〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』   作:やさぐれショウ

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第三百十九話 怪しい雲行き

ライブを終え、ドールハウスへと帰還した一同。翔はシオリを医務室へ送った後、一海達と共に観測室へと入って来た。

 

斑目「皆、よくやった。ライブは成功。その後も被害も施設に集中し、人的被害はゼロだ。」

 

翔「つーか、施設自体にも被害はねぇだろ?誰のおかげだと思ってんだ?」

 

斑目「あぁ、そうだな。一海、紫、友香、諒芽、本当にありがとう。」

 

カナ「一海君達のおかげで、助かりました。」

 

今回もDollsの任務に介入した一海達。彼らのおかげもあり、施設への被害も人的被害もゼロになったのだ。

 

一海「いえ、当然の事をしただけです。」

 

紫「親友が助けを求めてくれたおかげでもあります。」

 

友香「それに、Dollsの皆さんがライブを成功できて良かったです♪」

 

諒芽「へへっ、セツナさんもカナさんもじゃんじゃん俺らを頼ってください☆」

 

一海と紫は謙虚な姿勢を見せ、友香はDollsのライブ成功を喜び、諒芽は胸を張ってドヤ顔をしていた。

 

斑目「諸々の不測に、よく耐えてくれた。」

 

翔「けっ、よく言うぜ…普段は現場に行かねぇくせに。」

 

斑目に嫌味を言う翔。

 

ミサキ「……シオリは……どうなりました?」

 

斑目「…前回と同じ状況だ。恐らく数時間後に目覚めるだろう。」

 

翔「フィール散布作戦…参加できるのか?」

 

斑目「それは、本人次第だ。」

 

Eモードを発動し、再び力尽きたシオリ。この後の作戦に参加できるかどうか、雲行きは既に怪しくなっていた。

 

アヤ「まさか、こんな状態で作戦決行するの!?」

 

今の状況に不満を漏らすアヤ。

 

斑目「当然だ。フィールは想定以上に集まった。この機を逃せば、状況の悪化を招くのみだ。」

 

しかし、斑目は淡々と作戦決行の意志を告げる。十分過ぎる程のフィールが集まった今、作戦は早く行わなければならない。その時…

 

「その采配、私は支持しよう。」

 

観測室に小鳥遊大臣が入って来た。

 

翔「また来たのか…へっぽこ大臣が……」

 

冷たい視線で小鳥遊大臣を睨む翔。

 

小鳥遊「六本木付近は私としても動きやすい地域なのでね。害特も出動していたし、少し足を伸ばしたのさ。それに重要な事は面を向かわせて話す必要がある。そう思ったのでね。」

 

ユキ「重要……」

 

小鳥遊「そう、重要なことだ。君たちのアイドル生命にも関わる。」

 

翔「ならさっさと話せ。」

 

相変わらず小鳥遊大臣への視線が冷たい翔。

 

小鳥遊「君たちのテアトル…機能不全状態が続く場合、今の害特ではフォローに限界があるのだよ。」

 

ヤマダ「ふひひ…頼みのオートギアはメンテループ中…他のバンビー部隊じゃとてもとても…ってことっすか?」

 

小鳥遊「あまりいじめないでくれたまえ。」

 

翔「ほざけ、事実だろうが。やはりお前達害特は当てにならねぇじゃねぇか…足枷は足枷らしくそこらでじっとしてろ。」

 

小鳥遊「青空君…まあ、戦闘力の歴然たる差は正しく認識している。しかし、問題はそこではない。」

 

翔「話が長ぇんだよ…その重要な事ってのをさっさと吐き出せ。」

 

小鳥遊大臣の前語りが長く、段々イライラしてきた翔。彼の声はどんどん低くなっていく。

 

小鳥遊「規模が大きくなればなるほど隠すのは難しい。渋谷の時も中々苦労したが……」

 

ヒヨ「うん……たくさんこわれちゃったもんね…」

 

アヤ「それって…今後は事故のフリとかで隠し通せないってこと?」

 

小鳥遊「できることはするとも。ただ、限界はある。」

 

この世界の人々はピグマリオンという異形を知らない。奴らによって起こった大きな事故も、自然災害等による影響だと事実を書き換え、本当の事実を隠していた。このように事実を書き換えられるのも…

 

小鳥遊「その限界の範囲を大きく広げていたのが、君たちのテアトルだったという事だ。」

 

皆、Dollsが人知れず戦っていたおかげだったのだ。彼女達が使用するテアトルは、自分たちとピグマリオンを閉じ込め、一般の人間では目視できない一時的な空間を作り出す。その中でピグマリオンと戦うことで、人的被害を無くすことができる。それと同時に、Dollsはピグマリオンと一騎打ち状態になり、戦いに集中することができる。

 

小鳥遊「オートギアの殲滅結界……『擬似テアトル』では、情報隠匿(じょうほういんとく)の性能で遠く及ばない。だから君たちがテアトルの機能を回復できないならば、運用の根本を考え直さざるを得ない。」

 

オートギアも、Dollsのテアトルに似た結界『擬似テアトル』を展開できるが…Dollsには及ばない。

 

レイナ「そう言われて治るなら、苦労しなくていいのだけれど……」

 

翔「全くだ。それができたらこんな事にはなってねぇよ…」

 

レイナに便乗する翔。

 

ナナミ「それ…回復できなかったら…また破棄だのなんだの言うつもりですか?」

 

小鳥遊「ほう…私にそう言わせたいのかな?」

 

ナナミ「う……」

 

小鳥遊大臣がそう言った次の瞬間、翔が小鳥遊大臣の胸ぐらを勢いよく掴む。

 

 

翔「てめぇ…いい加減にしろ。言って良い事と悪い事の区別もできねぇのか?」

 

 

鬼のような形相で小鳥遊大臣を睨み付け、ドスの効いた低い声を出す翔。

 

翔「ナナミ、お前もだ……殴り返される覚悟がねぇなら、さっきみてぇなふざけた言葉を吐き出すんじゃねぇぞ?」

 

ナナミ「っ!?…す、すみませんでした…翔さん……」

 

ナナミが謝罪したタイミングで、小鳥遊大臣を乱暴に突き飛ばす翔。

 

翔「Dolls(コイツら)の破棄だなんて…そんな事、俺はぜってぇさせねぇ。例え相手が総理大臣だろうが天皇だろうが…喜んで戦ってやらぁ……」

 

右手の拳をギリリと握り締めながら言う翔。彼の右手からは、真っ赤な鮮血がポタポタと流れ落ち始める。

 

深雪「翔君、今手当しますから…ちょっと拳を解いて貰って良いですか?」

 

深雪がそう言うと、翔は素直に拳を解き…掌を見せた。深雪は丁寧に翔の右手を手当し、包帯を巻いた。

 

小鳥遊「君らの意思を無碍にする気などない。信用は何より大事にしなければならないものだ。両立が叶わないならば、兵器としての運用が優先される。これだけは承知してくれたまえ。」

 

小鳥遊大臣の重要な話は、これにて終わった。

 

小鳥遊「作戦前に失礼した。だが、顔を出せる時間がなさそうだったのでね。」

 

小鳥遊大臣は観測室を出る前に、翔にこんな事を尋ねた。

 

小鳥遊「ところで、青空君…NumberSの皆とは仲良くやれているかい?」

 

翔「自分で確かめたらどうだ?アイツらの産みの親を名乗るなら、自分の目で真実を見てみろ。俺が教えるとでも思ってんのか?」

 

現在、害特の秘密兵器であるNumberSは…翔の話し相手、及び彼のボディーガードとしてドールハウスにいる。彼女達と翔の様子が気になった小鳥遊大臣だが、翔は教えようとしない。

 

カナ「それならご安心ください。翔君もすっかりNumberSのことを信頼しています。」

 

カナがそう言うと、小鳥遊大臣は安心して笑顔を見せる。反対に、翔は不服そうにカナを睨み付けた。

 

小鳥遊「前とは状況が逆になってしまったな…君たちがアイドルを続けられることを祈っているよ。」

 

小鳥遊大臣はそう言うと、観測室から出て行った。

 

斑目「……。」

 

小鳥遊大臣が去った後、何やら走ってくる音が聞こえてきたと思うと…医務室で寝ているはずのシオリが観測室に入って来た。

 

シオリ「アイドルを……続ける……」

 

彼女は何やら、不安そうな表情を浮かべている。

 

翔「シオリ!?」

 

そして、シオリはその場に倒れてしまった。

 

翔「おい、シオリ!!」

 

メンバー達は、倒れたシオリに駆け寄って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃……

 

小鳥遊「すまない、エクス……帰りが遅くなってしまった。」

 

誰も知らないどこかの場所にて、カプセルの中に眠る少女『エクス』に話し掛ける小鳥遊大臣。

 

小鳥遊「大人はいつだって、奔放な若者に振り回されるものだ。はは、君はきっと『年寄りくさい』と笑うだろうな。」

 

小鳥遊大臣の声掛けに、エクスは何も反応しない。

 

小鳥遊「しかし……君の姉妹はどうしてああなんだ?

 

気まぐれに災厄(さいあく)を起こし、悪びれもせず我を通す…

 

いや…案外似たもの姉妹だったかな。フフ……

 

彼が言う、エクスの姉妹とは……彼は何をどこまで知っているのか……

 

小鳥遊「……。」

 

もうすぐだ……

 

もうすぐ、私の宿願が果たされる……

 

 

 

 

 

もう、すぐ、だ。

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