〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』   作:やさぐれショウ

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怪しいツアーを見つけた翔は、蜜璃と共にそのツアーに参加した。そして、食べ放題で……


第三百二十三話 化け物の食欲

ある日の平日……

 

 

翔「……。」

 

医務室にて、スマホで旅行サイトを開き、ツアーの案内を見ている翔の姿があった。

 

翔「……?」

 

ふと、1つの記事に目が止まった。5段階評価中、ほぼ0に近い程評判が悪いツアーがあった。口コミを見てみると……

 

 

高級寿司食べ放題じゃなかった…

 

長い太巻きだけでお腹いっぱいになる…

 

こんなの詐欺同然…

 

金が無駄になったわ…

 

 

…等々、どれも最悪のモノばかりだ。

 

翔「……。」

翔(こいつァ放ってはおけねぇなぁ……)

 

すぐに身支度を開始する翔。すると、医務室の戸が叩かれる。

 

コンコンッ!

 

翔「…入れ。」

 

翔が入室許可を出すと、戸が開き……

 

蜜璃「翔君、失礼するね?」

 

ドールハウス専属医の1人である蜜璃が入って来た。

 

蜜璃「旅行サイト見てたんだ。」

 

翔「…あぁ、ちっとこれが気になってな。」

 

蜜璃「見ても良い?」

 

翔「あぁ。」

 

蜜璃は翔のスマホを覗き込み、ツアー案内を見る。

 

蜜璃「…あんまり評価が良くないね。」

 

翔「そうだな…七草さん、ちっとばっかし力貸してくんねぇか?」

 

蜜璃「えっ?」

 

翔の言葉に困惑する蜜璃。

 

翔「こんな怪しいツアー、早めに潰しておきてぇんだ。あんた、食うこと好きだろ?」

 

蜜璃「…う、うん。確かに好きだけど……」汗

 

翔「だったら尚更だ…費用は俺が負担する。」

 

蜜璃「えぇっ!?いやいや、そこまでしなくても…!」大汗

 

翔「普段から診てくれてる礼だと思ってくれ。ほら、さっさと準備してくれや。」

 

翔の口車に乗せられた蜜璃は、慌てて準備を始めた。

 

翔(勝負は明日…こんな悪徳業者、社会から抹殺してやらぁ……)

 

 

 

そして、ツアー当日……バスに乗り、高級寿司屋と思わしき寿司屋にやって来たのだが……

 

ガイド「まずは、その太巻きを召し上がっていただきます!その後はあちらのカウンター席に移り、お好きな握り寿司を好きなだけ召し上がってくださって結構です!」

 

客の前に出されたのは、かなり長くて大きい太巻きだった。それも、中身はかんぴょうと卵焼きとキュウリとでんぶのみ……海の幸もへったくれも無い。

 

客1「えっ?食べ放題ってこんな全訂ルールあったか?」

 

客2「いや、こんなの書いてなかったぞ?」

 

大勢の客が不満を漏らす中……

 

子供1「いや、サーモン食べたい!!」

 

駄々をこねる子供まで現れた。

 

客3「おい、こんなの詐欺じゃねぇか!!」

 

客4「何だよこの店……」

 

周りの客は次第に怒り始め、騒ぎ始める。中には食べるのを諦め、途中で帰る客もいた。ついには、客からもクレームが……

 

客1「おいおいふざけんなよ!!これ1個で腹いっぱいになるだろ!!他のも頼んだって良いだろ!?」

 

それを聞いたツアーガイドは…

 

ガイド「申し訳ありませんが、太巻きをパスされる方は、別途料金3000円でカウンターからスタートできます!!」

 

…と、ニヤニヤしながら言った。そんな情報なんて、初耳である。

 

蜜璃「翔君…これって、明らかな……」

 

翔「あぁ、詐欺だな。だからさ…俺らで懲らしめてやろうぜ?ひたすら食って食って食いまくるんだ。」

 

蜜璃「わかった…!!」フンスッ!

 

地獄のような最悪な空気の中…エンジンが入った翔と蜜璃は、手を合わせると……

 

 

いっただっきまーす!!

 

 

…と、テンション高めに言い、太巻きを1分程度で完食した。それを見たツアーガイドは、翔と蜜璃をカウンター席に案内する。

 

ガイド「では、あちらへ移りますね?」

 

ガイドはニヤニヤしながら、翔と蜜璃を見ている。

 

ガイド(あんなに大きい太巻きを食べたんだもの…もう大して食べないでしょうね、ヒヒヒヒ♪)

 

そう思っていたガイドだが…翔は無表情のまま、蜜璃は微かに笑顔を見せていた。翔はカウンター席に着くと…

 

翔「なぁ、何をどれだけ食っても良いんだよな?」

 

店員「はい、もちろんです!!何でもどうぞ♪」

 

店員のこの言葉を、翔と蜜璃は聞き逃さなかった。

 

蜜璃「もしネタがなくなったら、追加してもらえるんですか?」

 

店員「はい、もちろんです!!足りなかったら市場まで買いに行きますのでご安心を♪」

 

店員が大きい声で言ったモノだから、翔は無表情のままその店員を見る。

 

翔「言ったな…後になってやっぱり無しだの前言撤回だの、ふざけた事は言うんじゃねぇぞ?」

 

そして、翔は注文を始める。

 

翔「手始めに…まぐろとタコを50貫ずつ頼む。」

 

翔の注文を聞いたガイドと店員は、思わず「「えっ!?」」と声を上げる。

 

蜜璃「私も頼んじゃおうかな…サーモンとイカを50貫ずつお願いしま〜す♪」

 

笑顔で頼む蜜璃を見て、流石のガイドと店員も顔が青ざめていく。

 

翔「…何してんだ?早くしてくれよ…こちとら腹ペコなんだよ。」

 

翔が圧を飛ばすと、店員は慌てて寿司を握り始める。やがて、まぐろ&タコが1皿ずつ…サーモン&イカが1皿ずつ運ばれて来ると、翔と蜜璃はあっさりそれを完食した。

 

店員「ふえぇぇっ!?」

 

それを見た店員は慌てて次の寿司を握る。

 

翔「…へぇ、中々美味いじゃねぇか。」

 

蜜璃「うん!美味しいね、翔君♪」

 

店員がヒィヒィ言う中、蜜璃は楽しそうに、翔は頷きながら寿司をどんどん平らげていく。

 

ガイド(嘘でしょ…この2人、もしかしてフードファイター!?)

 

翔「…おい、今俺らをフードファイターだと思ったろ?」

 

ガイド「ギクッ!?」汗

 

蜜璃「私達はただ、食べる事が大好きなんです♪」エヘヘッ…

 

まぐろもタコも、サーモンもイカも、木箱を3回取り替えさせる程食べた翔と蜜璃。それを見たガイドと店員は、冷や汗をかき始める。

 

翔「次は、そうだな…まぐろをもう50貫、つぶ貝を50貫頼む。」

 

蜜璃「私もサーモンをもう50貫と、甘エビ50貫お願いします♪」

 

2人の注文を聞いた店員は……

 

 

店員「あ、あのぉ…まぐろとサーモンはもう品切れでございまして……」

 

 

…と、汗を流しながら言う。しかし…

 

翔「ネタが無くなれば市場まで買いに行くんだろ?そう言ったのはそっちだよなぁ?なら、責任を持って買いに行けや。てか、何をどれだけ食っても良いんだろ?お前はそれを許可したじゃねぇか…なぁ、ここに来て逃げるつもりか?」

 

蜜璃「私達はいくらでも待ってますので、よろしくお願いします♪」ニコッ

 

翔と蜜璃は容赦しなかった。店員は苦い顔をしながら皿を交換した。翔と蜜璃が再び大量の寿司を食べ始める頃…裏ではお偉いさんと思わしきスーツを着た男性とガイドがヒソヒソ話をしているのが見える。

 

蜜璃「ん〜♪この甘エビも美味し〜♪」

 

翔「フフッ、つぶ貝も中々だな…」

 

既に100貫以上も寿司を平らげている翔と蜜璃。それでも彼らは、まだ満腹にならない。店員は市場までネタを買いに行き、慌てて寿司を握っている。裏で話している主催者とガイドは青ざめた顔をしている。

 

翔(滑稽だな…こんなふざけたツアーを開くからこうなるんだよ……)

 

そんな彼らを鼻で笑いつつ、蜜璃と共に寿司を食べ続ける翔。そんな2人を、周りの客はギャラリーとして楽しんでいた。

 

客1「頑張れー!!」

 

客2「もっと食ってやれー!!」

 

客3「って、よく見たら…翔の兄貴と蜜璃先生じゃね!?」

 

客4「ホントだ…!!」

 

そして、周囲の客が翔と蜜璃だと気付き始めると…彼らへの応援はもっと大きくなる。

 

客1「兄貴頑張れぇ!!」

 

客2「蜜璃先生、頑張れー!!」

 

客3「頑張れー!!兄貴ぃー!!」

 

客4「先生!頑張ってくださーい!!」

 

子供1「おにいちゃん!おねぇちゃん!がんばれー!!」

 

客に応援されながら、次々に寿司を平らげていく翔と蜜璃。

 

翔(ここまで応援されんのも、悪い気分じゃあねぇな…)

翔「おい、サーモンとネギトロ軍艦を100貫ずつ頼む。」

 

蜜璃(皆が応援してくれてる、キュンキュンするわぁ~!!)

蜜璃「ウニとトビコ軍艦を100貫ずつお願いします♪」

 

応援を聞いた翔と蜜璃のエンジンは更にヒートアップし、先程頼んだ量よりも倍の量を注文した。出された寿司を食べていると、ガイドが困惑した表情で翔と蜜璃の方に来た。

 

ガイド「あの…お客様……いただいた料金を全額お返ししますので、この辺で勘弁してください。」汗

 

それを聞いた翔は、ガイドをギロッと睨む。蜜璃は微かな笑みを浮かべている。

 

翔「折角腹を空かせて来たんだ…まだまだ食わせてくれや?なぁ、食べ放題のツアーなんだろぉ?金を返すから帰れっつーのは、違ぇんじゃねぇのか?なぁ?なぁ?」

 

蜜璃「折角開催したんですから、途中からやっぱり無しは通用しませんよ?それは、貴女方もお分かりですよね?」

 

2人の反論に、ガイドはとうとう黙り込んだ。周りの客も…

 

客「おい!帰らすのか、卑怯だぞ!!」「まだまだ食べてくれ!!」

 

…等と、翔と蜜璃を援護した。やがて、大量の寿司を完食すると、翔は次に焼きサーモンといくらを100貫ずつ注文し、蜜璃はとろサーモンと穴子を100貫ずつ注文した。

 

翔「……。」チラッ…

 

焼きサーモンを食べながらガイドと主催者、店員の方を見ると…彼らはすっかり意気消沈していた。

 

翔(フンッ…ざまぁみろ。)

 

やがて、寿司を500貫程完食した翔と蜜璃は「「ごちそうさまでした。」」と食べるのをやめた。周りからは大歓声と共に大きな拍手が飛び交った。満足そうな翔と蜜璃とは反対に、主催者もガイドも店員も涙目になっていた。

 

 

 

それからドールハウスに戻り、翔と蜜璃は拳を合わせた。

 

カナ「翔君、蜜璃さん、お帰りなさい!」

 

翔「おう。」

 

蜜璃「うん、ただいま!!」

 

カナから出迎えられ、事務所に向かうと…愛や深雪、彩羽の姿があった。

 

彩羽「ああぁぁ!?翔君、蜜璃先生とデートぉ!?」

 

翔「バカ言ってんじゃねぇ、昼飯を食いに行っただけだ。」

 

蜜璃「そうそう、お寿司を食べに行ったんだ。ね〜♪」

 

翔「あぁ、そうだな。」

 

ニコニコする蜜璃と真顔の翔。

 

愛「ねぇ、翔君?もしかして…××ツアーってとこに参加したの?」

 

翔「よくわかったな、その通りだ。」

 

深雪「あそこは評判が悪い事で有名ですよ?」

 

翔「だからこそだ。狡猾な手段を使って金儲けしようと企むバカ共を、社会的に潰してやったんだよ。」

 

蜜璃「みんなには、素敵な旅を楽しんで貰いたいんだって、翔君は言ってたよ。」

 

愛「な、成る程ねぇ……」汗

 

深雪「…あらあら。」汗

 

あの日以降、翔と蜜璃が参加したツアーは無くなっていた。風のうわさで、あの寿司屋は潰れて店員は借金地獄に陥り…主催者とガイドはツアー業界から追放され、どこも雇ってくれなくなったそうだ。

 

翔(ふざけた真似をすっからだ…自業自得、因果応報とはまさにこの事……惨めなモンだな。)

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