〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』 作:やさぐれショウ
ある日の平日……
翔「……。」
医務室にて、スマホで旅行サイトを開き、ツアーの案内を見ている翔の姿があった。
翔「……?」
ふと、1つの記事に目が止まった。5段階評価中、ほぼ0に近い程評判が悪いツアーがあった。口コミを見てみると……
…等々、どれも最悪のモノばかりだ。
翔「……。」
翔(こいつァ放ってはおけねぇなぁ……)
すぐに身支度を開始する翔。すると、医務室の戸が叩かれる。
コンコンッ!
翔「…入れ。」
翔が入室許可を出すと、戸が開き……
蜜璃「翔君、失礼するね?」
ドールハウス専属医の1人である蜜璃が入って来た。
蜜璃「旅行サイト見てたんだ。」
翔「…あぁ、ちっとこれが気になってな。」
蜜璃「見ても良い?」
翔「あぁ。」
蜜璃は翔のスマホを覗き込み、ツアー案内を見る。
蜜璃「…あんまり評価が良くないね。」
翔「そうだな…七草さん、ちっとばっかし力貸してくんねぇか?」
蜜璃「えっ?」
翔の言葉に困惑する蜜璃。
翔「こんな怪しいツアー、早めに潰しておきてぇんだ。あんた、食うこと好きだろ?」
蜜璃「…う、うん。確かに好きだけど……」汗
翔「だったら尚更だ…費用は俺が負担する。」
蜜璃「えぇっ!?いやいや、そこまでしなくても…!」大汗
翔「普段から診てくれてる礼だと思ってくれ。ほら、さっさと準備してくれや。」
翔の口車に乗せられた蜜璃は、慌てて準備を始めた。
翔(勝負は明日…こんな悪徳業者、社会から抹殺してやらぁ……)
そして、ツアー当日……バスに乗り、高級寿司屋と思わしき寿司屋にやって来たのだが……
ガイド「まずは、その太巻きを召し上がっていただきます!その後はあちらのカウンター席に移り、お好きな握り寿司を好きなだけ召し上がってくださって結構です!」
客の前に出されたのは、かなり長くて大きい太巻きだった。それも、中身はかんぴょうと卵焼きとキュウリとでんぶのみ……海の幸もへったくれも無い。
客1「えっ?食べ放題ってこんな全訂ルールあったか?」
客2「いや、こんなの書いてなかったぞ?」
大勢の客が不満を漏らす中……
子供1「いや、サーモン食べたい!!」
駄々をこねる子供まで現れた。
客3「おい、こんなの詐欺じゃねぇか!!」
客4「何だよこの店……」
周りの客は次第に怒り始め、騒ぎ始める。中には食べるのを諦め、途中で帰る客もいた。ついには、客からもクレームが……
客1「おいおいふざけんなよ!!これ1個で腹いっぱいになるだろ!!他のも頼んだって良いだろ!?」
それを聞いたツアーガイドは…
ガイド「申し訳ありませんが、太巻きをパスされる方は、別途料金3000円でカウンターからスタートできます!!」
…と、ニヤニヤしながら言った。そんな情報なんて、初耳である。
蜜璃「翔君…これって、明らかな……」
翔「あぁ、詐欺だな。だからさ…俺らで懲らしめてやろうぜ?ひたすら食って食って食いまくるんだ。」
蜜璃「わかった…!!」フンスッ!
地獄のような最悪な空気の中…エンジンが入った翔と蜜璃は、手を合わせると……
…と、テンション高めに言い、太巻きを1分程度で完食した。それを見たツアーガイドは、翔と蜜璃をカウンター席に案内する。
ガイド「では、あちらへ移りますね?」
ガイドはニヤニヤしながら、翔と蜜璃を見ている。
ガイド(あんなに大きい太巻きを食べたんだもの…もう大して食べないでしょうね、ヒヒヒヒ♪)
そう思っていたガイドだが…翔は無表情のまま、蜜璃は微かに笑顔を見せていた。翔はカウンター席に着くと…
翔「なぁ、何をどれだけ食っても良いんだよな?」
店員「はい、もちろんです!!何でもどうぞ♪」
店員のこの言葉を、翔と蜜璃は聞き逃さなかった。
蜜璃「もしネタがなくなったら、追加してもらえるんですか?」
店員「はい、もちろんです!!足りなかったら市場まで買いに行きますのでご安心を♪」
店員が大きい声で言ったモノだから、翔は無表情のままその店員を見る。
翔「言ったな…後になってやっぱり無しだの前言撤回だの、ふざけた事は言うんじゃねぇぞ?」
そして、翔は注文を始める。
翔「手始めに…まぐろとタコを50貫ずつ頼む。」
翔の注文を聞いたガイドと店員は、思わず「「えっ!?」」と声を上げる。
蜜璃「私も頼んじゃおうかな…サーモンとイカを50貫ずつお願いしま〜す♪」
笑顔で頼む蜜璃を見て、流石のガイドと店員も顔が青ざめていく。
翔「…何してんだ?早くしてくれよ…こちとら腹ペコなんだよ。」
翔が圧を飛ばすと、店員は慌てて寿司を握り始める。やがて、まぐろ&タコが1皿ずつ…サーモン&イカが1皿ずつ運ばれて来ると、翔と蜜璃はあっさりそれを完食した。
店員「ふえぇぇっ!?」
それを見た店員は慌てて次の寿司を握る。
翔「…へぇ、中々美味いじゃねぇか。」
蜜璃「うん!美味しいね、翔君♪」
店員がヒィヒィ言う中、蜜璃は楽しそうに、翔は頷きながら寿司をどんどん平らげていく。
ガイド(嘘でしょ…この2人、もしかしてフードファイター!?)
翔「…おい、今俺らをフードファイターだと思ったろ?」
ガイド「ギクッ!?」汗
蜜璃「私達はただ、食べる事が大好きなんです♪」エヘヘッ…
まぐろもタコも、サーモンもイカも、木箱を3回取り替えさせる程食べた翔と蜜璃。それを見たガイドと店員は、冷や汗をかき始める。
翔「次は、そうだな…まぐろをもう50貫、つぶ貝を50貫頼む。」
蜜璃「私もサーモンをもう50貫と、甘エビ50貫お願いします♪」
2人の注文を聞いた店員は……
店員「あ、あのぉ…まぐろとサーモンはもう品切れでございまして……」
…と、汗を流しながら言う。しかし…
翔「ネタが無くなれば市場まで買いに行くんだろ?そう言ったのはそっちだよなぁ?なら、責任を持って買いに行けや。てか、何をどれだけ食っても良いんだろ?お前はそれを許可したじゃねぇか…なぁ、ここに来て逃げるつもりか?」
蜜璃「私達はいくらでも待ってますので、よろしくお願いします♪」ニコッ
翔と蜜璃は容赦しなかった。店員は苦い顔をしながら皿を交換した。翔と蜜璃が再び大量の寿司を食べ始める頃…裏ではお偉いさんと思わしきスーツを着た男性とガイドがヒソヒソ話をしているのが見える。
蜜璃「ん〜♪この甘エビも美味し〜♪」
翔「フフッ、つぶ貝も中々だな…」
既に100貫以上も寿司を平らげている翔と蜜璃。それでも彼らは、まだ満腹にならない。店員は市場までネタを買いに行き、慌てて寿司を握っている。裏で話している主催者とガイドは青ざめた顔をしている。
翔(滑稽だな…こんなふざけたツアーを開くからこうなるんだよ……)
そんな彼らを鼻で笑いつつ、蜜璃と共に寿司を食べ続ける翔。そんな2人を、周りの客はギャラリーとして楽しんでいた。
客1「頑張れー!!」
客2「もっと食ってやれー!!」
客3「って、よく見たら…翔の兄貴と蜜璃先生じゃね!?」
客4「ホントだ…!!」
そして、周囲の客が翔と蜜璃だと気付き始めると…彼らへの応援はもっと大きくなる。
客1「兄貴頑張れぇ!!」
客2「蜜璃先生、頑張れー!!」
客3「頑張れー!!兄貴ぃー!!」
客4「先生!頑張ってくださーい!!」
子供1「おにいちゃん!おねぇちゃん!がんばれー!!」
客に応援されながら、次々に寿司を平らげていく翔と蜜璃。
翔(ここまで応援されんのも、悪い気分じゃあねぇな…)
翔「おい、サーモンとネギトロ軍艦を100貫ずつ頼む。」
蜜璃(皆が応援してくれてる、キュンキュンするわぁ~!!)
蜜璃「ウニとトビコ軍艦を100貫ずつお願いします♪」
応援を聞いた翔と蜜璃のエンジンは更にヒートアップし、先程頼んだ量よりも倍の量を注文した。出された寿司を食べていると、ガイドが困惑した表情で翔と蜜璃の方に来た。
ガイド「あの…お客様……いただいた料金を全額お返ししますので、この辺で勘弁してください。」汗
それを聞いた翔は、ガイドをギロッと睨む。蜜璃は微かな笑みを浮かべている。
翔「折角腹を空かせて来たんだ…まだまだ食わせてくれや?なぁ、食べ放題のツアーなんだろぉ?金を返すから帰れっつーのは、違ぇんじゃねぇのか?なぁ?なぁ?」
蜜璃「折角開催したんですから、途中からやっぱり無しは通用しませんよ?それは、貴女方もお分かりですよね?」
2人の反論に、ガイドはとうとう黙り込んだ。周りの客も…
客「おい!帰らすのか、卑怯だぞ!!」「まだまだ食べてくれ!!」
…等と、翔と蜜璃を援護した。やがて、大量の寿司を完食すると、翔は次に焼きサーモンといくらを100貫ずつ注文し、蜜璃はとろサーモンと穴子を100貫ずつ注文した。
翔「……。」チラッ…
焼きサーモンを食べながらガイドと主催者、店員の方を見ると…彼らはすっかり意気消沈していた。
翔(フンッ…ざまぁみろ。)
やがて、寿司を500貫程完食した翔と蜜璃は「「ごちそうさまでした。」」と食べるのをやめた。周りからは大歓声と共に大きな拍手が飛び交った。満足そうな翔と蜜璃とは反対に、主催者もガイドも店員も涙目になっていた。
それからドールハウスに戻り、翔と蜜璃は拳を合わせた。
カナ「翔君、蜜璃さん、お帰りなさい!」
翔「おう。」
蜜璃「うん、ただいま!!」
カナから出迎えられ、事務所に向かうと…愛や深雪、彩羽の姿があった。
彩羽「ああぁぁ!?翔君、蜜璃先生とデートぉ!?」
翔「バカ言ってんじゃねぇ、昼飯を食いに行っただけだ。」
蜜璃「そうそう、お寿司を食べに行ったんだ。ね〜♪」
翔「あぁ、そうだな。」
ニコニコする蜜璃と真顔の翔。
愛「ねぇ、翔君?もしかして…××ツアーってとこに参加したの?」
翔「よくわかったな、その通りだ。」
深雪「あそこは評判が悪い事で有名ですよ?」
翔「だからこそだ。狡猾な手段を使って金儲けしようと企むバカ共を、社会的に潰してやったんだよ。」
蜜璃「みんなには、素敵な旅を楽しんで貰いたいんだって、翔君は言ってたよ。」
愛「な、成る程ねぇ……」汗
深雪「…あらあら。」汗
あの日以降、翔と蜜璃が参加したツアーは無くなっていた。風のうわさで、あの寿司屋は潰れて店員は借金地獄に陥り…主催者とガイドはツアー業界から追放され、どこも雇ってくれなくなったそうだ。
翔(ふざけた真似をすっからだ…自業自得、因果応報とはまさにこの事……惨めなモンだな。)