〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』   作:やさぐれショウ

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第三百五話 違ったって良い

Dollsと話を終えた翔は、シオリを探して歩き回った。

 

翔(居ねぇな……)

 

しかし、どこを探しても彼女の姿は見当たらない。

 

翔(そういや、コイツを戻して来ねぇとな……)

 

短剣付きボウガンと短剣付き光線銃を持っていた翔は、ファクトリーへと向かう。

 

 

 

やがて、ファクトリー近くへとやって来た。

 

翔(さて、コイツらを元の場所に……ん?)

 

???「……いつまでそうやって騙すような言い方を続けるつもりなんですか?」

 

ファクトリーの中から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

翔(この声…シオリか?)

 

翔はファクトリーに入らず、隠れて聞き耳を立て始める。隠れながら、そっと覗くと……

 

翔(シオリ……と、斑目さんか?)

 

彼女らを怪しく思った翔は、顔を引っ込め…再び聞き耳を立てる。

 

 

シオリ「瘴気、だなんて。まるで実在するみたいな言い方で。」

 

斑目「その説明で過不足無く伝わる。概念としては…間違っていない。」

 

シオリ「そして、真実全てでもない、と…いつも大切な事は曖昧なまま。

 

あれは瘴気なんて、生易しいモノじゃありません。

 

あの子たち』がいったいなんなのか?言葉なんてなくても、心が先にわかってしまう。

 

 

心臓を取り上げられた肉の塊…

 

人形にすらなれなかった『なりそこない』…

 

 

一度は自分についていたギアを取り返そうと這い寄って来る…

 

あれは自分…そう、少し何かの歯車がずれていたら…ああなるのは自分だった、って。」

 

斑目「……思考が飛躍している。少し落ち着いたほうがいい。」

 

シオリ「飛躍ではありません。

 

これは“本能”です…

 

ドールにしかわからない恐怖…

 

絶望怨嗟(えんさ)嫉妬悔恨(かいこん)

 

毒の感情がドールの存在を否定する…

 

そんな中でテアトルを…自分の世界を肯定するなんて不可能です…!」

 

斑目「それが……お前までテアトルを展開できなくなった理由か?」

 

シオリ「私は……輝かしい時間の中で……

 

今までの『シオリ』を殺してしまった……

 

ーーでも、過去は逃してくれなかった。当然です。

 

もう私の手は血に濡れているのだから。

 

返り血を浴びた自分の姿を見てーー思ったんです。

 

やっぱり、私はみんなと違うって……

 

そんなことわかっていたのに……

 

わかっていたのに、胸が苦しくて……」

 

斑目「シオリ、落ち着け…」

 

シオリ「斑目さん。今回の作戦が終わったら……

 

 

私のギアを外してください。

 

 

翔「ッ!?」

翔(シオリ、お前…正気か?)

 

シオリと斑目との会話を聞いていた翔だったが、ギアを外すよう頼むシオリの發言に言葉を失う。

 

斑目「…なんだと。」

 

シオリ「こんな穢れた私ではなく、もっと相応しい子がDollsには必要です。ギアを失えば、私は世界から忘れ去られる。みんなは悲しむことさえない。それか…ピグマリオンに喰われれば同じように、私という存在を消すことがーーーー」

 

斑目「シオリ!!」

 

斑目が声を荒げたと同時に、ファクトリーのドアが乱暴に開かれる。 

 

 

ドゴォッ!!

 

 

斑目「ッ!?…し、翔…!!」

 

シオリ「……!」

 

そこには、眉間にシワを寄せた翔の姿があった。翔は乱暴に歩きながら、シオリに近付いていく。

 

斑目「翔、待て!!」

 

翔「俺に指図すんじゃねぇ…

 

翔の低くドスの効いた声に、斑目は思わず怯んでしまう。翔はシオリの近くで足を止めると…彼女に語り掛ける。

 

 

翔「ギアを抜いてくれ…?

 

自分より相応しい奴が必要…?

 

自分が死ねば忘れ去られる…?

 

皆は悲しむことはねぇ…?

 

 

お前…今、自分が何言ってんのか解ってんのか?

 

シオリ「……。」

 

翔「ふざけんじゃねぇ!!

 

何で自分自身を否定すんだよ!?

 

他の奴らと違って何が悪い!?

 

それでも…一緒に困難を乗り越えた仲間がいるんだろ!?

 

どんな時でも、お前を受け入れてくれる奴らがいるだろ!!

 

思い出してみろよ!!

 

喉が張り裂けるような怒鳴り声をあげ、シオリに語る翔。翔も他の…いや、人間とは違う存在……本能がままに行動し、タンパク質を求めるアマゾン(化け物)だ。初めは自分の存在を否定し、絶望のどん底にいた彼だったが…そんな彼を快く受け入れてくれたのが、Dolls達だったのだ。斑目もカナも、愛も…彼から溢れ出る不安、悪態、罵詈雑言、そして…存在そのものも含め、全てを受け入れた。彼女達が受け入れてくれたからこそ、翔は絶望から立ち上がることができた。だからこそ、前を向いて進めるようになった。

 

翔「違ったって構わねぇんだよ!!

 

人喰いの俺でもなぁ…

 

胸張って『居場所』だって言える場所が見つかったんだ!!

 

お前がありのままの俺を受け入れてくれたように…

 

俺はありのままのお前を受け入れる!!

 

それじゃダメか…!?」

 

シオリ「……。」

 

翔「シオリ、お前を否定する理由なんてねぇ!!だから……」

 

シオリ「理屈と感情は違いますよ……」

 

翔「…何?」

 

シオリは漸く、翔の方を向いたが…不安そうな顔は消えていない。目にはうっすらではあるが、涙が浮かんでいる。

 

シオリ「ごめんなさい。今は……冷静にはなれません……」

 

斑目「もう少し、仲間と話したらどうだ。お前は昔から背負い込みすぎだ。」

 

シオリに助言する斑目に……

 

翔「それができたら苦労しねぇだろ…」

 

…と、翔は言う。

 

シオリ「…いいの。みんなには、キレイなままでいてほしいから。」

 

斑目「ーーお前もよくよく、辛い道ばかり選ぶ。あの言い方では誤解を受けるぞ。」

 

シオリ「…いいえ、私…それでいいんです。それで幸せ…だから、お願い。

 

『約束』は、絶対に守って。

 

斑目「……わかっている。」

 

シオリ「では…失礼します……」

 

シオリは斑目と翔とのやり取りを終えると、ファクトリーから去っていく。

 

翔「待て、シオリ。」

 

去っていくシオリに、翔は言う。

 

 

翔「お前の好きにするのは構わねぇ…けどな……

 

お前が本気で大切に想う奴を…

 

悲しませるような真似だけは…

 

ぜってぇにするんじゃねぇぞ…以上だ。」

 

 

翔の言葉に返事をすることなく、シオリは去って行った。

 

斑目「…翔、いつから聞いていたんだ?」

 

翔「シオリが声を上げたところからだ…」

 

斑目「そうか…むしろ良かった…お前にシオリの本音を聞かせることができた。それと…私の代わりに、シオリに言ってくれてありがとう。」

 

翔「あんたじゃ当てにならねぇって思っただけだ…それに、シオリが死んだら悲しむってのは本気だぜ?俺はな……」

 

斑目と2人きりになった翔は、無表情を貫きながら言う。

 

斑目「…私は彼女に汚れ仕事を押しつけてきた。彼女を歪ませてしまった罪は私にある。」

 

翔「……。」

 

斑目「彼女の仕事は組織のためには必要で、誰かがやらなければならないことだったーー

 

ーーそう言い聞かせて来たが…お前が来てから、自信がなくなってきた。」

 

翔「何だと?責任擦り付けてんじゃねぇよ。」

 

再び眉間にシワを寄せる翔。

 

斑目「そんなつもりは無い…

 

私も“あの女”と同じで……何もかも、諦めていたのかもしれないーー」

 

翔「俺はシオリの元へ行く。今度は、しっかり向き合うって決めたんだ……」

 

斑目「翔……彼女を、頼む。」

 

翔「…任せておけ。」

 

そして…翔はファクトリーから出て、シオリの元へ向かった。

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