〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』   作:やさぐれショウ

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第三百四十一話 禁断のライダー

斑目「…翔、まだ残っていたのか。」

 

翔「……。」

 

斑目「……不服、といった顔だな。」

 

その日の夜、事務所にて斑目とやり取りをする翔。

 

翔「俺達には、知らねぇことが多すぎる…そいつらのせいで苦しめてしまってる。アイツらは…心のある、意志のある人間だから…」

 

斑目「戸籍上は消滅…国家としての認識は兵器…扱いとして、人権はない。」

 

翔「…それは本気でそう扱おうという意味じゃあねぇだろ?」

 

斑目「フ……そうだな。」

 

戸籍は無く、国家からは兵器として利用されているDolls。しかし、斑目は彼女らを兵器とは思っていなさそうだ。

 

斑目「実際、彼女らは年相応の少女だ。そのために君が…という言い方も納得は行かないだろうな。」

 

もし、本当に兵器だと思っているのであれば…彼女らの意志を尊重しないはず……不要だと感じればすぐに切り捨て、新しいモノと交換する。少なくとも斑目は、今までそのような事を一度もしていない。

 

斑目「翔……お前が私という指導者に疑問を抱くのは仕方ない。全ての情報の開示は出来ない。気持ちだけを理由に動いてはならない。」

 

翔「誰にだって、知られたくねぇ事の1つや2つある…そりゃあ分かってるさ……」

 

斑目「私が感傷で判断を誤る可能性は高い。目標達成のため理を詰める時がある。」

 

翔「今がそうだと?アイツらを救えるかもしれねぇってのに…?」

 

斑目「救えるような言葉があったら隠す必要などない。純粋に、今伝えて得をする情報がないのだ。それを疑うのも仕方ないかもしれん。」

 

何かを伝えるのには、タイミングというのがある。情報も全てが得をするモノだとは限らない…損得に関わらず、必ず伝えなければならない事もある。逆に伝えない方が良い事もある。正しい事は何なのか、誰にも分からない。

 

斑目「私にも話していないことはある。お前にも私たちに話していない事があるようにな。」

 

翔「…どうだかな?」

 

斑目の言葉を聞き、言葉を濁す翔。斑目は翔の目を見る。翔も斑目の目を見る。そして……

 

 

斑目「例えばーー夢に現れる女。」

 

 

翔「……。」

 

斑目「誤解を与えずに伝えることができるか?それと同じだ。真実はいつだって、夢のように脆い。サクリファイスの件以外にも、明言できない事象はある……翔、お前がドールたちの味方であり続けるならば、全ては些細な事だ。」

 

翔「…なら、1つだけ教えてくれよ。」

 

斑目「なんだ?」

 

翔「シオリは、何故あそこまで役割…いや、『約束』に固執するんだ?」

 

サクリファイスを殺す事は、あの子達への約束…と、シオリは言った。その理由が、翔にはまだ分かり切っていなかった。

 

斑目「『約束』……命の選定……使えなくなったドールへの『執行』、か。そして、ドールとして生まれ変わらなかった彼女らの『介錯』…」

 

斑目は静かに、翔へ語り始める。

 

 

斑目「あの娘は、長くひとりだった。

 

目が覚めないユキの隣を片時も離れず、尽くしていた時期もあった…

 

あの娘自身は、いつもひとりだった。

 

命じられた役目を演じることを、生きる意味にしていた。」

 

 

翔「……。」

翔(そんなの…流石に辛すぎる。)

 

斑目「だが、彼女は望みだ。そのおかげで、自分を保てたとも言えるだろう。チヒロの件もある…ミサキが妄執を抱え込む傍ら、シオリは自分を保てたようにも見えた。シオリは賢い…理屈ではおそらく整理できているだろう。感情を力に変えて戦うドールとしては、苦しくもあるだろうがな……」

 

翔「…そうか。」

 

斑目「理と情に絡みつかれた迷宮そのものが出口は遠い…君には…苦労をかける……」

 

翔「おい、お前だの君だの…二人称がめちゃくちゃだぞ?」

 

斑目「そこは気にしないでくれ…」

 

翔のツッコミにため息交じりに言う斑目。

 

斑目「作戦開始までは休んでおけ…というより、君は怪我を治す為に休んで欲しい。あまり、時間の余裕はない……」

 

斑目はそう言うと、事務所から退室した。

 

翔(感情か…強い感情が、シオリにはある…他の奴らにだって…)

 

Dollsは兵器として認識されていても、感情も意思もある。彼女らと関わって来た彼だからこそ、知っている事だ。

 

翔(テアトル…自分の世界…それを取り戻すためには……)

 

少し考え事をする翔だが、何かを思い出し、事務所を退室した。

 

翔(そういや、NumberSをファクトリーに呼んだんだ…『アレ』の試運転するためにな……)

 

そして、NumberSが待つファクトリーに向かって行った。

 

 

 

ファクトリーに到着し、シミュレーターに入ると…

 

ミア「あっ、来た来た!やっほー翔さん♪」

 

ディオ「やっと来た。」

 

トリア「翔さん、お待ちしておりました。」

 

NumberSが翔を出迎えた。

 

翔「よく来てくれた。」

 

翔は滅亡迅雷システムを取り出し、彼女らに説明をする。

 

翔「今回作成したライダーシステムはかなり危険だ…使用するには、俺達の意志が1つでなければならない。危険な上に、扱いも難しい……だからこそ、念には念を入れ、試運転を行う。」

 

翔がマスブレインゼツメライズキーのボタンを押すと、4人はマスブレインシステムへと瞬時に移動した。

 

トリア「おおっ!?ここは…?」

 

翔「マスブレインシステムの中だ。」

 

困惑するトリアを宥め、翔は言う。

 

翔「俺はDollsを…アイツらを支えたい。化け物である俺に寄り添い、居場所までも用意してくれた…どれだけ悪態をついても、どれだけ突き放しても…アイツらは、それを全部受け止めてくれた。だから、俺はアイツらの力になりてぇ…お前達はどうだ?」

 

ミア「翔さんがそれなら、ボクらもおんなじだよ。」

 

ディオ「うん、ディオもおんなじ…」

 

トリア「翔さんの仰せのままに。」

 

翔「ちげぇよ、俺がそれだから自分達も同じじゃあねぇんだ。これは俺自身の意思なんだよ…お前達自身の意思は、どうなんだ?」

 

翔が聞いているのは…ミア、ディオ、トリア自身の意思。個別の意思を聞いているのだ。

 

ミア「そうだね~…正直な所、Dollsからは色んな事を学ばせて貰ったね。だから、ボクもDollsの力になりたいと思ってるよ。」

 

ディオ「肯定…ディオも、色んな事を学んだ。それは、Dollsのおかげ…ディオも、Dollsの力になりたい……」

 

トリア「嗚呼、私もDollsの皆さんから沢山の事を学ばせていただきました。日本の文化や様々な感情…そして、翔さんの事も…私、トリアもDollsのお力に!!」

 

NumberSの意思も、Dollsの力になりたい…同じ意志だった。

 

翔「フッ、満場一致か…どうやら、俺達の意思は1つなっているようだな。俺達は俺達の…意志のままに……」

 

 

《Your opinion has been》

 

《accepted.》

 

「「「「可決っ!!」」」」

 

 

すると、滅亡迅雷ドライバーが出現…それは、4つになると、4人の腹部に巻き付いた。続いて、マスブレインゼツメライズキーが翔の右手に出現…周囲に、怪しいサイレン音が響き渡る。

 

翔「行くぞ?」

 

翔はそう言うと、展開されたゼツメライズキーをドライバーに装填する。

 

 

《Progrize》

 

 

音声が響き渡ると、4人の身体に稲妻が走る。

 

翔「ぐっ!?うぅ…!!」バチバチ

 

ミア「あぐっ!?うっ…!!」バチバチ

 

ディオ「うっ!?ぐぅ…!!」バチバチ

 

トリア「うおっ!?くっ…!!」バチバチ

 

その直後、現実世界にいる4人の身体が一斉に床に倒れ込み、意識を失った。その直後、倒れた4人の額からフィールが漏れ出し、空間に3Dプリントされる形でライダーの姿が出現する。足から下半身、上半身、最後に頭部が具現化し、仮面ライダーが姿を現し、紫色の複眼を光らせる。今、ドールハウスにて禁断の戦士『仮面ライダー滅亡迅雷』が誕生した。それと同時に、幻想パスト・アルカリアが複数出現した。シミュレーターの更新には、翔も関わっている。妖魔との戦闘を想定し、パスト・アルカリアのデータも既に入れてある。

 

 

We will destroy you all.

 

 

仮面ライダー滅亡迅雷は幻想パスト・アルカリア達を指差すと、ゆっくりと歩みを進める。そして、襲い掛かって来る幻想パスト・アルカリア達を1撃で倒していく。続いて、幻想アマゾンネオまでも出現した。仮面ライダーアマゾンネオ…つまり、白河 昇のデータもシミュレーターに取り入れられている。滅亡迅雷は無駄のない最低限の動きで、幻想アマゾンネオを圧倒する。すかさずキーを押し込むと、右腕にエネルギーを込め始める。

 

 

《マスブレイン・インパクト》

 

 

『…!!』

 

『いっくよ~!!』

 

『ふっ…!』

 

『参ります!!』

 

滅亡迅雷はマスブレインゼツメライズキーのマークを背に、エネルギーを込めたライダーパンチを幻想アマゾンネオに放った。幻想アマゾンネオの身体は大きく後方に吹き飛ばされ、消滅した。

 

『うっ!?』『あっ!?』『あぐ…』『おぉっ!?』

 

幻想エネミーが全滅した後、滅亡迅雷の身体は消え、4人の意識が戻った。

 

ディオ「なに、これ…ディオが、ディオじゃなくなったみたい……」

 

ミア「うん、心が抑えきれなくなって…」

 

トリア「この感覚…危険だと言うのが嫌でも伝わります。」

 

翔「…試運転終了……後は、それぞれの意思を維持できるかだな。」

 

滅亡迅雷システムの試運転は終わった。変身プロセス自体は問題無かったが、個別の意思を維持できなかった。

 

翔「お前達、心を強く持て……」

 

翔はそれだけ言うと、滅亡迅雷システムを金庫にしまった。そして、解散し医務室に戻った。

 

翔(NumberSなら大丈夫だ、俺はアイツらの事も信じている…時間が無いのも確かだ、いつでも戦場に戻れる様にする為…俺もいい加減、怪我の治療に専念しよう。)

 

NumberSも信頼できるようになった翔は、今度こそ怪我の治療に専念する為…身体を休める事にした。

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