〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』   作:やさぐれショウ

392 / 551
第三百六話 罪と穢れ

その日の夜、翔はその足でシオリの元へ向かった。

 

ガチャッ……

 

寮に入り、リビングに行くと…シオリが1人で居た。

 

翔「…シオリ。」

 

シオリに声を掛ける翔。

 

シオリ「あら、翔君。こんなところで、どうされました?」

 

彼女はいつもの彼女であった。

 

翔「…すまない…さっきの話、全部聞いてた。」

 

シオリ「……!」

 

翔の言葉に驚いた顔をするシオリ…そして、翔に背を向ける。

 

 

シオリ「翔君。盗み聞きなんて、いい趣味ではありませんよ?」

 

 

 

翔に背を向けたまま、静かに言うシオリ。

 

翔「あんなこと…聞かねぇフリなんてできる訳ねぇだろ。」

 

シオリに言い返す翔。すると…シオリは……

 

 

シオリ「私に…これ以上構わないでください……

 

翔君……私は、人殺しなんです……

 

 

これ以上自分に構うなと言った。

 

翔「どういうことだ…?」

 

翔が問い掛けると、シオリはしばらく沈黙し…ゆっくりと語り始める。

 

シオリ「私に……まだ感情が芽生える前の話です。

 

ユキさんは長い眠りについていて、稼働できるドールは私だけでした。

 

ある日、私に出動命令が出ました。

 

その日は月がキレイな夜でした。月の光に隠れるようにーーーー」

 

彼女がいました。

 

翔「その彼女ってのは、どこのどいつだ…?」

 

シオリ「ーー名前はわかりません。あったのは…

 

18番

 

…という記号だけ。

 

ファイルには、ドールの適合手術の被検者…

 

そして、脱走者と書いてありました。」

 

翔(番号…被検体…脱走者……まるで、“あの実験”だ……)

 

シオリ「顔写真は何の役にも立ちませんでした。彼女は、もう……」

 

人の姿をしていませんでしたから

 

翔「ソイツは…サクリファイスなのか…?」

 

シオリ「……そうです。

 

 

処理区分は【A】…その場で、殺処分。

 

シオリ「だから、私はーー」

 

『シオリ』は彼女を殺しました。

 

翔「……。」

 

シオリの話を聞き、黙り込む翔。

 

翔(だからあぁやって言ってたのか…)

 

翔がそう思っていると、シオリは再び話し始める。

 

シオリ「…『シオリ』は何も感じませんでした。当たり前です。

 

感情がなかったのだから……

 

それからも、実験は続いていました…私をもう一人作るため……

 

でも、できなかった…新しいイケニエが産まれるだけだった…

 

しばらくして、斑目さんが帰ってきて…国土調査院は大きく変わりました。

 

非人道的な適合実験はなくなり……事前判定が…EsG(エスジー)による適合判定がなされるようになりました。

 

つまり、私はーー『シオリ』は……」

 

 

適合実験によって生まれた

 

唯一のドールなんです

 

 

最後のサクリファイス……という言い方も出来るかもしれません。」

 

翔「……。」

 

シオリ「あの子たち……サクリファイスは私を生み出すために、犠牲になったんです。

 

なんて罪深いのかしら……

 

感情を取り戻して、その事実に気づいた時…私、決めたんです。」

 

 

サクリファイスを殺すのはーー私。

 

血で汚れるのはーー私をだけ。

 

 

シオリ「Dollsの誰にも、こんな思いはさせないーー誰にも、私のような気持ちは抱かせない。」

 

翔「……。」

 

シオリ「私……Dollsが大好き。穢れた私に…夢を見せてくれる。温かいーー白昼夢(はくちゅうむ)のよう。

 

だから、絶対にDollsを守ってみせる。

 

あの子たちが見れなかった夢を……私たちの夢を……」

 

翔「……。」

 

シオリ「その邪魔をするなら……たとえ翔君だろうと許しません。」

 

翔「……。」

 

シオリの目は、冷たいモノだった。それを見た翔は、昔の自分と照らし合わせていた。

 

翔(俺もかつて…コイツらにこんな目を向けていたのか……俺だって、Dollsが好きだ。)

 

そう思っていると、シオリはハッとした表情を見せる。

 

シオリ「……ふふ、ちょっと話しすぎちゃいました♪」

 

翔「……。」

 

シオリ「翔君とお話していると…時間があっという間に経ってしまいますね。」

 

翔「…そうか。」

 

シオリ「……明日も早いです。私たちの日常ヲ守らないと……翔君も、早めに休んでくださいね?」

 

翔「…あぁ。」

 

シオリ「それでは…おやすみなさい。」

 

そして、シオリは自室へと戻って行った。

 

翔(自分が穢れているなんて…シオリ、お前がそんな事言ってんじゃねぇよ……むしろ、穢れてんのは俺だ…)

 

翔はそう思うと、寮を出て行く。

 

翔(アイツは今…過去に囚われている。さて、どうしたものか……)

 

ドアを閉め、医務室へと戻って行く翔。すると、背後からドアが開く音が聞こえてきた。

 

翔「…?」

 

ユキ「翔、さん……」

 

振り返ると、そこにはユキがいた。

 

翔「ユキ…珍しいな。」

 

ユキ「…どうか、しましたか?」

 

翔「どうもしてねぇよ…ちっと歩いてただけだ。これから医務室に戻る。」

 

ユキ「では…私も、お供…します。」

 

夜は基本的に寝ているユキなのだが…まだ起きており……寮から出て行こうとする翔を見つけ、出て来たようだった。

 

翔「…眠くねぇのか?」

 

ユキ「はい、大丈夫…です……」

 

翔「…そうか。」

 

灯りが消え、暗くなったドールハウス廊下を…杖が床に着く音と靴音だけが響き渡る。

 

翔「…ちっと昔話でもするか。」

 

ユキ「昔、話…?」

 

翔「そうだ…俺についての、な……」

 

翔はゆっくりとユキに語り始める。

 

翔「俺はな、生きるのに必死だったんだ…両親が死んで、姉貴も居なくて…頼れる奴が周囲に居なくて……だから、何でもかんでも自分でしなきゃならなかったんだ……遊んでる暇も、友達を作る余裕もねぇ中…勉強だけはしっかりやらなきゃならねぇ…後々将来に響いてくるからな……けどな……」

 

生きることに必死だった彼は、成績は常に学年トップであった。そんな時に、時空管理局に目をつけられてしまったのだ。 

 

翔「時空管理局に連れて行かれ…知らねぇうちに、ストライカー共の隊長を任されていた…初めは良かったんだが……その後、地獄が訪れたのは…本当に急だった……」

 

最初はストライカー共とも打ち解けられ、信頼を寄せていた翔だったが…知らない間に、化け物の身体になっていた翔は…ここから、実験が始まった。

 

翔「アイツらが俺にしてきた数々の仕打ち……それはな、俺の体内(ナカ)に眠るアマゾン細胞を覚醒させるための手段だったんだ……俺がアイツらに捕らわれた時に、それを知ったんだ…」

 

ストライカー達は掌を返すように豹変し、彼に執拗な嫌がらせを始めたのだった。それは、彼の中にいるアマゾン細胞に対する実験に過ぎなかったのだ。

 

翔「結果は…覚醒寸前になるだけで、それ以上何も起こらなかった……だから俺は、時空管理局からも見放された……」

 

中々アマゾン細胞が覚醒しなかったため、時空管理局は彼をお払い箱という形で…用済みとして捨てたのだった。その後、翔によってインターネット上で彼らの裏の顔を暴露され…時空管理局は社会の道から転落することになった。

 

ユキ「翔さん…私は、ここに居ます……翔さんの、側に……」

 

翔「あぁ、分かってる…ありがとな。」

 

翔を励ましているのか、ユキは翔の元に寄って来た。

 

翔「こんな俺でも…お前達Dollsに受け入れられた、お前達は…人喰いの化け物である俺にも、振り向いてくれた……俺はな…お前達の事が好きだ……どんなに悪態をついたって、それを受け止めてくれて…俺に居場所を用意してくれて……嬉しかったんだぜ、あん時……」

 

普段、本音を言わない翔なのだが…ユキにだけ、本音を告げた。昔は極度に人を信じられず、優しくされても悪態をついたり、暴言を吐いたりし、1人になろうとしていた。しかし、ここの者達は彼を見放すことはせず…居場所を提供してくれたり、彼の言葉を受け止めてくれたりした。それを続けて、漸く彼は…人に心を開くことができるようになった。新しい人とも打ち解けることができ、今では信頼できる仲間として認識している。

 

ユキ「翔さん……」

 

翔「…?」

 

ユキの顔を見ると、彼女は翔に笑顔を見せていた。普段は感情を全く表に出さないユキだが、翔の前では色んな表情を見せてくれる。

 

翔「…と、着いたか。」

 

気が付くと、既に医務室前にいた。

 

翔「サンキューな、ユキ…気を付けて戻れよ?」

 

ユキ「はい、翔さん…」

 

ユキは寮へと戻って行く。そんな彼女を見送った彼は、医務室へ入った。

 

ミア「おっ、翔さんおかえり〜♪」

 

翔「…お前ら、いつからここに居たんだ?」

 

ディオ「ずっとここに居たし…」

 

トリア「私共は翔さんのボディーガード!なんなりとお申し付けください。」

 

ドールハウスに来たNumberSは、翔の用心棒という役目を持っている。他にも…医務室を綺麗にしたり、彼の話し相手になったりと…様々なことをやるのだ。

 

ディオ「翔さん、これ……」

 

翔「お、サンキュ。」

 

ベッドに座った翔にギリシャ神話の本を渡すディオ。彼女から本を受け取ると、さっそく読み始める。NumberSも一緒になって、ギリシャ神話の本を読んでいた。

 

翔(コイツらもよくやってくれている…感謝感謝、だな。)

 

心の中で、NumberSにも信頼を寄せている翔であった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。