そして、出てきた言葉は…
ヒヨ「……おやすみなさい。」
寝る前の挨拶だった。
ナナミ「……私も、休ませていただきます。」
ヒヨの挨拶を引き金に、ナナミも自室へと入っていった。
シオリ「はい。ゆっくり休んでくださいね……」
メンバー達が各々自分の部屋に入っていく中、サクラとミサキはその場に残った。
シオリ「お二人は休まないのですか?」
サクラ「……。」
ミサキ「……。」
黙り込む2人、先に口を開いたのはサクラだった。
サクラ「私は……難しいことはわかりません。シオリさんが何を抱えて、どんな気持ちでいたかなんて…わかりません。でも、シオリさんがどんな人かは知っています。」
シオリ「あらあら……何のお話?」
サクラ「……あ、あの…言いたいことはそれだけです。おやすみなさい……」
言いたいことを言い終えたサクラも、自室へと入っていく。
シオリ「おやすみなさい、サクラさん。」
ミサキ「……サクラの言うとおりね。」
残ったミサキも、自身の思いをシオリに伝える。
ミサキ「何かあるなら、私たちに相談して。私たちは、3人で…チームなんだから。それじゃ、おやすみ。」
部屋に入っていくミサキ…残ったのは、シオリのみとなった。
シオリ「……そう。まだ……そう思ってくれるのね……
本当にいい子たち……
だからこそ、私は耐えられる。」
1人残った彼女の表情は、どこか悲しそうであった。
深雪「シオリさん……」
蜜璃「シオリちゃん……」
近くにいた深雪と蜜璃は、今のシオリに掛ける言葉が見つからず……ただ、彼女を見守ることしかできなかった。
シオリ「…この話は、おしまいです。私、今日は疲れちゃいました。深雪先生、蜜璃先生、おやすみなさい……」
そうして、シオリは自室へと入っていった。それを見届けた深雪と蜜璃は、寮を出て行き、医務室へと戻って行った。
『翔、こっちよ……』
『翔、来てくれないのね…今日はとっても疲れているみたい。』
『きっと……自分の世界を確立できない可哀想な人形たちが心配なのね。』
『安心して。私がいるわ…』