〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』   作:やさぐれショウ

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第二百九十八話 瘴気

翌日、Dolls達は事務所に集まっていた。

 

アヤ「ねぇ、作戦室じゃなくてまた事務所に集合ってコトは……」

 

ヤマダ「出だしからしてイヤな予感しかしないっすな。……お。」

 

その時、事務所にシオリが入って来た。

 

シオリ「皆さん、おはようございます♪」

 

今の彼女は、いつものシオリである。今のところは……

 

アヤ「…オハヨ。」

 

レイナ「……お早う、シオリ。」

 

いつも通りである筈のシオリなのだが、メンバー達はいつも通り接することができなかった。そこに、カナがやって来る。

 

カナ「皆さん、集合ありがとうございます。短い休暇でしたが、ちゃんとお休みできましたか?」

 

ミサキ「…休暇というより、身体検査ばかりだったと思うけど。」

 

サクラ「そうですね…結果はどうだったんでしょう…」

 

地下迷宮では、どういうわけかテアトルが展開出来なくなった。それがあってから、Dollsは身体検査をよく受けさせられることになった。しかし、どんなに検査を受けても…原因は未だ解明されていない。

 

ミサキ「体調に問題はない。早く本来の活動に復帰すべきだと思いますが。」

 

翔「待て、そんなに焦る必要はねぇ。」

 

そこに、翔と彩羽が入って来た。

 

カナ「翔君…また無断で外出して……」

 

翔「文句を言われる筋合いはねぇ…俺がどうしようと、俺の勝手だろうが……」

 

愛「あれ?翔君と彩羽ちゃん、なんか距離近くない?」

 

翔と彩羽の距離が、いつの間にか近くなっていることに驚く愛。信用していない者とは、かなりの距離を取る翔なのだが…彩羽の右隣に翔は居る。

 

翔「気のせいだ。まだ寝惚けてんじゃねぇのか、なぁ?」

 

彩羽「そうですよ愛先生、コーヒーでも飲みます?」

 

愛「…あ、えっと……今は、いいかな…?」汗

 

妙に距離が近い彼らに、珍しく困惑する愛。翔と彩羽との間に何があったのか、知っているのは彼らだけである。

 

翔「さてと…おい斑目さんよぉ、さっさと説明しやがれ。」

 

斑目「あぁ、承知した。」

 

斑目が事務所に入って来ると、Dollsに説明を始める。

 

斑目「テアトル展開の不可について、ファクトリーから解析結果が出た。」

 

どうやら、テアトル展開が不能となった原因が分かったようだ。

 

斑目「ダイダロス内の空気を覚えているな?」

 

ヒヨ「…うん。忘れられない…思い出しちゃう。」

 

レイナ「そうね…思い出すだけで、胸が悪くなるわ……」

 

迷宮ダイダロスでの出来事は、Dolls達がよく知っている。そのためか、メンバー全員の口角が下がる。

 

 

斑目「それはあの区域に漂う毒素。……瘴気が原因だ。」

 

 

ヒヨ「しょうき……?」

 

斑目「ダイダロス内のデータを分析したところ、極めて強い毒素が検出された。発生源はサクリファイス。無色無臭だが悪影響があるようだ。ドール達の感情−−フィールに、な。」

 

どうやら、サクリファイスが放つ瘴気が…テアトル展開が不可能となっている原因らしい。人体そのものには悪影響は無いが、Dolls達には悪影響があるそうだ。

 

レイナ「フィール……?なら、ギアの鍵穴…テアトルが展開できないのも?」

 

カナ「瘴気が原因…EsGの見解とも一致しました。」

 

ナナミ「では…愛さんだけが平気なのは?その瘴気とやらはドールだけに効くんですか?」

 

斑目「……そう結論している。」

 

やはり、人間には害は無く…

 

斑目「フィールを動力源としているドールに対しての『毒』だ。」

 

あくまでも、フィールを動力にして活動する者に対する毒であることが分かった。

 

愛「ねぇ、翔君は平気?」

 

翔「あぁ、何ともねぇぜ…?」

 

アマゾンである翔の人体にも、何の影響は無いようである。

 

シオリ「……瘴気……ですか。それは中和することはできないんですか?」

 

カナ「それは…解析が進めばあるいは……」

 

シオリの質問に対し、曖昧な返答をするカナ。今はまだ、明確な答えが分かっていないため、そうなってしまうのも仕方ない。

 

ミサキ「では、このギアの鍵穴は?私も、他のみんなも、ダイダロスを出た後も鍵は開かない…」

 

ヤマダ「このままずっと縛りプレイ続行はごカンベン…つまってるんならザバーッと洗浄とかさ…」

 

翔「それができたら苦労しねぇだろ…」

翔(くそ…困難去って、また困難か……こんな時、俺が戦えたら、少しは…)

 

怪我の治療の為、任務に行くことが難しくなった翔は…戦えないことにイライラしていた。夜、眠ることは無く…昼夜逆転の生活をしているため、目元にはクマができている。

 

斑目「……ファクトリーの見解はこうだ。」

 

ファクトリー曰く…

 

 

瘴気の蔓延するダイダロスと距離を置く事で

 

回復に向かう可能性がある

 

それ以上の予測は不可能

 

瘴気そのものの分析を続行する必要がある

 

 

…とのことだ。

 

翔「はっ…それこそ、それができりゃ苦労しねぇだろ……」

 

馬鹿馬鹿しいと言わんばかりに嗤う翔。

 

翔「口だけだったら何度でも言える…だが、今はそれどころじゃねぇ、そうだろ?なぁ?」

 

翔の言葉に、言い返す者は誰一人居なかった。

 

ナナミ「……すごーく好意的に見るなら、原因だけは分かった、ってことですかね。」

 

シオリ「瘴気……?」

 

ユキ「シオリさん……どうかしましたか?顔色が…よくないです…」

 

シオリの顔を見ると、何やら複雑そうな表情を浮かべている。

 

シオリ「あ、ごめんなさい。いえ、少し気になったもので……」

 

ナナミ「少々疑問に思ったことがあるのですが…」

 

ナナミは質問を投げ掛ける。

 

ナナミ「テアトルが人目を避けるためのものなら、地下鉄攻略の支障にはならないのでは?気分は悪いですけど…現状問題無さそうにみえるのですが。」

 

現在、Dollsは夜間任務中である。人々が眠りにつく時間帯に、地下迷宮に向かい、未知の脅威と戦っているのだ。

 

翔「…ソイツぁどうかな。」

 

ボソッと呟く翔。その後、斑目からの説明が始まる。

 

斑目「テアトルの役割は2つある。」

 

斑目曰く…テアトルの役割は……

 

 

人目を避けること

 

感情エネルギーを隔離すること

 

 

…の2つである。

 

ヒヨ「かんじょうエネルギーをかくり…?」

 

斑目の言葉に困惑するヒヨ。斑目は説明を続ける。

 

斑目「我々人間は、常にテアトルに似た結界を無意識に張っていると考えられている。雰囲気パーソナルスペースと呼ばれるものだ。テアトルとはそれを現界させたもの…自分だけの世界を構築し…そこに使用者と対象者を『隔離』する。そして外からは『その世界』は認識されなくなる。それが今分かっているテアトルの原理だ。」

 

斑目の説明が終わると、カナからの説明が始まる。

 

カナ「テアトルはエネルギーも隔離します。それは感情エネルギーも例外ではありません。もしも、テアトルがなければ皆さんの感情エネルギーは際限なく漏出(ろうしゅつ)します。」

 

ヒヨ「う…んと…?ちょっと…ヒヨわかんない…」

 

ナナミ「……今までと同じように戦うには、フィールを燃やし続けないといけない…しかも、際限なく追加しながら。…ってところでしょうか?」

 

ナナミの解釈を聞くと、斑目とカナの口角が下がる。

 

カナ「……そうなります。そのコントロールができないと−−最悪…」

 

生命維持に必要な最低限のフィールまで

 

消費し始めてしまう可能性があります。

 

テアトルが展開できるからこそ、余分にエネルギーを消費することなく戦えるのだ。それが無くなった今、Dollsは崖っぷちに立たされている。

 

サクラ「そんな……」

 

シオリ「……。」

 

斑目「下手に戦闘行為を繰り返せば、いずれは確実に、命を蝕むはずだ。」

 

テアトルが展開できなくなった今、安易に戦闘行為に走るのが難しくなってしまった。だが、救済処置はある。それは…仮面ライダーと呼ばれる兵器である。

 

カナ「万が一のため、仮面ライダーという兵器があるのですが……我々ドールハウスの兵器は、IXA(イクサ)のみ……それも、たった1つ……」

 

翔「そこにアマゾンである俺が加わり、2つ…バースXで3つ……一海達の介入で、龍騎とリュウガ、デューク、クリム・スタインベルトで7…Vから託されたディケイドで8……胡蝶さんと七草さんのアバドンで10…俺達がここに来なければ、兵器の確保が難しかったかもな……」

 

ピグマリオンとの戦闘では、ドールがメイン、仮面ライダーは補助という解釈がされている。だが、ライダーシステムを扱う翔達にとって、仮面ライダー=補助という考えではない。仮面ライダーもメインとして、未知の脅威を討ち滅ぼす存在と考えている。ドールハウスの戦力は、イクサのみ…そこに、翔達が入って来たことで…現在は10の兵器がある。深雪と蜜璃もライダーシステムを扱っているが、現在はアバドンのみ使用可能である。

 

翔「但し…仮面ライダーは誰もが変身できる訳じゃねぇ……システムが装着者に適合しねぇ限り、使用するのは不可能だ。」

 

仮面ライダーに変身するには、そのライダーシステムが使用者に適合することが最低条件である。ちゃんと適合しない限り、仮面ライダーに変身することはできないのだ。

 

ミサキ「…思った以上に深刻ですね。何か次の一手はあるのですか?」

 

ミサキの質問に、カナが答える。

 

カナ「現在、新しいプランを策定中です。その間に、シミュレーターを調整してもらいました。『テアトルを展開した状態』をシミュレートできるよう調整済みです。『テアトルを展開できない状態』も再現可能……こちらも比較に使えると思います。」

 

斑目「…テアトルはしばらくは使えない。その状況に慣らしておけ。」

 

こうして、会議は終わった、Dollsは訓練をするため、シミュレーションルームへと向かった。事務所に残ったのは、斑目、カナ、愛…そして、彩羽と翔の5人となった。深雪と蜜璃は、現在アマゾン細胞の研究をしている。Numbersはライダーマシンのメンテナンスを、元ストライカー達はモシュネと共に事務作業をしている。

 

カナ「それにしても…いつの間に、翔君と彩羽さんの距離が縮まりましたね。何か進歩があったんですか?」

 

翔「ほざけ、利用できるモンはとことん利用するだけ…俺は青空 彩羽を利用しているだけに決まってんだろ?」

 

斑目「彩羽と翔は名字が同じだからな…青空ではどちらが呼ばれているか混乱するだろう……これからは、『翔』と呼んでも構わないだろうか?」

 

翔「…好きにしろ。」

 

彩羽と翔は、同じ名字であるため…斑目は翔のことを下の名前で呼ぶようにした。それは、彩羽に対しても同じである。

 

愛「ねぇねぇ彩羽ちゃん、翔君と何かあったの?」

 

彩羽「ふふん、教えません♪ね、翔君?」

 

翔「あぁ…俺達が簡単に教えると思ったのか?めでてぇ頭だな。」

 

翔と彩羽は、事務所から去っていった。

 

カナ「ふふっ、翔君と彩羽さん…もしかしたら、信頼関係が構築され始めたのかもしれませんね。」

 

斑目「そうだな、良いことだ。」

 

愛「何があったんだろう…気になるな〜。」

 

そんな彼らを見たドールハウス3巨頭は、優しく微笑むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事務所から出て、2人で廊下を歩く翔と彩羽。

 

翔「姉貴も、こえぇ野郎が居たら俺に言え。とっちめてやるから。」

 

彩羽「あはは、その時はそうするね♪」

 

翔「さて、この後はリハビリをやる…」

 

彩羽「うん、あたしも協力する。」

 

翔「…助かる。」

 

今はただ、2人の時間になった時…翔は彩羽を姉と呼ぶ。いずれは、メンバー全員の前で姉と呼ぶことを願って……

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