〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』 作:やさぐれショウ
迷宮から帰還したDolls一同は、ファクトリーにて検査を行われていた。休息どころか検査ばかりで、ちゃんとした休息ができずにいた。ミノタウロスの検体は解析班に手渡され、すぐに解析が行われた。
その数日後…観測室に呼び出されたDolls一同と翔は、斑目とカナによる説明を受けていた。
斑目「皆、ご苦労だった…体調も回復したようで何よりだ。」
ナナミ「まだちょっとグラグラしますけどね……」
度重なる検査により、疲れは十分に取れていない様子のDolls。
斑目「カナ、報告を頼む。」
話の主導権がカナに渡ると、カナは説明を始める。
カナ「今回の調査の結果、ダイダロスは六本木駅の地下……さらに深部に向けて、『移動』している事が分かりました。」
調査によると、地下迷宮は移動しており…地中深くに向かっている事が分かった。それでも…
アヤ「そもそも、それが納得出来ないのよね。なんで迷宮が動くのよ……」
メンバー達は納得できずにいた。迷宮が動くだなんて、そんな常識外れな出来事が普通は考えられない。
斑目「それは…ダイダロスが地下迷宮であり
1体のピグマリオンでもあるからだ。」
コレに対する答えは、ダイダロスそのものがピグマリオンであるということ。
カナ「地下迷宮と認識していた場所そのものが、ダイダロスの体内だった、と考えられます。」
アヤ「な、なにそれ!?意味わからなすぎじゃない!?」
彼女達が迷宮と称して歩いたのは、ダイダロスの体内……それこそ常識外れである。
サクラ「じゃあ……ミノタウロスは…?あれも迷宮の一部なんですか?」
斑目「そうとも言えるが…もっと大きなスケールで考えなければならない。」
カナ「どうしても説明が長くなってしまいますが、結論から言いますと」
翔「答えがあんならさっさと言え、前置きなんざ要らねぇんだよ。」
カナの言葉を遮った翔が説明をした。
翔「討伐対象となるバケモンはダイダロスのみ…
他のバケモンの行動を支配するバケモン、それがダイダロスだ。
んで、ミノタウロスの正体ってのはな…
ダイダロスが操るバケモンの集合体だ。」
採取した検体を元に分かった調査結果…それは、討伐するべきボスはダイダロス…ミノタウロスは小型ピグマリオンが集り、1つになった姿…迷宮にいるピグマリオンの頭脳となっているのが、ダイダロスであったということだ。
ヒヨ「ぐんせー?…って、どういうこと?」
ナナミ「たくさんの同じ生き物の集まり、ですよね。ということはーー
あの大きなミノタウロスは小さなピグマリオンが何体もくっついて動いていた、と?」
翔「そうだな。」
カナ「はい、みなさんの持ち帰ってくれた検体の分析…
ヒヨ「それってもしかして…合体ロボってこと!?」
翔「そのイメージでだいたい合ってる。」
ヒヨ「ほ、ほえぇ…!ほんとに…?」
アヤ「う、うえー……なにそれ。キモ……」汗
ナナミ「でも、群生とはいっても普通はあんなふうに別の生き物みたいには動かないでしょ。」
ヤマダ「ふひひ…そのへんはさすが謎のバケモノってところっすなぁ…」
ユキ「でも、あのピグマリオンから感じたのは……強い力がひとつだけ、でした……」
カナ「なるほど…では、それが『コア』ですね。」
ユキの話を聞いたカナは、補足を付け加える。
カナ「ミノタウロスをコントロールするコア…ダイダロスの一部か、あるいは本体そのもの…」
ヤマダ「ほう……急にゲームっぽい用語。まあ想像しやすくはあるっすな…」
ダイダロスにはコア、所謂急所があると考察するカナ。しかし、それはどこにあるか明確な位置は把握できていない。
レイナ「ダイダロスは迷宮であり、ミノタウロスでもある。損傷箇所は取り替えて修復…だから、何度でも復活する…そして、その正体は小型ピグマリオンを操る1体の特殊なピグマリオン、ということね?」
ミサキ「はぁ…めちゃくちゃな相手ね…でも、読めたわよ。」
今回の敵もスケールがかなり大きい。シレーヌよりも厳しく、苦しい戦いになるだろう。
ミサキ「そのダイダロスのコアさえ仕留めれば、ミノタウロスはもう復活しない。」
目的はダイダロスのコアを破壊し、ミノタウロスの復活を阻止すること…だが、彼女らには1つ引っ掛かることがあった。
サクラ「コア……あのときデウスさんが探していたのは、それなんでしょうか……?」
ナナミ「どうでしょうね……『彼女』とか言ってましたし、また別の何かかも……」
言っている事は相変わらず意味不明なデウス。しかし、今はそれを気にしている余裕はない。
斑目「我々の目的はダイダロスの討伐だ。今はその真意は重要ではない。」
まずは、ダイダロスを始末しなければならない。
カナ「ダイダロスの現在位置は六本木駅のさらに地下。線路に擬態している箇所を特定済みです。」
ダイダロスはこの世界を生きる者達の日常に入り込もうとしているのだ。取り返しのつかない事態に達する前に、倒さなければならない。
カナ「六本木駅から本来ないルートを辿り、コアを発見・破壊するのが次の作戦になります。」
ナナミ「素朴な疑問なのですが……そもそもダイダロスはどうやって移動を?コアがあるのはわかりましたが…それ以外まるで想像できないんですけど。」
ナナミの質問に、カナは困惑しながら答える。
カナ「えっと…説明も難しいですね…壁も、線路も、ダイダロスの『擬態』ーー半分くらいが地下鉄線路に見えるピグマリオンで作られた構造物になります。」
翔「…マジかよ。」
カナ「つまり、迷宮はミノタウロスと同じく…小型ピグマリオンの群生、地形に擬態した状態……」
アヤ「ひぃ……だ、だめ…それ以上は…それ以上想像しちゃ……キモすぎる…!!ああ…あたしたちのいたとこの地面も……ああああダメダメ!!」大汗
翔「…まるで『ワーム』だな。」
ワームとは虫としてのワームではなく…【仮面ライダーカブト】に登場した敵。人間に擬態することができる能力を持つ。
ユキ「そのピグマリオンは…コアに操られているのですか?」
カナ「そのようです。コアの移動に合わせ、小型ピグマリオンも移動させている…だから厳密には、迷宮の形をしたものが移動しているわけではないですね。風景に擬態してみなさんを地面ごと移動させたり、想像できる規模感を超えすぎてはいますが…」
斑目「コアはミノタウロスのような群生体の体内に入り、移動していると思われる。いつから新宿にいたのかは不明だが…新宿から出てきたのは初めてのようだ。我々のフィール散布やミノタウロスの損傷…修復のためのエネルギーを求め、移動したのだろう。」
コアの正確な位置は掴めていないが、小型ピグマリオンの集合体に入って移動していると斑目は考察する。
ユキ「わたしたちが…起こしてしまった…?眠っていたピグマリオンを……」
アヤ「……余計な事しちゃった、ってこと?」
斑目「……関連性は不明だ。」
カナ「仮説や分析は引き続き私達が…みなさんにはダイダロス討伐をお願いします。」
翔「そんなに罪悪感を抱く必要はねぇ…バケモンは、いつかは倒さなければならねぇからなぁ?」
斑目「ダイダロスの移動で港区の汚染度が急上昇している。ミノタウロスの目撃情報もあったようだ。」
翔「俺達は、そこに加勢に行くんだろ?」
斑目「そうだ。我々が討伐したミノタウロスはことごとく、迷宮に吸収された…おそらく修復材料として再利用するためだろう。つまりそれを追えば……」
シオリ「ダイダロスの『核』に向かう…ということですね?」
コアの特定方法は1つ…倒したミノタウロスは迷宮に吸収されていく。それを追い掛ければ、ダイダロスのコアに辿り着く。倒して終わりではなく、吸収されたミノタウロスを追い掛ける形で探すのが最も効率的なやり方である。
ヤマダ「デウスたんが言ってたのもこれっすかねぇ?ピグマリオンを痛めつけて案内させるってのは。ふひひ…エグくていいんじゃないっすか?」
斑目「ライブで集めたフィールに加え、ラッピング電車を再稼働させればーーもう一度フィールで地下迷宮を満たし、ミノタウロスをおびき出す作戦を行えるだろう。」
幸い、ライブで集めたフィールはまだ残っている。そして、ラッピング電車を再び動かすことで、またフィールを集められる。そのフィールによって迷宮が満たされれば、ミノタウロスはやって来る。
ヒヨ「は、はいは〜〜い!!」
カナ「どうしたの、ヒヨちゃん?」
ヒヨ「それって、電車に乗ってる人たちはだいじょぶ?」
ここで新たな問題点が…ダイダロスは地下鉄の路線に擬態している。そこにラッピング電車が走れば、駅員や乗客が危険に晒される。
ナナミ「!!そうですよ…!そんな線路に電車を走らせるなんて……」
斑目「大江戸線の最大深度は49m。ピグマリオンの反応深度は112mだ。この間のような急激な移動がない限り、路線への影響はないだろう。」
レイナ「けれど、不測の事態はいつでも起こり得るものよ。」
斑目「作戦の決行は、終電後に行う。時間帯的に、問題ないはずだ。」
カナ「討伐後には港区の浄化ライブを行います。夜中から翌日夜までの作戦になります。コンディションには気を付けてくださいね。」
斑目「ーー作戦詳細は追って連絡する。本日は解散だ。」
会議が終了し、Dolls達は観測室を退室した。
翔「……。」
翔(強い力が1つだけ、か……)
今回の任務とは別の事態…それは、白河 昇とストライカー達による狡猾な作戦……戦いで疲れたDollsをパスト・アルカリアという妖魔に殺害させ、Dollsに変装し、翔を連れ戻そうとしている。この件について、翔はまだドールハウスに話していない。NumberSだけはこれを知っているが、翔は周囲にはあまり話さないよう予め口止めをしている。
翔(そもそも、奴らが動くのは俺のせいでもある…だから、
妖魔と手を組み、本来のやるべきことを放棄したストライカー達…そんな彼女らを擁護する白河 昇…彼らの目的は、翔を隊長として迎え入れ、生涯尽くすということで、今までの過ちを水に流そうと思っている。翔が戻れば、丸く収まるとあるストライカーは言っていたが…翔にだって、自由に生きる権利もあれば意思もある。
斑目「翔…あまり五月蝿くは言いたくない……頼むから、休んでくれ……」
翔「…やだね。てか、それはできねぇ相談だ。」
斑目「…何故だ…?」
翔「決まってんだろ、あのバカ連中が居るからだ。」
カナ「それって…ストライカー達と、白河 昇……」
翔「そうだ、あんたらも分かってんだろ?アイツらが現存し、妖魔を利用して悪事を働く。そんな状況の中、安心して休めると思うか?」
翔の言葉に、黙り込む斑目とカナ。現在、翔は回復傾向に向かっている。だが、相変わらず無理をする為、回復が遅くなってしまう。
翔「奴らは今にも、俺を連れ戻そうと狡猾な手段を使って来る…何をしでかすか分からねぇ連中なんだぞ。」
カナ「…あ、あの…翔君…ちょっと、良いですか?」
翔「…何だ?」
カナ「その…ダイダロスに居た時、何をしていたのか……覚えていたりしますか?」
翔「……いや?」
カナは1枚の写真を取り出し、翔に見せた。それは、アマゾン素体として覚醒した翔の姿だった。
翔「…これは、俺か……?」
カナ「……!」
斑目「……。」
翔の言葉に、カナは言葉を飲み…斑目は苦虫を噛み潰したような表情を見せる。
翔「…コイツはヒデェな、醜い姿だ……」
翔(アマゾンとしての力を使い過ぎたか…そりゃあアマゾン化の進行も早くなるよな……)
チヒロからの助言はあったものの、探知能力を使わざるにはいられなかった。だが、それを続けていた事で、彼のアマゾン化は早くなる。遂には、アマゾン素体として覚醒してしまった。
斑目「片山から聞いた…ミノタウロスの検体を採取してくれたのは、翔だった…とな……?」
翔「…そうか。」
すると、カナは翔を優しく抱き締める。
カナ「翔君は翔君です…自分の事を…酷く言わなくて良いんですよ……?」
翔「……。」
カナ「それに、ドールハウスは…翔君の居場所でもあります。ですから、遠慮しなくて……」
翔「…あぁ、嬉しいぜ。」
相変わらず無表情な翔だが、心の中では安心しているようだ。
翔「…流石に疲れた。医務室で大人しくするとすっか……」
そう言うと、翔はカナから離れ…医務室へと戻って行く。
カナ「はい、おやすみなさい、翔君。」
医務室へと戻って行く翔を見送るカナと斑目。だが、既に身体に異変が起こっている彼を心配する眼差しを向けていた。