〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』   作:やさぐれショウ

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第三百十三話 光明『世界を守る為なら』

箱根小涌園・ユネッサンにてリフレッシュをしてきた翔は、ドールハウスに帰って来た。

 

斑目「翔、よく戻って来てくれた。リフレッシュはできたか?」

 

翔「まーな…それより、シオリの調子はどうなんだ?」

 

斑目「今は落ち着いている…この調子なら、港区ライブに支障が出ることは無いだろう。」

 

翔「……そうか。」

 

斑目から出迎えられた翔だが、やり取りを淡々と済ませ、事務所へと向かった。

 

カナ「ストライカー達からの襲撃が有りましたが、翔君は無事です。」

 

斑目「アイツら…性懲りも無くまたか。」

 

カナ「本当ですよ、もう…」

 

懲りずにまた来ては、返り討ちにされるストライカー達…そんな彼女達の非常識極まりない行動に、斑目とカナも呆れてため息をつく。

 

斑目「とにかく、翔が無事であればそれで良い…アイツが欠けてしまえば、今度こそDollsは終わってしまう……」

 

カナ「えぇ…ですから、私達は翔君が翔君らしく居られる空間を提供、維持しましょう。」

 

斑目「…あぁ。」

 

最近、翔はドールハウスの居心地があまり良くないと思っていることを…斑目とカナは知っている。シオリや斑目等からによる狂った話が、引き金となったのだろう。

 

彩羽「ねぇ、所長さんもカナさんも…翔君に気遣ってばかりで疲れないんですか?」

 

ふと、彩羽が斑目とカナに尋ねる。すると、斑目とカナはニコッと微笑む。しかし、その笑顔はどこか寂しげにも見えた。

 

斑目「疲れたと思った事は、1度足りとも無い。」

 

カナ「普段の激務に比べれば、大したことはありません。」

 

彩羽「……。」

 

彼女達の言葉に、彩羽は何も言えなかった。

 

 

 

 

その頃、ドールハウスの事務所にて……

 

アヤ「ふあぁ、皆おつかれーーきゃあっ!?」

 

何やらアヤが、何かに躓き…転倒してしまった。彼女の足元にあったのは…

 

アヤ「ったぁ〜〜!!何かに躓いた……って、ユキ!?」

 

ユキ「すやすや……」Zzz……

 

どういうわけか、床の上で爆睡しているユキだった。更に……

 

アヤ「なんてトコで寝て……って、ヒヨまで!?」

 

ヒヨ「ふにゅ、シャリババーンも仮面ライダーも食べられないよぉ……」Zzz……

 

ヒヨまでも、床の上で爆睡していた。

 

アヤ「どんな夢見てんのよ……こんな所で寝ちゃダメだっての!!」

 

見るに耐えない姿の2人を慌てて起こすアヤ。しかし、どれだけ起こしても中々起きない。

 

アヤ「ちょっと、レイナ!!ヒヨを起こして……」

 

堪らずレイナに助けを求めるも…

 

レイナ「……。」Zzz……

 

ナナミ「はっ……これはもしや……立ちながら寝てる……?」

 

彼女は立ったまま、眠っている。そんな彼女を見て、思わず驚くナナミ。

 

ヤマダ「ふひひ…さすがのレイナサマも連日連夜の深夜レッスンは厳しいようで…」

 

どうやら、毎日毎日…それも深夜にレッスンが続いていた為、疲れてしまったらしい。

 

ヤマダ「ジブンとしては限クエ回せないのがツラすぎっすわ。もっと早い段階で労基にかけ込んでおけばーー」

 

そんな時、事務所のドアが開き…翔が入って来た。

 

 

翔「…どこへかけ込むって?」

 

 

ヤマダ「おっ、ウワサをすればナントやら……おかえりなさいっす、翔さん。」

 

翔「あぁ…それより、コイツら大丈夫か?」

 

眠っているユキ、ヒヨ、レイナを見て困惑する翔。ナナミが理由を話すと、思わず口角を下げる翔。

 

翔「……。」

 

アヤ「そんな顔しないで、翔は身体を休めることに専念してよ♪ね、アタシらは大丈夫だから。」

 

翔「説得力感じねぇんだが……」

 

翔はそう言うと、立ちながら寝ているレイナの肩を叩く。

 

レイナ「……んぅ?」パチッ…

 

翔「よぉ、大丈夫じゃあ無さそうだな。」

 

レイナ「翔く、ん…私は、大丈夫y…ふあぁ……」

 

翔「ほれ、頑張ってるお前達に土産物だ。この後にでも食ってくれや…」

 

翔は箱根で買ってきたお土産『箱根銀のメープルパンケーキ』をオフィスデスクの上に置きながら言う。

 

ナナミ「こ、これは…箱根・強羅にある地元で評判のお豆腐屋さん「箱根銀豆腐」の豆乳を使用しているパンケーキサンド…!?ふわふわの生地に甘さ控えめのカスタードクリームとメープルフィリングをサンドした…かなり人気だと耳にしたような……」

 

甘い物には目が無いナナミは、思わず目を輝かせていた。

 

翔「これくらいできねぇで、ドールハウスの用心棒が務まるかよ。」

 

その時…またもドアが開き、カナが入って来た。

 

カナ「はい、こっちに注目!!」

 

ヒヨ「ほにゃ……」

 

ユキ「はっ……」

 

カナの言葉に、ヒヨとユキはすぐに目を覚ました。レイナもゆっくりと目を開く。そこへ、斑目が入って来た。

 

斑目「……みんな、連日のレッスンご苦労。明日のライブに向けて、詳細な作戦を伝える。」

 

明日はいよいよ、港区にてライブが行われる。それについて…そして、テアトルが展開できない理由を、斑目は伝える。

 

斑目「テアトルが展開不可についての光明が見えた。」

 

翔「…何?」

 

思わず斑目を睨む翔。次に、カナがメンバー達に資料を配って行く。

 

カナ「手元の資料を確認してください。」

 

メンバー達は配られた資料に目を通して行く。

 

 

 

レイナ「前に話していた、ラッピング電車のフィール回収装置を使うの?」

 

メンバー達が資料を読み終える頃、レイナはすっかり目を覚ましていた。

 

ナナミ「あ、レイナさん。おはようございます。」

 

翔「漸く目覚めたか。」

 

口角を上げるナナミと無表情の翔。

 

斑目「その通りだ。」

 

今回のライブでは……テアトルが展開できなくなった今、ラッピング電車に搭載されたフィール回収装置を使用するようだ。

 

斑目「あれを逆流させ、六本木のホールで収集したフィールを地下全体に流し込む。これにより、瘴気も幾分中和され地下探索が再度可能になるだろう。テアトルが使えないお前達のフィール漏出の抑止にもつながるはずだ。」

 

斑目の説明を聞き、何やら不満げな表情を見せるナナミとヤマダ。

 

シオリ「穴が開いて水が漏れるなら、周りを水で満たせばいいって事ですか?強引なやり方に見えますが……」

 

アヤ「ま、確かに贅沢な使い方よね…そうも言ってられないのはわかってるけど。」

 

回収したフィールを地下に入れることで、ある程度瘴気が軽減されるが…フィールの量も中和時間も限られている。しかし、肝心なのは一般的達の安全面についてだ。

 

アヤ「あ……それって、乗客の皆は大丈夫よね?」

 

斑目「無論、利用者の身体に影響はない。既に効果は確認済みだ。」

 

彼らの身体には何の影響も無いことは既に確認済みで、問題は無いようだ。

 

カナ「ファンの乗車率を上げるため、各駅のWi-Fiスポットには限定アプリを配信…車両にも、新たな趣向が取り入れられています!参考画像は皆さんの端末を確認してくださいね。」

 

より効率よくフィールを集める為なのか…客の乗車率を向上させるための細かい取り組みを説明するカナ。

 

ナナミ「!?ちょっと待ってください、何ですかコレ。座席に…私たちのプリント……?」

 

ヒヨ「わー、ヒヨたちが椅子になってる!」

 

ヤマダ「ふひひ…見える……SNSに乱立する『#膝枕ハアハア』ハッシュタグ……!!」

 

端末を見ると…列車内の座席は、Dollsのメンバー達がプリントされたデザインとなっていた。乗客達は、まるで彼女達の膝の上に座っているような感覚を味わえるそうだ。

 

ナナミ「確かに地下鉄でこれ以上外側をラッピングしても仕方ないとは思いますけど……」

 

翔「……。」汗

 

中々ぶっ飛んだ発想に、困惑する翔。

 

ナナミ「あ、あの…翔さんは、私たちの膝の上……嫌じゃないですか…?」

 

翔「…知るか。」

 

ナナミの問い掛けを聞き流す翔。

 

翔(目的の為なら手段を選ばず、か……まぁ、奴らとは違って…ドールハウス(ここ)は世界を守るためにやってるんだ……)

 

翔を連れ戻す為なら手段を選ばないストライカー達とは違って…ピグマリオンから世界を守るためには手段を選ばないドールハウス。これまで、様々な手段を用いていくつもの任務を成功させては、世界を守って来た。翔や一海達仮面ライダーの協力も加わり、今日も世界を守るための手段を企画し、実行する。

 

斑目「……フィール散布は、帰途につくファンが増えるライブ後から行う。ライブ後はすぐの出動にはならない。多少の休息はできるはずだ。」

 

世界を守る為には、現場で戦うDollsのことも考えなければならない。少しでも彼女達の負担を減らす為、斑目とカナは奮闘する。

 

斑目「まずはライブに全力を尽くして欲しい。以上だ。」

 

説明が終了すると、メンバー達は解散し、寮へと戻って行った。

 

 

 

明日のライブに関する説明が行われた後…翔は屋上に移動すると、とある人物に電話を掛ける。

 

一海『もしもーし?』

 

その相手は、友人の一海だった。

 

翔「俺だ、今時間あるか?」

 

一海『おぉ翔、大丈夫だ。どうした?』

 

翔「明日、港区六本木ホールにてDollsのライブが行われる。お前達も来るのか?」

 

一海『勿論、俺はドルオタだぜ?Dollsのファンでもあるんだしさ、行かねぇ訳にはいかねぇだろ?』

 

翔「そうか。」

 

翔は少しだけ黙ると、一海に頼み事を言った。

 

翔「そんでな…ちっと助けて欲しいんだ……」

 

一海『おいおい、お前が頼み事をするなんて珍しいな?』

 

翔「良いから聞け…ストライカー共は妖魔に魂を売りやがった。奴らは俺を連れ戻すべく、俺と交流関係にあるDollsのライブを妨害しに来る。間違い無くな……Dollsは今、思うように戦えねぇ状況に立たされてる。」

 

一海『…なんだって!?』

 

翔「そこでだ…お前達ライダーの出番って訳だ。元ストライカー達やモシュネ達も現場に送るから、協力して会場を奴らから守ってくれや。報酬もくれてやる。」

 

一海『分かった。けど、さすがに報酬は要らねぇって…』

 

翔「バカ野郎、アンペイドワークなんざさせられっかよ。さっさとお前達が望む物を言え。」

 

一海『うーん……あ、そうだ。だったらさ、ドールハウスに遊びに行っても良いか?勿論、可能であればで良いんだが…』

 

翔「斑目さんらには俺から伝える。他には?」

 

一海『えぇ……』

 

押しが強い翔に、困惑する一海。

 

翔「例えば、お前達が食いてぇモンとかはねぇのかよ?力を使えば、補充しなければならねぇ…そうだろ?」

 

一海『えっとだな…だったらさ、翔の手料理を振る舞ってくんねぇか?お前、料理得意なんだろ?』

 

翔「フッ、お安い御用だ…交渉成立だな。」

 

一海『あぁ、そうだな。アイツらは任せてくれ、後…頼ってくれてサンキューな。』

 

翔「…あぁ。」

 

そして、通話が切れた。一海と電話で話した後、晴れた空を見上げる翔。

 

翔(世界を守るんなら…こっちも、利用できるモンはとことん利用させて貰おう……)

 

始めて一海達に助けを求めた翔。今まで誰かに頼ることを一切してこなかった彼だったが…今まで通りに動けなくなった今……遂に、一海達にSOSを出したのだ。

 

蜜璃「翔く〜ん!」

 

翔「…?」

 

その時…屋上に蜜璃と深雪がやって来た。

 

蜜璃「大変なんだよ翔君!!聞いて聞いて!!」

 

翔「…何だよ?」

 

蜜璃「とにかく大変なの大変なのぉ〜!!」

 

翔「落ち着け、何がどう大変なのか具体的に説明しろ。」

 

何やら慌てている蜜璃の代わりに、深雪が翔に説明をする。

 

深雪「実は…私達も、港区ライブで歌を披露することになったんです。」

 

翔「…はぁっ!?」汗

 

深雪からとんでもない報告を聞き、困惑する翔。

 

翔「アンタらは医者だろ?何で人前で歌う必要があるんだ…」

 

蜜璃「所長さん曰く…Dollsのファンの中には、私達のファンも大勢居るみたいで……何かパフォーマンスを披露すると良いって……うぅ、どうすれば良いか分かんないし、沢山の人達の前で歌うなんて、緊張しちゃうよぉ〜!!」

 

深雪「困りました…急に伝えられ、レッスンも何もしてなかったので……」

 

数多のDollsファンの中には、深雪と蜜璃のファンも数多く存在する。そこで斑目は、深雪と蜜璃にも1日アイドルデビューをしてみようと企画したのだ。突然の事に、蜜璃は分かりやすく慌て…普段は冷静の深雪も、困り果てていた。

 

蜜璃「翔君、どうしたら良いかなぁ!?」アワアワ

 

深雪「翔君なら、その時どうしていましたか?」

 

翔「どうもしてねぇよ…いつも通りを貫いたまでだ。」

 

翔は無表情のまま、蜜璃と深雪の方を向く。

 

翔「俺はありのままを受け入れられたから、遠慮なく普段の自分を貫くことができた。最も、受け入れられなくとも…俺は俺のままでいたがなぁ……アンタらも、アンタらのままで良いんじゃねぇか?それ以上のことも、それ以下のことも…斑目さんは望まなかっただろ?」

 

翔の言葉を聞き、ハッとした表情を見せる蜜璃と深雪。

 

翔「当日、緊張すんのも無理はねぇ…そこでだ、俺に考えがある。耳を貸せ…」

 

翔は蜜璃と深雪の耳元で、思いついた作戦を話す。それを聞いた蜜璃と深雪は安心したような笑顔を見せた。

 

蜜璃「それ、良い考えだね♪」

 

深雪「それなら、私達も安心してアイドルになりきれます♪」

 

翔「…。」コクッ…

 

翔が考える作戦とは……それは、当日まで…彼のみしか知る者は居なかった。

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