〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』 作:やさぐれショウ
ライブを終え、ドールハウスへと帰還した一同。翔はシオリを医務室へ送った後、一海達と共に観測室へと入って来た。
斑目「皆、よくやった。ライブは成功。その後も被害も施設に集中し、人的被害はゼロだ。」
翔「つーか、施設自体にも被害はねぇだろ?誰のおかげだと思ってんだ?」
斑目「あぁ、そうだな。一海、紫、友香、諒芽、本当にありがとう。」
カナ「一海君達のおかげで、助かりました。」
今回もDollsの任務に介入した一海達。彼らのおかげもあり、施設への被害も人的被害もゼロになったのだ。
一海「いえ、当然の事をしただけです。」
紫「親友が助けを求めてくれたおかげでもあります。」
友香「それに、Dollsの皆さんがライブを成功できて良かったです♪」
諒芽「へへっ、セツナさんもカナさんもじゃんじゃん俺らを頼ってください☆」
一海と紫は謙虚な姿勢を見せ、友香はDollsのライブ成功を喜び、諒芽は胸を張ってドヤ顔をしていた。
斑目「諸々の不測に、よく耐えてくれた。」
翔「けっ、よく言うぜ…普段は現場に行かねぇくせに。」
斑目に嫌味を言う翔。
ミサキ「……シオリは……どうなりました?」
斑目「…前回と同じ状況だ。恐らく数時間後に目覚めるだろう。」
翔「フィール散布作戦…参加できるのか?」
斑目「それは、本人次第だ。」
Eモードを発動し、再び力尽きたシオリ。この後の作戦に参加できるかどうか、雲行きは既に怪しくなっていた。
アヤ「まさか、こんな状態で作戦決行するの!?」
今の状況に不満を漏らすアヤ。
斑目「当然だ。フィールは想定以上に集まった。この機を逃せば、状況の悪化を招くのみだ。」
しかし、斑目は淡々と作戦決行の意志を告げる。十分過ぎる程のフィールが集まった今、作戦は早く行わなければならない。その時…
「その采配、私は支持しよう。」
観測室に小鳥遊大臣が入って来た。
翔「また来たのか…へっぽこ大臣が……」
冷たい視線で小鳥遊大臣を睨む翔。
小鳥遊「六本木付近は私としても動きやすい地域なのでね。害特も出動していたし、少し足を伸ばしたのさ。それに重要な事は面を向かわせて話す必要がある。そう思ったのでね。」
ユキ「重要……」
小鳥遊「そう、重要なことだ。君たちのアイドル生命にも関わる。」
翔「ならさっさと話せ。」
相変わらず小鳥遊大臣への視線が冷たい翔。
小鳥遊「君たちのテアトル…機能不全状態が続く場合、今の害特ではフォローに限界があるのだよ。」
ヤマダ「ふひひ…頼みのオートギアはメンテループ中…他のバンビー部隊じゃとてもとても…ってことっすか?」
小鳥遊「あまりいじめないでくれたまえ。」
翔「ほざけ、事実だろうが。やはりお前達害特は当てにならねぇじゃねぇか…足枷は足枷らしくそこらでじっとしてろ。」
小鳥遊「青空君…まあ、戦闘力の歴然たる差は正しく認識している。しかし、問題はそこではない。」
翔「話が長ぇんだよ…その重要な事ってのをさっさと吐き出せ。」
小鳥遊大臣の前語りが長く、段々イライラしてきた翔。彼の声はどんどん低くなっていく。
小鳥遊「規模が大きくなればなるほど隠すのは難しい。渋谷の時も中々苦労したが……」
ヒヨ「うん……たくさんこわれちゃったもんね…」
アヤ「それって…今後は事故のフリとかで隠し通せないってこと?」
小鳥遊「できることはするとも。ただ、限界はある。」
この世界の人々はピグマリオンという異形を知らない。奴らによって起こった大きな事故も、自然災害等による影響だと事実を書き換え、本当の事実を隠していた。このように事実を書き換えられるのも…
小鳥遊「その限界の範囲を大きく広げていたのが、君たちのテアトルだったという事だ。」
皆、Dollsが人知れず戦っていたおかげだったのだ。彼女達が使用するテアトルは、自分たちとピグマリオンを閉じ込め、一般の人間では目視できない一時的な空間を作り出す。その中でピグマリオンと戦うことで、人的被害を無くすことができる。それと同時に、Dollsはピグマリオンと一騎打ち状態になり、戦いに集中することができる。
小鳥遊「オートギアの殲滅結界……『擬似テアトル』では、
オートギアも、Dollsのテアトルに似た結界『擬似テアトル』を展開できるが…Dollsには及ばない。
レイナ「そう言われて治るなら、苦労しなくていいのだけれど……」
翔「全くだ。それができたらこんな事にはなってねぇよ…」
レイナに便乗する翔。
ナナミ「それ…回復できなかったら…また破棄だのなんだの言うつもりですか?」
小鳥遊「ほう…私にそう言わせたいのかな?」
ナナミ「う……」
小鳥遊大臣がそう言った次の瞬間、翔が小鳥遊大臣の胸ぐらを勢いよく掴む。
翔「てめぇ…いい加減にしろ。言って良い事と悪い事の区別もできねぇのか?」
鬼のような形相で小鳥遊大臣を睨み付け、ドスの効いた低い声を出す翔。
翔「ナナミ、お前もだ……殴り返される覚悟がねぇなら、さっきみてぇなふざけた言葉を吐き出すんじゃねぇぞ?」
ナナミ「っ!?…す、すみませんでした…翔さん……」
ナナミが謝罪したタイミングで、小鳥遊大臣を乱暴に突き飛ばす翔。
翔「
右手の拳をギリリと握り締めながら言う翔。彼の右手からは、真っ赤な鮮血がポタポタと流れ落ち始める。
深雪「翔君、今手当しますから…ちょっと拳を解いて貰って良いですか?」
深雪がそう言うと、翔は素直に拳を解き…掌を見せた。深雪は丁寧に翔の右手を手当し、包帯を巻いた。
小鳥遊「君らの意思を無碍にする気などない。信用は何より大事にしなければならないものだ。両立が叶わないならば、兵器としての運用が優先される。これだけは承知してくれたまえ。」
小鳥遊大臣の重要な話は、これにて終わった。
小鳥遊「作戦前に失礼した。だが、顔を出せる時間がなさそうだったのでね。」
小鳥遊大臣は観測室を出る前に、翔にこんな事を尋ねた。
小鳥遊「ところで、青空君…NumberSの皆とは仲良くやれているかい?」
翔「自分で確かめたらどうだ?アイツらの産みの親を名乗るなら、自分の目で真実を見てみろ。俺が教えるとでも思ってんのか?」
現在、害特の秘密兵器であるNumberSは…翔の話し相手、及び彼のボディーガードとしてドールハウスにいる。彼女達と翔の様子が気になった小鳥遊大臣だが、翔は教えようとしない。
カナ「それならご安心ください。翔君もすっかりNumberSのことを信頼しています。」
カナがそう言うと、小鳥遊大臣は安心して笑顔を見せる。反対に、翔は不服そうにカナを睨み付けた。
小鳥遊「前とは状況が逆になってしまったな…君たちがアイドルを続けられることを祈っているよ。」
小鳥遊大臣はそう言うと、観測室から出て行った。
斑目「……。」
小鳥遊大臣が去った後、何やら走ってくる音が聞こえてきたと思うと…医務室で寝ているはずのシオリが観測室に入って来た。
シオリ「アイドルを……続ける……」
彼女は何やら、不安そうな表情を浮かべている。
翔「シオリ!?」
そして、シオリはその場に倒れてしまった。
翔「おい、シオリ!!」
メンバー達は、倒れたシオリに駆け寄って行った。
その頃……
小鳥遊「すまない、エクス……帰りが遅くなってしまった。」
誰も知らないどこかの場所にて、カプセルの中に眠る少女『エクス』に話し掛ける小鳥遊大臣。
小鳥遊「大人はいつだって、奔放な若者に振り回されるものだ。はは、君はきっと『年寄りくさい』と笑うだろうな。」
小鳥遊大臣の声掛けに、エクスは何も反応しない。
小鳥遊「しかし……君の姉妹はどうしてああなんだ?
気まぐれに
いや…案外似たもの姉妹だったかな。フフ……」
彼が言う、エクスの姉妹とは……彼は何をどこまで知っているのか……
小鳥遊「……。」